立ち退きは、賃貸人と賃借人でトラブルになることが多いため、立ち退きに合意をした場合には合意書を取り交わさなければなりません。
しかし、立ち退き合意書をどのように作成したらよいのかを知っている人は少ないでしょう。
立ち退き合意書を作成するには多くの記載事項があり、必要な項目や内容を理解した上で、合意書を作成する必要があります。
本記事では、立ち退き合意書を作成する際の必要事項を解説するとともに、立ち退き合意書とはそもそも何か、作成するときの注意点も紹介します。
目次
立ち退き合意書とは、賃貸人と賃借人で締結する立ち退きについて、条件合意をしたことをお互いに証明する書面のことです。
立ち退き合意書を取得することで、賃貸人と賃借人のトラブルを防止でき、当初合意した条件を勝手に変更されないというメリットがあります。
もちろん、この書類には法的な効力があるため、たとえ立ち退きでトラブルに発展したとしても、裁判を進めるにあたって重要な合意の証拠となります。
立ち退き合意書は立ち退きに合意したことを証明する書類なので、内容に不備があると合意書を作成した意味がありません。
そのため、立ち退き合意書には何を記載しなければならないのか、それはなぜなのかを正確に把握しておく必要があります。
ここからは、立ち退き合意書に記載しなければならない項目を解説していきます。
立ち退きをする前提として、賃貸借契約が解除されていなければなりません。
そのため、立ち退き合意書には賃貸人と賃借人が合意し、賃貸借契約の解除を確認したことを記載する必要があります。
賃貸借契約解除に合意したとしても、即退去を迫るのは賃借人にとって大きな負担であるため、退去に必要な時間を猶予するように合意します。
しかし、無期限で猶予してもらうことはできないため、立ち退き合意書に猶予期間を明記します。
賃借人が合意できそうな場合は原状回復について、また猶予期間が過ぎても退去しない場合、期間を超えた部分については金銭が発生する旨も記載しておきましょう。
合意書を取り交わしても賃借人に圧力がかけられるような項目を入れておくことにより、賃借人の権利を守る効果があります。
立ち退きで退去する場合、通常の退去に比べて、賃借人が室内に残存物を残す可能性が高くなります。
残存物は賃借人の物のため、賃貸人が勝手に処分をすることができません。
そこで賃貸人が勝手に賃借人の残存物を処分できるように、立ち退き合意書に賃借人が残していった物は賃貸人が勝手に処分できるという内容を盛り込みます。
賃借人の最大の目的は立ち退き料を受け取ることであり、立ち退き料の金額と支払い期日を明記します。
立ち退き料は立ち退きが完了したときに支払うのが原則のため、立ち退き合意書には建物明け渡しと同時に支払うということを記載します。
賃貸借契約を解除したのにも関わらず、部屋に住み続ける賃借人が一定数います。
賃借人が予定通り退去をしない場合には、使用損害金を請求するということを立ち退き合意書に記載します。
賃借人が使用損害金を支払わないことを見越して、使用損害金は立ち退き料から差し引く旨を明記しておくとよいでしょう。
通常の賃貸借契約解除であれば、敷金は建物補修金額などを差し引いて賃借人へ返還します。
しかし、立ち退きでの敷金返還は、全額敷金を賃借人へ返還するのが一般的です。
そのため、特段の決め事がない場合、敷金は全額返還する旨を合意書に記載した方が、スムーズに進む可能性が高くなります。
「立ち退き合意書の例文やテンプレートが知りたい」という方に向けて、ここでは立ち退き合意書のひな形を掲載します。
ただし、立ち退きの内容により合意書の内容も大きく変わるため、あくまでも基本的な書式として参考にしてください。
実際に立ち退きの合意書を作成する場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。
立ち退き合意書を作成する場合には、作成する内容によって印紙税が課税される場合があることと、立ち退きには前金は必須ではないことを理解しておく必要があります。
この注意点について解説していきます。
立ち退きの合意書は印紙税法上の課税書類にあたらないため、原則、収入印紙を貼付する必要はありません。
しかし、立ち退き合意書の内容に損害金や保証金などの金額を記載しなければならない場合、5万円以上の金額を記載すると200円の印紙税がかかります。
賃借人が立ち退きさせられる場合に前金を支払うケースが多く、立ち退き料には前金が必須と思われている方がいるかもしれません。
しかし、立ち退きをさせるにあたって前金は必須ではありません。
そのため、立ち退き合意書に前金の項目を必ず入れなければならない、ということではないのです。
立ち退きは賃貸人と賃借人との間でトラブルが起きやすく、合意した内容を書面で残しておくことが大切です。
立ち退きの合意に関する合意書には、記載しておくべき内容が多くあり、漏れがないようにしておかなければなりません。
漏れがあることにより、新たな火種となってしまうことがあります。
立ち退き合意書を作成するときには、弁護士などの専門家に相談し、許可をもらった書面を交付するようにしてください。
立ち退きは専門的な知識が必要で、当事者により合意書の内容も変わります。
適切な内容を記載した上で合意書を作成するのが、トラブルなく立ち退きを進めるコツです。