借地権は期限がくれば契約を更新しますが、その際、更新料は発生するのでしょうか。
仮に更新料を支払うとなると、どれくらいの費用が相場なのか事前に把握しておきたいものです。
また、更新料がかかると知らず、支払えないときはどのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、借地権の更新料についてと料金相場、支払えないときの対処法を紹介します。
目次
はじめに、借地権の更新料について紹介します。
借地権の更新料とは、借地権の契約更新を行う際、借地権者が貸主へ支払う手数料です。
借地権は存続期間が満了となると、契約を終了するか、契約を更新して借地権を継続するかの選択となります。
とはいえ、借地権の更新料の支払いの有無は、法律上定められているわけではありません。
借地権の契約次第では、そもそも更新料を支払わずに契約更新できる場合もあります。
借地権の更新料は、借地権者と貸主間で支払いの取り決めを行います。
更新料の金額はもちろん、支払いの合意も双方の話し合いで決めるケースが一般的です。
また契約の更新方法に関しても合意更新と法定更新があり、借地権者と貸主間で決めます。
新法の普通借地権と旧法の旧借地権は、法定更新されるのが多くなっています。
しかし、借地権の契約期間は数十年以上と長期間です。
貸主も、子などへ世代交代している場合も多いため、契約内容を見直しする意味合いも兼ねて合意更新される場合もあります。
借地権の更新料の支払い義務は、法律上設けられておりませんが、実際は支払っているケースが一般的です。
ここでは、更新料が求められる理由と支払方法について紹介します。
借地権の更新料には、貸主とのトラブル防止の役割があります。
借地権が設定されていて建物を所有しているのが借主でも、土地の所有者は貸主です。
借地上の建物を増改築や売却などの変更を加える際には、貸主の承諾が必要となるため、良好な関係が求められます。
更新料には、合意で更新するための対価や、契約更新を拒否されてトラブルになる可能性を回避する目的があります。
借地権の契約更新を拒絶する際、賃貸人には正当事由が求められます。
正当事由には様々なものがありますが、更新料が支払われていないことは貸主側の正当事由に該当する可能性も高いです。
その結果、立ち退きを要求され、貸主とのトラブルになるケースもあります。
更新料を支払っておけば、貸主は契約更新の拒絶ができなくなる可能性も高くなり、トラブルに発展するリスクを抑えられます。
借地権の借地契約書に更新料の支払いの定めがある場合は、必ず支払わなければいけません。
借地契約書には、相当の更新料として、金額や算定方法が明記されている場合が一般的です。
もちろん古い借地契約書には明記されていない場合や、そもそも契約書を締結していない場合もあるでしょう。
上記のようなケースでは、借地権の更新料を支払う必要はありません。
ただし、過去に更新料を支払っていたなどの慣習があれば、双方に明確な合意がなくても更新料の支払い義務が発生する場合はあります(民法92条)。
貸主との関係を悪化させないためにも、更新料を支払うのが一般的です。
借地権の更新料の支払方法は、借地権者と貸主の合意によって決まりますが、一般的には賃料と一緒に支払います。
別々に支払われるケースもありますが、更新料が高額となった場合は分割支払いで対応してくれる貸主も多いため、支払い方法については相談することもできるでしょう。
借地権の更新料を支払わないと債務不履行に該当し、借地権が消滅する可能性があります。
借地権の契約更新に更新料の支払いが求められた場合、応じなければ借地契約の解約事由に該当することがあります。
借地契約は、双方の信頼関係に基づく継続的な契約です。
更新料を支払っていないからという理由だけでは、すぐに契約解除となるわけではありません。
契約の解除は、これまでの事情や契約の継続が難しいほどの信頼関係が破壊されたときに認められます。
もちろん過去の判例で、更新料の不払いがあっても解除を認めなかった事例もあるため一概には言えません。
しかし、契約解除の可能性があることは胸に留めておくことをおすすめします。
借地権の更新料の相場はどれくらいなのでしょうか。
ここでは、更新料の計算方法を紹介します。
借地権の更新料の目安は借地権価格の5%〜10%程度です。
借地契約書に明記されている場合は、その割合に準じます。
借地権の更新料の相場は、法律上規定されているわけではありませんが、主に以下の計算式で算出されます。
更地価格は地価を指し、実際に周辺で売買取引された価格を基に算出します。
おおよその相場を知りたい方は、国土交通省の土地総合情報システムより過去の取引事例を検索できます。
また借地権割合とは、その土地にある借地権の割合を指し、30%〜90%と各土地によって異なります。
こちらは国税庁の路線価図で確認できます。
借地権の更新料は、存続期間が満了する月末までに支払うのが一般的です。
たとえば令和6年12月31日までの契約期間であれば、その日までに支払う必要があります。
更新料の支払いによって契約更新がされる条件であれば、新しい契約期間の開始日は前の契約の満了日の翌日からとなります。
借地権の更新料の支払期限は、借地契約書に明記されていないケースも多いため、曖昧なままにしていると更新できない恐れがあります。
そのため更新年度となったタイミングで、借地権者と貸主で話し合いを行って明確にしておきましょう。
借地権の更新は、以下の手順で進めます。
ここでは、更新の流れについてひとつずつ紹介します。
はじめに、借地契約を更新する方法を確認しましょう。
法定更新であれば、存続期間が満了しても自動的に従前の契約と同一条件で更新されます。
法定更新は、存続期間の満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知がなく、借地権者と貸主での協議がない場合、適用されます。
一方、借地権者と貸主で協議を行い、更新に関する条件などを設定した場合は合意更新となるケースが一般的です。
法定更新の場合は原則更新料の支払いは発生しませんが、合意更新では更新料を支払う必要があります。
合意更新の場合、借地権者は貸主に対して契約更新の請求を行います。
請求とはいえ、契約を更新したい意思表示を貸主へ伝えるだけで完了します。
今後の契約内容や更新料の金額などについて、話し合いを行いましょう。
最後に、更新料の支払いを行います。
更新料の金額は、貸主の意向に沿って決まるケースが一般的です。
しかし一度高い金額に設定されると、次回の更新時も高い更新料を請求される恐れがあるため、双方合意できるまで話し合いましょう。
更新料の支払いは法的義務がないものの、貸主との信頼関係に影響します。
貸主から高い更新料を請求された場合や、そもそも支払えない場合はどのように対処すればよいのでしょうか。
ここでは、3つの方法を紹介します。
更新料が支払えない場合、貸主へ延納や分割支払いを交渉してみましょう。
高額な更新料を請求された場合や金銭的に支払いが難しい場合、確実に支払える金額と期日を決め、貸主へ提案してみましょう。
前述したように、借地権は長期間の契約でもあり、長期的な付き合いから貸主も相談に乗ってくれるケースが多いです。
支払えないからという理由で更新料を放置していると、トラブルにもなりかねないため、まずは貸主へ相談してみましょう。
更新料が支払えない場合は、金融機関などから融資を受けることや、カードローンなどを利用することもひとつの選択肢です。
もちろん利息が付くため、更新料より高い金額を返済しなければいけません。
しかし、更新料が支払えないからという理由で家を手放すよりも建設的な方法と言えます。
また、お金を貸してくれる親族や知人などに相談してみてもよいでしょう。
ローンなどと比べると利息などがつかず、融通が通じるケースも多いです。
相談しにくい内容ですが、更新料を支払うために相談することを検討してみましょう。
更新料が支払えない場合は、最終手段として借地権の売却も検討しましょう。
建物付きの借地権を売却すれば、今後更新料と地代を支払う必要がなくなります。
もちろん住み替えが必要となりますが、売却益も得られるため、次の家の取得代金にも充てられます。
ただし、家の売却は人生の中でも大きな出来事であるため、慎重に判断しなければいけません。
すぐに決断するのは難しいですが、最終手段の一つとして念頭に置いておきましょう。
借地権の更新料は、法的義務はないものの、合意更新であれば支払うのが一般的です。
更新料は借地価格の5%〜10%が相場ですが、借地契約書に明記されている場合はその金額を支払います。
更新料は存続期間の満了までに支払いますが、支払いが困難となった場合は、即座に貸主へ分割支払いや延納などの相談をしましょう。
相談に乗ってくれない場合は、借地権を売却する方法もありますが、住み替えなどの決断が必要となるため、更新料は貯めておくことをおすすめします。