最終更新日:2023/3/13
自営業とは?個人事業主やフリーランスとの違いやメリット・デメリットを紹介
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 自営業と個人事業主やフリーランスとの違いがわかる
- 自営業のメリットとデメリットがわかる
- 自営業の平均年収や業種・職種を知ることができる
自営業という言葉はよく知られており、どのようなものなのか簡単にイメージできるのではないでしょうか。
ただ、厳密にどのような人が自営業者なのか、個人事業主やフリーランスと何が違うのかまではわからないという人も多いかもしれません。
ここでは、自営業とはどのような人を指すのかを解説していきます。
また、自営業者の業種・職種や年収についてもご紹介します。
目次
自営業とは
自営業の定義とは、文字どおり自分で事業を営むことをいい、自分で事業を営んでいる人のことを自営業者といいます。
会社員のように、企業に雇用されて働くわけでもなく、また法人経営者のように特定の企業から報酬を受けるわけでもありません。
自分で店舗や事務所を運営し、顧客を獲得してその事業を行うことが一般的な自営業の形態となっています。
また、自営業者が1人で事業を営んでいることもあれば、家族と一緒に行っている場合も、また従業員を雇っていることもあります。
自営業と個人事業主・フリーランス・会社経営者との違い
自営業や自営業者とはどのようなことをいうのか、おおよその理解はできている方が多いでしょう。
さらに理解を深めるため、他の働き方と比較して自営業にはどのような特徴があるのかを確認していきます。
自営業と個人事業主の違い
自営業とよく似た言葉として使われるのが、個人事業主です。
個人事業主は、自営業の中でも法人化していない人のことをいいます。
個人事業主と自営業は似た意味を持つ言葉です。
それどころか、両者は重なる部分がある言葉でもあります。
個人事業主という場合、その言葉は個人として事業を営んでいる人を指します。
つまり、自分で事業を営む「個人」が個人事業主なのです。
これに対して、自営業とは自分で事業を営むこと全般を指します。
自営業という場合、事業を営む主体は個人だけでなく、株式会社や合同会社のような法人も含まれます。
自営業とフリーランスの違い
自営業とフリーランスも、同じような意味で使われることがありますが、本来は異なる意味を持ちます。
自営業とは、自身で独立して事業を営む人のことをいいます。
個人事業主やフリーランスのほか、独立して事業を行い会社を経営する人も、広い意味ではこの自営業に含まれます。
会社員やアルバイト・パートのほか、会社内で昇進して役員になったような人は、自営業には含まれません。
一方のフリーランスは、その働き方に注目して用いられます。
会社に所属して雇用契約を結ぶ従業員とは違い、会社と請負契約などの契約を結んで業務を行います。
特定の会社とだけ取引をすることもありますが、会社には属さず、自由な立場で会社との関係を築くこととなります。
自営業と会社経営者の違い
会社経営者は、会社の経営全般に関わる業務を委任されています。
労働の対価として報酬を受け取るわけではなく、会社の経営を行った対価として報酬を受け取るのです。
仮に、会社の経営がうまくいかない時には報酬を大幅に減額したり、場合によっては報酬ゼロになることもあります。
そのため、会社経営者は会社員より自営業に近いということになります。
実際、起業して会社を設立した人の場合は、自営業であり会社経営者であるということになるのです。
ただ、会社役員が会社から受け取る報酬は、税法上は「給与所得」であり、その面では会社員と同じです。
会社で年末調整を受けることもでき、確定申告をする必要はないため、会社員との違いをそれほど感じないかもしれません。
自営業のメリット・デメリット
自営業と、フリーランスや会社経営者との違いをご紹介してきました。
それでは、自営業として働くことにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
自営業のメリット
- 所得に上限がない
- 自分の好きなことを仕事にできる
- 時間に縛られない働き方ができる
自営業は、自分で事業を営み、その事業で稼いだ分はすべて自分の所得となります。
事業を拡大したり、経営改善をしたりすることで利益が増えれば、その分、個人の所得が増えたことになります。
所得を増やすことに上限はありません。
どのように事業を展開するかを決めるのも自分次第であり、自分でどれだけでも所得を増やすことができる可能性があるのです。
また、時間に縛られない働き方ができるのも、自営業の良さです。
店舗や事務所を運営する上では営業時間や定休日がありますが、その時間や日数も自分で決めることができます。
たとえば午後だけの営業にするとか、週休3日にするといったことも、自分で決めることができるのです。
自営業のデメリット
- 事業の失敗などで収入がゼロになったり、収入が途絶えるもしくは借金を負ったりする可能性がある
- 確定申告を自ら行わなければならず手間がかかる
自営業をして自分で事業を行っても、必ずしもうまくいくとは限りません。
場合によっては事業に失敗し、借金を背負ってしまったり、収入がゼロとなってしまったりする可能性もあります。
会社員であれば、会社が存続している限り、プロジェクトに失敗しても給料がゼロになることはありません。
しかし、自営業の場合は、それが現実に起こる可能性があるのです。
また、自営業は税金の計算や社会保険の手続きなどを自身で行わなければなりません。
会社員の場合は、そのような手続きを会社に任せればよかったため、自営業となって自身で行うことは大きな負担となる可能性があります。
自営業の業種・職種
ところで、自営業として事業を行っている人は多くいますが、どのような業種・職種が多いのでしょうか。
自営業の形態や分類ごとに多い業種・職種をご紹介していきましょう。
店舗や事務所を構えて行う業種・職種
店舗や事務所を構えて行う自営業の職種・業種は次の通りです。
- 居酒屋、カフェ、レストランなどの飲食業
- コンビニエンスストア、セレクトショップなどの小売業
- 美容院やネイルサロン・エステなどの美容系
- 歯科や眼科といったクリニックや整骨院などの医療系
- 学習塾や料理教室などスクール系
店舗型の自営業として真っ先に思いつくのが、飲食店という人も多いのではないでしょうか。
居酒屋やカフェ、レストランなどの飲食店は、自営業を目指す人に昔から人気の職種です。
新型コロナウイルスの影響で苦しい時期もありましたが、徐々に回復傾向にあり、これまでにない新しい店舗も増えています。
また、小売店も自営業の業種として、古くから人気があります。
コンビニエンスストアの他、好みの雑貨や服だけを取り扱うセレクトショップを開業する人もいます。
美容院やネイルサロン・エステなどの美容系の店舗も、自営業の人が多い職種です。
美容師・理容師などの資格が必要なものもあれば、特別な資格が必要ないものもあります。
資格が必要なければ、比較的簡単に開業することができます。
資格が必要なものといえば、医療の店舗やクリニックも自営業の多い職種です。
マッサージ指圧師やはり師、灸師などの資格を取得してマッサージ店を開業する人もいます。
また、医師や歯科医師がクリニックを開業する場合も、自営業の1つとなります。
学習塾や料理教室などのスクールも、自営業に人気の職種です。
自分の知識や能力を生かして、自宅の一部を教室にするという人もいるでしょう。
店舗や事務所を構えるためには、最初にまとまった投資が必要となります。
医療系を除いては、特別な資格が必要なく、比較的開業までのハードルは低いといえます。
ただし、その分ライバルも多いため、何か特色がないと生き残ることが難しいかもしれません。
店舗が必要ない業種・職種
- 建設業などの職人
- 保険代理店や営業代行
- デリバリーを専門とする事業
自営業というと、店舗や事務所を構えて開業するのが一般的と思うかもしれません。
ただ、実際には店舗を必要としない自営業の業種も多くあります。
たとえば、建設業などの職人は、事務所を構える人もいますが、自宅で開業することもできます。
特に一人親方の場合は従業員もいないため、多くの人は自宅で開業しています。
また、保険代理店や営業代行といった職種も、事務所を構える必要はありません。
来客があるわけではなく、仕事をする場所も顧客の自宅や事務所などであるため、事務所を構える必要はないのです。
この他飲食業でも、デリバリーを専門とする事業者が増えてきています。
この場合、厨房設備やキッチンカーなどの設備を準備する必要はありますが、店舗型ほど大掛かりな投資は必要ありません。
女性が始めやすい業種
女性に人気のある自営業といえば、美容系の業種です。
特にエステやネイルサロンは開業しやすく、1人でも始めやすいことから、女性の起業の際に人気の職種です。
顧客も女性が多く、女性スタッフのいるお店は人気が出やすいことも、開業を後押しする要因となっています。
この他、自身の趣味や特技を生かした教室を開業することも、女性にはおすすめです。
特に料理教室やヨガ教室、ハンドメイドの教室などは、人気が高く始めやすいといえるでしょう。
こちらも、生徒になる人は女性が多いため、女性ならではの視点で人気のスクールとすることができるのです。
夫婦で始めやすい業種
夫婦で自営業を始める場合、人気があるのは飲食店です。
小さな店舗でもスタッフの人数が必要なため、夫婦2人でお店を始めるというケースが多いです。
この他、小売店も夫婦で始めることが多い業種となっています。
店頭の担当と、仕入れやネット販売の担当など、夫婦で役割を決めてお店を切り盛りしているケースもあります。
夫婦で自営業を始めるときに真っ先に選択肢となるのが、コンビニ経営です。
24時間365日店舗を運営する必要がありますが、夫婦で一緒に経営すれば比較的スムーズに対応することができます。
また、夫婦で飲食店を経営するのも選択肢となります。
飲食店はスタッフが何人も必要なため1人で始めることは難しいのですが、夫婦であれば人件費が必要ありません。
そのため、料理が好きな人、得意な人には特におすすめです。
このほか、ハウスクリーニングは店舗も大がかりな設備も必要ないうえ、仕事は常にあると期待されます。
利益率が高い傾向にあることから、安定した収入を得ることができると見込まれ、夫婦で始めるのにおすすめの業種です。
自営業の年収相場
これから自営業になろうと考える人にとって気になるのは、自営業の年収でしょう。
やり方次第で無限大の可能性があるといいましたが、まずは現実の相場を知っておきたいはずです。
まず、自営業全体の平均「所得」については、国税庁の統計が公表されています。
この所得とは、「年収-必要経費」で計算されるものであり、手取りの収入金額に近いものとなります。
この統計によれば、令和2年分の事業所得者の平均所得金額は、420万円となっています。
ただし、この平均所得金額は業種の区分なく、すべての事業所得者を対象に計算されたものです。
医師や歯科医師などの医療系、弁護士や税理士などの士業の平均は、この平均を大きく上回ります。
また、学習塾などの教育学習支援業も、その平均所得は高い傾向にあり、全体の平均を押し上げているのです。
そのため、業種ごとの平均所得では、この420万円という金額に届かないものもあります。
これらの金額は、あくまで参考程度に考えていただければよいでしょう。
まとめ
自営業という言葉は知っていても、どのような人が自営業なのか、会社員との違いは何なのか、詳しくは知らないという人もいるでしょう。
自営業を始めようと考えている人は、自営業のメリット・デメリットを知った上で、どのような職種で開業するのかを考えることが大切です。
また、これまでは店舗を構えるのが当たり前でしたが、店舗を構えずに手軽に開業する方法もあります。
どのような形態で開業するのがいいのか、これまでの常識にとらわれないような柔軟な発想も必要になってくるでしょう。