この記事でわかること
- 相続人の一人が全ての遺産を相続するケースがあることがわかる
- 一人で全ての遺産を相続する場合の遺産分割協議書の書式がわかる
- 一人で全ての遺産を相続する時の注意点を知ることができる
相続が発生すると、被相続人が保有していた財産は、全て相続人の誰かが相続しなければなりません。
「相続=争族」と言われることもあるように、骨肉の争いとなることが当たり前と思っている方もいるでしょう。
しかし、実際には相続人の一人が全ての遺産を相続することもあります。
相続人の一人が全ての遺産を相続する場合、どのように遺産分割協議書を作成するといいのでしょうか。
目次
相続人の一人が単独で全ての遺産を相続するケース
遺産を相続する場合、相続人全員による話し合いを行い、誰がその遺産を相続するかを決めなければなりません。
この話し合いのことを、遺産分割協議といいます。
遺産分割協議を行うと、それぞれの相続人が自分の利益になるように主張し、なかなか話し合いが成立しないことがあります。
その一方で、相続人の一人が全ての遺産を相続することとし、他の相続人が何も相続しないというケースもあり得ます。
実際に一人の相続人が全ての遺産を相続する場合には、以下のようなケースが考えられます。
- 法定相続人が一人しかいない
- 遺産分割協議の結果、他の相続人が何も相続しないことに同意した
- 他の相続人が全員相続放棄した
法定相続人が一人だけの場合や他の相続人が全員相続放棄した場合、遺産分割協議書は不要です。
しかし、遺産分割協議の結果、一人だけが相続することとなった場合には、遺産分割協議書を作成しなければなりません。
一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書式と書き方
それでは、一人の相続人が全ての遺産を相続する場合に作成する遺産分割協議書の作成方法を解説します。
ポイントとなる箇所がいくつかあるので、実際の記載例なども取り入れて紹介します。
表題、被相続人の情報
遺産分割協議書を作成したら、この書面が遺産分割協議書であることがわかるよう、表題をつけます。
また、誰の遺産について記載しているのかがわかるように、まずは被相続人の情報を記載します。
これは、実際に遺産を相続する人が一人の場合でも、複数の場合でも共通するポイントです。
相続人の情報
遺産分割協議の結果、実際に遺産を相続する人は一人になることがあります。
ただし、冒頭には全ての相続人の情報を記載します。
この記載によって、全ての法定相続人の所在を確認し、遺産分割協議に参加したことがわかります。
実際に相続した人と遺産の内容
どの相続人がどの遺産を相続したのか、相続した人と遺産の内容を誰が見てもわかるように記載します。
すべての遺産が登記事項証明書や通帳に記載されている内容と相違ないことを確認しながら記載しましょう。
全ての遺産について記載しなければならないため、記載漏れがないことも確認してください。
あとから遺産が見つかった場合の対処法
遺産分割協議を行った時点で、全ての遺産を相続人が把握しているとは限りません。
あとから遺産が見つかって、誰が相続するのかを決めなければならない場合があります。
このような場合に、もう一度相続人が集まって話し合いをするのは大変な労力と時間がかかってしまいます。
そこで、改めて遺産分割をするのではなく、あらかじめ誰が相続するのかを決めておくことができます。
一人ですべての遺産を相続するのであれば、その人が相続できるように記載しておく必要があります。
債務の負担
被相続人の相続財産に債務がある場合、原則として法定相続分に応じて相続人全員に分割して承継されます。
相続人間の内部的負担割合として決議することで、相続人全員で遺産分割協議をして相続人のうちの一人に債務を相続させることは可能です。
その際、債務を相続した相続人が他の相続人に法定相続分に従った負担分を求償するかどうか記載しておいた方がよいでしょう。
遺産分割協議で債務を相続する人を決定しても債権者が承諾しない限り対抗できず、各相続人が法定相続分に従って負担しなければならない点には注意が必要です。
締めの言葉と署名、押印
遺産を一人で相続することについて、全ての相続人が納得して遺産分割協議が成立したことを記載します。
また、そのことを明らかにするため、相続人全員が署名し、実印を押印します。
一人が全ての遺産を相続するときの注意点
一人の相続人が全ての遺産を相続する場合、遺産分割協議書の作成だけではなく、遺産分割の際に注意すべきことがあります。
複数人で相続する場合とは違い、一人で相続する場合だからこそ注意しなければならないことがあるので気をつけましょう。
相続人や遺産の調査は慎重に行う
被相続人の配偶者や子どもが一人で相続する場合は、はじめからその人が全て相続することとして、相続人や遺産の内容について、詳しく調べないまま遺産分割を行っていることがあります。
前述したように、あとから新たな遺産が発覚した場合にどうするのかを決めておきましょう。
また、隠し子や前妻との子など、想定していなかった法定相続人がいる場合もあります。
法定相続人が見つかった場合は、遺産分割協議をやり直さなければなりません。
また、相続人の誰もが知らなかった債務が、あとから発覚する場合もあります。
この場合、再度遺産分割協議を行う、あるいは思わぬ負担が発生する可能性があります。
相続人全員が合意する必要がある
一人の相続人が全ての遺産を相続する場合、他の相続人は遺産分割の内容に誰も反対していないことが多いでしょう。
しかし中には、相続人の中に一人だけ反対する人がいるような場合もあります。
このような場合、一人でも反対する人がいると、遺産分割協議は成立しません。
遺産分割協議書を作成する
全ての遺産を一人で相続するのであれば、相続人間での争いもなく、遺産分割協議書の必要性を感じないかもしれません。
しかし、実際には遺産分割協議書を作成しなければ、遺産の名義変更などの手続きができません。
また、あとから他の相続人が、遺産分割の内容に対して反対する可能性もあります。
そのため、遺産分割協議書は必ず作成しなければなりません。
一人が全ての遺産を相続するときによくある質問
遺産分割協議が無事に終わり、遺産分割協議書を作成する段階になって不明点が出てくることもあるかもしれません。
ここからは、一人で全ての遺産を相続する場合の遺産分割協議書について、よくある質問とその回答を紹介します。
他の相続人全員が相続放棄した場合、遺産分割協議書に記載する?
相続放棄をした相続人はもともと相続人ではなかったものとみなされるので、そもそも遺産分割協議書を作成する必要がありません。
遺産分割協議書は何枚必要?
遺産分割協議書の枚数に決まりはなく、1枚に全員で署名して作成することも、1枚に1人ずつ署名したものを全員分集めて作成することも可能です。
まとめ
遺産分割を行う際には、複数の相続人で分けることもありますが、一人が全てを相続することもあります。
一人で相続する場合、遺産分割協議は円満に終了することが多いのですが、あとからトラブルになる可能性もあります。
トラブルになる可能性を防ぎ、相続手続きをスムーズに進めるために、遺産分割協議書は必ず作成しなければなりません。
遺産分割協議書の作成時に注意しなければならないポイントもいくつかあるため、忘れないようにしましょう。