この記事でわかること
- 相続放棄が生前にできない理由がわかる
- 相続放棄のかわりの代替案を知ることができる
目次
相続放棄が生前にできない理由
相続放棄は、被相続人が残した遺産をまったく引き継がないものとする手続きのことです。
その名のとおり、相続が発生してはじめて相続しないための手続きが行えます。
一方で、多額の債務を保有している人の相続人となることがわかっていても、生前に相続放棄を行うことはできません。
生前に相続放棄できないのは、民法などの法律にそのような制度が設けられていないためです。
生前に相続放棄することができるようにすると、相続放棄したかどうか、あるいは過去に行った相続放棄を撤回したかどうかが問題となる可能性があります。
そのため、かえってトラブルとなるケースが増えると考えられるのです。
相続放棄の代わりに生前に準備できる5つの代替案
相続放棄の代わりに生前にできる5つの代替案
- 生命保険に加入する
- 債務を整理する
- 遺言書を作成する
- 生前贈与を行う
- 遺留分の放棄をする
相続放棄を行う際は、本当に相続放棄の手続きを進めてよいのか、しなくてもいいのか判断に迷うことも少なくありません。
特に、被相続人が住んでいた自宅を相続したいのであれば、借金を払ってでも相続しようと考えることもあります。
亡くなる前であれば、多額の借金があっても、相続放棄以外の方法で借金を相続人に引き継がないようにしたり、相続放棄しても別の形で財産を残したりすることができます。
生命保険に加入する
死亡した時に支払われる死亡保険金は、亡くなった人が生前に契約していた保険契約にもとづいて支払われる受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。
そのため、相続放棄をしても死亡保険金は受け取ることができます。
相続放棄することを念頭に入れているのであれば、死亡保険金に契約しておいて、相続財産とならない財産を相続人に残すことを考えてみましょう。
債務を整理する
借金を相続人に残したくない、あるいは生きている間に借金を完済できないのであれば、自己破産など法的な債務整理を行うことも選択肢に入れておきましょう。
自己破産を行うと、その時点での債務はゼロとなります。
ただし、同時にその時保有している財産もゼロとなるため、どうしても自宅を残したいと考えている場合には別の方法を考えなければなりません。
しかし、借金の額が大きいと、自己破産か亡くなってからの相続放棄以外に選択肢がないことも考えられます。
自己破産を行った場合は、自己破産後に形成された財産は相続できますが、相続放棄の場合は、相続人はわずかな財産でも相続できません。
そのため、早めに債務整理を行ってゼロからスタートした方が、大きなメリットがあります。
遺言書を作成する
遺言書を作成しておくと、遺産分割の方法を遺言書を作成した人が指定することができます。
特定の財産について相続する人を決めておきたい場合や、相続人の中でどうしても相続させたくない人がいる場合などには、遺言書によって遺産分割を効果的に進めることができます。
遺言書を作成するといいのは、財産がある場合だけではありません。
例えば、自宅などの財産と借金の両方がある場合に、長男が自宅を相続する代わりに借金も引き継ぐこととする遺言書を作成し、その遺言書のとおりに執行されると、無用な争いを避けて自宅と借金を相続することができます。
ただし、債務を特定の相続人が引き継いだとしても、その相続人がきちんと返済をしていかないと、他の相続人に請求が来る可能性があります。
他の相続人は、債務を引き継がなかったからといって安心できるわけではありません。
生前贈与を行う
生前贈与が効果的と考えられるのは、財産の額が非常に多く相続税の税率が高くなりそうな場合に、その税率より低い税率の範囲内で贈与を行うようなケースです。
また、多額の財産がある場合だけでなく、財産の額が少ない場合にも生前贈与を行うことがあります。
相続放棄をすると、相続人はすべての財産を引き継ぐことができなくなるため、相続放棄の前に財産を他の人に贈与しておくのです。
こうすれば、亡くなった際に相続放棄をする財産を最小限に抑えることができます。
ただし、生前贈与を行った結果、債務の額が財産の額を上回ってしまうと、銀行などの債権者から取り消されるなど別の争いが生じる可能性があります。
財産の額が債務の額を下回らない範囲内で、財産の贈与を行うことが重要です。
遺留分の放棄をする
遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる相続財産の割合です。
財産を相続する相続人の中には、他の相続人と仲が悪い場合もあります。
相続財産を受け取りたくないし今後一切の関わりを持ちたくないと考える場合には、この遺留分をあらかじめ放棄して、相続に関わらないと意思表示することができます。
ただし、遺留分を放棄すれば債務も引き継がないわけではないため、勘違いしないように気を付けておきましょう。
相続放棄するときの注意点
相続放棄をすると、すべての財産を引き継ぐことができなくなります。
自宅を相続したいと考えている場合でも、自宅を手放さないといけなくなるため、相続放棄をする際には大きな決断を迫られることとなります。
被相続人が亡くなる前に、相続放棄をすることを記載した念書を作成している場合もありますが、正式な方法ではないため他の相続人や債権者とトラブルになる可能性があります。
そのため、相続放棄する際は、必ず家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
相続放棄申述書のほか、被相続人との関係を明らかにする戸籍謄本などの書類が必要です。
家庭裁判所に相続放棄を申し立てることができるのは、相続が発生してから3か月以内です。
相続放棄を考えている場合は、早めに行動しましょう。
まとめ
相続放棄をすると、借金を相続しない代わりに財産もすべて放棄することになるため、相続人に何も残すことができなくなります。
しかし、亡くなる前であれば、死亡保険金の加入や生前贈与などを活用することで、相続人に対して財産を残すことが可能です。
借金を配偶者や子供に相続させたくないと考えるのであれば、これらの方法を生前に実行しておくことが重要です。