賃貸人から立ち退き要求をされたとしても、管理会社に立ち退き交渉を代行させることはできません。
管理会社が立ち退き交渉をすると、弁護士法違反になる可能性が高いからです。
そのため、立ち退き交渉をする場合には、自ら行うか、弁護士に依頼をすることが必要です。
本記事では、自ら立ち退き交渉をする方や、弁護士に代行を依頼するつもりでいるものの、立ち退き交渉をするときの流れを知りたい方へ向けて解説します。
最後まで読み進めて頂ければ、管理会社が立ち退き交渉できない理由や立ち退きの流れ、立ち退き交渉のコツを理解することができます。
目次
管理会社は、賃貸人から報酬を受け取って賃借人との立ち退き交渉を行うことはできません。
なぜなら、この行為は弁護士法違反となる可能性が高いためです。
この行為は弁護士法第72条に規定されている「弁護士資格を所持していない人が報酬を得る目的で、訴訟事件やその他一般の法律事件に関して、代理や和解などの法律事務を業として取り扱ってはいけない」という条文に違反すると考えられます。
まず、立ち退き交渉は法律事件にあたるかどうかが問題となります。
この点については、広島高判平成4年3月6日において、弁護士が賃貸人の代理人として賃借人との間で建物の賃貸借契約を合意解除して、賃借人に建物から立ち退きしてもらうという事務をすることは法律事件に該当するとしています。
そして、報酬を実際に得ているかどうかではなく、東京高判昭和50年8月5日において、報酬を得ようとする主観的な目的があれば足りるとされています。
このことから、立ち退き交渉を管理会社が代行し報酬を得たときは弁護士法違反となり、報酬を受け取る目的で管理会社が立ち退き交渉をしても、弁護士法違反になる可能性があります。
このような理由から、管理会社が立ち退き交渉するのは犯罪になる可能性が高く、交渉すべきではないと考えられます。
賃貸人から立ち退き要求が来たときには、立ち退き交渉するのが一般的です。
そして立ち退き交渉は1回で終わるものでもなく、数回に分けて行われます。
ここからは、立ち退き交渉の流れを紹介していきます。
賃貸人が賃借人に対して立ち退きを求める場合、まず立ち退きに関する説明会が開催されます。
立ち退き説明会では、賃借人に立ち退きを求める理由や立ち退きの期限などを通知されます。
立ち退き料については交渉後に提示してくるケースがあるため、説明会で提示されるかはわかりません。
なお、立ち退きを要求するには、立ち退きをさせるための正当事由が必要になります。
賃貸人が賃借人を立ち退きさせる理由が正当事由なのかどうかは、立ち退きにおいて非常に重要なことのため、立ち退きさせる理由は必ず確認しておきましょう。
この理由によっては立ち退き料が多くなるか、少なくなるのかが決まります。
賃貸人からの説明を聞いた後は、賃貸人と任意交渉を始めます。
任意交渉では、賃貸人と話し合い、立ち退き料やその他退去する条件を決めます。
立ち退き料は賃貸人の正当事由により増減しますが、一般市民の個人が正当事由かどうかを判断することは難しく、立ち退き料の算定も困難です。
そのため、個人で立ち退き交渉をする場合、基本的には賃貸人の提示する立ち退き料になってしまうケースが多くなってしまいます。
任意交渉がまとまらなかったときには、賃貸人より明け渡し訴訟や調停を起こされる可能性が高くなります。
明け渡し訴訟や調停を起こされてしまうと、裁判所で厳格な計算により立ち退き料の金額を決められてしまいます。
そのため、立ち退き料を多くもらうことが難しくなるといえるでしょう。
また、裁判所に出廷する手間もかかるため、できる限り任意交渉で立ち退き交渉を終わらせることをおすすめします。
立ち退き交渉を成功するには、いくつかのコツがあります。
ここからは、立ち退き交渉を成功させるコツを紹介していきます。
賃貸人から立ち退き要求をされると感情的になってしまう方がいますが、感情的になると交渉にならないため、冷静に対応をするようにしましょう。
立ち退き交渉では賃貸人と賃借人との落としどころを探すことになりますが、感情的になっていると折り合えるところが見つけられなくなります。
それどころか、任意交渉がうまくいかず、明け渡し訴訟や調停など裁判になってしまう可能性があります。
そのため、立ち退き要求をされても冷静に対応するようにしたほうがよい結果に繋がります。
立ち退き交渉をするにあたり、賃貸人はなるべく穏便ことを済ますよう考えています。
そのため、立ち退き交渉では、賃借人に有益な譲歩案を検討しておくとよいでしょう。
譲歩の主な案は、次のような案があります。
このような譲歩案を提示しつつ、有益な条件を引き出していきます。
立ち退き交渉が始まる前に、弁護士に交渉の代行を依頼するのが最もよい選択だといえます。
弁護士は立ち退きのプロであり、交渉をスムーズに進めてくれます。
また、相手も弁護士相手に無駄な駆け引きはしなくなるため、早期に立ち退き交渉が完了することも多くあります。
賃貸人から立ち退き要求が来たときには、誰もが焦ってしまうものです。
そして、身近な管理会社に立ち退き交渉を依頼したくなることもあるでしょう。
しかし、依頼相手が賃貸人であっても賃借人であっても、管理会社は立ち退き交渉をすることができません。
そのため、立ち退き交渉をするには、自身が行うか、弁護士に交渉の代行を依頼するしかありません。
自身で立ち退き交渉をする場合、立ち退き交渉の流れや交渉を成功させるコツを知っておく必要があります。
ただし、流れや成功のコツを知っていても、立ち退き交渉は難しいため、できる限り弁護士に代行を依頼しましょう。
弁護士に立ち退き交渉の代行を依頼することにより、スムーズに立ち退き交渉をすることができます。