

大阪弁護士会所属。京都市出身。
労働環境が激変する現代において、企業が直面する労務リスクは経営の根幹を揺るがしかねない重要課題です。私は、大学卒業後のIT企業勤務、経営コンサルタント、企業役員といった10数年のビジネス現場での経験を経て弁護士となりました。
法律はあくまで手段であり、目的は「企業の持続的な成長と安定」であるべきだと考えています。そのため、単に「法的に可能か不可能か」を答えるだけでなく、現場のオペレーションや事業への影響、経営者の想いを汲み取った上での「最適な次の一手」を提示することを最優先しています。
使用者側(企業側)の専門弁護士として、労働紛争の早期解決はもちろん、トラブルを未然に防ぐための強固な労務基盤の構築を支援いたします。経営者の皆様が事業に専念できるよう、法的側面から強力にサポートさせていただきます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/
書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方
監修:プロが教える!失敗しない起業・会社設立のすべて
共著:民事信託 ――組成時の留意点と信託契約後の実務

目次
労働審判とは、解雇や未払い残業代、退職など、会社と労働者との間で生じた労働トラブルを、裁判所で迅速に解決するための手続きです。原則として3回以内の期日で審理が行われ、通常の訴訟よりも短期間での解決を目指します。
会社として労働審判を申し立てられた場合、限られた期間で主張や証拠を整理して対応する必要があります。対応が遅れると、自社の主張を十分に伝えられないまま審理が進む可能性があるため、早期に弁護士へ相談することが重要です。
労働審判と訴訟は、どちらも裁判所を利用して労働トラブルを解決する手続きですが、手続きの進め方や解決までの期間、審理の特徴が異なります。
| 労働審判手続き | 訴訟手続き | |
|---|---|---|
| 目的 | 労働トラブルの実情に即した迅速・適正な解決 | 裁判による紛争解決 |
| 審理 | 原則3回以内の期日で審理 | 事案に応じて複数回の期日 |
| 期間 | 平均約2〜3カ月(短期間での解決) | 半年〜1年以上など長期化しやすい |
| 審理の特徴 | 労働審判委員会が当事者の主張・証拠を踏まえて判断 | 裁判官が主張・証拠を踏まえて審理し、和解または判決によって解決 |
| 解決方法 | 調停による和解、労働審判 | 和解、判決 |
| 不服がある場合 | 労働審判の告知を受けた日から2週間以内の異議申立てにより通常の訴訟へ移行 | 控訴、上告などが可能 |
労働審判では、労働審判官1名と労働関係の専門的な知識・経験を持つ労働審判員2名で構成される労働審判委員会が審理します。迅速な解決を目指す手続きであるため、会社側としては、短期間で事実関係や証拠を整理し、自社の主張を的確に伝えることが重要です。
一方、通常訴訟では、労働審判よりも時間をかけて主張や証拠を整理し、裁判所による審理を受けます。労働審判で十分に検討されなかった証拠や争点がある場合には、訴訟で改めて主張・立証することも可能です。
労働審判から訴訟に移行するのは、主に①労働審判法24条1項によって労働審判手続が終了した場合(いわゆる24条終了)と、②労働審判に対して適法な異議申立てがあった場合です。
ここでは、労働審判から訴訟移行する主なケースを2つ解説します。
労働審判法24条1項では、労働審判委員会が、事案の性質に照らして労働審判手続による解決が適当でないと判断した場合、労働審判事件を終了できると定めています。これが実務上「24条終了」と呼ばれるものです。
たとえば、次のようなケースでは、24条終了となる可能性があります。
ただし、これらに該当すれば必ず24条終了になるわけではなく、労働審判委員会が事案の性質を踏まえて判断します。会社側から一方的に訴訟へ移行できるわけではありませんが、事件の複雑さや証拠関係などを具体的に示し、上申書などで労働審判による解決が適切でないことを伝えることは可能です。
労働審判に対して当事者の一方から適法な異議申立てがあると、労働審判は効力を失い、訴訟手続きに移行します。会社側が異議を申し立てる場合だけでなく、労働者側が申し立てた場合も同様です。
異議申立ては、労働審判の告知を受けた日から2週間以内に行う必要があります(労働審判法21条1項)。期限内に適法な異議申立てがなければ、労働審判は確定し、訴訟には移行しません。
また、異議申立てがあると、労働審判の申立て時に訴訟が提起されたものとみなされます(労働審判法22条1項)。そのため、会社としては「訴訟を新たに起こす」というより、労働審判から通常の民事訴訟へ手続きの場が移ると考えると分かりやすいでしょう。
なお、会社側が労働審判の内容に納得できず異議申立てを検討する場合は、労働審判の内容だけでなく、訴訟で勝訴できる見込みや追加で提出できる証拠なども踏まえて判断する必要があります。
労働審判から訴訟に移行すると、通常の民事訴訟として改めて審理が進められます。労働審判での主張や証拠を踏まえて対応できますが、訴訟に向けて主張・立証を整理し直すことが重要です。
訴訟移行後は、基本的に次のような流れで手続きが進みます。
訴訟に移行すると、労働審判の申立書が訴状とみなされます(労働審判法22条3項)。そのため、会社側も一から事件をやり直すわけではなく、労働審判で整理された主張や争点を踏まえて訴訟に対応することになります。
一方、労働審判で提出した答弁書や補充書面、証拠などは、そのまま訴訟記録として引き継がれるわけではありません。訴訟で使用する場合は、改めて提出する必要があります。
もっとも、実務上は、労働審判を担当した裁判官(労働審判官)が、訴訟移行後の第一審も担当することが多いため、労働審判での審理内容や裁判官の心証が事実上引き継がれやすいといえます。
多くの裁判所では実務上、原告(労働審判の申立人)に「訴状に代わる準備書面」の提出を求めています。新たに訴状を作成するのではなく、労働審判でのやり取りを踏まえて、訴訟で争う内容を整理するための書面です。
労働審判を経ている場合、労働者側はすでに会社側の主張や証拠、実質的な争点を把握しています。そのため、これまでのやり取りを踏まえて訴訟で争う内容を整理し、審理を進めやすくするために、この書面が提出されます。
会社側は、「訴状に代わる準備書面」の内容を確認したうえで、訴訟用の答弁書を提出します。
このとき、単に労働審判で提出した答弁書を流用するのではなく、労働審判での審理経過や裁判所から示された心証を踏まえて、訴訟での主張・立証を組み立て直すことが重要です。
特に、次のような点を整理します。
たとえば、労働審判で会社側に不利な心証が示されていたとしても、それが事案についての最終的な結論とは限りません。労働審判では期日が原則3回以内に限られるため、証拠調べが十分に行われなかった事情があれば、その点を具体的に指摘し、訴訟で改めて審理する必要性を主張することが重要です。
また、労働審判で一定の譲歩を示していた場合は、その内容を踏まえて訴訟での主張との整合性を検討する必要があります。労働審判での発言と訴訟での主張が矛盾すると、会社側に不利に評価される可能性があるため、注意が必要です。
その後は通常の民事訴訟と同様、双方が準備書面や証拠を提出し、争点を整理したうえで、必要に応じて証人尋問などの証拠調べが行われます。審理の途中で裁判所から和解を提案されることもあります。
労働審判で不利な心証を示されていたとしても、訴訟で同じ結論になるとは限りません。労働審判で十分に検討されなかった証拠や争点を洗い出し、訴訟で改めて主張・立証することが、訴訟での判断を変えるための重要なポイントとなります。
労働審判から訴訟手続きに移行した場合、解決までに1〜2年程度かかるケースも珍しくありません。
労働審判は、原則3回以内の期日で審理を行い、短期間での解決を目指す手続きです。実際、裁判所によると、平成18年から令和6年までに終了した労働審判事件の平均審理期間は82.6日で、申立てから3カ月以内に終了した事件は65.5%でした。
一方、訴訟に移行すると、労働審判よりも解決までに時間がかかる傾向があります。特に、解雇の有効性やハラスメントの有無など、争点が多く、証拠調べや証人尋問が必要となる事件では、解決まで1~2年程度かかることも珍しくありません。
そのため、会社としては、労働審判で提示された解決案に納得できないという理由だけで訴訟移行を決めるのではなく、訴訟で勝訴できる見込みと、訴訟にかかる期間・弁護士費用・社内の対応負担を比較して判断することが重要です。
特に、労働審判で会社側に不利な心証が示されている場合は、訴訟に移行すれば判断が変わるだけの証拠や主張があるのかを慎重に検討する必要があります。労働審判の段階で和解するのか、訴訟に移行して争うのかは、証拠関係や裁判所の心証、訴訟で追加できる主張・立証の余地などを踏まえ、弁護士と相談したうえで判断するとよいでしょう。
労働審判から訴訟に移行するかは、会社側の勝訴可能性だけでなく、解決までの期間や費用、社内への負担なども踏まえて判断することが重要です。ここでは、訴訟移行を検討すべき具体的なケースを解説します。
労働審判で不利な判断が示されても、訴訟で追加の主張・立証を行うことで会社側の主張が認められる可能性が高い場合は、訴訟移行を検討する余地があります。
たとえば、次のようなケースです。
ただし、「会社側に有利な証拠がある」というだけで勝訴できるとは限りません。証拠が何を証明できるのか、相手方の主張をどこまで崩せるのかまで慎重に検討する必要があります。
そのため、訴訟移行を検討する際は、労働審判で示された心証や指摘を分析したうえで、「訴訟なら何を追加で立証でき、それによって結論を変えられるのか」を弁護士と具体的に検討することが重要です。
労働審判で会社側にとって過大な金銭負担を伴う調停案が提示された場合は、訴訟移行を検討する余地があります。
たとえば、解雇の有効性を裏付ける証拠がそろっており、訴訟でも会社側の主張が認められる可能性があるにもかかわらず、高額な解決金を支払う内容の調停案が提示されたケースです。このような場合は、調停案を受け入れることが本当に会社にとって最善なのか、訴訟で争った場合の見通しと比較する必要があります。
また、未払い残業代について、労働者が主張する残業時間とタイムカードやPCのログなどから確認できる労働時間に大きな開きがあるにもかかわらず、請求額の大部分を支払う内容の調停案が提示された場合も同様です。実際の労働時間を裏付ける証拠があるなら、訴訟で請求額を争うことで、会社側の負担を抑えられる可能性があります。
会社側に有利な証拠があるにもかかわらず、その内容が十分に検討されないまま不利な調停案が提示された場合は、訴訟移行を検討する余地があります。
労働審判は原則3回以内の期日で審理するため、証拠が多い事件や事実関係が複雑な事件では、すべての証拠を十分に検討できないことがあります。
たとえば、解雇の有効性が争われている事件では、会社側が本人への指導記録やメール、業務上の問題を示す資料などを提出しているにもかかわらず、これらが十分に評価されないまま、解決金の支払いを求める調停案が提示されることがあります。
このような場合は、労働審判で十分に検討されなかった証拠を整理し、訴訟で改めて提出・立証することで、異なる判断を得られる可能性があります。
ただし、会社側が「証拠が十分に検討されていない」と考えていても、実際には証拠を踏まえたうえで会社側に不利な心証が形成されている可能性もあります。そのため、労働審判でどの点が不利に評価されたのかを確認し、追加の証拠や主張によって訴訟で判断を変えられる見込みがあるかを検討したうえで、訴訟移行するかどうかを判断することが重要です。
訴訟移行したからといって必ずしも会社にとって有利な結果になるとは限りません。証拠関係や訴訟にかかる負担、社内外への影響まで踏まえると、労働審判の段階で和解して解決するほうが合理的なケースもあります。
ここでは、訴訟に移行せず審判での決着を目指すべきケースを紹介します。
労働者側の主張を裏付ける証拠がそろっており、訴訟に移行しても会社側の主張が認められる可能性が低い場合は、労働審判での解決を検討すべきです。
たとえば、解雇について、就業規則上の根拠が明確でなかったり、解雇前の注意・指導の記録がほとんど残っていなかったりするケースです。訴訟に移行してから新たな証拠を用意することも難しく、解雇の有効性を立証できる見込みが低ければ、訴訟を続けるメリットは小さくなります。
また、未払い残業代について、会社側にタイムカードなどの客観的な労働時間資料がなく、労働者側の勤怠記録や業務メールなどから残業の実態が認められる場合も同様です。
このような場合、訴訟に移行して争い続けるよりも、労働審判で提示された調停案を基礎に、解決金の減額や支払方法などを交渉して早期に解決するほうが、会社の負担を抑えられる可能性があります。
労働審判で提示された調停案が、会社側の法的責任や訴訟に移行した場合の負担を踏まえて妥当な内容であれば、訴訟に移行せず、労働審判の段階で解決することも選択肢になります。
たとえば、解雇の有効性に一定の問題があり、訴訟になれば解決金や、解雇が無効とされた場合に発生する解雇期間中の賃金(バックペイ)などの支払いが発生する可能性がある場合に、それらを踏まえた金額の調停案が提示されたようなケースです。
労働審判の調停案は、裁判で会社側が負うべき金額をそのまま示したものではありません。早期解決や紛争の実情などを踏まえて、双方の譲歩を前提とした金額が提示されることもあります。
そのため、調停案の金額だけを見るのではなく、訴訟で争った場合の勝訴可能性や想定される支払額、弁護士費用、対応期間などを比較することが重要です。これらを総合的に検討した結果、調停案を受け入れるほうが会社にとって合理的であれば、訴訟移行を避けて早期解決を目指すことも考えられます。
訴訟で得られるメリットが、解決までにかかる時間や弁護士費用、社内対応の負担に見合わない場合は、労働審判の段階で解決することも検討すべきです。
たとえば、労働審判で100万円の解決金を提示され、訴訟で会社側の主張が認められれば、支払額を数十万円程度まで減らせる可能性があるとします。しかし、訴訟が1年以上続けば、弁護士費用に加えて、経営者や人事担当者が継続的に対応する時間も必要になります。
訴訟対応のために担当者が資料の収集や裁判所への提出書類の確認などに時間を取られれば、通常業務にも影響します。そのため、訴訟によってどの程度支払額を減らせる可能性があるのかだけでなく、そのために必要となる時間や費用、社内の対応負担まで含めて、訴訟移行のメリットを判断することが重要です。
訴訟で会社側の主張が認められる可能性があったとしても、減額できる金額が小さく、訴訟にかかる負担が大きいのであれば、労働審判の段階で一定の条件を受け入れて早期解決を図るほうが、会社にとって合理的な場合があります。
労働トラブルが長期化すると、採用活動や取引先との関係、社内の士気などに影響する可能性があるため、訴訟に移行せず早期解決を目指したほうがよいケースもあります。
たとえば、解雇やハラスメントをめぐる訴訟が長期化し、その事実がSNSや口コミなどを通じて広まれば、「従業員を大切にしない会社」「労務管理に問題がある会社」といったイメージを持たれるおそれがあります。その結果、求人への応募が減ったり、採用した人材が入社を辞退したりするなど、採用活動に影響することも考えられます。
また、在職中の従業員との紛争であれば、会社と従業員との対立が長引くことで、職場の雰囲気が悪化し、他の従業員の不安や不満につながる可能性があります。紛争対応に経営者や人事担当者の時間が取られ、本来の業務に支障が出ることもあります。
さらに、取引先にトラブルの存在を知られた場合には、コンプライアンスや内部管理に対する懸念を持たれ、取引関係に影響する可能性も否定できません。
そのため、訴訟で争うことで得られる金銭的なメリットだけでなく、紛争が長期化することによる企業イメージの低下や社内外への影響まで含めて、訴訟移行の是非を判断することが重要です。
労働審判から訴訟に移行すると、裁判所に納める手数料に加えて、弁護士に依頼している場合は追加の着手金などが発生することがあります。
訴訟に移行した場合の裁判所への手数料は、通常の訴え提起で必要となる手数料から、労働審判の申立て時に納付した手数料を差し引いた金額です。これは、民事訴訟費用等に関する法律により、労働審判の申立て時に納めた手数料を、訴訟の手数料に充当できるためです。
納付する手数料は、裁判手続の種類や争う金額によって定められています。たとえば、訴訟で100万円を争う場合、訴え提起の手数料は1万円です。労働審判の申立て時に納付する手数料は5,000円なので、訴訟移行時には差額の5,000円を納付することになります。
また、労働審判から訴訟に移行する場合、労働審判を依頼していた弁護士に引き続き対応を依頼するとしても、訴訟対応について追加の着手金が発生するケースが多くあります。訴訟では、準備書面の作成や証拠の整理・提出、裁判期日への対応など、労働審判とは異なる業務が必要になるためです。
ただし、弁護士費用の金額や算定方法は法律事務所によって異なります。労働審判を依頼する段階で、訴訟に移行した場合に追加でどの程度の費用がかかるのかまで確認しておくと安心です。
訴訟で会社側に有利な判断を得るには、労働審判での対応を振り返り、訴訟に向けて主張や証拠を適切に見直すことが重要です。
具体的には、労働審判で不利に評価された点の分析、十分に検討されなかった証拠の補強、これまでの主張との整合性の確保がポイントになります。以下で詳しく解説します。
労働審判では、労働審判委員会から会社側の主張や証拠について質問や指摘を受けたり、一定の心証を示されたりすることがあります。
訴訟に移行する場合は、こうした指摘をそのままにせず、会社側の主張のどこが問題と評価されたのかを分析し、訴訟でどのように反論するかを整理することが重要です。
たとえば、解雇の客観的合理性については一定の理解を得られていても、「本人への注意・指導が十分でなかった」と評価されているのであれば、指導記録やメールなどを改めて確認し、会社が適切な指導を行っていたことを具体的に立証できるよう準備します。
労働審判と訴訟では、手続きの進め方や審理のあり方が異なります。労働審判での指摘を踏まえたうえで、法的要件に沿って主張を整理し、証拠との関係を明確にした答弁書や準備書面を作成することが大切です。
労働審判は原則3回以内の期日で審理するため、限られた時間のなかですべての証拠や事実関係を十分に検討できないことがあります。訴訟に移行した場合は、労働審判で十分に扱えなかった証拠や争点を洗い出し、証拠をそろえて主張を裏付けることが重要です。
勤務態度や能力不足を理由とする解雇が問題となっている場合であれば、上司からの指導メール、業務上のミスに関する記録、日報などを改めて確認します。
また、上司や人事担当者など関係者の陳述書を作成することも有効です。陳述書では、「勤務態度が悪かった」といった抽象的な評価ではなく、いつ、どのような問題があり、会社がどのような指導を行い、その結果どのような業務上の影響が生じたのかを具体的かつ時系列に整理します。
陳述書の内容は、後の証人尋問での証言にも関係するため、抽象的な評価ではなく、実際に経験・認識した具体的な事実に基づいて作成することが重要です。
労働審判で提出した答弁書や証拠などが、そのまま訴訟の証拠として扱われるわけではありませんが、労働審判での経過や記録が訴訟で確認されることがあります。そのため、労働審判と訴訟の間で会社側の主張が大きく変わると、主張の信用性を疑われるおそれがあります。
特に、労働審判で主張していなかった解雇理由を、訴訟になってから新たな主要理由として追加するなど、後付けの言い訳と受け取られかねない大幅な主張の変更は避ける必要があるでしょう。
一方、労働審判の終了後に新たな事実が判明した場合など、訴訟で追加の主張が必要になるケースもあります。その場合は、新たな調査によって発見された事実であることを明確にしたうえで、労働審判までの主張と矛盾しないよう関係を整理して説明することが大切です。
労働審判での一貫した主張を土台としながら、訴訟で新たに得られた証拠や事実を適切に補足していくことで、会社側の主張に説得力と一貫性を持たせることができます。
労働審判から訴訟に移行する場合、労働審判での対応を振り返りながら、訴訟に向けて主張や証拠を整理する必要があります。会社だけで対応することも可能ですが、労働問題に詳しい弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
労働審判から訴訟に移行した場合、裁判官は労働審判での記録を確認したうえで審理を進めます。そのため、労働審判で会社側が不利な評価を受けた場合は、その原因を分析し、訴訟に向けて主張や立証を見直すことが重要です。
弁護士であれば、労働審判で示された労働審判委員会の指摘や心証を踏まえ、会社側の主張のどこに問題があったのか、どの証拠が不足していたのかを整理できます。そのうえで、訴訟ではどの主張を修正・補強し、どの証拠を追加して提出するべきかを検討できます。
会社だけで対応すると、不利な評価への反論や会社側の正当性を主張することに偏り、訴訟で必要となる主張・立証の見直しまで十分に行えないことがあります。弁護士に依頼することで、労働審判での対応を踏まえた訴訟戦略を立てやすくなります。
解雇の有効性や未払い残業代請求などを訴訟で争う場合、会社側の主張を裏付ける証拠を、事実関係に沿って整理することが重要です。
弁護士に依頼すれば、たとえば解雇事件では、就業規則や解雇通知書だけでなく、本人への注意・指導の記録、業務上のミスを示す資料、上司とのメールや面談記録などを確認し、「どの事実を、どの証拠で証明するのか」を整理できます。
未払い残業代の事件でも、タイムカードだけでなく、PCのログイン・ログアウト記録、入退館記録、メールやチャットの送受信履歴などを確認し、労働者が主張する労働時間との違いを検討します。
さらに、証人尋問を見据えて、上司や人事担当者など関係者から事実関係を聞き取り、陳述書の作成・内容の整理を行うこともできます。
必要な証拠を絞り込み、訴訟で効果的に提出できる形に整えられることが、弁護士に依頼するメリットです。
労働者側が弁護士や労働組合・ユニオンなどを通じて請求している場合、会社の経営者や人事担当者が直接対応すると、意図しない発言が会社側の認識として扱われたり、必要以上の譲歩をしてしまったりするリスクがあります。
弁護士に依頼すれば、労働者側との連絡や交渉、裁判所への書面提出、期日への対応などを任せられます。そのため、経営者や人事担当者は本来の業務に集中しやすくなります。
また、弁護士が窓口となることで、相手方からの要求に対しても法的な見通しを踏まえて対応でき、会社側の不要な失言や過度な譲歩を防ぎやすくなります。
労働トラブルへの対応では、目の前の紛争を解決するだけでなく、「なぜトラブルが発生したのか」を分析し、同様の問題を繰り返さないための体制を整えることも重要です。
弁護士に依頼すれば、たとえば次のような対応を依頼できます。
労働トラブルでは、就業規則などの会社のルールが法令や社会通念に照らして適切な内容になっているかが問題となることがあります。あらかじめ弁護士によるチェックを受け、適切な社内体制を整えておくことが、将来の労働トラブルを防ぐことにつながります。
影響する可能性があります。労働審判での発言や主張と、訴訟での主張が食い違うと、会社側の説明の信用性を疑われるおそれがあります。訴訟では、労働審判での主張との整合性を保ちながら、必要に応じて主張や証拠を補強することが重要です。
逆転できる可能性はあります。労働審判で会社側に不利な心証が示されたとしても、訴訟で同じ結論になるとは限りません。労働審判で十分に検討されなかった証拠を追加したり、主張を整理し直したりすることで、訴訟で異なる判断となる可能性があります。
ただし、訴訟に移行すれば必ず逆転できるわけではないため、不利な評価を受けた原因を分析したうえで、訴訟で状況を変えられる見込みがあるかを十分に検討する必要があります。
あります。訴訟手続きでは、審理の途中でも当事者双方が合意すれば和解できます。裁判所から和解を提案されることもあります。
会社側としては、追加の証拠が提出された段階や裁判所の心証が示された段階などで、勝訴の見込みや解決金額を改めて検討し、和解するかどうかを判断することになります。
会社自身で訴訟に対応することも可能ですが、会社だけで対応すると、主張や証拠の整理が不十分なまま審理が進み、不利な結果につながるおそれがあります。
労働訴訟では、訴状や答弁書、準備書面の作成に加え、争点に応じた証拠の収集・整理や、裁判所への適切な反論が必要です。特に労働審判から通常訴訟に移行した事件では、労働審判での主張や発言との整合性にも注意しなければなりません。
また、経営者や人事担当者が裁判対応に時間を取られ、本来の業務に支障が生じることもあります。そのため、労働審判で不利な評価を受けている場合や、解雇の有効性・高額な残業代請求などを争う場合は、早い段階で弁護士に相談し、訴訟に移行するメリットや勝訴の見込みを検討することが重要です。
労働審判から訴訟に移行するのは、主に労働審判法24条によって手続きが終了した場合と、労働審判に対して適法な異議申立てがあった場合です。
訴訟に移行すると、労働審判の申立書は訴状とみなされますが、答弁書や証拠などは改めて提出する必要があります。労働審判で不利な心証を示されていた場合も、訴訟で追加の主張や証拠を提出することで、判断が変わる可能性があります。
一方で、訴訟は労働審判よりも時間や費用、会社側の対応負担が大きくなります。そのため、訴訟に移行すべきか、労働審判の段階で解決するべきかは、証拠関係や勝訴の見込み、解決までの期間などを踏まえて慎重に判断することが重要です。
労働審判から訴訟への移行を検討している場合は、労働審判での対応内容を踏まえて今後の方針を検討する必要があります。会社側の主張や証拠を客観的に分析し、訴訟での見通しを適切に判断するためにも、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
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