

大阪弁護士会所属。京都市出身。
労働環境が激変する現代において、企業が直面する労務リスクは経営の根幹を揺るがしかねない重要課題です。私は、大学卒業後のIT企業勤務、経営コンサルタント、企業役員といった10数年のビジネス現場での経験を経て弁護士となりました。
法律はあくまで手段であり、目的は「企業の持続的な成長と安定」であるべきだと考えています。そのため、単に「法的に可能か不可能か」を答えるだけでなく、現場のオペレーションや事業への影響、経営者の想いを汲み取った上での「最適な次の一手」を提示することを最優先しています。
使用者側(企業側)の専門弁護士として、労働紛争の早期解決はもちろん、トラブルを未然に防ぐための強固な労務基盤の構築を支援いたします。経営者の皆様が事業に専念できるよう、法的側面から強力にサポートさせていただきます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/
書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方
監修:プロが教える!失敗しない起業・会社設立のすべて
共著:民事信託 ――組成時の留意点と信託契約後の実務

目次
2026年に予定されていた労働基準法改正は、通常国会への法案提出が見送られたため、施行時期は現時点で確定していません(2026年4月1日現在)。
ただし、改正に向けた議論自体は継続しており、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度などの重要なテーマは引き続き検討されています。
そのため、企業としては先送りを理由に対応を後回しにするのではなく、将来の改正を見据えて準備を進めておくことが重要です。
2026年の通常国会への改正法案の提出が見送られた背景には、制度設計の難しさや調整の必要性があると考えられます。
今回の見直しは、単なる労働時間の調整にとどまらず、勤務間インターバルや副業・兼業、いわゆる「つながらない権利」など、多岐にわたるテーマを含んでいます。そのため、企業実務への影響が大きく、関係者間の慎重な検討が求められている状況です。
また、企業規模や業種によって影響の度合いが大きく異なることから、一律に制度を導入することの難しさも、見送りの一因といえます。
今回の見直しの背景には、働き方を取り巻く環境の大きな変化があります。
今回の改正は、従来の労働時間の枠組みを見直すだけでなく、現代の働き方に合わせて制度全体を再設計する点に特徴があります。企業としては、背景を踏まえた上で、早めに対応の方向性を検討することが重要です。
2026年の労働基準法改正は、働き方の多様化や過重労働の防止に対応するための見直しです。企業実務にも大きな影響が生じるため、各ポイントを正しく理解し、自社への影響を把握しておくことが重要です。

これまで明確な規制がなかった連続勤務日数について、「14日以上の連続勤務を禁止する」という上限が設けられる方向です。つまり、連続勤務は最大13日までに制限され、14日目には必ず休日を与える必要があります。
現行の労働基準法では、就業規則に変形休日制の定めがある場合、休日の配置によっては理論上、最大48日まで連続勤務が可能です。しかし、このような働き方は疲労の蓄積を招き、健康リスクを高めるおそれがあります。
こうした背景から、連続勤務に上限を設けることで、一定期間ごとに休息を確保する仕組みが導入される見込みです。医療・介護・飲食・宿泊業などのシフト制を採用している企業では影響が大きく、夜勤の連続配置やオンコール対応を含めた勤務体制の見直しが求められます。
改正により、「法定休日」をどの日とするかを就業規則で明確に定めることが求められます。
現状では「週休2日制」としていても、どちらの休日が法定休日にあたるのかがはっきりしていない企業も多いです。そのため、休日に働いた場合の割増賃金(35%)の扱いがあいまいとなり、トラブルにつながるケースがあります。
今後は、あらかじめ法定休日を特定したうえで、休日の付与やシフトを運用する必要があります。特に1カ月単位の変形労働時間制を採用している場合には、シフトを確定する段階で法定休日を定め、その内容を就業規則に反映させることが重要です。
この見直しにより、法定休日労働の割増賃金の適用関係が明確になり、代休や振替休日の取扱いもより厳格に管理する必要が生じます。
終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」は、これまでの努力義務から法的義務へと引き上げられます。原則として、最低11時間の休息を確保する必要があります。
たとえば、夜21時に退勤した場合には、翌日の始業は朝8時以降としなければなりません。これにより、短時間の休息で再び勤務に入るような働き方は難しくなります。
この制度は、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している企業にも影響します。特に、遅番から早番へと連続して配置するシフトは組みにくくなるため、勤務間の休息時間を踏まえたシフト設計が必要です。
また、インターバル時間を適切に管理するため、勤怠管理システムでのチェック体制の整備も求められます。
有給休暇取得時の賃金算定については、これまで「通常賃金方式」「平均賃金方式」「標準報酬日額方式」の3つが認められていましたが、改正後は原則として「通常賃金方式」に統一されます。つまり、通常どおり勤務した場合に支払われる賃金を基準に計算することになります。
これにより、有給休暇を取得した際に賃金が減少するケースを防ぎ、労働者にとって不利にならない仕組みへと見直されます。パート・アルバイトなど日ごとに労働時間が異なる場合、「有給を取った日の賃金をいくらにするのか」をあらかじめ決めておく必要がある点に注意しましょう。
副業・兼業者については、割増賃金の計算方法が見直され、自社での労働時間のみを基準に支払う仕組みに変更されます。
現行制度では、複数の事業場で働く場合、それぞれの労働時間を通算し、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた部分について、あとから契約した企業が割増賃金を負担する仕組みとなっています。しかし、他社での労働時間を正確に把握することが難しく、実務上の負担や不公平感が大きい点が課題とされていました。
見直し後は、割増賃金については各企業が自社での労働時間のみを基準に計算する仕組みに変わります。ただし、労働者の健康確保のため、複数の勤務先を含めた総労働時間の把握は引き続き必要となります。
この変更により、副業・兼業を認めやすくなる一方で、企業には適切な管理体制の整備が求められます。副業の申請制度や労働時間の自己申告ルールを整備し、過重労働を防ぐ仕組みを構築することが重要です。
現行の労働基準法では、常時10人未満の労働者を使用する一部の事業場(小売業、飲食業、理容業、医療機関など)に限り、週44時間までの労働を認める特例が設けられています。しかし、この特例は見直され、すべての企業で原則どおり「週40時間」に統一される方向です。
この変更により、対象となる業種では労働時間の短縮が必要となり、シフトの組み方や人員配置の見直しが求められます。労働時間が短くなる分、同じ業務を維持するには人員の確保や残業対応が必要となるため、人件費の増加につながる可能性があります。
勤務時間外や休日の業務連絡への対応を強制されない「つながらない権利」について、ガイドラインの整備が進められています。現時点では義務ではありませんが、今後は法的なルールとして位置づけられる可能性もあります。
背景には、テレワークの普及やデジタルツールの発達により、勤務時間外であってもメールやチャットで業務連絡が届く状況が常態化していることがあります。このような働き方は、労働者の休息を妨げ、過重労働の原因となるおそれがあります。
企業としては、あらかじめ社内ルールを定めておくことが重要です。たとえば、時間外の連絡を原則禁止とする時間帯の設定や、緊急時の対応方法を明確にすることが考えられます。
あわせて、管理職への教育も欠かせません。時間外の連絡を控える意識を徹底するとともに、メールの送信予約機能を活用するなど、運用面での工夫も求められます。
今回の労働基準法の見直しは、労働時間や休日のルールにとどまらず、企業の労務管理全体に影響を及ぼします。そのため、制度変更の内容を踏まえ、自社の運用を見直すことが重要です。
ここでは、企業に求められる主な対応について解説します。
勤務間インターバル制度の義務化などにより、これまで以上に適切な労働時間管理が求められます。
特に、終業から次の始業までの休息時間を確保する必要があるため、シフトの組み方や業務分担の見直しが不可欠です。夜勤明けの翌日の扱いや、突発的な残業が発生した場合の始業時刻の繰り下げなど、具体的な運用ルールを整備しておく必要があります。
また、労働時間管理の精度を高めるためには、勤怠管理システムの活用も重要です。勤務間インターバルが不足する場合にアラートを出すなど、システムによるチェック体制を整えることが求められます。
さらに、副業・兼業の広がりに伴い、複数の勤務先を含めた総労働時間の把握も重要になります。過重労働を防止する観点から、労働時間の管理方法を見直し、適切に運用していくことが必要です。
想定される法改正の内容を踏まえ、就業規則の見直しが必要となります。
連続勤務の上限規制や法定休日の特定義務、勤務間インターバルの確保など、新たに求められるルールを就業規則に反映させる必要があります。また、有給休暇の賃金算定方法の変更や「つながらない権利」に関する取扱いについても整理し、社内規程として明文化しておくことが重要です。
あわせて、就業規則の変更に伴い、雇用契約書のひな形も見直す必要があります。制度変更の内容を従業員に正しく理解してもらうため、ルールの整備と周知をあわせて進めることが求められます。
法改正を踏まえ、社内のコンプライアンス体制を強化することが重要です。
勤務間インターバルの確保や「つながらない権利」への対応など、新たなルールを現場で適切に運用するためには、社内ガイドラインの整備が不可欠です。たとえば、時間外の業務連絡を控える時間帯の設定や、緊急時の対応方法をあらかじめ定めておくことが考えられます。
また、制度を整備するだけでなく、従業員への周知や管理職への教育も重要です。特に管理職は労働時間管理の中心的な役割を担うため、新たなルールの趣旨や運用方法を正しく理解させる必要があります。
さらに、制度の運用状況を定期的に確認し、問題があれば見直しを行うなど、継続的に改善していく体制を整えることも求められます。
労働基準法改正への対応は、一度に進めるのではなく、段階的に準備を進めることが重要です。自社の現状を把握したうえで、優先順位を整理し、計画的に対応していきましょう。
まずは、自社の就業規則や労使協定、勤怠管理の運用状況を整理し、現状を正確に把握することが出発点となります。特に、連続勤務の実態や勤務間インターバルの確保状況などを確認し、問題点を可視化しておくことが重要です。
次に、改正内容と自社の現状とのギャップを分析し、どの項目から対応するかを決めます。法定休日の特定や連続勤務の制限、勤務間インターバルなど、影響の大きい項目から優先的に対応を進めることが重要です。
方針が決まったら、就業規則や関連規程の見直しに着手します。あわせて、勤怠管理システムや給与計算システムの設定変更を行い、新しいルールに対応できる体制を整えます。実際の運用を想定した試行も行い、問題点を洗い出しておくことが重要です。
制度を整備した後は、従業員への周知と運用の定着が不可欠です。説明会や研修を通じて新しいルールを共有し、現場で適切に運用できる状態を整えます。試行期間を設けて改善を重ねながら、本格運用へと移行していきます。
労働基準法改正への対応は、現状把握から運用定着まで段階的に進めることが重要です。早い段階から準備を進めることで、法改正後もスムーズに対応できる体制を整えることができます。
労働基準法の改正に適切に対応しない場合、企業にはさまざまなリスクが生じます。法令違反だけでなく、労務トラブルや企業評価の低下にもつながるため、早めの対応が重要です。
法改正に対応せず、連続勤務の上限や勤務間インターバルなどのルールを守らない場合、労働基準法違反として是正勧告や行政指導の対象となるおそれがあります。
改善が行われない場合には、企業名の公表や送検に至る可能性もあり、社会的信用の低下につながるリスクがあります。
また、違反の内容によっては罰則が科されることもあり、企業のコンプライアンス体制が厳しく問われます。
法改正に対応しないまま従来どおりの運用を続けると、労働時間や休日の取扱いをめぐって従業員とのトラブルが発生するおそれがあります。
たとえば、法定休日を明確にしていない場合、休日労働の割増賃金の扱いについて認識のずれが生じ、未払い賃金の請求につながる可能性があります。また、勤務間インターバルが確保されていない場合には、健康配慮義務の観点から問題となることもあります。
こうしたトラブルは個別の紛争にとどまらず、労働基準監督署への申告や労働審判などに発展するおそれもあります。企業としては、制度変更に合わせた適切な運用を行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
法改正への対応が遅れている企業は、労働環境への配慮が不十分であると評価されるおそれがあります。
近年は、労働時間や働きやすさを重視して企業を選ぶ人が増えており、長時間労働や不適切な労務管理が見られる企業は、採用活動において不利になる可能性があります。
また、現場の不満が蓄積すると、離職率の上昇や従業員のモチベーション低下にもつながります。結果として、人材の確保や定着が難しくなり、企業経営に継続的な影響が生じるおそれがあります。
労働基準法の改正は内容が多岐にわたり、実務への影響も大きいため、自社だけで対応を進めることに不安を感じるケースも少なくありません。早い段階から弁護士に相談することで、適切な対応方針を検討しやすくなります。
法改正の内容は一律でも、企業ごとに影響の出方や必要な対応は異なります。
弁護士に相談することで、自社の就業規則や労務管理の現状を踏まえ、どの部分にリスクがあるのか、どの対応を優先すべきかを具体的に整理することができます。
早い段階でリスクと対応策を把握しておくことで、無理のないスケジュールで準備を進めることができ、法改正後の混乱を防ぐことにつながります。
法改正に対応するためには、就業規則や各種社内規程の見直しが不可欠です。
弁護士に相談することで、連続勤務の上限や法定休日の特定、勤務間インターバルの確保など、新たなルールを法令に適合した形で反映させることができます。また、有給休暇の賃金算定方法や副業・兼業の取扱い、「つながらない権利」に関するルールについても、実務に即した形で整理することが可能です。
曖昧な規定や不備を残したままでは、運用時にトラブルが生じるおそれがあります。専門的な観点から内容を整備しておくことで、現場で運用しやすいルールを構築できます。
法改正に対応しないまま運用を続けると、労働時間や休日の取扱いをめぐって労務トラブルや法令違反につながるおそれがあります。弁護士に事前に相談することで、問題が生じやすいポイントをあらかじめ把握し、適切な対策を講じることが可能です。
また、制度の設計段階から法的な観点を取り入れることで、運用上の抜けや曖昧さを防ぐことができます。結果として、トラブルの発生を抑え、安定した労務管理を実現することにつながります。
今後の制度設計では、まず「労働者」に該当する範囲の見直しが大きな焦点となります。ギグワーカーやフリーランスなど多様な働き方が広がる中、どこまでを労働基準法の保護対象とするのかが議論される見込みです。
次に、36協定などで関わる過半数代表者制度の実効性も見直しの対象となります。形式的な運用ではなく、実質的に労働者の意見が反映される仕組みへと改善が求められています。
さらに、各制度をどこまで義務化するか、例外や経過措置をどの程度認めるかも重要な論点です。企業負担とのバランスを踏まえながら、最終的な制度設計が決まる見込みであり、今後の議論の動向を注視する必要があります。
現時点では、2026年中に改正が行われるかは未定です。通常国会への法案提出は見送られており、施行時期も確定していません。ただし、議論自体は継続しているため、今後の動向を踏まえて準備を進めておくことが重要です。
労働基準法の改正は、原則として企業規模にかかわらず適用されます。中小企業については経過措置や猶予期間が設けられる可能性はありますが、最終的には対応が必要です。自社の体制に応じて早めに準備を進めることが重要です。
2026年の労働基準法改正は、施行時期こそ未定ですが、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度など、企業の労務管理に大きな影響を与える内容が検討されています。
これらの改正に適切に対応するためには、就業規則や勤怠管理の見直し、社内ルールの整備などを計画的に進めることが重要です。対応が遅れると、法令違反や労務トラブルにつながるおそれもあります。
改正の動向を注視しつつ、早い段階から準備を進めることが重要です。対応に不安がある場合には、労務に詳しい弁護士へ相談することも有効な選択肢といえるでしょう。
「VSG弁護士法人」では、企業側の労働問題に豊富な実績があり、案件によっては初回無料相談も受け付けています。トラブルの予防から解決まで徹底的にサポートさせていただきますので、労務管理に関してお悩みごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。