テナントのオーナーから急遽立ち退きを要求された場合には、立ち退き料に営業補償を含めることができます。
営業補償とは、店舗の移転により売り上げが減少したときなどに対する補償です。
立ち退きで移転となれば、移転期間は休業しなければなりません。
また、新たな機器や設備の設置で莫大な費用がかかります。
では、店舗経営している人がテナント側から立ち退き要求された場合、営業補償には相場はあるのでしょうか?
この記事では、店舗が立ち退きするときの営業補償の算出方法や内訳、相場について解説します。
目次
営業補償とは、移転により生じるであろう営業上の利益に対する補償金です。
店舗の立ち退きの場合、営業補償は一般的に立ち退き料に含まれています。
また、営業補償は「営業休止補償」と「営業廃止補償」に分けられます。
営業休止補償とは、新たな店舗を別のテナントで営む場合の補償です。
また、「営業廃止補償」とは、立ち退きをきっかけに店舗の廃業等に伴う補償となります。
以下は、一般的に多い営業休止補償に関して考慮されるべきポイントです。
営業補償として考慮されるべきポイントは、以下に挙げたとおりとなります。
まず補償されるのは、休業期間の利益です。
移転期間は、店舗を休業して設備機器や物品の搬出を行います。
新たな移転先がすぐに見つかったとしても、移転には内装や外装の工事などで一定の期間が必要です。
このため、その間に得られる予定であった利益については営業補償の範囲となります。
次に、休業期間にかかる固定費などです。
雇用している従業員は、解雇せずに新たな店舗でも働いてもらいたいと大半の店舗経営者は考えるでしょう。
このため、その間の給料は休業補償として従業員に支払います。
また、新たなテナントを借りれば敷金礼金や仲介手数料、毎月の賃料の負担があります。
このように、立ち退きがなければ本来かからない金銭についても、営業補償として考慮されます。
最後は、店舗の移転により常連顧客を失う可能性があると想定できる場合です。
たとえば、新たな店舗が同じ町内であるなど、比較的近隣への移転であれば常連顧客を失うことはないでしょう。
一方で、移転先が隣町や数キロ離れたところであれば、近隣の常連顧客は足が遠のく可能性があります。
長年通う常連顧客であれば、生活の一部として店舗を利用するケースがあるでしょう。
新たな店舗が日常の生活圏外であれば、来店する回数は減少する可能性が高くなります。
このように、常連顧客の足が遠のくような立地への移転が余儀なくされれば、営業補償で考慮すべきポイントとなります。
立ち退きによる営業補償は、以下の項目の合計額を算出するとよいでしょう。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
利益減少分を補う営業補償には、以下のような事項が該当します。
本来立ち退きさえなければ、引っ越しや新たな移転先探しなどは必要ありません。
これらの手続きは、日常的な仕事以外に行う必要があり、プライベートの時間を割くことや余計な心労がかかるケースもあるでしょう。
このため、立ち退きによる迷惑料も営業補償に含まれます。
借家権価格とは、賃借人としての社会的地位自体が認められる財産的価値のことを言います。
賃借人が立ち退きさせられることは、賃借人の財産が失われたことに等しいという考え方です。
これは、賃借人の地位が借地借家法で保護されていることに起因します。
このため、これらに対する補償が借家権価格の補償となります。
なお、借家権価格は過去の判例を見ると、立ち退き料の計算に組み込まれないケースが多くあります。
借家権価格は必ず立ち退き料の計算に含まれるものではないため、内訳からは一旦除外しています。
営業補償の内訳や算出方法については先述しましたが、原則立ち退きによる営業補償に相場はありません。
もっと言えば、店舗は業種や営業形態、規模感や常連顧客の数など、様々な条件で収益や固定費などが異なるからです。
たとえば、同じ立地や広さの店舗でも、営業形態がパン屋と宝石店であるケースでは、毎月の収益は全く違います。
なお、最近は営業補償に関する判例では一定の傾向が出てきています。
たとえば、店舗(小売り店や小規模な飲食店など)の場合、営業補償は賃料の2~3年分(賃料10万円のテナントの場合、240万円~360万円)です。
また、裁判になると立ち退き料は一気に跳ね上がります。
賃料10万円の店舗の立ち退き料は、1,000~1,500万円程度となる判例が多くあります。
営業休止補償の支払いを決める基準は、以下に挙げた3つを全て満たしたときです。
店舗の立ち退きによって明らかに不利益を被るケースでは、立ち退き料に営業補償を組み込むことができます。
営業補償は、休業期間中に失われた利益や休業補償などの費用を算出して決められるものです。
なお営業補償に相場はありませんが、過去の判例で営業補償が含まれる立ち退き料は、賃料の2~3年分程度となっています。
営業補償を受けられるかどうか、また金額について不安がある場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。