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最終更新日:2024/5/17

生前贈与加算とは?対象者・財産や対象外のケースをわかりやすく解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

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生前贈与加算とは?対象者・財産や対象外のケースをわかりやすく解説

この記事でわかること

  • 生前贈与加算とはどのような制度か
  • 生前贈与加算の対象になる人や財産
  • 生前贈与を行う際にどのような点に注意すべきか
  • 生前贈与の加算期間延長後の対策方法

財産を多く所有している人は、相続税の額が大きくなるため、相続税対策を行う場合があります。

生前贈与を行って相続財産を減らすのも、広く行われている相続税対策の1つの方法です。

しかし、生前贈与を行っても相続税の額が減らない「生前贈与加算」に該当するケースがあります。

生前贈与加算とはどのようなものか、そして生前贈与加算にならないようにする方法があるのか、令和5年税制改正の内容も踏まえて解説していきます。

生前贈与加算とは

生前贈与加算とは、贈与者の死亡前3年以内に財産を贈与された相続人がいる場合、贈与された財産を相続財産に含めるルールです。

令和5年税制改正では、加算される生前贈与の期間が変更されました。

生前贈与の期間

  • 改正前:相続発生3年以内に受けた贈与が相続財産に加算
  • 改正後:相続発生7年以内に受けた贈与が相続財産に加算 (令和6年1月1日以降の贈与が対象)

贈与された財産は、本来であれば、贈与された時点で受贈者(贈与を受けた人)のものとなっています。

相続が発生しても相続財産には含まれず、相続税の額を減らすことができます。

しかし、生前贈与した場合でも、一定の条件下では、贈与された財産を相続財産に含めなければなりません。

そのような財産があると、生前贈与しても相続税の額を減らせなくなります。

生前贈与加算の対象者・財産

贈与者が亡くなる前3年以内に生前贈与された財産がある場合でも、すべてが生前贈与加算の対象となるわけではありません

そこで、どのような人が対象になるのか、あるいはどのような財産が対象になるのか、確認しておきましょう。

対象となる人

生前贈与加算の対象となるのは、以下の条件を満たす人です。

  • 相続や遺贈により被相続人の財産を実際に取得した
  • 被相続人の死亡前7年以内に贈与を受けた

ここでポイントとなるのは、「相続が発生した時」に被相続人の財産を実際に取得したかどうかです。

たとえ法定相続人が生前贈与された場合でも、相続や遺贈により他に財産を取得していなければ、生前贈与加算の対象にはなりません。

生命保険は場合によっては相続税の対象となるため、その受取人は生前贈与加算の対象になることにも注意が必要です。

生命保険金の受取人を、孫など法定相続人以外の人としている場合があります。

生命保険金を受け取れば、法定相続人でない孫に対して行った生前贈与も、生前贈与加算の対象となることに注意しましょう。

対象となる財産

生前贈与加算の対象となる財産は、被相続人が亡くなる前7年以内に贈与した財産のすべてです。

贈与したかどうかは、贈与税の申告をしたかどうかで判断するわけではありません。

贈与したという事実があれば、贈与税の申告をしたかどうかに関わらず、生前贈与加算の対象となります。

特に注意しなければならないのは、年間110万円の基礎控除内で贈与され、贈与税が課されていない場合です。

この場合、贈与税は発生しませんが、生前贈与加算の計算には含めなければなりません

たとえ贈与税の申告をしていない場合でも、預貯金の動きなどから相続税の申告漏れを指摘されるケースがあります。

指摘されないよう、実際の財産の動きから贈与の事実を判断しましょう。

生前贈与加算の対象外の贈与

生前贈与加算の対象にならない贈与があります。

特例が適用された場合の贈与については、その内容を確認しておく必要があります。

配偶者控除が適用された場合

結婚して20年以上経過した夫婦について、居住用財産やその取得資金を贈与した場合、2,000万円まで非課税となります。

配偶者控除が適用された財産については、生前贈与加算の適用は受けず、相続財産に含める必要はありません。

住宅取得等資金の特例が適用された場合

マイホームを購入・建築する時の資金を贈与された場合、非課税となる特例があります。

年度や住宅の種類により非課税となる金額は異なりますが、1,000万円を超える金額が非課税となる場合もあります。

この特例の適用を受けた財産については、生前贈与加算の適用を受けないとされます。

教育資金の一括贈与の特例が適用された場合

教育資金の一括贈与の特例の適用を受けると、最大で1,500万円の現金の贈与が非課税となります。

この特例の適用を受けて贈与された財産については、生前贈与加算の適用は受けません。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例が適用された場合

結婚・子育て資金の一括贈与の適用を受けると、最大で1,000万円の現金の贈与が非課税となります。

この特例の適用を受けて贈与された財産については、生前贈与加算の適用は受けません。

生前贈与の注意点

生前贈与を行っても、いつ相続が発生するかわからないため、生前贈与加算の対象となる可能性は誰にでもあります。

そこで、生前贈与を行う際には、どのような点に注意すべきなのか、確認して実行しましょう。

生前贈与を行うのは早いほどよい

生前贈与により贈与された財産は、基本的に相続税の計算には影響しないはずです。

しかし、贈与者が亡くなる前3年以内に贈与された財産については、相続財産に含めなければなりません。

ここで問題となるのは、いつまでの贈与であれば相続財産に含めなくてもいいのか、相続が発生して初めて確定する点です。

相続が発生する、つまり贈与者が亡くなるのがいつになるかは、前もってわかりません。

そのため、ある日突然相続が発生し、生前贈与した財産が生前贈与加算の対象となる場合も考えられます。

生前贈与をいつまでに行えば生前贈与加算の対象にならないか、生前贈与した時にはわかりません。

いつ生前贈与を行っても、生前贈与加算の対象になる可能性はあるといえます。

ただ、亡くなる時期がわからない以上、少しでも早く贈与を行う方が、生前贈与加算の対象になる可能性は下がります。

結果的に、生前贈与を行うのは早いほどよいと言えるでしょう。

法定相続人以外への生前贈与も注意する

相続が発生した時に、被相続人の財産を相続・遺贈により取得した人が、生前贈与加算の対象となります。

そのため、たとえば孫など通常相続人にならない人への贈与は、生前贈与加算とは無関係と考える方が多いのではないでしょうか。

しかし、法定相続人ではなくても生命保険金の受取人となっている場合、生前贈与加算の対象となります。

また、遺言により法定相続人ではない人が財産を取得するケースも考えられます。

よくある事例として、孫などに世代を飛ばして贈与する方が相続に関する負担が少なくなるためです。

しかし、法定相続人ではなくても遺言によって財産を取得すれば、生前贈与された財産も生前贈与加算の対象となります。

遺言を作成する際には、法定相続人以外への生前贈与も注意して、より効果的な節税方法を選択しましょう。

必ずしも生前贈与が効果的とは限らない

ここまで、生前贈与により贈与された財産が、相続税の対象となるケースがあると説明してきました。

相続税の負担が少なくなるからという理由で、生前贈与を利用する方が多いでしょう。

しかし、生前贈与すると絶対に効果的に節税できるとは限りません

相続税は、相続財産から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除を差し引いた残額に課税されます。

そのため、法定相続人の数や相続財産の金額によっては、そもそも相続税がかかりません。

また、相続税の計算に用いられる税率は、贈与税の税率より低めに設定されています。

仮に同額の財産で比較した場合、相続する方が税負担は少なくなります。

結果として、何もしない方がトータルの税負担が少なくなるケースもあるでしょう。

ただ、生前贈与には税負担の軽減以外にも、遺産分割での争いを防ぐ役割もあります。

何のために生前贈与するのか、その目的も整理して考えましょう。

生前贈与加算を上手に使うには?

生前贈与加算を上手に使うには、贈与をするタイミングや相手との続柄などを考慮する必要があります。

ここからは、生前贈与加算を上手に使うための具体的な方法について解説します。

できるだけ早く暦年贈与を利用する

暦年贈与とは、暦歴内(1月1日~12月31日までの1年間)で贈与額が基礎控除の110万円以下のときに贈与税がかからないことを利用した贈与方法です。

たとえば毎年の暦歴内で110万円以下の贈与を行うと、その分は贈与税を支払う必要がありません。

相続財産への加算を抑えたい場合、贈与者の年齢が少しでも若い時期に贈与を行うとよいでしょう。

孫など法定相続人以外の人に贈与する

生前贈与は、法定相続人以外の人にも可能です。 典型例が、生前贈与で孫へ財産を渡すケースです。

ただし、孫への生前贈与は注意点があります。

生前贈与加算の対象は「相続や遺贈で財産を取得した人」です。
通常、孫は法定相続人でないため対象となりません

ただし、次のケースは例外となります。

代襲相続により相続人となった場合

本来相続人になるはずの子が孫よりも先に死亡している場合、孫が子の立場を承継します。

これを代襲相続といい、孫が相続人となるため、生前贈与加算の対象になります。

遺言書により相続人となった場合

たとえば「財産は孫が相続する」といった遺言書がある場合、孫が相続人となり、生前贈与加算の対象になります。

死亡保険金の受取人が孫になっている場合

前述の通り、生命保険が相続税の対象となる場合、受取人は生前贈与加算の対象になります。

生前贈与の加算期間延長後の対策は?

生前贈与の加算期間が延長された後、どのように制度を使用すればよいのでしょうか。

対策としては、相続時精算課税制度を適用させる方法があります。

詳細を確認していきましょう。

相続時精算課税制度を適用させる

相続時精算課税制度とは、原則60歳以上の父母や祖父母などから、18歳以上の子や孫へ生前贈与をしたときに選択できる制度です。

(贈与が令和4年3月31日以前の場合、要件は「20歳以上」)

相続時精算課税制度は「贈与者と受贈者が直系血族であること」が条件です。

養子縁組をした子である場合、養子縁組後の贈与のみ相続時精算課税制度を適用できます。

相続時精算課税制度を選択すれば、累計2,500万円の特別控除を適用でき、2,500万円を超える分は税率が一律20%になります。

また、令和5年度税制改正では相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が設けられました(令和6年1月1日以降に贈与した場合)。

そのため、年110万円までの贈与であれば届出書を提出するだけで制度を利用できます。

まとめ

生前贈与を行う場合、相続税の負担を軽減することを目的としていることがあります。

しかし、生前贈与を行えば、必ず相続税が軽減されるわけではありません。

生前贈与加算が適用される場合の他、そもそも贈与税の負担が相続税より大きいため、メリットがないこともあるためです。

生前贈与を行う場合は計画的に実行し、できるだけ想定外の相続税が発生することのないようにしましょう

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