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生理休暇の不正取得への対応法!懲戒処分の妥当性を弁護士が解説

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

大阪弁護士会所属。京都市出身。
労働環境が激変する現代において、企業が直面する労務リスクは経営の根幹を揺るがしかねない重要課題です。私は、大学卒業後のIT企業勤務、経営コンサルタント、企業役員といった10数年のビジネス現場での経験を経て弁護士となりました。
法律はあくまで手段であり、目的は「企業の持続的な成長と安定」であるべきだと考えています。そのため、単に「法的に可能か不可能か」を答えるだけでなく、現場のオペレーションや事業への影響、経営者の想いを汲み取った上での「最適な次の一手」を提示することを最優先しています。
使用者側(企業側)の専門弁護士として、労働紛争の早期解決はもちろん、トラブルを未然に防ぐための強固な労務基盤の構築を支援いたします。経営者の皆様が事業に専念できるよう、法的側面から強力にサポートさせていただきます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/
書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方
監修:プロが教える!失敗しない起業・会社設立のすべて
共著:民事信託 ――組成時の留意点と信託契約後の実務

生理休暇の不正取得への対応法!懲戒処分の妥当性を弁護士が解説

この記事でわかること

  • 生理休暇の法的位置づけ
  • 生理休暇の不正取得が認められた判例
  • 不正取得を防ぐための実務対応と制度設計のポイント

生理休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利です。
一方で、制度の性質上、企業側が事実確認をどの程度行えるのか悩みやすく、不正取得が問題となるケースもあります。

不正取得が疑われる場合であっても、過度な追及はハラスメントや権利侵害問題へ発展する可能性があります。
そのため、権利行使を適切に保護しながら、不正取得を防止するための運用ルールや体制整備が重要です。

ここでは、生理休暇の法的位置づけを整理した上で、不正取得に関する判例や、企業が取れる実務対応・防止策について解説します。

生理休暇とは

生理休暇とは、生理日の就業が著しく困難な女性が請求し、取得できる休暇です(労基法第68条[注1])。

法律で認められた権利

生理休暇は法律で認められた権利であるため、労働者から請求があった場合、会社は原則として取得を認めなければなりません。

取得を認めなかった場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労基法第120条[注2])。

一方で、賃金支払いや勤怠評価との関係については法律上明確に定められていないため、実務上は就業規則の内容が重視されます。

賃金・精勤手当への影響

生理休暇は法律では有給・無給までは定められていないことから、会社が就業規則等で自由に決定できます

そのため、無給とする運用や、欠勤扱いとして精勤手当の支給対象外とする運用は、直ちに違法とはされません。
しかし、減額幅や不利益の程度が大きい場合等、実質的に取得抑制につながる運用は問題視される可能性があります。

特に、賞与査定や昇給評価で著しい不利益を与える運用は、認められません。

制度利用を妨げない配慮と、職場運用のバランスを踏まえた慎重な設計が求められます。
[注1]労働基準法/e-Gov
労働基準法第68条

[注2]労働基準法/e-Gov
労働基準法第120条

生理休暇を不正取得した判例

生理休暇の虚偽申告による不正取得は、他の労働者との公平性を損ない、労使間の信頼関係にも影響を与える問題です。
単なる勤怠不良ではなく、虚偽申告による職務誠実義務違反として評価される可能性があります。
実際に、取得目的や申告内容に問題があるとして、懲戒処分が有効と判断された裁判例も存在します。

岩手県交通事件は、生理休暇の不正取得が問題となった代表的な判例です。
バス会社の女性従業員が、生理休暇を取得していた日に、深夜に遠隔地まで長時間移動し、翌日に民謡大会へ参加していました。
裁判所は「生理日の就業が著しく困難」という申告内容と実際の行動に大きな矛盾がある点を重視し、不正取得を認定しました。
その結果、3カ月を限度とした休職処分を有効と判断しています。

しかし「著しく就業が困難であるか」は、本人申告や同僚証言等による簡易な確認で足りるとされ、厳格な医学的証明までは求められていません
企業側が診断書提出を一律義務化する、あるいは、過度に詳細な事情説明を求める運用は問題となる可能性があります。
本人のSNS投稿や他従業員の目撃情報、勤務状況との矛盾等の客観的事情がある場合に限り、本人へのヒアリングや事実確認を行う点が重要です。

事件名:岩手県交通事件

  • 裁判所・部:盛岡地方裁判所
  • 判決日:1996年4月17日
  • 要旨:生理休暇を取得していた従業員が、深夜に遠隔地へ移動し、翌日に民謡大会へ参加していたため不正取得が問題視された事案。
    裁判所は、生理日の就業が著しく困難であったとは認められないとして、不正取得を理由とする休職処分を有効と判断した。
  • 出典:全国労働基準関係団体連合会:労働基準判例

従業員が生理休暇を不正取得したときの対応と防止策

生理休暇は、制度趣旨上、本人申告を前提として運用される休暇です。
過度な証明要請は権利侵害として問題となりますが、不正取得が疑われる状態を放置すると、職場内の不公平感やモラル低下につながります。
就業規則等で賃金処理や懲戒ルール等をあらかじめ整備し、不正取得を防止する運用体制の構築が重要です。

ここでは、不正取得が疑われる場合の対応と防止策について詳しく解説します。

不正取得が疑われる場合の確認対応

生理休暇の請求に対して、医師の診断書提出を一律に義務付ける運用は、制度趣旨上、適切とは言えません。
また「嘘ではないか」と決めつける対応は、ハラスメント問題等に発展し、企業側の対応が問題視されるリスクがあります。

一方で、SNS投稿や他の従業員の目撃情報や証言等から不正取得が強く疑われる場合は、事後的なヒアリングや状況確認を行う余地があります。
この場合「外出できない状態だったか」「就業困難な状況だったか」など、体調確認の範囲で事実関係を整理する点が重要です。

本人が「外出困難だった」と説明していたにもかかわらず、長時間の外出や旅行等が判明した場合は、虚偽説明や誠実義務違反が問題となります。
後の懲戒判断に備え、調査内容や本人回答は記録化しておきましょう。

不正防止につながる就業規則の整備

法律上、生理休暇を有給とする義務はありません
また、日数上限を設ける運用は、法定権利の制限として問題となる可能性があります。
ただ、「有給として取り扱う日数の上限」を定める運用は可能です。

そのため、不正取得抑制と法的リスク管理の両面から、次の運用が検討できます。

  • 休暇取得は認めるが無給とする
  • 一定日数(1~2日目)までは有給とし、超過分は無給とする
  • 虚偽申告が判明した場合は懲戒対象とする

生理休暇は、制度趣旨・ハラスメント・懲戒処分の有効性が交錯しやすい分野です。
実際の運用では、就業規則の文言やヒアリング方法によって違法リスクが大きく変わります。
弁護士による規程チェックを受け、法的リスクを抑えながら不正取得防止対策もできる規定整備を進めましょう。

まとめ

生理休暇は法律で認められた権利ですが、不正取得への対策を怠り放置すると、職場全体の規律やモラル、会社への信頼低下につながります。
一方で、企業側の対応が行き過ぎれば、従業員に対するハラスメントや権利侵害と判断されるリスクもあります。

生理休暇の不正取得に関する対応については、初動調査から就業規則の改定まで、VSG弁護士法人のリーガルサポートを受けてください。
法的に適切な対応と体制整備により、企業秩序の適正な維持を実現しましょう。

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