

東京弁護士会所属。東京都出身。
労働問題は、ひとたび対応を誤れば、金銭的損失だけでなく企業の社会的評価をも大きく傷つける要因となります。私は弁護士になる前、公務員として自治体業務に従事してきました。そこで培われた「公正な判断力」と「ルールに対する厳格な姿勢」は、現在、使用者側の弁護士として企業のコンプライアンスを守る上での強力な基盤となっています。
私の信念は、常に「申し開きのできる仕事」をすることです。労働紛争においても、単にその場をしのぐ解決ではなく、企業の将来を見据えた透明性の高い解決策を提示いたします。複雑な法律の仕組みも、あたかも「複雑な迷路を解きほぐす地図」のように、経営者様に分かりやすく整理してお伝えします。
弁護士は敷居が高いと思われがちですが、私は常に話しやすいパートナーでありたいと考えています。労働問題という正解のない課題に対し、経営者様と密にコミュニケーションをとり、共に最適な解決策を見出していくことをお約束します。

目次
就業規則変更届とは、就業規則を変更したときに、所轄の労働基準監督署へ提出する届出書です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成・変更した場合に届出が義務付けられています(労働基準法89条)。
常時10人未満の事業場では、就業規則の作成・届出は義務ではありません。ただし、就業規則を作成している場合は、変更内容を明確にしておくためにも変更届を提出しておくことが推奨されます。
ここでいう「労働者」には、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども含まれます。そのため、正社員が10人未満であっても、パートやアルバイトを含めて常時10人以上の労働者を使用している場合は、就業規則の作成・変更届が必要です。
労働基準監督署は、届け出られた就業規則について法令違反の有無を確認し、違反がある場合には変更や是正を求めることがあります。
就業規則変更届は、所定の様式に会社名や事業場の所在地、労働者数、変更内容などを記載して提出します。変更内容が一部の改訂にとどまる場合と、就業規則を全面的に改訂する場合では、記載方法や添付する書類が異なる場合があるため、注意が必要です。
ここでは、実際の記入例を確認しながら、就業規則変更届のフォーマットや記載項目、変更箇所が多く届出書に書ききれない場合の対処法について解説します。
一部の条文を変更する場合は変更箇所が分かるように記載し、全面改訂の場合は「全面改訂」などと記載したうえで、必要に応じて変更内容が分かる資料を添付します。
実際の記入方法をイメージしやすいよう、以下では一部改訂と全面改訂それぞれの記入例を紹介します。
一部改訂の場合は、変更した条文や内容が分かるように記載します。

就業規則を全面改訂した場合は、「主な変更事項」の欄に「全面改訂」と記載し、改訂後の就業規則一式を添付して提出する方法が一般的です。

就業規則変更届について、法律上の全国一律の様式が定められているわけではありません。
もっとも、厚生労働省や各都道府県労働局では、就業規則変更届のひな形を公開しています。たとえば、東京労働局では、変更届や意見書の様式をWord・PDF形式でダウンロードできます。

出典:様式集「就業規則(変更)届」|東京労働局(厚生労働省)
自社で一から作成するよりも、必要な項目を漏れなく記載しやすいため、状況に応じて活用するとよいでしょう。
就業規則変更届には、提出日や変更内容のほか、事業場の名称・所在地、労働者数などを記載します。主な項目は以下のとおりです。
「主な変更事項」の欄に変更内容をすべて記載できない場合は、別紙に変更内容をまとめて添付する方法があります。変更届の欄には、たとえば「別紙のとおり」「別添のとおり」などと記載し、変更した条文や内容を別紙に整理するとよいでしょう。
記入欄を自分で追加することも可能ですが、就業規則を大幅に改訂した場合は、変更箇所を無理に小さな欄へ詰め込む必要はありません。変更した条文や改訂内容を一覧にして添付すれば、労働基準監督署にも変更内容が伝わりやすくなります。
就業規則変更届は、就業規則を変更する事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。会社の本社所在地ではなく、原則として就業規則を適用する各事業場の所在地を基準に提出先を判断します。
就業規則変更届は、各事業場を管轄する労働基準監督署へ、持参・郵送・電子申請のいずれかの方法で提出できます。
本社だけでなく、支店や営業所などで常時10人以上の労働者を使用している場合は、原則として事業場ごとに届出が必要です。
ただし、本社と各事業場の就業規則が同一内容であるなど一定の要件を満たす場合は、本社を管轄する労働基準監督署へまとめて届け出る「本社一括届出」を利用できます。
本社一括届出とは、本社と各事業場の就業規則が同一内容である場合に、本社を管轄する労働基準監督署へまとめて届け出る制度です。事業場ごとの届出を省略できるため、複数の事業場を運営する会社の負担を減らせます。
ただし、意見聴取まで一括できるわけではありません。各事業場で過半数労働組合または過半数代表者から意見を聴き、それぞれの意見書を用意する必要があります。
就業規則変更届は、e-Govを利用した電子申請も行うことができます。窓口へ持参したり郵送したりする方法と比べて、手続きにかかる時間や手間を抑えられます。
電子申請をおすすめする理由の一つは、労働基準監督署の窓口が混雑しやすいことにあります。特に、年度末から年度初めにかけては就業規則を変更する会社が増えるため、窓口が混み合うことがあります。電子申請なら窓口の混雑を気にする必要がなく、時間を有効に使えます。
また、窓口への持参や郵送に比べて、準備の手間を減らせる点もメリットです。紙で提出する場合は、就業規則変更届や労働者代表の意見書などを提出用と自社保管用の2部用意する必要があります。郵送の場合は、さらに返送用の封筒や切手も準備しなければなりません。
電子申請であれば、これらの書類を紙で2部ずつ準備したり、労働基準監督署へ持参したりする手間を省けます。特に複数の事業場で就業規則を変更する場合は、本社一括届出にも対応しているため、電子申請を利用すると手続きを効率化しやすいでしょう。
参照:就業規則(変更)届 (各事業場単位による届出)|e-Gov電子申請、就業規則(変更)届 (本社一括届出)|e-Gov電子申請
就業規則変更届を提出する際は、就業規則変更届と労働者代表の意見書を用意する必要があります。郵送で提出する場合は、会社控えの返送用封筒や送付状も準備しておくとスムーズです。
就業規則変更届は、提出用と自社保管用の2部を用意するのが一般的です。自社保管用には、労働基準監督署の受付印を受けたうえで、届出の控えとして保管しておきましょう。
また、変更内容を「主な変更事項」の欄にすべて記載できる場合は、基本的に変更後の就業規則一式や新旧対照表を別途添付する必要はありません。
一方、変更箇所が多く、欄内に収まらない場合は、変更後の就業規則一式または新旧対照表を添付して提出します。
労働者代表の意見書とは、就業規則の変更について労働者側の意見を記載する書面です。事業場に過半数労働組合がある場合はその労働組合から、ない場合は過半数代表者から意見を聴き、意見書を作成します(労働基準法90条)。
意見書には作成者の氏名などを記載しますが、署名や押印は必須ではありません。また、変更内容に反対する意見が記載されていても、意見書として提出できます。
提出時は、就業規則変更届と同様に、提出用と自社保管用の2部を用意しておくとよいでしょう。
なお、過半数代表者から意見書を提出してもらえない場合でも、意見を聴く手続きを適切に行っていれば、届出は可能です。その場合は、意見を聴いたものの意見書を提出してもらえなかったことを記載した書面を添えて提出します。
本社一括届出を利用する場合は、対象となる各事業場の名称・所在地・所轄の労働基準監督署などを記載した「就業規則本社一括届出対象事業場一覧表」を提出します。各事業場の就業規則が本社と同一内容であることなども確認できるよう、必要事項を記載します。
郵送で提出し、労働基準監督署の受付印が付いた会社控えの返送を希望する場合は、返送用封筒を同封します。あらかじめ宛先を記載し、必要な額の切手を貼っておきましょう。
郵送で提出する場合は、送付状を添付して、同封した書類の種類や部数を記載しておくと、提出書類を確認しやすくなります。
就業規則変更届には「変更後○日以内」という具体的な期限はありませんが、就業規則を変更した場合は、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
変更後も届出をしないまま放置することは避け、できるだけ速やかに手続きを行いましょう。
就業規則の届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法120条1号、89条)。就業規則の作成・変更と届出はいずれも法令上の義務であるため、「忘れていただけ」では済まされません。
また、会社の実際の労働条件が変更されたにもかかわらず、それを就業規則に反映していないケースにも注意が必要です。たとえば、賃金制度や休暇制度を実質的に変更したのであれば、就業規則の内容も見直し、必要な変更手続きまで済ませる必要があります。
特に、就業規則の変更を長期間放置すると、労働条件をめぐって労働者との認識に食い違いが生じ、後の紛争につながるおそれがあります。実際の労働条件と就業規則の内容が一致しているかを確認し、変更が必要な場合は早めに手続きを進めることが重要です。
就業規則を変更するときは、届出の手続きだけでなく、変更内容そのものが法的に問題ないかを確認することが重要です。特に、賃金や手当、休暇などを労働者にとって不利益な内容へ変更する場合は、変更の合理性が問題になりやすいため、慎重な検討が必要です。
また、変更後の就業規則が労働協約に反していないか、各事業場で必要な手続きを行っているかなども確認しましょう。
ここでは、就業規則変更をする際の主な注意点を解説します。
就業規則の変更によって労働者の待遇が悪化する場合は、変更の必要性や合理性を慎重に検討する必要があります。
原則として、労働者との合意なしに就業規則を変更して、労働条件を不利益に変更することはできません。ただし、変更後の就業規則を労働者に周知し、変更の内容が合理的と認められる場合には、合意がなくても変更できることがあります(労働契約法9条・10条)。
変更の合理性は、単に「会社にとって必要な変更だった」という理由だけで判断されるものではありません。実際には、労働者が受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働者との交渉状況などを総合的に考慮して判断されます。
たとえば、賃金や退職金を大幅に減額する一方で、会社側の必要性が乏しく、労働者への十分な配慮もない場合は、変更の合理性が認められにくくなります。反対に、経営上の必要性があり、減額幅を抑えたり、一定期間の経過措置を設けたりするなど、労働者の不利益を軽減する措置を講じている場合は、合理性を基礎づける事情となり得ます。
そのため、就業規則を変更するときは、「どのような不利益が生じるのか」「変更する必要性はあるのか」「不利益を緩和する代替措置や経過措置を設けられないか」まで検討することが重要です。特に賃金や退職金など重要な労働条件を変更する場合は、変更案を作成した段階で弁護士に相談し、法的な有効性を確認することをおすすめします。
就業規則を変更するときは、その事業場に適用される労働協約の内容と矛盾していないかを確認する必要があります。就業規則は、法令だけでなく、労働協約にも反してはならないとされているためです(労働基準法92条)。
たとえば、労働協約で「基本給を月額○万円以上とする」と定めているにもかかわらず、就業規則をそれより低い金額に変更することはできません。
労働協約は、会社と労働組合との合意によって成立するものです。そのため、就業規則を変更しただけでは、労働協約の内容まで変更することはできません。
就業規則を変更する際は、現在有効な労働協約があるかを確認し、変更する賃金・労働時間・休日・休暇などの内容と矛盾していないかをチェックしましょう。特に労働条件を大きく変更する場合は、労働協約への影響も含めて弁護士のチェックを受けるとよいでしょう。
就業規則の変更を自社だけで進めると、変更内容の法的な問題に気づかないまま手続きを進めてしまうおそれがあります。特に、賃金や手当、休暇などを労働者にとって不利益な内容へ変更する場合、届出を適切に行っていても、変更そのものが無効と判断されるケースもあるため、注意が必要です。
また、変更の進め方を誤ると、労働者との間でトラブルが発生し、社内の士気が低下するだけでなく、退職者が相次いだり、会社の対応が社内外で問題視されたりするなど、会社の信用や評判に影響するおそれもあります。
弁護士に相談すれば、変更内容の法的な有効性を確認するだけでなく、労働者への説明や不利益を抑える方法まで含めて、トラブルを防ぎやすい形で就業規則を整備できます。
ここでは、就業規則を変更するときに弁護士へ相談する具体的なメリットについて解説します。
就業規則の変更を弁護士に相談することで、変更案が労働基準法や労働契約法などに照らして問題ないかを事前に確認できます。
特に注意したいのが、賃金・手当・退職金・休日・休暇など、労働者にとって不利益となる変更です。単に就業規則を変更して届出を済ませればよいわけではなく、変更の必要性や労働者が受ける不利益の程度などを踏まえ、変更が合理的といえるかを検討する必要があります(労働契約法9条・10条)。
弁護士であれば、変更内容だけでなく、その変更に至った経緯や会社側の必要性、現在の労働条件、労働者への影響なども確認したうえで、問題となる可能性がある部分を指摘できます。必要に応じて、減額幅を抑える、経過措置を設けるなど、変更を適法かつ現実的に進めるための方法も検討できます。
変更後に労働者から「この変更は無効ではないか」と争われてから対応するより、就業規則の変更案を作成した段階で法的な問題を確認しておくことが、紛争を防ぐうえで有効です。
就業規則の不利益変更では、変更内容そのものだけでなく、労働者への伝え方や手続きの進め方もトラブルを左右します。
たとえば、会社から十分な説明がないまま給与体系や休暇制度を変更すると、労働者が会社の対応に不信感を抱き、変更への反発が強まることがあります。その結果、労働者から異議を申し立てられたり、退職や労使紛争に発展したりするおそれがあります。
弁護士に相談すれば、労働者への説明内容や説明のタイミング、意見聴取の進め方など、実際の導入プロセスについても助言を受けられます。変更の背景や会社としての必要性をどのように説明するか、労働者から質問や反対意見が出た場合にどう対応するかまで事前に整理できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
就業規則の変更をきっかけに労働者が一斉に反発するなど、社内の混乱が生じれば、会社の信用や評判、採用活動にも影響する可能性があります。こうしたリスクを抑えるためにも、変更後に対応するのではなく、就業規則の変更を実施する前から弁護士に相談しておくことが有効です。
就業規則は、法律上必要な事項を盛り込むだけでなく、自社の働き方や事業内容に合った内容に整えることが重要です。
たとえば、テレワークの有無、固定残業代の運用、シフト勤務、休暇制度、副業の取扱いなどは、会社によって実態が異なります。インターネット上のひな形をそのまま使用すると、自社の運用と就業規則の内容が合わず、かえって労働者とのトラブルにつながることがあります。
弁護士に相談すれば、現在の就業規則だけでなく、実際の労働時間や賃金の支払い方、社内の運用なども踏まえて、必要な規定を検討できます。法改正に対応するだけでなく、会社の実情と就業規則との間に生じているズレを見直すことも可能です。
また、将来的に問題になりそうな規定をあらかじめ整理しておくことで、就業規則を単なる形式的な書類ではなく、労務管理の基準として活用しやすくなります。
就業規則変更届を提出していないからといって、変更後の就業規則が直ちに無効になるわけではありません。就業規則の効力は、届出の有無だけでなく、変更内容や労働者への周知なども踏まえて判断されます。
ただし、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更した場合の届出が法律上の義務となっています(労働基準法89条)。そのため、届出をしていない状態を放置すると、労働基準法違反として罰則の対象となるおそれがあります。
また、就業規則を労働者に周知していなければ、変更の効力そのものが問題になる可能性があります。特に、賃金や手当などを不利益に変更している場合は、届出を済ませるだけでは足りず、変更の合理性なども検討する必要があります。
そのため、変更届を出していないことに気付いた場合は、「届出をしていないから変更は無効」と自己判断するのではなく、変更の内容や周知状況を確認したうえで、速やかに専門家へ相談することが重要です。
就業規則変更届は、原則として5年間保管する必要があります。労働基準法109条では、労働関係に関する重要な書類について、5年間の保存義務が定められています。
2026年8月現在、経過措置の適用により当分の間は3年間の保存でも足りますが(労働基準法附則143条1項)、将来的に保存期間が5年間となることを踏まえ、余裕をもって5年間保管しておくと安心です。
なお、変更届だけでなく、変更後の就業規則や労働者代表の意見書など、変更手続きに関する書類もあわせて保管しておきましょう。
会社や労働者代表の押印は原則として必要ありません。2021年4月1日以降、就業規則変更届では使用者の署名・押印が不要となっています。
また、意見書には労働者代表の氏名を記載する必要がありますが、署名や押印までは求められていません。
なお、ここで廃止されたのは、行政への届出に必要だった押印・署名の取扱いです。会社と労働者との間で別途合意書などを作成する場合には、その書面について押印や署名が必要となることがあるため、届出書類と混同しないよう注意しましょう。
就業規則を変更した場合は、必要な手続きを確認したうえで、就業規則変更届と労働者代表の意見書を所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
変更届の記入や提出自体は難しい手続きではありませんが、労働者にとって不利益な変更を行う場合は、変更の合理性などを慎重に検討する必要があります。
就業規則の変更を自社だけで進めると、法的な問題に気づかないまま変更してしまったり、変更後に労働者から異議を申し立てられたりするおそれがあります。場合によっては、労使紛争だけでなく、会社の信用や採用活動に影響する可能性もあります。
そのため、就業規則の変更を検討している場合は、変更案を作成する段階から弁護士に相談しておくのがよいでしょう。弁護士であれば、変更内容の法的な有効性を確認するだけでなく、労働者への説明や不利益を抑える方法、自社の実情に合った規定の整備まで含めてサポートできます。
「VSG弁護士法人」では、企業側の労働問題に関する豊富な実績をもとに、残業代請求への対応から労働審判・訴訟、再発防止のための労務管理まで幅広くサポートしています。就業規則の変更を考えている場合、まずは一度お気軽にご相談ください。