会社設立を自分でするか専門家に依頼するか?かかる費用・必要な手続きを解説

会社設立を自分でするか、専門家に依頼するか?かかる費用・必要な手続きを解説

このエントリーをはてなブックマークに追加
会社設立をする際、多くの起業家は設立手続きを自分で行うか、それとも専門家に依頼するか迷うことでしょう。

会社設立を自分で行う場合と専門家に依頼する場合とでは、かかる時間や費用が大きく異なります。

また、専門家に依頼する場合も、どの手続きをどの専門家に任せるべきかの判断は簡単ではありません。

この記事では、設立手続きのうち何を自分で行い、何を専門家に頼むかの王道4パターンを解説します。基本的なパターンや手続きの流れを押さえて、どのプロセスであれば自分でできるか検討してみてください。

お問い合わせはこちら

会社設立を検討する際に知っておきたい用語

会社設立を検討するにあたって、知っておきたい用語をまとめました。これらは、設立手続きの手間と費用を比較するうえで重要な用語となるため、しっかり把握しておきましょう。

とくに「電子定款」と「税理士の顧問契約」は、代行費用を安く抑えるための重要なポイントとなります。

用語 概要
定款の収入印紙代 紙の定款の認証手続きで必要な収入印紙代
定款認証手数料 定款認証時に公証人へ支払う手数料
登録免許税 設立登記や変更登記などにかかる税金
電子定款 電子署名付きのPDFファイル形式で作成した定款
税理士顧問契約 税務に関する書類作成や税務調査への対応など、税理士によるサポートを継続的に受けるための契約

【5ステップ】会社設立を自分でする流れ

ここでは、自分で会社を設立する流れを解説します。注意点があるので、確認しながら進めていきましょう。

1.会社の基本事項を決める

会社を設立するにあたっては、会社名(商号)など多くの事項を決めなければなりません。本店所在地や資本金の額、代表取締役などの役員の構成、事業目的など、登記や定款の作成に必要なものを決めていきます。

2.会社の実印を作成する

会社の商号が決定したら、その商号を使った印鑑を作成しましょう。

これは、法務局で会社の設立登記を行うときに、会社の実印が必要になるためです。会社の実印とするためには、法務局で登録しなければならないため、印鑑届書を作成して提出します。

なお、会社の設立登記をオンラインで行う場合は、実印は不要です。しかし、実印自体はさまざまな場面で必要となるため、設立登記で必要ない場合でも作成しておくとよいでしょう。

3.定款を作成して認証を受ける

定款とは、会社の基本事項を定めるための書類であり、「会社の憲法」と呼ばれることもある非常に重要な書類です。定款は、すべての会社が作成しなければなりません。

定款を作成する際には、必ず記載しなければならない事項があります。

この6つの項目が記載されていないと定款は無効になってしまうので注意しましょう。

定款を紙面で作成した場合は、4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。一方、電子定款を作成した場合は、収入印紙は必要ありませんが、専用の機器やソフトが必要です。

4.出資金(資本金)を払い込む

会社の発起人となった人は、定款を作成した日以後に、出資金を払い込みます。

この時点ではまだ会社名義の銀行口座を開設することはできないため、出資金は発起人の個人名義の口座に払い込みます。発起人が複数人いる場合は、その代表者の口座に払い込みます。

なお、出資金を払い込むための口座は新たに開設する必要はなく、すでに使っている口座に出資金の払込みを行うことができます。

5.登記申請書類を作成して申請する

会社の設立登記は、その本店所在地を管轄する法務局で行います。登記申請には、法務局で用意されている「設立登記申請書」のほか、一般的に下記のような添付書類が必要となります。

法人設立登記の申請日が、会社設立日となります。会社の設立日を特定の日にしたい場合、法務局の休業日である土日祝日には設定できないことに注意しながら、希望日に登記申請できるように準備を進めていきましょう。

設立登記後に必要な手続き

会社設立後、すぐに行うべきこととして下記の手続きがあります。

税務署への届出

会社を設立したら、その本店所在地を管轄する税務署に「法人設立届出書」を提出します。法人設立届出書は、国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署の窓口で入手して作成します。

法人設立届出書の提出期限は、会社を設立してから2カ月以内です。なお、法人設立届出書には定款を添付する必要があります。

地方自治体への届出

税務署だけでなく、都道府県や市町村にも法人設立届出書を提出しなければなりません。

提出する届出書の用紙は、それぞれのホームページからダウンロードするか、各自治体の役場で入手することができます。

なお、地方自治体への届出書の提出期限は、それぞれの自治体によって異なるため、期限を過ぎないように注意しましょう。

年金事務所への届出

会社は社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務があるため、たとえ会社の役員が代表者1人だけであっても、加入手続きを行う必要があります。

社会保険の届出の提出期限は、会社設立登記が完了してから5日以内です。非常に期限が短いため、登記が完了したらすぐに届出書を提出できるように準備しておきましょう。

労働基準監督署・ハローワークへの届出

会社は従業員を雇用すると、労災保険や雇用保険の加入手続きが必要になります。労災保険へ加入するためには、労働基準監督署で手続きを行います。

労働保険の保険関係成立届の提出は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内に行わなければなりません。

また、雇用保険の手続きは、ハローワークで行います。従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

株式会社と合同会社の手続き上の違い

株式会社と合同会社の設立手続きには、いくつか違いがあります。

定款認証の有無

株式会社の場合は、定款を作成したら公証役場で公証人による認証を受けなければなりません。これに対して、合同会社は定款の作成は必要ですが、認証は必要ありません。

登録免許税の金額

会社の設立登記を行う際は、法務局で登録免許税を納付しなければなりません。

株式会社の登録免許税は、15万円または資本金額×0.7%のいずれか高いほうとなるため、最低でも15万円の登録免許税がかかります。

一方、合同会社の登録免許税は、6万円または資本金額×0.7%のいずれか高いほうとなるため、最低でも6万円の登録免許税がかかります。

これらの違いから、会社設立にかかる費用は以下のようになります。

株式会社 合同会社
定款の収入印紙代 4万円(紙)
※電子定款なら0円
0円
定款の認証手数料 資本金100万円未満かつ「発起人が3人以下、法人出資でない、出資者が発起人のみ、取締役会がない」:1万5,000円
資本金100万円未満で上記の4条件を満たさない:3万円
資本金100万~300万円未満:4万円
資本金300万円以上:5万円
0円
定款の謄本交付手数料 謄本手数料1枚250円
(おおむね8枚2,000円くらい)
0円
登録免許税 15万円と「資本金×0.7%」のどちらか高いほう 6万円と「資本金×0.7%」のどちらか高いほう
実印の作成や各種証明書の発行手数料などの実費 約1万円 約1万円
合計 約23万2,000円 約7万円

合同会社の設立では、公証人による原始定款の認証は不要です。ただし、紙で定款を作成した場合は収入印紙代4万円が必要となります。

会社設立王道の4パターン比較

会社設立時の王道パターンは、主に次の4つに分けられます。ここでは、各パターンでどれくらいの費用が発生するのかをシミュレーションしてみましょう。なお、便宜上、4パターンとも資本金の額が300万円であると仮定します。

1.自分で定款の作成と会社設立の手続きを行う場合

会社設立の手続きをすべて自分で行うパターン1では、専門家による代行費用がかかりません。

ただし、会社設立をすべて自分で行う場合でも、紙の定款を作成するか電子定款を作成するかによって、収入印紙代4万円が必要かどうかに違いが出ます。

紙の定款
定款の収入印紙代 40,000円
定款認証手数料 ※ 52,000円
登録免許税 150,000円
電子定款作成・行政書士手数料 0円
合計 242,000円

電子定款
定款の収入印紙代 0円
定款認証手数料 ※ 52,000円
登録免許税 150,000円
電子定款作成・行政書士手数料 0円
合計 202,000円

※認証手数料と謄本交付手数料の合計額。
認証手数料は、資本金が100万円未満かつ「発起人が3人以下、法人出資でない、出資者が発起人のみ、取締役会がない会社」の場合は1万5,000円、資本金100万円未満でこれら4条件を満たさない場合は3万円となります。資本金が100万円以上300万円未満の場合は4万円、300万円以上の場合は5万円です。

2.自分で会社設立の手続きを行い、電子定款の作成を専門家に依頼する場合

続いては、非常に手間がかかる電子定款の作成のみ専門家に依頼するパターンです。

電子定款の作成のみであれば安く対応してくれる専門家もいます。Webで「電子定款代行」などと検索すれば、電子定款を作成してくれる代行業者を探せます。手数料の相場は約4万円ほどです。

電子定款の作成を専門家に依頼
定款の収入印紙代 0円
定款認証手数料 52,000円
登録免許税 150,000円
電子定款作成・行政書士手数料 44,000円
合計 246,000円

3.自分で電子定款を作成し、専門家に会社設立の手続きを依頼する場合

電子定款を自分で作成したとしても、その他の設立手続きを専門家に依頼するとさまざまな手数料が発生します。

電子定款の作成だけを専門家に依頼する場合、その手数料は約4万ほどでした。しかし、会社設立のその他の手続きまでお願いすると、合計5万円以上の依頼料がかかります。


専門家に会社設立手続きを依頼
定款の収入印紙代 0円
定款認証手数料 52,000円
登録免許税 150,000円
電子定款作成・行政書士手数料 44,000円
司法書士手数料 11,000円
合計 257,000円

電子定款の作成以外を専門家に依頼したとしても、自分ですべての設立手続きをした場合(紙の定款を作成)と比べて、費用は1万5,000円程度の差しかありません。

実質1万5,000円で会社設立の手続きを専門家に丸投げできると思えば、決して高くはないでしょう。複雑な申請書類などを自分で作成して間違うリスクも、専門家に依頼することで避けられます。

4.専門家に電子定款作成・会社設立手続きを依頼する場合

Webで「会社設立」と検索すると、「会社設立を0円で」といった記載を見かけることも多いかと思います。これは、税理士顧問契約を前提とした会社設立であれば、手数料0円で会社設立手続きを行ってくれるサービスです。

専門家に電子定款の作成と設立手続きの両方を依頼(ベンチャーサポートの例)
定款の収入印紙代 0円
定款認証手数料 ※ 52,000円
登録免許税 150,000円
電子定款作成・行政書士手数料 0円
司法書士手数料 0円
特別割引 -100,000円
合計 102,000円

自分で会社を作ろうという段階で税理士顧問契約を持ち出されると、多少気後れしてしまう部分もあるかもしれません。

しかし、たとえばベンチャーサポート税理士法人では、税理士との顧問契約が本当に必要かどうかを適切にご判断いただくためにも、会社設立を検討されている方に、事業内容、売上、取引先、資金繰りなどの見込みもうかがっております。

創業融資や助成金・補助金の申請サポートなど、会社設立を自分で行うときに悩みがちな手続きについても相談可能です。その後で「税理士に依頼したときのメリット」をお伝えし、最終的に起業家の方に判断をいただきます。

関連動画

参考 : 会社設立・スタートアップに税理士は必要か?税理士に依頼するタイミング

https://vs-group.jp/tax/startup/new/search-timing/

会社設立の手続きを依頼できる専門家

会社設立の手続きを依頼できる専門家には、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などがいます。

これらのプロフェッショナルは、それぞれ異なる分野の専門知識を持ち、さまざまな手続きを代行することが可能です。

誰に依頼するかは、具体的にどの手続きを依頼するかによって決めるとよいでしょう。

税理士

税理士は税金の計算や申告書の作成など、税務に関する専門家です。

会社を設立すると、税務署に法人設立届出書を提出するなど、税務署に対する手続きも多くあるため、税理士に依頼すれば安心です。

また、起業段階では資金計画や重要な書類の準備が求められることが多く、税理士は税務に関するサポートを提供してくれます。

一方で、税理士は会社の設立登記に関する権限は有していないため、会社設立の手続きのすべてを依頼することはできません。とはいえ、依頼ができない手続きでもサポートはしてくれるため心配はいらないでしょう。

なお、税理士に依頼する場合、その後の税務顧問契約が前提となることがあります。この場合、会社設立に関する業務についての報酬が比較的安価になったり、先述したように0円になるケースもあります。

司法書士

司法書士は法務局で行う登記の専門家です。会社を設立した場合は、必ず法務局で会社設立登記を行わなければなりません。

司法書士に会社設立を依頼すれば、会社設立のすべての手続きを任せることができます。

また、会社設立の流れを詳しく把握しており、会社実印の作成やさまざまな書類作成についてのアドバイスを受けることもできるでしょう。

行政書士

行政書士は、役所に提出する多様な書類の作成を請け負うことのできる専門家です。会社設立では多くの書類を作成する必要があり、その書類作成業務を依頼することができます。

また、行政書士だけができる業務として、許認可の申請があります。飲食業や建設業などの業種で会社を設立しようとする場合、許認可を取得しなければなりません。

この許認可の取得手続きを専門家に依頼する場合、行政書士に依頼することになります。そのため、許認可の必要な業種で会社設立を考えている場合は、行政書士に依頼するメリットが大きいです。

注意点として、登記に関する業務は行政書士にはできないため、自分で行わなければなりません。

社会保険労務士

社会保険労務士は、社会保険に関する専門家です。

会社を設立したら、必ず社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければなりません。社会保険の手続きを確実に行いたいなら、社会保険労務士に依頼するとよいです。

ただし、社会保険労務士は会社設立の専門家ではありません。また、登記の手続きを依頼者に代わって行うこともできません。

会社設立の専門家ではないため、会社設立と社会保険の手続きは分けて考えるほうがいいでしょう。

会社設立を自分で行うか専門家にも相談しよう

会社設立の手続きは自分でもできますが、公証役場や法務局などでの慣れない手続きには時間がかかり、大変です。

一方で、すべてを専門家に任せると代行費用がかかる場合があります。ただ、効率的に正確な手続きができ、起業のアドバイスも得られるメリットもあります。

起業と同時進行で進める場合は、専門家へ相談するほうが効率的かもしれません。

ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立に関する無料相談を実施しています。税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。

 

会社設立5つの失敗例、
無知が招いた悲惨なスタートアップ
自分で会社設立を考えている人向けの
知っておくべき情報まとめ

このエントリーをはてなブックマークに追加

お問い合わせはこちら

戻る