会社設立の前に、会社が潰れていく理由を知っておこう
言い古された言葉ですが、非常に重みのある言葉に孫子の「彼(敵)を知り己を知らば殆(あや)うからず」ということわざがあります。
西洋には、19世紀のドイツ帝国宰相ビスマルクの言葉に「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という名言があります。
また、マーケティングの世界にはSWOT分析なる手法があります。
いずれも自分を知り、相手を知ることの重要性を説いています。
そして相手を知る中には失敗も含まれており、失敗こそ貴重なものと、ビスマルクは、その重要性を「賢者は歴史に学ぶ」と表現しています。
愚かで失敗する者は自分がその失敗を経験しなければ、教訓にできないが、
賢くて勝利する者、すなわちビジネスで成功する者は過去の失敗した歴史から学び、同じ失敗はしないと言っています。
(ビジネス部分はビスマルクがビジネスマンであったら、という仮定です)
起業しようと燃えている起業家にとっては、縁起でもないかもしれませんが、
過去の起業家、経営者の失敗は同じ過ちを繰り返さない貴重な教訓です。
ここでは、その失敗のまとめを紹介します。
失敗事例から見えること
経済産業省は、ベンチャー企業を対象にした平成19年度創業・起業支援事業で、失敗、トラブル、ヒヤリとした内容の調査を実施し、
公開が許可された83社(内23社は倒産を経験)についてWeb上にまとめています。
それによると、失敗理由は以下の通りとなっています。
1位 売上の減少(40%)
2位 資金ショート(29% 注1)
3位 商品・サービスの中断・中止(8%)
4位 製造・技術・開発トラブル・遅延など(6% 注2)
(注1、注2は、公開されているその他の失敗理由から通商産業省の分類データに筆者の判断で付け加えて比率を計算しています)
経済産業省のデータから見えるベンチャー企業の失敗理由
上述のデータを大まかに分けると1位の「売上の減少」は、最終的に資金不足(2位)につながります。
3、4位は製造関係です。
資金関係からは、放漫経営や無理な設備投資、債権回収の遅れ、営業力不足などが見えてきます。
資金不足となる原因は正確には不明確ですが、何らかの理由で資金不足を招くことが失敗の原因の約7割を占めると言えます。
資金繰り、資金手当ては、最悪のケースを考えて余裕を持つ必要性があります。
3,4位の製造・開発関係では83社中、製造会社が42社なので、
やはり製造会社は品質の良いモノづくり、そして製品競争力などマーケティングを徹底して行うことが重要なことを示しています。
経済産業省は、危機に陥った時期に関する調査も行っており、
それによると成長・拡大期が47%ともっとも多く、次に成長初期が36%で、萌芽期(初期)は16%という結果です。
ここにも、成長段階に入り資金需要が旺盛になってからの資金調達対策の不足や
売掛債権の回収対策の不備から資金ショートへつながっている様子が見えます。
また、初期の段階の失敗が少ないことは、初期は経営がどうなるかが不安で経営に対する判断が慎重で無理をしないと推測することもできます。
しかし、成長期に入ると、強気の無理な設備投資など経営判断が甘くなっていることが推測されます。
ベンチャー企業の失敗理由のまとめ
上記の経済産業省のデータおよび別のベンチャー企業の失敗事例から失敗理由をまとめると、以下になります。
・収益確保への執着心の不足
・売るだけで満足して債権回収を軽視
・コスト管理の甘さ
・技術過信・競合軽視
・価格戦略の甘さ
・社長の独断専行
・ハイリスク経営・急激な事業拡大
・撤退の勇気の無さ・不毛な執着心の強さ
・社長の能力不足・会社の私物化
まとめ
多くの起業家が起業する一方、会社設立後、夢破れて撤退・倒産する会社も多く存在します。
撤退・倒産理由は、さまざまな要因が複雑に絡まっているので単純ではないですが、
失敗理由を項目として会社設立前に知っておくことは経営に無駄には決してなりません。
少しでも、歴史に学び、歴史の失敗を繰り返さないことが可能になるはずです。