この記事でわかること
- 遺産分割協議書のひな形がわかる
- 遺産分割協議書の各項目の記載方法がわかる
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、被相続人の遺産を相続人がどのように引き継いだのかを明らかにするための書類です。
遺産分割協議書にはすべての法定相続人が署名押印し、書かれた内容に同意していることを明らかにする必要があります。
遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書を使って金融機関からの払い出しを行ったり、相続登記を行うこととなります。
また、相続税の申告書に添付することとされており、遺産分割協議を行った場合は必ず作成します。
遺産分割協議書のひな形・テンプレート
遺産分割協議書とは、どのような形式の書類で何を記載する必要があるのでしょうか。
その作成方法と遺産分割協議書の記載例を見ながら確認していきましょう。
【ダウンロード可能】遺産分割協議書のひな形・テンプレート
遺産分割協議書は、相続が発生し遺産分割協議を行った場合には、必ず作成しなければなりません。
ただし、遺産分割協議書には決まった書式があるわけではありません。
作成する人が自由に、遺産分割協議書を作成することができます。
なお、国税庁や法務局では、遺産分割協議書のひな形が定められています。
また、掲載先サイトでもダウンロードできるひな形を準備しております。
国税庁が発表している遺産分割協議書のひな形
相続が発生した際に、相続税の計算を行い相続税の申告を行う場合があります。
相続税の申告を行う際には、遺産分割の内容を確認するため、遺産分割協議書を提出しなければなりません。
そこで、国税庁では遺産分割協議書のひな形を定めています。
ただし、国税庁のひな形は縦書きであり、加工の難しいPDFデータしかないため、使いやすいものとはいえません。
法務局が発表している遺産分割協議書のひな形
相続が発生した場合、被相続人の保有していた不動産を相続人の名義に変更する相続登記を行わなければなりません。
相続登記を行う際には、どの財産を誰が引き継いだのか、遺産分割協議書で確認する必要があります。
そこで、相続登記の手続きを行う法務局に、遺産分割協議書を提出することとなります。
法務局では、相続登記に必要な遺産分割協議書のひな形を明らかにしています。
ただ、子のひな形では土地や建物を相続した場合の記載しかないため、遺産分割協議書全般の記載方法を知ることはできません。
【財産種別】遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書は、遺産を特定し誰が相続するのかを明らかにするために、遺産の種類ごとに注意すべき点があります。
ここでは、それらの注意点について確認していきましょう。
預貯金の遺産分割を行う場合の書式
預貯金の内容を特定するためには、「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号1234567」というように、金融機関名・支店名・種別(普通預金、定期預金、定期積金ほか)・口座番号を記載しましょう。
口座番号や種別を間違えてしまうと、解約や名義変更の手続きが思いどおりに進まなくなります。
また、口座ごとに相続する人を決めない場合や、遺産分割協議書に記載されていない預貯金があっても対応できるようにしておきたい場合には、あえて口座番号などを記載しないこともできます。
ただし、口座ごとに相続する人を決めているのであれば、あとから揉めることがないように、口座番号まで記載しましょう。
不動産の遺産分割を行う場合の書式
土地を特定するための記載方法は次のようになります。
建物の記載方法は次のようになります。
被相続人の名義となっていた不動産を特定する際に基礎とするのは、土地や建物の登記簿(登記事項証明書)です。
遺産分割協議書には、登記簿のとおりに記載する必要があります。
土地の場合、登記簿の甲欄にある所在・地番・地目・地積を記載します。
建物の場合は、登記簿の甲欄にある所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記載します。
自宅の住所は「○○市○○町1-3-2」ではなく「○○市○○町一丁目3番地2」など、登記簿に記載されている正式な住所を表記しましょう。
自動車の遺産分割を行う場合の書式
自動車の遺産分割を行う場合は、どの自動車を遺産分割するのかを特定できるような記載をしなければなりません。
車種とナンバープレートの番号を記載するだけでは不十分です。
車検証を見ながら、自動車登録番号と車台番号を記載します。
有価証券の遺産分割を行う場合の書式
有価証券について記載する時の記載方法は次のようになります。
証券会社を通して上場株式や投資信託を購入している場合、その上場株式や投資信託の銘柄・数量を記載するだけでなく、証券会社や支店名・顧客番号まで記載してその内容を特定する必要があります。
一方、証券会社を通して購入しておらず、現在も証券会社に預託していない株式や非上場株式を保有する場合には、その銘柄や数量を正しく記載する必要があります。
借入金の遺産分割を行う場合の書式
金融機関に対して借入金を有する場合の記載方法は、以下のようになります。
遺産分割を行う際、借入金を誰が相続するかで大きく揉める可能性があります。
遺産分割協議書の記載があいまいになっていると、あとからトラブルになる可能性があるため、必ずその内容を特定できるような記載をしましょう。
とくに被相続人が複数の借入金を有していた場合は、その内容を区別できるような記載にしておく必要があります。
葬儀費用の記載方法の書式
遺産分割協議書には、誰が葬儀の費用を負担するかを記載します。
葬儀費用を負担した人は、相続税の申告をする際に相続財産の額から葬儀費用の額を控除できるため、誰が葬儀費用を負担したかを明確にしておく必要があります。
遺産分割協議書を作成する時点では、すでに葬儀費用の支払を終えているため、「葬儀費用一式は、相続人△△△△が負担する」といったように、実際に支払った人が分かるように記載しておきましょう。
【特殊なケース】遺産分割協議書の書き方
遺産分割が成立した時に、単に遺産を誰が引き継ぐのかを決めるだけではない、特殊なケースがあります。
このような場合は、どのような形で遺産分割協議が成立したのか、特殊な事情も含めて遺産分割協議書に記載しなければなりません。
中には、遺産分割協議書に記載しにくい場合もあるため、記載例を確認しておきましょう。
代償分割を行う場合
代償分割とは、相続人が遺産分割を行う際に、相続人のうち1人あるいは数人が遺産を現物として相続する一方で、現物を相続しなかった他の相続人に対して、金銭により代償金を支払う遺産分割の方法です。
遺産が不動産だけである場合など、分割して相続することが困難な場合に用いられることがあります。
代償分割により遺産分割をする場合、現物を相続した人は相続と同時に他の相続人に対する債務も発生することとなります。
そのため、遺産分割協議書にもその内容を明確に記載しておく必要があります。
代償分割を行った場合の記載方法は次の通りです。
代償金の金額がいくらか、そしてその支払い期限を明確にしておかないと、トラブルの原因となります。
また、現物を相続した人が代償金を支払う際に現金が足りないため、代償金の支払を分割払いにしたり、特定の財産が売却できてからにしたりすることもあるでしょう。
その場合にも、遺産分割協議書に支払の条件を明記しておく必要があります。
換価分割を行う場合
換価分割とは、遺産分割を行う際に不動産などを現物のまま相続するのではなく、売却して現金に換えた後、その現金を相続人どうしで決めた割合に分割して相続する方法です。
代償分割と同じく、相続人の間で分割しにくい遺産がある場合に用いられます。
換価分割を行う際は、特定の相続人が売却後、他の相続人にお金を支払うこととなります。
そのお金の支払いをめぐってトラブルとならないよう、遺産分割協議書に記載しておく必要があります。
換価分割を行った場合の遺産分割協議書への記載方法は次の通りです。
いったん1人の相続人が相続したあと、その人が売却したお金を他の相続人と分けることとなるため、その流れを遺産分割協議書に記載します。
預金を現金化して分割する場合
1つの預金口座をそのまま特定の相続人が相続するのであれば、誰がどの預金口座を相続するのか記載すればよいのですが、1つの預金口座の残高を複数の相続人で分割する場合は、記載の仕方が異なるため注意が必要です。
換価分割を行う場合と同じように、まず特定の相続人が相続し、その相続人が現金化するという流れを、そのまま遺産分割協議書に記載します。
遺産分割協議書を作成するときの注意点
遺産分割協議書を作成する際には、単にどの財産を誰が相続するかを記載すればよいというわけではありません。
また、遺産分割協議書への記載以外にも注意するポイントがあるため、あわせて解説していきます。
遺産分割協議書は相続人の人数分を作成し、全員の署名押印が必要
遺産分割協議書には、遺産分割協議が成立したことについてすべての相続人が同意していることを証明するため、印鑑を押す必要があります。
遺産分割協議書は相続人どうしの契約書のようなものなので、必ず実印を使う必要はありません。
しかし、預金口座の解約・名義変更、相続登記を行う場合は印鑑証明書の提出も必要になるため、実印が押されていないと遺産分割協議書の効力が無効になることがあります。
実印を押していなければ名義変更や相続登記などができなくなってしまうので、相続人全員が実印を押すようにして、その後の手続きをスムーズに進められるようにしましょう。
また、遺産分割協議書が1通しかないとその書類を使ったら次の相続人に渡す必要があるため、非常に不便で手間がかかるうえ、全員がすべての手続きを終えるまでに時間がかかります。
遺産分割協議書を作る際には、各相続人が1通ずつ保管できる部数を作成しましょう。
判明していない財産が発見された場合に備える
遺産分割協議書にまったく記載のない財産が後から発見された場合、もう一度遺産分割協議を行わなければなりません。
そこで、「この遺産分割協議書に記載されていない財産を分割する場合は、相続人全員による協議を別途行うものとする」といった一文を付け加えておくことで、誰かが勝手に相続してしまうことを防ぐことができます。
また、その場合は追加で遺産分割協議書を作成することとなります。
再度協議する手間を省きたいと考えるのであれば、「その他の財産については相続人△△△△が相続するものとする」と記載して、特定の人が相続することを定めておくこともできます。
遺産分割協議書が複数ページになる場合は契印を押す
遺産分割協議書には記載しなければならない事項が多くあるため、1枚の用紙には書ききれず、複数ページにわたるのが一般的です。
遺産分割協議書が複数ページに及ぶ場合は、契印を押さなければならないこととされています。
契印とは、複数ページにわたる文書を作成する時に、そのページとページの間にまたがるように行う押印のことです。
契印を行う目的は、一部のページだけ差し替えるような形で遺産分割協議書を偽造したり、変造したりすることを防ぐことにあります。
契印がないものは、その文書の信ぴょう性に疑問符が付くこととなるため、必ず契印を行うようにしましょう。
なお、ページ数が多くなる場合は、相続人全員が契印を押すのも大変です。
この場合は、製本テープなどを使って、遺産分割協議書を製本しましょう。
すると、契印は製本テープを貼った場所だけで済みます。
まとめ
遺産分割協議書は、相続が発生した際にはほとんどのケースで作成することとなります。
遺産分割を行った結果、相続人同士の取り決めを文書にしただけのものであるため、特別なものという意識はあまりないでしょう。
しかし、遺産分割協議書は法務局や銀行・税務署などに提出する書類なので、形式的に不備のないように作成する必要があります。
遺産分割協議書の作成に不安のある人は、専門家に書類の作成やその他の手続きを依頼して、不安のない状態で確実に相続の手続きを進めることも検討してみるといいでしょう。