この記事でわかること
- 再下請負通知書とは
- 再下請負通知書の書き方・記入例
建設工事では、通常、元請会社だけで施工できない工事を下請会社へ依頼します。
工事の規模が大きくなるにつれて、二次下請、三次下請と、発注される下請会社の数も増えていきます。
再下請負通知書とは、元請会社が下請の状況を把握するための書類で、すべての下請会社が作成しなければなりません。
提出された再下請負通知書は、一次下請会社がとりまとめ、一覧にして元請会社へ提出されます。
通常は工事の着工前に提出期限が定められますが、項目が多いため慣れていないと記入に時間がかかってしまうかもしれません。
再下請負通知書のほかに、発注した下請会社との契約書など、下請会社との関係を示す資料を添付します。
提出期限に間に合うよう、記入や添付書類などは早めに準備しておきましょう。
ここでは、再下請負通知書の書き方や二次下請負以下の場合の添付書類などを解説します。
- 目次
- 再下請負通知書とは
- 再下請負通知書が必要なケース
- 再下請負通知書のフォーマット
- 再下請負通知書の書き方
- 再下請負通知書の記入例
- 再下請負通知書を作成した後の流れ
- 二次・二次以降の下請けの提出書類
- まとめ
再下請負通知書とは
再下請負通知書は、一次下請以下の下請契約についてその契約内容を記載し、元請に報告する書類です。
一次下請と二次下請、二次下請と三次下請といった形で、下請契約を締結している業者間の契約内容を記載します。
元請の建設業者がすべての工事業者を把握し、安全な工事が適切に行われているのかを確認するために作成されます。
直接工事を行う業者が再下請負通知書を作成
安全書類の1つである施工体制台帳は、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が作成します。
再下請負通知書を作成しなければならないのは、元請業者と建設工事の下請契約で関係のある下請業者です。
元請業者と資材の納入に関する契約を締結している資材業者や、警備を行う警備業者は下請け業者ではないため、再下請通知書を作成しません。
なお、再下請負通知書は下請業者と契約を締結したら、工事が着工される前に作成し提出する必要があります。
通常は直接契約を結んだ業者に提出するため、一次下請の場合は元請業者に、二次下請の場合は一次下請が提出先です。
ただ、最終的に再下請負通知書が必要となるのは元請業者であるため、二次下請以下の業者が元請業者に提出しても問題ありません。
工事の途中で下請契約に変更が生じた場合には、新たに再下請負通知書を作成する必要があります。
再下請負通知書を提出するタイミング
再下請負通知書の提出は「工事着工の2週間前まで」など工事の着工前に期限が指定されているケースが一般的です。
元請業者による監督に必要な資料であり、元請業者は工事の計画段階で下請業者から集めなければなりません。
もし期限に間に合わなかった場合、現場に入れず、工事に着工できなくなる可能性もあるため注意しなければなりません。
再下請負通知書の記載内容や添付書類に修正がある場合は、修正後の事項とその年月日を記載してすみやかに再提出しましょう。
再下請負通知書の提出後、受領した一次下請業者がとりまとめて下請負業者編成表を作成し、元請業者へ提出します。
再下請負通知書と施工管理台帳の違い
再下請負通知書と施工管理台帳は、作成する業者や記載内容、提出先などが異なります。
施工管理台帳は、工事の全体像をまとめた書類であり、元請業者が作成します。
施工管理台帳には、工事に関わるすべての施工業者の名称や施工範囲などが記載されています。
一方、再下請通知書は再下請業者が作成し、直近上位の下請業者へ提出します。
たとえば、二次下請業者は一次下請業者、三次下請業者は二次下請業者が提出先です。
内容は、再下請負の工事名称や工事内容が中心です。
再下請負通知書はあくまで施工管理台帳の一部であり、元請業者が全体の発注状況を把握するために作成します。
再下請負通知書が必要なケース
再下請負通知書を作成する必要があるのは、下請契約を締結した業者がいる場合です。
一次下請と下請契約を締結した二次下請、二次下請と契約した三次下請・・・と、すべての下請業者が作成します。
自社より下に下請業者がいない場合でも再下請負通知書を作成しなければなりません。
再下請負通知書のフォーマット
再下請負通知書のフォーマットは、国土交通省のサイトからダウンロードできます。
ダウンロードしたフォーマットに記入して、提出してください。
再下請負通知書の書き方
再下請負通知書に記入する主な項目は、以下の通りです。
- 直近上位の注文者名等
- 自社に関する情報
- 再下請負関係の記載事項
再下請負通知書の記入例を紹介しながら、書き方を解説します。
直近上位の注文者名等
参照元:国土交通省
直近上位の注文者とは、この通知書を作成する会社に下請けの依頼をした事業者です。
一次下請の場合は元請業者、二次下請の場合は一次下請が該当します。
なお、自社の情報は「報告下請負業者」に記載します。
印鑑の押印は、建設業法上は特に必要とされていません。
再下請負通知書の提出先によっても取り扱いが異なるため、元請業者に確認し、必要がある場合は押印をしておきましょう。
発注者や元請業者の規定により、独自の書式で押印を求めるケースもあります。
自社に関する事項
自社に関する事項の記入する項目は、以下の通りです。
- ①工事名称及び工事内容・工期・契約日
- ②建設業の許可
- ③人員配置に関する記載
- ④健康保険等の加入状況
それぞれの記入する内容について詳しく解説します。
①工事名称及び工事内容・工期・契約日
参照元:国土交通省
工事の名称及び内容は、建設工事全体ではなく、自社が担当する工事のみ記載します。
たとえば、建設工事の名称が「○○駅前ビル建設工事」であるとします。
元請業者ではこの名称を使用しますが、下請業者はその工事の一部を任されるケースがほとんどです。
再下請負通知書には「○○駅前ビル建設工事 給排水衛生設備工事」といった担当する工事の内容に合わせた名称で記入しましょう。
工期には、自社が工事を行う期間を記載します。
工事の開始前に作成する書類であり、作成時点では見込みの期間を記入してください。
なお、工事の進捗状況によっては工期が延長されるため、延長が確定した時点で改めて作成し直す必要があります。
注文者との契約日には、直近上位の注文者と契約した日を記載します。
②建設業の許可
②の建設業の許可の項目には、会社や営業所として取得している建設業許可の内容を記載します。
複数の再下請負通知書を作成する場合でも、記載内容に変わりはありません。
ただ、複数の建設業許可を有する会社の場合、施工する工事の内容によって必要な建設業許可が変わる可能性があります。
どの建設業許可を記載しなければならないのか、提出先へ確認しておきましょう。
③人員配置に関する記載
再下請負通知書を作成するうえで最も難しいのが、人員配置に関する記載事項です。
以下の人員配置を記載する必要があります。
- 監督員名
- 現場代理人名
- 主任技術者
- 安全衛生責任者名
- 安全衛生推進者名
- 雇用管理責任者名
- 専門技術者名
監督員名とは、再下請業者が契約内容に沿って施工しているか監督するために直近上位の注文者から選任された人です。
上記のうち、主任技術者と雇用管理責任者名は必ず記載する必要があります。
主任技術者とは、工事現場で施工する際に技術上の管理を行う人です。
主任技術者には、工事の種類によって必要とされる資格が定められています。
なお、主任技術者には「専任」と「非専任」があります。
専任の主任技術者を置く必要があるのは、以下の要件をともに満たす工事です。
- 公共性のある施設や工作物、多数の人が利用する施設などの建設工事である
- 工事一件の請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上である(令和5年1月1日より施行)
上記以外の金額が小さな工事や住宅の工事などは、いくつかの工事現場を兼任する主任技術者を置けます。
雇用管理責任者とは、会社の労務管理を行っている人です。
雇用管理責任者は、通常は会社の代表者や人事担当者などが該当します。
現場に常駐する人である必要はなく、他の責任者との兼務が認められます。
一方で、監督員名や現場代理人名、安全衛生責任者名、安全衛生推進者名、専門技術者名は基本的に空欄のままでも構いません。
ただ、公共工事の場合は、現場代理人が現場に常駐する必要があります。
安全衛生責任者は無記名となっていても問題ありません。
しかし、実際には現場に常駐する人から選任する必要があります。
④健康保険等の加入状況
④の欄は、会社が健康保険や厚生年金、雇用保険に加入しているかどうかを記載します。
原則として記載内容は変わらないため、以前に作成した再下請負通知書を参考にして記載しましょう。
再下請負関係の記載事項
ここからは、通知書の右側にあたる《再下請負関係》を記載する際のポイントを紹介します。
参照元:国土交通省
基本的な記載内容は《自社に関する事項》と変わりはありません。
①~④の番号は、それぞれ《自社に関する事項》の番号と対応しています。
この中で注意が必要なのは、①の工事名称及び工事内容、工期、契約日の項目です。
①の欄には、再下請負業者に依頼した業務の内容を記載するため、自社に関する事項に記載した業務の一部を記入しましょう。
工期や契約日も、自社と再下請負業者との契約内容を記載します。
なお、自社より下に再下請負業者がいない場合は、《再下請負関係》の全体に斜線を引きます。
再下請負通知書の記入例
再下請負通知書の記入例です。
具体的に記入する内容については、ここまでにご紹介した記入方法と記入例のほかに、次の資料を参照するとよいでしょう。
- 直近上位の注文者と締結した契約書
- 施工体制台帳
注文者との契約書は再下請通知書の添付書類として提出しますが、内容に矛盾が生じないように注意しながら記入しましょう。
再下請負通知書を作成した後の流れ
再下請負通知書を作成後、原則として直近上位の注文者へ提出します。
- 一次下請業者の場合:元請業者へ提出
- 二次下請業者の場合:一次下請業者へ提出
提出後、一次下請業者が二次以下の下請関係をとりまとめて下請負業者編成表を作成し、元請会社へ提出します。
最終的には元請業者に提出されるため、元請業者に直接提出するケースもあります。
提出先については、直近上位の注文者の指定に従いましょう。
提出方法は、メール、郵送、直接持参など、提出先の指定によって異なります。
提出期限は「工事着工の2週間前」などの指定がされるため、遅れないように提出しましょう。
二次・二次以降の下請けの提出書類
二次・二次以降の下請業者は、主に次のような書類を提出します。
- <建設業許可を取得している場合>
- 建設業許可証
- 主任技術者の資格証明書
- <自社が再下請負業者と契約締結した場合>
- 再下請負通知書
- 再下請負業者との契約書、注文書、請書(約款付き)など
- <その他>
- 労務安全衛生に関する誓約書
- 作業員名簿
- 社会保険加入状況調査票
- 新規入場時等教育実施報告書
- 建退共辞退届(辞退する場合)
- 建設機械や車両などの使用届(使用する場合)
- 外国人のパスポートと在留カード(外国人が就労する場合)
- 作業員の免許証や資格証など(要件として求められる場合)
まとめ
再下請負通知書は、すべての下請業者が作成する書類です。
対象は「下請契約をしている業者」であるため、たとえば資材の搬入業者や現場の警備会社などは該当しません。
再下請負通知書の提出を受けた一次下請業者は下請関係をとりまとめ、下請負業者編成表を作成して元請業者へ提出します。
大規模な建設工事になるほど、下請関係も複雑化し、元請業者の管理監督も難しくなります。
もし再下請負通知書の提出が遅れてしまうと、工事全体のスケジュールに影響する可能性もあるため注意しましょう。
記載内容については、直近上位の注文者、自社に関する情報、再下請負関係の記載事項が中心になります。
再下請負通知書の書式は様々なタイプがありますが、元請業者の指定する書式を使用します。
直近上位の注文者との契約書や施工管理台帳を参照しながら、矛盾が生じないように注意して記入しましょう。