住居やオフィスが賃貸物件の場合、貸主から立ち退きを求められるケースがあります。
主な立ち退き理由は建物の解体や建替えですが、借主は生活や事業の拠点を失い、引っ越し先も探さなければなりません。
貸主にやむを得ない事情があるとはいえ、急な立ち退き要請には応じられないため、困ったときの相談窓口を知っておくと良いでしょう。
本記事では、立ち退きを求められたときの無料相談窓口や、弁護士に立ち退き交渉を依頼するメリットなどをわかりやすく解説します。
目次
賃貸住宅において貸主から立ち退き請求された場合の主な相談窓口は、以下の4つです。
ここからは、4つの相談窓口のそれぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
立ち退きに関する代表的な相談窓口とは、弁護士のいる法律事務所です。
弁護士は、賃貸における立ち退き請求についてどのような対応をすると良いか教えてくれます。
相談者である借主に代わって貸主との交渉も行ってくれます。
貸主からの立ち退き請求で対応に困ったときは、まず法律事務所へ問い合わせをして、弁護士に相談してみましょう。
弁護士に対して、敷居が高いイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし、初回に限り無料で相談に応じてくれる事務所もあり、気軽に相談できる体制が整ってきています。
法テラス(日本司法支援センター)は、法律の総合案内所として法務省が所管している機関です。
法テラスは、金銭的な余裕がない人でも気軽に法律の相談ができる場づくりを目的として、日本全国に設けられています。
法テラスは無料の法律相談に対応していますが、、利用するには以下のような条件を満たす必要があります。
専門的な知識を持った担当者が相談に乗ってくれる相談窓口として、公益社団法人もあります。
たとえば、公益社団法人東京共同住宅協会や、公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会などです。
上記のような公益社団法人では、それぞれの視点で立ち退きに関するアドバイスをしてくれます。
ただし、公益社団法人は、貸主との交渉を代行してくれません。
公益社団法人は、まずは一般論を助言としてもらいたい人に適している相談窓口といえるでしょう。
全国の都道府県や市区町村の中には、弁護士の無料相談会を実施している役所が多くあります。
無料相談会の詳細は自治体によって異なりますが、ほとんどのケースは平日のみ予約制で実施されています。
なお、専門家への無料相談の窓口を用意しているだけであり、役所が立ち退き交渉などに関与してくれるわけではありません。
立ち退き料が必要なケースは以下の通りです。
貸主本人やその他の人が賃貸物件を利用する必要があり、借主が退去しなければならないケースであれば、立ち退き料の請求が認められます。
建物の老朽化が著しく、耐震補強または建替え工事が必要な場合や、再開発によって撤去するときも立ち退き料を支払わなければなりません。
借主側に家賃滞納などの落ち度がなければ、基本的には立ち退き料を請求できます。
以下のようなケースは立ち退き料の支払いが不要です。
賃貸物件が定期建物賃貸借契約だったときや、期間限定で一時的に借りている場合、貸主は立ち退き料を支払う必要がありません。
ペット飼育や転貸しが禁止されているにも関わらず、無断で犬や猫などを飼ったときや他人に貸した場合など、借主の契約違反も立ち退き料は不要です。
なお、借主の契約違反があった場合でも、立ち退き要請は6カ月前に通知しなければなりません。
立ち退き料に決まった相場はありませんが、物件の利用状況などにより、以下の支払額になるケースが一般的です。
居住用物件の場合、立ち退き料に引っ越し代や慰謝料(迷惑料)などを含められますが、転居先の家賃が高くなるときは、1~3年分の差額も請求可能です。
店舗や事務所の物件は立ち退きに伴う損失が大きいため、家賃の差額1~3年分や転居先の改装工事費、従業員に支払う休業補償の請求も認められます。
立ち退き料は貸主と借主の交渉によって決まるため、引っ越しに必要な費用をすべて洗い出し、漏れなく請求しましょう。
立ち退き交渉を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
弁護士に立ち退き交渉を依頼すると、冷静かつスムーズに立ち退きに関する問題を解決へと導いてくれます。
弁護士は当事者とは異なる第三者としての視点から、専門知識や経験を活かして交渉を進める事態に慣れているためです。
実際、弁護士に交渉を依頼せずに貸主と借主とが直接交渉を進めると、お互いの主張がぶつかり合い感情的になる可能性があります。
冷静に交渉を進められなくなってしまうと、問題が深刻化するでしょう。
事態をスムーズに解決させたい場合は、早い段階で弁護士に相談しましょう。
弁護士に立ち退き交渉を依頼すると、借主の主張を貸主に伝える際の説得力が増します。
たとえば、貸主に立ち退き料の支払いを求めるとき、弁護士を通さずに自ら直接金額を提示しても、根拠を明確に示せないケースがあります。
根拠なしでは、相手方が支払いに応じてくれないでしょう。
しかし、専門的な知識を持った弁護士が代わりに交渉すれば、これまでの判例を踏まえた上で、正しい相場を捉えた金額を提示して支払いを求めます。
相手方への説得力が増し、交渉も成立しやすくなります。
立ち退き交渉を相談・依頼する弁護士の選び方は、以下の通りです。
それぞれのポイントを詳しく解説します。
立ち退き交渉をスムーズに進めてもらうには、担当する弁護士の知識や実績が豊富かどうかを確認しましょう。
弁護士と言っても、実際にはそれぞれ得意とする分野や培ってきた実績は大きく異なります。
弁護士の持っている知識や実績を、問い合わせ前に法律事務所のホームページで確認しましょう。
弁護士選びにおいて、相談したときに親身になって話を聞いてくれるかは重要なポイントです。
賃貸で貸主から立ち退きを請求され、初めて弁護士へ相談する場合、不安な気持ちを強く抱いている人は多いといえます。
不安な気持ちに寄り添い、立ち退き交渉に関して丁寧に説明をしてくれる弁護士のほうが、安心して依頼できるでしょう。
立ち退き交渉を弁護士に依頼する相場は、40~50万円程度と言われています。
弁護士に依頼する費用の内訳は、以下の通りです。
費用の内訳 | 概要 |
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相談料 | 30分につき5,000~1万円程度。初回相談を無料に設定している事務所もある。 |
着手金 | 一般的には30〜40万円程度。法律事務所によっては無料に設定されている。 |
報酬金 | 弁護士の交渉によって相談者が得た利益の金額に応じて決まる。発生した利益の10~20%程度。 |
実費 | 交通費、切手代などの実際にかかった費用。状況によって異なる。 |
実費の目安が知りたい場合は、あらかじめ弁護士に初回相談時に質問してみましょう。
立ち退きを要請される事情はさまざまですが、必ずしも正当事由があるとは限りません。
立ち退き料の相場も明確になっていないため、貸主との交渉がまとまらないときは、弁護士や法テラスなどに相談してみましょう。
貸主側の主張を鵜呑みにすると、相場よりも低い立ち退き料に納得させられる可能性もあります。
引っ越し先の家賃や改装費用、設備などの移転費用はすべて見積りを取り、必ず立ち退き料の請求額に含めておきましょう。
貸主との交渉がストレスになる場合や、立ち退き料の提示額に納得できないときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談をご活用ください。