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最終更新日:2022/6/13

個人事業や法人経営をしている自営業者が支払う税金・節税方法まとめ

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 個人事業主として開業している人がどのような税金を支払うかわかる
  • 法人が支払うこととなる税金の種類やその概要を知ることができる
  • 自営業者が利用することができる節税対策について知ることができる

起業して個人事業主となった人や法人経営をする人にとって大きな悩みは、税金の負担の大きさです。

事業規模が拡大し利益が大きくなってくると、その分税金の金額も大きくなり、その支払いが大変になるのです。

ここでは、事業を行うとどのような税金が発生するのか確認していきましょう。

また、その税額を軽減することができる節税対策にはどのようなものがあるのか、ご紹介していきます。

個人事業をしている自営業者が支払う税金

法人ではない形式で事業を行っている人は、一般的に個人事業主と呼ばれます。

個人事業主は、どのような税金の計算を行い、いつ支払う必要があるのかでしょうか。

所得税

所得税は、事業を行っているかどうかに関係なく、すべての人が対象となります。

個人について、1年間に発生した所得(もうけ)に対してかかる税金のことを所得税といいます。

個人事業主の場合は、事業を行って発生した所得もすべて個人に帰属するため、所得税の額が大きくなります。

個人事業主の所得税の額は、確定申告によって自ら計算し申告する必要があります。

1年分の所得金額が確定したら、毎年2月~3月中に設けられている期間内に申告書を提出し、納税を行います。

すべての個人事業主は、この期間に申告・納税を行うこととなるのです。

所得税の特徴は、事業に関係のない所得についても、事業の所得とあわせて税額計算を行うことです。

たとえば株式取引を行ったり、保険金を受け取ったり、給与を受け取ったりした場合、それらはすべて所得税の対象となります。

所得税のもう1つの特徴は、税率が所得金額に応じて変動することです。

所得金額が大きくなるほど税率は高くなり、最高では45%にもなります。

住民税

住民税も、個人が1年間に獲得した所得に対して課される税金です。

所得税との違いは、納付先が地方自治体(都道府県・市町村)であること、そして税率が一律であることです。

住民税の税率は、所得金額にかかわらず10%とされているため、所得金額が少ない場合は所得税より大きな負担となります。

住民税の金額も、納税者からの確定申告によることとされています。

ただ、通常は住民税だけの確定申告を行うことはありません。

所得税の確定申告を行うと、住民税の確定申告も一緒に行ったものとされるため、改めて申告をする必要はありません。

事業税

事業税は、都道府県に納める地方税の1つです。

住民税との違いは、個人事業を行っている人だけに発生すること、そして290万円の控除額があることです。

そのため、所得金額が290万円以下であれば、事業税の額は発生しません。

事業税の税率は業種によって異なりますが、3%~5%となっています。

所得税の確定申告を行えば、都道府県が自動的に計算を行い、毎年8月末、11月末の2回に分けて納付します。

消費税

消費税は、事業上の預り消費税から支払消費税を差し引いて差引消費税の額を計算し、税務署に納付するものです。

消費税の申告・納付の時期は、基本的に所得税の確定申告の時期と同じですが、若干消費税の方が長めに設定されています。

すべての個人事業主が消費税を納税しなければならないわけではありません。

基本的に開業から2年間は免税事業者として納税義務は発生しません

その後は、2年前の売上高が1,000万円超となる場合には納税義務者となり、消費税の申告・納税が必要となります。

その他

固定資産税、自動車税などの税金は、事業に必要なものに対する税金であれば、必要経費とすることができます。

また、国民健康保険税を支払う場合は、その支払金額は所得控除の対象として確定申告することができます。

法人経営をしている自営業者が支払う税金

法人を設立して事業を行う場合、その法人は様々な税金を納税しなければなりません。

法人が支払う税金にはどのようなものがあるのか、ご紹介していきます。

法人税

法人を設立すると、事業から発生する所得はすべて法人に帰属します。

法人で発生した所得から、法人が納付する法人税の計算を行うこととなります。

法人は、その会社ごとに決算の時期を定めることとされています。

日本では3月決算の会社が多いのですが、それ以外の月でも自由に決めることができます。

決算期を決定したら、その決算期から2か月以内に法人税の額を計算し、税務署に申告・納付することとされています。

法人税の計算は、基本的にどのような取引で発生したものであっても、すべて同一の税率で計算することとされています。

資本金1億円以下の法人の場合、所得金額800万円までは19%、それを超える所得に対しては23.2%の税率で課されます。

所得税のように、所得金額に応じて40%を超えるような税率で課されることはありません。

法人住民税

法人住民税は、税務署に納税する金額として計算した法人税の額をもとに計算する地方税の1つです。

都道府県と市町村に納付することとされており、その法人の事業所が所在する地域に申告・納付しなければなりません。

法人住民税の税率は、都道府県が1%、市町村が6%となっています。

ただ、この税率はあくまで基本となるものであり、これより高い税率となっている自治体もあります。

法人税の申告を行う際に、同時に法人住民税の申告書を作成し、納税も行います。

法人事業税

法人事業税は、法人に発生した所得金額をもとに計算を行う税金の1つです。

所得金額の計算はほぼ法人税と同じですが、その納付先は都道府県となります。

税率は各自治体によって若干の違いがあり、また所得金額によって3段階程度に分かれています。

法人税や法人住民税と同じタイミングで申告書を提出し、納税を行うこととされています。

消費税

法人が行う課税取引について、預り消費税から支払消費税の額を控除し、差引消費税の額を計算します。

この差引消費税の計算を行い、税務署に対して申告・納税を行うこととされています。

個人事業主の場合と同じく、すべての法人が消費税の納税義務者となるわけではありません。

法人を設立した事業年度と翌事業年度は、原則として消費税の納税義務者とはなりません。

設立3期目以降は、前々事業年度の課税売上高が1,000万円超となった場合、消費税の納税義務が生ずることとなります。

その他

法人が所有する固定資産に対して課される固定資産税や自動車税は、法人の費用となるものです。

また、法人の設立時などに支払う登録免許税などの税金もあります。

自営業者ができる節税対策5つ

事業を行っていると、様々な税金が課されることがわかりました。

そこで、これらの税金の負担を少しでも減らすことのできる節税対策はないのでしょうか。

ここでは、事業者が知っておくべき節税対策をご紹介します。

青色申告特別控除(個人のみ)

確定申告を行う前に、青色申告承認申請を行って承認を得た個人事業主は、青色申告を行うことができます。

青色申告を行うと、所得金額を最大で65万円控除することができるため、大幅な節税を行うことができます。

ただ、青色申告を行うためには、複式帳簿による経理を行う必要があるため、その条件については事前に確認が必要でしょう。

少額減価償却資産(個人・法人)

個人・法人ともに認められる制度の1つです。

取得価額が30万円未満の固定資産について、年間300万円まで購入時の経費とすることができる制度です。

通常であれば、減価償却の計算を行う必要があり、全額を経費とすることができないため、大きな節税効果があります。

青色申告を行っていることが条件となるため、事前に青色申告承認申請書を提出しておく必要があります。

中小企業倒産防止共済(法人)

取引先の倒産により資金繰りが苦しくなった場合に、融資を受けられる制度です。

また、一定期間掛金を拠出すると、解約時に掛金が戻ってくるため、節税目的で加入する場合もあります。

掛金は最大で年間240万円とされており、全額を法人の費用とすることができます。

小規模企業共済(個人)

小規模企業の経営者や個人事業主が退職金の代わりに積み立てを行う制度です。

掛金は全額が所得控除の対象となるものであり、毎月7万円、年間84万円まで拠出することができます。

ただし、任意解約した場合は20年以上掛金を支払っていないと元本割れとなることに注意が必要です。

なお、法人の経営者も節税に利用することができますが、法人税の節税ではなく、経営者個人の所得税の節税となります。

その他の所得控除(個人)

生命保険料控除、iDeCo(個人型確定拠出年金掛金)、医療費控除などは、いずれも所得控除として、個人の所得金額を控除します。

そのため、これらの制度を利用することで、個人に対する所得税などの節税を行うことができるのです。

自営業が税金で注意すべきこと

自身で起業し、事業を行っている人は、税金に関してどのようなことを注意すべきなのでしょうか。

ここでは、その注意点について解説していきます。

消費税の納税義務が発生するタイミング

事業が拡大し、売り上げが伸びてくると、消費税の納税義務が発生することとなります。

消費税の納税義務が発生するのは、2年前の課税売上高が1,000万円を超えた年からとされるのです。

だからといって、消費税の納税を免れるために、売上高が1,000万円を超えないようにしても意味がありません。

事業を継続する以上、消費税の納税を免れることはできないのですが、初めて消費税が課される場合には、2つの注意点があります。

1つ目は、消費税の納税資金を確実に確保しておくことです。

消費税は、顧客から預かった金額であり、本来は事業資金の中に預かった消費税を含んでいることとなります。

そのため、預かった消費税を別に分けておくなどして、確実に納税することができるようにしておく必要があります。

2つ目は、消費税の課税方式を選択できることです。

2年前の消費税の課税売上高が5,000万円以下である場合、簡易課税方式と呼ばれる課税方法を選択することができます。

これによって、消費税の納税額が少なくなる場合もあるため、事前にある程度比較をしてみましょう。

そして、簡易課税制度を選択する場合には、税務署にその届出を提出しておくようにします。

法人成りするか個人事業のままか

事業規模が大きくなると、個人事業主としての所得金額も大きくなり、多額の所得税を納税しなければなりません。

そのような場合、事業を法人化することで、税負担を軽減できる場合があります

税負担が軽減できる最大の理由は、所得税と法人税の税率の差です。

所得税の場合、最大で45%の税率となりますが、法人税の場合は23.2%です。

そのため、事業所得の額が大きくなると、税負担に大きな差が出ることとなるのです。

なお、所得金額が小さな場合は、逆に所得税の方が税負担が少なく有利になる場合があります。

必ず法人成りした方がいいというわけではないことに、注意しましょう。

まとめ

起業して軌道に乗せるまで大変ですが、事業が軌道に乗ってもその後は税金の負担で苦労することとなります。

始めは個人事業として起業する人も多いでしょうが、この場合、どのタイミングで法人成りするのかも問題となります。

まずは個人事業主として、できることから節税対策を行っていくようにしましょう。

消費税の納税も大きな障害となることがあるため、計画的に申告や納税資金の準備などを進めるようにしましょう。

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