この記事でわかること
- 再下請負通知書とはどのような場合に必要な書類かがわかる
- 再下請負通知書を提出しなければならない業者の区分がわかる
- 再下請負通知書の記載方法や記入例を確認することができる
再下請負通知書という書類について聞いたことはあるでしょうか。
工事関係の書類の中でも、下請けとの関係を明らかにするために作成する重要な書類の1つです。
しかし、工事に関わる業者は数多くいるため、そのすべての業者に関係するものなのかわからない方もいることでしょう。
そこで、再下請負通知書を提出しなければならない業者の区分や、その記載方法について確認していきましょう。
再下請負通知書とは
工事を始める前に作成しなければならない安全書類と呼ばれる書類には、施工体制台帳など多くの書類が存在します。
その中の1つである再下請負通知書は、一次下請以下の下請契約についてその契約内容を記載し、元請に報告する書類です。
一次下請と二次下請、二次下請と三次下請といった形で、下請契約を締結している業者間の契約内容を記載します。
再下請負通知書を作成する目的は、元請の建設業者がすべての工事業者を把握するためです。
この書類によって、安全な工事が適切に行われているのかを確認することができるのです。
安全書類の1つである施工体制台帳は、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が作成するものです。
施工体制台帳の中の書類として、再下請負通知書が作成されます。
施工体制台帳は、下請負契約の総額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合に作成が義務付けられるものです。
再下請負通知書は下請業者が作成するものであり、施工体制台帳は元請業者が作成するという点で大きな違いがあります。
再下請負通知書が必要なケース
再下請負通知書を作成しなければならないのは、下請契約を締結した下請業者です。
作成義務があるのは、元請業者と直接契約を締結している一次下請だけではありません。
一次下請と下請契約を締結した二次下請、二次下請と契約した三次下請・・・と、すべての下請業者が作成しなければなりません。
また、自社より下に下請業者がいない場合でも再下請負通知書を作成し、提出しなければなりません。
再下請負通知書は直接工事を行う業者が提出する
再下請負通知書を作成しなければならないのは、元請業者と建設工事の下請契約で関係のある下請業者です。
建設工事には、元請業者と資材の納入に関する契約を締結している資材業者や、警備を行う警備業者が関わっています。
また、測量業者や運送業者なども、建設工事には欠かせません。
しかし、これらの業者は元請業者や一次下請以下の下請業者と下請契約を締結するわけではありません。
そのため、建設工事に関係する業者であっても、下請業者以外は再下請負通知書を作成する必要はないのです。
なお、再下請負通知書は下請業者と契約を締結したら、工事が着工される前に作成し提出しなければなりません。
通常は直接契約を結んだ業者に提出するため、一次下請の場合は元請業者に、二次下請の場合は一次下請となります。
ただ、最終的に再下請負通知書が必要となるのは元請業者であるため、二次下請以下の業者が元請業者に提出しても問題ありません。
工事の途中で下請契約に変更が生じた場合には、新たに再下請負通知書を作成しなければなりません。
この場合も、元請業者に直接再下請負通知書を提出しても問題ありません。
再下請負通知書の書き方
再下請負通知書には、どのような内容を記載することとなるのでしょうか。
実際の記載例を確認しながら、書類の作成方法を確認していきましょう。
再下請負通知書のフォーマット
参照元:国土交通省
再下請負通知書は、A3用紙1枚からなるものです。
A3用紙の左側(赤枠で囲んだ部分)には、この通知書を作成する会社の自社の状況について記載します。
一方、A3用紙の右側(青枠で囲んだ部分)には、下請けを発注した下請会社のことについて記載します。
基本的なことですが、同じような記載事項が並んでいるため、間違えないようにしましょう。
直近上位の注文者名等
参照元:国土交通省
直近上位の注文者とは、この通知書を作成する会社に下請けの依頼をした事業者のことです。
一次下請の場合は元請業者が該当しますし、二次下請の場合は一次下請が該当します。
ここに書くのは、自社の情報ではなく注文者名であるため、注意が必要です。
なお、自社の情報については【報告下請負業者】に記載します。
①工事名称及び工事内容・工期・契約日
ここからは、通知書の左側にあたる《自社に関する事項》の記載についてのポイントを解説します。
まずは、工事名称及び工事内容から始まる①の項目です。
参照元:国土交通省
工事の名称や工事の内容、工期、契約日について記載していきます。
工事の名称及び内容は、その建設工事全体を指すものではなく、自社が実際に担当する工事についてのみ記載します。
建設工事自体の名称は、「○○駅前ビル建設工事」であるとします。
元請業者ではこの名称をそのまま使いますが、下請業者はその工事の中の一部の建設工事を任されることがほとんどです。
そこで、その工事の中身に合わせた名称を使う必要が出てきます。
たとえば「○○駅前ビル建設工事 給排水衛生設備工事」といった形です。
工期には、自社が実際に工事を行う期間を記載します。
工事が始まる前に作成する書類ですから、作成時点ではあくまで見込みの期間を記入すればいいことになります。
なお、工事の進捗状況によっては工期が延長されることがあります。
この場合は、その延長が確定した時点で改めて作成し直す必要があります。
注文者との契約日には、直近上位の注文者と契約した日を記載します。
②建設業の許可
②の建設業の許可の項目には、会社や営業所として取得している建設業許可の内容を記載します。
工事ごとに特定の記載内容ではないため、複数の再下請負通知書を作成する場合でも、記載内容に変わりはありません。
ただ、複数の建設業許可を有する会社の場合、その工事の内容によって必要な建設業許可が変わる可能性はあります。
どの建設業許可を記載しなければならないのか、よく確認して間違えないようにしましょう。
③人員配置に関する記載
再下請負通知書を作成するうえで最も難しいのが、この人員配置に関する記載事項です。
監督員名、現場代理人名、主任技術者、安全衛生責任者名、安全衛生推進者名、雇用管理責任者名、専門技術者名を記載します。
この中で、必ず記載しなければならないのが、主任技術者と雇用管理責任者名です。
主任技術者とは、工事現場で工事を施工する際に技術上の管理を行う人のことです。
工事の種類によって必要とされる資格が定められており、その資格者でなければ主任技術者となることはできません。
なお、主任技術者には「専任」と「非専任」があります。
専任の主任技術者を置く必要があるのは、以下の要件をともに満たす工事です。
- 公共性のある施設や工作物、多数の人が利用する施設などの建設工事である
- 工事一件の請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上である
このような工事の場合は、工事現場に常駐する専任の主任技術者が必要です。
これ以外の金額が小さな工事や住宅の工事などは、いくつかの工事現場を兼任する主任技術者を置くことができます。
雇用管理責任者とは、会社の労務管理を行っている人を指します。
通常は会社の代表者や人事担当者などが該当すると考えられるため、その人の名前を記載します。
現場に常駐する人である必要はないうえ、他の責任者と兼務することも認められます。
一方、監督員名、現場代理人名、安全衛生責任者名、安全衛生推進者名、専門技術者名は基本的に空欄のままでも構いません。
ただ、公共工事の場合は現場代理人が現場に常駐しなければならないことには注意が必要です。
また、安全衛生責任者は無記名となっていても問題ありませんが、実際には現場に常駐する人から選任しなければなりません。
④健康保険等の加入状況
会社が健康保険や厚生年金、雇用保険に加入しているかどうかを記載します。
事実にもとづいて記載すればいいため、内容はそれほど難しいものではありません。
どの工事においても記載内容は変わらないため、以前のものを参考にすることもできます。
再下請負関係の記載事項
ここからは、通知書の右側にあたる《再下請負関係》を記載する際のポイントを紹介します。
下の図を見ていただけば分かるとおり、基本的な記載内容は《自社に関する事項》と変わりはありません。
参照元:国土交通省
①~④の番号がふってありますが、それぞれ《自社に関する事項》の番号と対応しています。
この中で注意が必要なのは、①の項目です。
①には、再下請負業者の会社名や代表者名などを記載していきます。
これらの記載内容は難しいものではないため、確認しながら間違えないように記載すれば問題ないでしょう。
問題は、工事名称及び工事内容、工期、契約日の項目です。
ここには、再下請負業者に依頼した業務の内容を記載することとなるため、自社に関する事項に記載した業務の一部を記載します。
工期や契約日も、自社と再下請負業者との契約内容を記載するため、自社に関する事項に記載した内容とは異なります。
この点、事実にもとづいた記載を行うようにしましょう。
なお、自社より下に再下請負業者がいない場合は、《再下請負関係》の全体に斜線を記載します。
まとめ
再下請負通知書は、工事現場で下請業者が工事を行うにあたって工事の開始前に作成が義務付けられているものです。
記載内容に特別難しいものはありませんが、記載を間違えると元請業者やほかの下請業者に迷惑をかけてしまうこともあります。
また提出漏れをしないようにするためにも、下請業者は必ず作成しなければならないことを覚えておきましょう。