立ち退きが発生するのは賃貸住宅だけではなく、所有している一戸建てや土地でも立ち退きを要求されることがあります。
一戸建てや土地に立ち退き要求が来る理由のひとつは、都市計画道路建設による立ち退きです。
都市計画道路の建設を理由に立ち退きを要求された場合、「一般的な立ち退きと比べて立ち退き料の相場に違いがあるのか」「立ち退き料はいくらもらえるのか」疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、都市計画道路とは何か、都市計画道路による立ち退き料の相場や費用の内訳・計算方法・増額交渉を行う方法について解説します。
目次
都市計画道路とは、各自治体の都市計画に沿って敷設される道路です。
都市計画道路の目的には交通渋滞の緩和や景観の改善、火災時の延焼防止などがあるため、片側2車線や3車線などの大規模工事になるケースが一般的です。
ただし、地域住民の立ち退きが前提になるため、計画どおりに完成した事例はそれほど多くありません。
市街地でありながら道路沿いに更地が点在している場合、都市計画道路予定地のまま、工事が停滞している可能性があるでしょう。
都市計画道路予定地を購入する場合、建築できる建物が以下のように制限されてしまうため、一般的な相場よりも1~2割程度安くなるメリットがあります。
土地の相続税評価額も低くなるため、都市計画道路予定地の購入が相続税対策になるケースもあるでしょう。
立ち退きの場合は住み慣れた生活拠点を失い、転居によって住環境も変わることから、手厚い立ち退き料と補償金が受け取れます。
都市計画道路内から立ち退きする場合、一般的な不動産価格よりも高額な立ち退き料が支払われます。
通常の不動産売却や買取りであれば、土地は公示地価や実勢価格が基準値になり、建物は経過年数を考慮して価格を決定しますが、都市計画道路内からの立ち退きは迷惑料が加算されるため、無価値に近い建物でも購入価格とほぼ同等、または購入価格を上回る可能性があります。
たとえば、立ち退きに伴って仏壇を処分しなければならなくなったり、大事なシンボルツリーを切ることになった場合、住人は多大な迷惑を被るでしょう。
土地や家屋への思い入れが第三者にも伝わりやすい状況の場合、迷惑料も手厚くなる傾向にあるようです。
都市計画道路内から立ち退きを要請された場合、立ち退き料は国が定める公示地価、または都道府県ごとに定められた基準地価をベースに計算されます。
たとえば、都市計画道路の工事によって100㎡の土地を失う場合、近隣の公示地価が1㎡あたり40万円だったときは、以下のような立ち退き料になります。
また、門扉やフェンスなどの工作物があるときは、撤去費用の請求も認められます。
建物は現在の機能や価値が損なわれないよう、転居先は再築工法や改造工法、除却工法などの工法が用いられることになり、以下の要素も考慮されます。
基本的には同等の建物の再建築費用となり、妥当性のある工法を決定して移転費用が補償されます。
区画整理事業では、立ち退き料が実費となるため増額させることは難しいですが、道路拡幅や再開発での立ち退き料の増額交渉は可能です。
この増額交渉をどのように行えばよいのかを説明します。
立ち退き料を増額する場合には、大前提として弁護士への相談が必要です。
増額交渉をする場合には、その内容を弁護士に確認してもらいながら交渉しなければなりません。
なぜなら増額交渉を行うには根拠を相手に示す必要があり、専門知識のない個人で対応するのは難しいためです。
そもそも立ち退く意思がある人には、立ち退き料を多く支払う理由がありません。
そのため、立ち退き意思がないことを明確に示す必要があります。
しかし、立ち退き意思がないことを強く出し過ぎると、相手側も考えが硬化するため、弁護士と相談しながら妥協点を探しつつ、こちらの意思を伝えていきましょう。
立ち退く前の建物を使用することの重要性を主張します。
たとえば、店舗や事務所の場合は、「移転することにより顧客が離れてしまい、新たな場所で営業開始をしてもすぐに顧客の数が戻らない」と主張するのです。
立ち退き料を増額させる根拠をこちらから示します。
立ち退きをすることにより、移転する費用がどのくらいかかるのか、新しい建物を建築あるいは借りるときに、どの程度の費用がかかるのかなどを計算します。
店舗や事務所などの場合は、移転により売り上げが減少するなどの営業補償も、詳細に計算して提示するとよいでしょう。
道路拡張に伴う立ち退き料はいくらもらえるのか解説しました。
道路拡幅や区画整理事業、市街地再開発事業の場合は、立ち退きを請求するのは個人ではなく、公的な団体になります。
相手が個人ではなくても、立ち退き料の提示額がどう考えても低い額の場合は、立ち退き料の増額交渉をしましょう。
交渉には、交渉する理由を裏付ける根拠が必要となります。
強気に交渉をし続け長期化すると、立ち退き理由によっては強制収用をされてしまうことがあります。
強制収用は立ち退き料の増額どころか、受け取れる金額が大幅に下がってしまう可能性もあるため、立ち退き料の増額交渉をする前には、必ず弁護士に相談をしてから増額交渉を開始しましょう。