

東京弁護士会所属。新潟県上越市出身。
建物の取り壊しや土地売却などに伴う立ち退き問題は、生活基盤や事業拠点に関わる重大な局面であり、金銭面だけでなく精神的にも大きな負担となります。
適正な立ち退き料を算出・獲得するためには、法律の知識はもちろん、不動産価値の評価や移転に伴う経済的損失を正確に把握する視点が欠かせません。 私は証券会社や金融機関での10年以上の実務経験を活かし、客観的なデータに基づいた説得力のある交渉を行うことを得意としています。 依頼者様の不安に寄り添い、経済的・心理的に最善の結果を得られるよう尽力いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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ペットを飼育しているときの退去費用は高額になるケースもありますが、合意する前に請求額の内訳を精査しましょう。
内訳を精査すると、一部の損壊について全体の修繕費用を請求しているケースや、経年劣化による価値の減少を考慮していないケースもあるためです。
設備には通常使用できる耐用年数が定められており、入居から年数が経っているときは減少した価値の交換費用は借主の負担となりません。
弁護士が介入すると、過去の判例など法的な根拠に基づいて不当な請求に反論できるため、請求額が大幅に減額されるケースもあります。
ここでは、ペット飼育を原因として高額な退去費用の請求が届いたときに減額交渉をする方法や減額チェックリスト、費用相場などをご紹介します。
目次

退去費用が100万円を超えるのは、多頭飼いや長期間の放置で汚損が著しいケースや、広範囲に損傷したケースに限られます。
一般的な飼育状況で退去費用が100万円を超えるときは、新品交換代を全額負担させている可能性が高いでしょう。
設備には通常の使用期間である耐用年数が定められており、経年劣化による経済的な価値の減少が考慮されます。
例えば、壁紙やクッションフロアなどの耐用年数は6年であり、期間経過後の価値はほぼ0円です。
入居から数年経過し、新品100万円の価値が40万円まで減少した場合、新品交換をするときでも減少した60万円は借主の負担となりません。
退去費用が高額なときは経年劣化による価値の減少を考慮していないケースもあるため、計算根拠を確認しましょう。

ペットを飼育していたときの退去費用は、一般的に家賃+10~20万円ほどであり、100万円を超える請求は相場から大きく逸脱している可能性が高いです。
通常の賃貸住宅の退去費用は、一般的に5~9万円程度です。
ペット飼育可の賃貸住宅は、多くの物件で家賃3カ月分などの敷金を設定しています。
ペット飼育可の賃貸住宅では、退去時の敷金返還トラブルを避けるため、敷金のうち家賃1カ月分は償却により返還されないと定めている場合もあります。
敷金の償却が定められている場合、退去時には返還されない償却金額分も見越して資金計画を立てておきましょう。
ペットを飼っている賃貸住宅の退去費用の内訳は、次のとおりです。
それぞれの費用を詳しく解説します。
ペットが傷つけてしまった壁紙は、張替えをしなければなりません。
費用の目安は、次の表を参考にしてください。
| 部屋の広さ | 金額 |
|---|---|
| 6畳 | 約5万円 |
| 7畳 | 約6万円 |
| 8畳 | 約6万7,000円 |
| 9畳 | 約7万2,000円 |
| 10畳 | 約7万8,000円 |
傷によって下地やボードを取り換える必要になった場合、壁紙張替え費用に加えて下地補修の工事費用もかかります。
フローリングも壁紙と同様、傷ついた場合は張替えしなければいけません。
フローリング張替え費用の目安は、次の表のとおりです。
| 部屋の広さ | 金額 |
|---|---|
| 6畳 | 約17万2,000円 |
| 7畳 | 約20万円 |
| 8畳 | 約23万円 |
| 9畳 | 約26万円 |
| 10畳 | 約28万6,000円 |
フローリングが全体的に毀損しており、張替えが床全体に及ぶときは耐用年数が建物と同一とされるケースがほとんどです。
表面の研磨・塗装で済むのか、取り替えが必要なのかの判断によって、数十万円の差が出る可能性があります。
カーペットの場合は、フローリングよりも交換費用は割安になります。
カーペット張替え費用の目安は、6畳で約8万円です。
畳の表面だけが軽く損傷した程度であれば、畳を裏返してそのまま使用できます。
傷みが激しい場合、畳表と畳縁(布部分)を新しく交換する「畳の表替え」をします。
さらに畳床とよばれる土台まで傷んだときは、畳の取替えをしなければなりません。
畳の表替え・取替え費用の目安は、次の表のとおりです。
| 部屋の広さ | 表替え費用 | 取替え費用 |
|---|---|---|
| 6畳 | 約4万8,000円 | 約8万円 |
| 7畳 | 約5万5,000円 | 約9万3,000円 |
| 8畳 | 約6万2,000円 | 約10万6,000円 |
| 9畳 | 約6万9,000円 | 約11万9,000円 |
| 10畳 | 約7万6,000円 | 約13万2,000円 |
ペットを飼育していると、柱に爪跡や噛み跡がついてしまい、傷つきやすくなります。
柱の修復費用の目安は、次の表のとおりです。
| 柱の傷の度合い | 補修金額 |
|---|---|
| 浅い傷 | 約2万円 |
| 浅くて長い傷 | 約3万円 |
| 深い傷 | 約4万5,000円 |
| 尿のシミ | 約5万円 |
柱は耐用年数が建物と同一とされるケースがほとんどです。
フローリングと同様に表面の研磨・塗装で済むのか、取り替えが必要なのかの判断によって、数十万円の差が出る可能性があります。
柱の状態によっては上記の補修金額よりも高額になるケースもあるでしょう。
ふすまや障子が大きく傷ついている場合は、ふすまや障子自体を交換しなければなりません。
張替え費用と交換費用の目安は、以下の通りです。
| 張替費用 | 交換費用 | |
|---|---|---|
| ふすま | 2,000~8,000円 | 4~5万円 |
| 障子 | 1,500円~2,000円 | 4万5,000~8万5,000円 |
賃貸住宅から退去するときは、次の借主のためにハウスクリーニングが行われます。
ハウスクリーニング費用の目安は、次の表のとおりです。
| 間取り | 施工金額 |
|---|---|
| 1DK・1LDK | 2万6,000~4万6,000円 |
| 2LDK・3DK | 4万5,000~9万1,000円 |
| 3LDK・4DK | 5万8,000~10万円 |
| 4LDK・5DK | 6万8,000~11万5,000円 |
上記の費用は通常のハウスクリーニング費用であり、ペット臭専門のハウスクリーニングをすると倍近くの施工金額になるケースもあります。
退去するとき、借主には原状回復義務があるため、借りた物件を元の状態に戻して貸主に返さなければなりません。
時間の経過で自然と物が劣化する経年劣化は、借主の故意や過失でない限り、貸主が修繕を負担するのが一般的です。
ペットによる損壊がある場合、損壊は自然発生したとはいえず、劣化を早めるため、借主に修繕費用の負担が求められるときがあります。
修繕費用の負担割合は、貸主と借主の話し合いで決まります。
注意すれば防げた損壊がある場合は故意や過失があるとみなされ、借主が全額を負担するケースもあるため、傷つけないように注意しましょう。

修繕費用の負担割合には、経過年数による劣化が考慮されます。
たとえばペットが損傷した物が新品だったときには経年劣化がなく、修繕負担は借主が負います。
一方で損傷した物が相当の経過年数を過ぎている場合、借主の負担は残存価値に限定されるでしょう。
物が劣化するのに必要な年数を耐用年数といい、国土交通省のガイドラインで以下のように基準が公表されています。
| 修繕対象 | 経過年数の考慮 |
|---|---|
| ・壁紙 ・カーペット ・クッションフロア | 6年で残存価値1円 |
| ・フローリング ・畳 ・柱 ・鍵の交換 ・ふすま | 考慮しない |
| ・設備機器 | 設備機器の耐用年数で算定 |
たとえば壁紙を損傷した場合、3年経過しているときの借主の負担割合は約半分です。
6年経過すると残存価値がほぼなくなるため、借主の負担もありません。
ペットが破いたとしても、借主の負担は工事代や耐用年数に基づいた残存価値に限定され、100%の交換代を負担するケースはほとんどない[注1]でしょう。
物件の損傷には、通常損傷と特別損傷があります。
| 損傷の種類 | 概要 |
|---|---|
| 通常損耗 | 通常の使用により想定される範囲内の損傷 |
| 特別損耗 | 善管注意義務違反などにより通常生じる傷や汚染を超えている損傷 |
ペット可物件であっても、ペットの飼育状況があまりにひどく損傷が激しい場合、管理会社が特別損耗を主張する可能性があります。
特別損耗とみなされた場合、管理や損傷の状況によっては経年劣化が考慮されず、原状回復義務を負わなければなりません。
一方で、裁判所は「ペット可物件である以上、一定の損耗は想定内」と判断する傾向にあり、特別損耗とは認められないケースも多いです。
【注1】原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
ペットを飼っている賃貸住宅の退去費用が高くなる理由は、次の通りです。
ここからは、それぞれの理由について見ていきましょう。
ペットがドアや壁で爪とぎをしてしまうと、傷をつけた場所や範囲の広さで退去費用が変わってきます。
重度の爪とぎでドアの交換や壁紙の下にあるボードの交換も必要になると、10万円以上の費用がかかるケースも珍しくありません。
ドアの交換になると、1枚につき5万円前後かかります。
ペットが壁に穴を空けてしまった場合、壁クロス交換+下地取り換えをしなければいけません。
補修費用は穴の大きさにもよりますが、2~4万円程度かかります。
直径15㎝を超えるような穴の補修だと、10万円程度かかってしまうケースもあります。
ペットのニオイが染み込んでしまった場合、ペット臭専門のハウスクリーニングをしなければいけません。
約60㎡の室内をペット臭専門のハウスクリーニングをすると、通常の2倍程度のおおよそ15万円弱かかります。
高くなりがちな退去費用を少しでも抑えたいなら、以下のような退去費用を抑える方法を確認しておきましょう。
ここからは、費用を抑える方法について詳しく解説します。
爪とぎボールやハウスなどを設置して、ペットが心地よくできる場所を与えましょう。
場所が決まれば、他の場所での爪とぎ回数が減るケースもあります。
床に専用のマットを敷くと、爪による傷防止だけでなく、足音の抑制にもつながります。
ペットは定期的に体を洗ってあげるとニオイが弱くなるため、対策になります。
ペットの種類によって対策が変わるため、自分の飼育しているペットに合わせたニオイ対策をしましょう。
ケージ自体にニオイがついてしまうと、周辺の壁紙や絨毯、畳などにもニオイが移ります。
ケージの中をこまめに清掃し、天日干しをするとよいでしょう。
ペットを飼育している場所に空気清浄機を置く、消臭剤を使うなど常にニオイ対策をしましょう。
消臭剤には消臭効果が高い商品や、ペットの排泄物のニオイに特化した商品などがおすすめです。
ペットを飼っていても、退去費用100万円の請求をそのまま支払う必要はありません。
特に以下の場合は、退去費用が減額できる可能性があります。
退去費用減額チェックリスト
経年劣化による減価償却対象が含まれている
ハウスクリーニング代が二重で請求されている
入居前からあった損傷の修復が求められている
また、ペット可物件の賃貸住宅の退去費用が相場より高い場合、以下のような対処が有効です。
ここからは、詳しい対処法について見ていきましょう。
家主へ退去費用の内訳を書類で提出してもらいましょう。
不当に高い清掃費用や不必要な修繕などがあった場合、家主に確認してください。
退去費用の内訳におかしな項目があるにもかかわらず、家主が耳をかさないときには、賃貸物件退去の専門家に相談しましょう。
退去費用の相談に乗ってくれる代表的な機関は、次のとおりです。
| 代表的な機関 | 電話番号 |
|---|---|
| 消費者ホットライン | 188 |
| 国民生活センター | 03-3446-1623 |
| 日本消費者協会 | 03-5282-5319 |
| 不動産適正取引推進機構 | 0570-021-030 |
| 法テラス | 0570-078-374 |
「ペット飼育可賃貸住宅から退去するときに高額な退去費用を請求されている」と伝えれば、状況を理解した上でアドバイスをもらえるでしょう。
消費者ホットラインなどと連携して家主と交渉しても話がまとまらない場合は、民事調停を起こして解決に導く方法があります。
民事調停は、裁判所で調停委員2名と裁判官が当事者の間に入った上で、当事者の話し合いにより、紛争解決を図る手続きです。
簡易裁判所で手数料1,000円を払えば、民事調停を行えます。
民事調停は訴訟よりも簡単な手続きで済み、解決までの時間も短いケースが多いです。
個人で貸主や管理会社と交渉する場合、双方が感情的になりやすく、相手が交渉に慣れているときは不利な合意をさせられるリスクもあります。
退去費用の交渉には専門的な知見が必要になるため、立ち退き問題に精通した弁護士に依頼しましょう。
退去費用の算定方法は、国土交通省の原状回復ガイドラインに基準が記載されています。
弁護士に依頼すると、過去の判例や原状回復ガイドラインなどの根拠に基づいて不当な請求に再査定を要求できます。
100万円を超える退去費用を30万円以下に減額した事例など、大幅な減額に成功するケースも珍しくありません。
貸主や管理会社とは弁護士が直接交渉するため、交渉にかかる労力や精神的負担から解放されるのも大きなメリットでしょう。
ペットの飼育と退去費用に関するよくある質問は、以下の通りです。
それぞれの質問に回答します。
猫を飼っていたときの退去費用の相場は、家賃3~5カ月分程度です。
退去費用として請求される項目は、ハウスクリーニング代、損傷部分の補修費用、違約金などです。
無断で飼育していた場合、貸主の心情から高額な請求を求めるケースもあります。
退去費用でお互いに納得ができなければ、最終的には裁判で判断を求めます。
ペット不可物件にも関わらず飼育していた場合、契約違反による解除や違約金が発生する可能性が高いでしょう。
賃貸契約は借主と貸主の信頼関係に基づくとされていますが、ペットの飼育は重大な契約違反であり、信頼関係が破壊されたと認められます。
信頼関係の破壊によって契約解除された後も物件に居座り続けると、最終的には訴訟を提起されて強制的に退去させられるでしょう。
動物の臭いやひっかき傷の損傷は、相場を大きく超える違約金として請求されます。
損傷の範囲にもよりますが、家賃の1カ月~3カ月ほどになるのが一般的です。
貸主との信頼関係が破壊されているときは減額交渉に応じてもらえない場合も多く、ペット飼育の隠蔽は結果として将来的なコストを増大させる可能性があります。
ペットの飼育が原因で100万円を超える退去費用を請求された場合でも、内訳を精査すれば減額できる可能性があります。
特に経年劣化による価値の減少を考慮せず、例えば中古車の修理で最新型の新品パーツの交換代を全額請求しているようなケースが多いです。
法的なルールでは、価値の減少に応じた借主の負担する割合も少なくなるため、借主が新品の交換代全額を負担するケースは稀でしょう。
高額な退去費用について減額を求めるときは、弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士に依頼すると、過去の判例など法的な根拠をもって不当な請求に反論でき、減額交渉を有利に進められます。
高額な退去費用の請求が届いてお困りの方は、経験豊富な弁護士が多数在籍するVSG弁護士法人にご相談下さい。