最終更新日:2022/6/13
個人事業主になったら国民健康保険に加入!手続き・必要書類や計算方法まとめ
ベンチャーサポート社労士法人 社会保険労務士。
大学を卒業後に、都内にある社会保険労務士事務所での勤務経験を経て、ベンチャーサポートに入社。
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この記事でわかること
- 個人事業主になった場合は国民健康保険に加入することがわかる
- 国民健康保険に加入する際の手続きの方法や必要な書類がわかる
- 国民健康保険に加入した場合の保険料の金額の求め方がわかる
日本では、すべての人が健康保険に加入することとされています。
個人事業主となった人はサラリーマンのように会社に所属してはいないので、自身で国民健康保険へ加入する必要があります。
そこで、国民健康保険に加入する際の手続きの方法や、必要となる書類について解説します。
また、国民健康保険料の計算方法を知り、いくらくらいの保険料になるのかも確認しておきましょう。
目次
個人事業主になったら国民健康保険に加入する
日本では国民皆保険制度がとられているので、サラリーマンも個人事業主も、健康保険に加入する必要があります。
ただ、サラリーマンが加入する社会保険と、個人事業主が加入する国民健康保険は別の制度とされており、それぞれ特徴があります。
そこで、国民健康保険の特徴や、サラリーマンが加入する社会保険との違いを解説していきます。
多くの違いを理解した上で、その中身を知っておくようにしましょう。
国民健康保険とは
国民健康保険とは、社会保険に加入していないすべての人が加入することとされている公的な医療保険のことです。
サラリーマンの方が個人事業主になる場合は、任意継続の手続きをしない限りは引き続き社会保険に加入することはできません。
そのため、社会保険の脱退手続きを行った上で、国民健康保険に加入します。
国民健康保険を運営するのは、日本全国の地方自治体です。
そのため、国民健康保険への加入手続きは各自治体の役場で行うこととなります。
国民健康保険と社会保険の違い
国民健康保険と、サラリーマンが加入する社会保険にはどのような違いがあるのでしょうか。
一番の大きな違いは、健康保険料を誰が負担するかということです。
社会保険の場合は、会社と個人が保険料を半額ずつ負担することとされています。
しかし、国民健康保険の場合は会社が負担することはできないため、個人で全額負担しなければなりません。
また、扶養に入れることができるかどうかも、社会保険と国民健康保険ではその考え方が異なります。
社会保険の場合は、配偶者や子どもなどを扶養に入れることができ、扶養に入れても負担する健康保険料の金額は給与額の変更がない限り変わりません。
これに対して、国民健康保険の場合は、扶養に入れるという考え方がありません。
そのため、社会保険に加入していない同居家族については、原則として一緒に国民健康保険に加入します。
その分、納付しなければならない健康保険料の金額も増えることとなります。
健康保険料の金額の計算方法も大きく異なります。
社会保険の場合は、1年に1回、その人の給与額をもとに計算することとなります。
これに対して、国民健康保険の場合は、世帯ごとの収入金額や加入する人数、年齢などをもとに計算します。
所得の変動に応じて、翌年の健康保険料の金額が変わることとなるのです。
また、自治体ごとに計算を行うため、その金額は隣の市町村とは異なるということも珍しくありません。
従業員を雇用した場合
個人事業主の方は、自身や家族の他に従業員の社会保険関係にも注意が必要です。
従業員を1人でも雇用した場合、その従業員は雇用保険・労災保険に加入しなければなりません。
この2つをあわせて労働保険といい、労働基準監督署とハローワークで加入手続きを行う必要があります。
一方、従業員の社会保険に関しては、雇用する従業員が5人未満の場合、個人事業主に加入義務はありません。
そのため、従業員が自身で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。
業務拡大により従業員が5人以上となった場合は、事業主として加入しなければなりませんので、その際は、従業員について社会保険への加入手続きを行う必要があります。
国民健康保険の加入手続き・必要書類
国民健康保険に加入する際には、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
その際に必要な書類もあわせて確認していきましょう。
国民健康保険の加入手続き
会社を辞めた人の場合、国民健康保険への加入手続きは、その会社を辞めた日の翌日から14日以内に行う必要があります。
市区町村役場の国民健康保険担当の窓口に行き、国民健康保険異動届に必要な項目を記載し提出します。
この時、後に紹介する必要書類をあわせて提出する必要があります。
そのため、市区町村役場に出かける際には必要書類を持参して行くと、手続きがスムーズに進められます。
また、国民健康保険への加入手続きは郵送でも可能です。
各自治体のホームページから国民健康保険異動届をダウンロードして印刷し、必要事項を記載した書類を郵送すると手続きは完了します。
必要な書類を忘れずに手続きを行うため、役場に確認しながら進めると手間が省けるでしょう。
国民健康保険の加入に必要な書類
国民健康保険に加入するためには、他の社会保険に加入していないことが条件となります。
そのため、健康保険資格喪失証明書の提出を求められます。
証明書の形式について、公的に定められたものはないため、企業が自由にその形式を定めて作成することができます。
健康保険の名称や資格を喪失した理由など、必要な事項が記載された証明書を発行してもらい、役場の窓口に提出します。
証明書があると、国民健康保険への加入手続きがスムーズに進められますが、証明書がない場合には、退職証明書や離職票などで代用することも可能とされています。
また、国民健康保険への加入には、マイナンバーが必要となります。
マイナンバーカードや個人番号通知書など、マイナンバーがわかるものを忘れず準備しましょう。
運転免許証などの本人確認書類も必要であるため、あわせて用意しなければなりません。
このうち、マイナンバーカードがあれば、マイナンバーの確認と本人確認書類の両方の役割をはたします。
国民健康保険料の金額・計算方法
国民健康保険に加入する際に気になるのは、その保険料の負担がどれくらいになるのかです。
その計算方法や金額の目安など、確認しておきましょう。
国民健康保険料の計算方法
国民健康保険料の計算を行う際には、医療分と後期高齢者支援金分、そして介護分の違いを理解しておく必要があります。
このうち、医療分と後期高齢者支援金分はすべての年齢の人が対象となるものです。
一方、介護分は40歳から64歳までの加入者は国民健康保険料としての負担が発生します。
65歳以上になると、介護分の保険料は国民健康保険料とは別に納付することとなります。
国民健康保険料の計算方法は、自治体によるため、必ずしも同一金額になるわけではありません。
詳しくはご自分の住む自治体に問い合わせるか、役場ホームページからご確認ください。
ここでは、その計算方法の一例をご紹介します。
医療分としての金額は「所得割額(被保険者の賦課基準額×7.13%)+均等割額(被保険者数×38,800円)」です。
このうち、賦課基準額とは、所得金額から基礎控除額を差し引いた金額となります。
また、医療分としての最高限度額は63万円となっています。
後期高齢者支援分は、「所得割額(被保険者の賦課基準額×2.41%)+均等割額(被保険者数×13,200円)」です。
最高限度額は19万円となっています。
介護分としての金額は、「所得割額(被保険者の賦課基準額×2.13%)+均等割額(被保険者数×17,000円)」です。
この場合の被保険者数は、40歳以上の人となります。
また、介護分としての最高限度額は17万円となります。
計算例
ここで、国民健康保険に加入した場合の保険料の計算例を確認していきます。
所得金額が600万円、2人世帯である場合の国民健康保険料の金額は以下のようになります。
(医療分)600万円-43万円=557万円
(557万円×7.13%)+(2人×38,800円)=474,741円
(後期高齢者支援分)
(557万円×2.41%)+(2人×13,200円)=160,637円
(介護分)
(557万円×2.13%)+(2人×17,000円)=152,641円
この場合、健康保険料の年額は788,019円となるのです。
国民健康保険料は社会保険料控除の対象になる
個人事業主が支払った国民健康保険料は、事業所得を計算する際の経費にはなりません。
その代わり、支払った金額がそのまま、社会保険料控除の金額として所得控除の対象となります。
国民健康保険料の他、国民年金保険料が社会保険料控除の対象となるため、合計した金額を確定申告書に記載します。
国民健康保険料を支払った金額については、証明書の添付や保存の義務はありません。
ただ、各自治体から支払った1年間に支払った金額を知らせる通知書が送られてくるため、その書類で金額を確認しましょう。
なお、国民健康保険料を個人の通帳からではなく、事業用の口座から支払う場合があります。
この時、仕訳をしなければならない一方で、経費の科目にすることはできません。
そのため、(借方)事業主貸/(貸方)普通預金とする仕訳処理を行うこととなります。
まとめ
サラリーマンをやめて独立して個人事業主になった場合、それまでの社会保険に加入し続けることはできませんので、国民健康保険に加入する手続きを忘れないようにしなければなりません。
なお、国民健康保険料の負担は、加入者が全額を負担しなければならず、その計算方法は社会保険と大きく異なります。
大きな負担となることが予想されるため、あらかじめどれくらいの負担になるのか確認しておくようにしましょう。