賃貸物件に住んでいると、知らないうちに窓ガラスが割れてしまうケースがあります。
何かぶつけたわけでもないのに窓ガラスが割れた場合、「熱割れ」の可能性が考えられるでしょう。
熱割れの原因は室内・室外の温度差などですが、放置はできないため、専門業者に修理を依頼しなければなりません。
修理費の負担は貸主と借主がもめやすいため、窓ガラスの熱割れがどのような扱いになっているか、契約内容の確認も必要でしょう。
本記事では、賃貸物件の窓ガラスが熱割れしたケースについて、修理費の負担や熱割れの見分け方、借主側の対処法などをわかりやすく解説します。
目次
賃貸物件の窓ガラスが熱割れした場合、修理費用は原則として貸主(オーナー)の負担です。
室内と室外の気温差が大きくなると、熱い方のガラスは膨張しますが、冷たい方は変化がないため、負荷に耐えられなくなったガラスが熱割れします。
ペアガラスは室内外の温度差が大きくなり、ワイヤーが入った網入りガラスも急激な温度変化に弱いため、熱割れするケースがあるでしょう。
経年劣化した窓ガラスは熱割れしやすく、借主(入居者)の過失ではないため、修理費用は貸主が負担しなければなりません。
国土交通省が公表する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」においても、ガラスの破損が自然に発生した場合、借主には責任がないものとしています。
賃貸物件の窓が網入りガラスだった場合、錆(さび)割れするケースもあります。
錆割れとは、ガラス内部のワイヤー(鉄線)が経年劣化したときや、雨水の侵入により、錆の膨張で内部からガラスが割れてしまう現象です。
窓ガラスの錆割れも借主の過失ではないため、貸主から修理費用を請求されても支払う必要はありません。
知らない間に網入りガラスが割れていたときは、ワイヤーに錆が発生しているかどうかを確認してみましょう。
賃貸物件の窓ガラスだけに限らず、床や壁などの経年劣化も貸主が修理費用を負担します。
経年劣化した部分の修理費は家賃に含まれているため、退去時に以下のような修理費用を請求されても、借主が支払う必要はありません。
通常使用で生じた汚損や損耗は貸主の責任ではないため、貸主側の負担で修理します。
賃貸借契約書によっては退去時の原状回復が明記されておらず、経年劣化部分の修理費を請求される場合があるため要注意です。
家具をぶつけて窓ガラスを割った場合など、自分に過失があるときの修理費は借主負担です。
借主に悪意がなくても、以下のような状況で窓ガラスが割れた場合は、修理費の請求を拒否できません。
【窓ガラスが割れる状況】
窓ガラスは簡単に割れてしまうケースもあるため、部屋の模様替えや掃除の際には細心の注意を払ってください。
窓の近くには物を置かず、カーテンの閉め切りも避けた方がよいでしょう。
賃貸物件の窓ガラスが割れると、熱割れかどうかが争点になる場合があります。
原状回復の費用は裁判で争うケースもあるため、熱割れによる破損を確実に証明しなければなりません。
貸主によっては「借主の過失」を主張し、修理費を請求するケースがあるため、熱割れの見分け方を理解しておくとよいでしょう。
熱割れの見分け方は以下のようになっており、窓ガラスに入ったヒビで判断できます。
家具などをぶつけて窓ガラスが割れた場合、衝撃が加わった部分から放射状にヒビが入ります。
キャッチボールの受けそこないであれば、ボールが当たった部分からヒビが入っており、室内にボールが残っているケースもあります。
鍵の部分を中心に窓ガラスが割れている場合は、空き巣に侵入された可能性もあるため、盗まれたものがないかどうか確認してください。
何かをぶつけた形跡がまったくなければ、窓ガラスが熱割れした確率が高いでしょう。
窓ガラスの破損原因が熱割れであれば、窓枠の部分から曲がりくねった長いヒビが入ります。
ヒビの本数は複数になる場合もありますが、何かをぶつけた形跡がなく、放射状のヒビでもないため、熱割れかどうかを目視で確認できます。
暖房を使う冬は室内外の気温差が大きくなり、「朝起きたら窓ガラスにヒビが入っていた」というケースも少なくありません。
網入りガラスやペアガラスに保護フィルムを貼っている場合や、暖房の熱が窓ガラスに直接当たっていると、熱割れしやすいため注意が必要です。
カーテンを閉め切っている部屋は熱割れに気付きにくいため、定期的に窓ガラスをチェックしてみましょう。
網入りガラスが錆割れした場合は、内部のワイヤーに沿ってヒビが入ります。
衝撃が加わって割れたときや、熱割れした場合とヒビの状態が異なるため、目視で確認できるでしょう。
雨水の侵入で内部のワイヤーが錆びた場合は、窓枠の部分から錆が発生しているため、ワイヤーの色や膨張で錆割れを判定できます。
錆割れは結露が原因になっているケースも多く、部屋の換気によって防止できるケースもあります。
賃貸物件の窓ガラスが熱割れしたときは、以下のように対処してください。
熱割れの証拠がなかった場合、借主の過失を疑われる可能性があるため注意が必要です。
窓ガラスの熱割れを放置すると空き巣の被害にも遭いやすいため、早めに修理業者も手配しておきましょう。
賃貸物件の窓ガラスが熱割れした場合、まず証拠を残す必要があります。
飛び散ったガラスの破片も含め、スマートフォンやデジタルカメラで破損状況がわかる写真を撮影しましょう。
熱割れの写真は火災保険の申請時に提出するため、ガラスの破片を掃除する前に撮影した方がよいでしょう。
窓ガラスの修理を依頼する際も、写真があるとガラスの大きさや種類がわかりやすく、修理業者も正確な見積りを出せます。
家具や植木鉢などの配置がわかるように全体写真を撮影すると、借主の無過失も証明可能です。
窓ガラスの熱割れを撮影したら、できるだけ早めにガラスの破片を回収してください。
掃き掃除だけでは細かな破片を回収できないため、床に飛び散ったガラスはガムテープの粘着部分に貼り付けましょう。
ガラスの破片を回収するときは軍手などを着用し、ケガを防止する必要もあります。
ヒビ割れだけの場合はガムテープを貼って応急処置するケースもありますが、大きな衝撃には耐えられません。
地震が頻発している場合や、台風が近づいているときは避難を最優先してください。
窓ガラスの熱割れを発見したときは、賃貸物件の貸主や管理会社に連絡しましょう。
築年数の古いアパートは貸主に連絡する場合もありますが、戸数の多いマンションなどは、管理会社や不動産会社が連絡先になっています。
連絡先がわからないときは、賃貸借契約書を確認してください。
「ケガをするから早く修理したい」といった状況でも、自分で修理業者に依頼すると、トラブルになる可能性があるため要注意です。
賃貸物件の修理・修繕は貸主が業者を指定しているケースが多く、指定外の業者を手配した場合、修理費用を自己負担しなければならない恐れがあります。
窓ガラスなどの設備は借主の所有物ではないため、修理や交換には貸主の許可が必要です。
借主の過失で窓ガラスを割った場合でも、必ず貸主や管理会社などに連絡しておきましょう。
賃貸物件の貸主によっては、窓ガラスなどの修理業者を指定しておらず、自分で業者に依頼しなければならないケースがあります。
管理会社や不動産会社が修理業者を教えてくれる場合もあるため、どの業者を選んでよいかわからないときは連絡してみましょう。
自分で修理業者を探す場合は「ガラス修理+地域名」などでネット検索し、複数の業者から相見積もりを取ってください。
修理の際にはガラスの種類を確認する必要もあるため、業者が決まったら、貸主や管理業者にも連絡しておきましょう。
なお、窓ガラスなどの修理は借主の立会を求められるケースが多く、有給休暇を取得しなければならないケースもあります。
有給休暇の取得が難しいときは、平日の帰宅後や休日に修理を依頼できるかどうか、業者と相談するとよいでしょう。
借主が火災保険へ加入している場合は、保険会社にも窓ガラスの熱割れを連絡してください。
保険契約の内容にもよりますが、窓ガラスの熱割れは火災保険で補償されるケースが一般的です。
賃貸物件の窓ガラスは貸主側の保険でも修理できますが、火災保険への加入が入居時の条件であれば、自分で保険会社に連絡するように指示されるでしょう。
保険金の請求時には以下の書類が必要になるため、あらかじめ保険会社に確認してください。
窓ガラスが熱割れした場合、鑑定人が現地調査を行わないケースが多いため、審査には写真が重要な証拠となるでしょう。
窓ガラスの熱割れは借主の過失ではないため、貸主から修理費を請求されても支払う必要はありません。
しかし、貸主が責任の所在を理解しておらず、賃貸借契約書の内容も曖昧になっている場合は、借主の責任を追及してくるケースもあるでしょう。
熱割れが発生したときは窓ガラスの写真を撮影し、必ず証拠を残すようにしましょう。
賃貸物件の修理費用は裁判で争う場合もありますが、熱割れを立証できれば、訴訟を起こされても十分に対抗できます。
窓ガラスの修理や立ち退き料の請求など、賃貸物件のトラブルに困ったときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談もご活用ください。