最終更新日:2020/11/13
白色申告とは?メリット・デメリットから必要書類や手続きの流れについて徹底解説
この記事でわかること
- 白色申告とはどのようなもので青色申告と何が違うのかがわかる
- 白色申告を行ううえでのメリットとデメリットを知ることができる
- 白色申告を行うために必要な手続きや書類を知ることができる
個人事業主としてお店を始めたりフリーランスとなったりした場合、確定申告を行うこととなります。
個人事業主の確定申告の方法には、青色申告と白色申告という2つの方法があります。
青色申告を行うためには事前に税務署から承認をもらわなければならないため、まずは白色申告をと考える人もいることでしょう。
そこで、白色申告とはどのような制度なのか解説します。
青色申告に比べて簡単に申告できると思われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
目次
白色申告とは
サラリーマンとして給料をもらっている人は、毎年会社で年末調整を行って所得税の計算をしています。
これに対して、個人事業主は自分でその事業から得た収入と経費から事業所得を計算し、確定申告を行うこととなります。
事業所得の確定申告をには、青色申告と白色申告の2つの方法があります。
青色申告を行うためには、事前に税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しその承認を受けなければなりません。
一方、青色申告の承認申請を行わない人は、すべて白色申告を行うこととなります。
つまり、白色申告とは青色申告ではない申告方法ということになるのです。
白色申告の特徴は、青色申告より簡単な手続きで確定申告できることです。
これは、事前に税務署に対して承認申請を行う必要がないという違いだけではありません。
毎年の確定申告を行う際に、青色申告と白色申告では大きな違いがあるのです。
この両者にどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
白色申告と青色申告の違い
確定申告は毎年必ず行わなければならないため、白色申告と青色申告の違いを知っておくことには大きな意味があります。
ここでは、確定申告書を作成するうえでの白色申告と青色申告の違いについて確認します。
白色申告は複式簿記を行う必要がない
青色申告を行う際は、複式簿記で事業所得の計算を行わなければなりません。
複式簿記とは、一般的に「簿記」と呼ばれるものです。
通信費や旅費交通費などの勘定科目を使って、何にどれだけのお金を使ったかをその都度記帳し、その1年間の金額を集計します。
また、現金や預金などの残高も集計し、毎日の残高と照合していきます。
そのため、事業の収益状況と財政状況を同時に把握することができるのです。
詳しく事業の状況を把握することができますが、一方で知識のない人が複式簿記を行うのはかなり大変なことです。
これに対して、白色申告の場合は複式簿記を行う必要はありません。
単式簿記と呼ばれる記帳方法で、どのような費目にいくら支出したのかを集計すればよいこととされています。
簿記についての知識がなくても、売上と経費についてそれぞれ集計した金額から事業所得の金額を計算することができるため、初心者でも簡単に計算することができます。
青色申告決算書を作成する必要がない
青色申告を行う場合、確定申告書に青色申告決算書を添付しなければなりません。
この青色申告決算書とは、事業に関する収益状況をまとめた損益計算書と財政状況をまとめた貸借対照表をあわせた書類のことです。
複式簿記を行った場合、事業から生じる収益や必要経費を集計してその残高が計算されます。
どれだけ儲かったか、あるいは預金や借入金にはとれだけの残高があるのかを青色申告決算書に記載して、税務署に提出する事とされているのです。
これに対して、白色申告の場合は決算書を作成する必要はありません。
その代わり、確定申告書には収支内訳書と呼ばれる書類を添付することとされています。
この収支内訳書には、青色申告決算書に含まれている貸借対照表がありません。
あくまで収益状況だけをまとめて税務署に報告すればいいこととされているのです。
白色申告のメリット・デメリット
白色申告と青色申告には違いがあり、毎年行う確定申告の際の手続きも異なることがおわかりいただけたと思います。
この違いによる白色申告のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
また、青色申告と比較した場合の白色申告のデメリットとはどういったものがあるでしょうか。
白色申告のメリット
白色申告を行う一番のメリットは、特別な準備をすることなく手続きができる点です。
青色申告を始める際には、税務署に申請を行い、その承認を受けなければなりません。
しかし白色申告を行う際にはそのような承認を受ける必要がないのです。
また、白色申告の場合は、複式簿記を行う必要がありません。
複式簿記を行う場合、簿記3級程度の知識がないと行き詰まってしまう可能性があります。
しかし、白色申告の際に求められる単式簿記であれば、項目別に1年間の金額を集計するだけで済むため、知識は必要ありません。
さらに、決算書を作成しなくてもいいことも白色申告のメリットといえます。
特に貸借対照表を作成する際には、預金や借入金の残高と金額を合わせなければならず、非常に手間がかかります。
白色申告の際には、貸借対照表を作成する必要はないため、このような手間をかける必要はありません。
なお、青色申告を行う際に、複式簿記を用いて決算書を作成することが難しい場合、税理士などの専門家に依頼することができます。
ただ、専門家に依頼すればその費用がかかります。
白色申告の場合は、自分で手続きを完了させることができることも多いので、青色申告で税理士に手続きを依頼した場合に費用がかかることは、青色申告ののデメリットといえるでしょう。
白色申告のデメリット
白色申告を行った場合のデメリットとしてまずあげられるのが、青色申告特別控除が適用できないことです。
青色申告特別控除とは、青色申告を行っている人について最大65万円が所得金額から控除できる制度です。
通常、所得金額から控除できる金額は、必要経費として実際に支出した金額に限られます。
しかし、青色申告を行っている場合には、支出していなくても控除できる金額があり、その分所得税を節税することができます。
白色申告の場合はこのような特別控除が認められないため、同じ所得金額の場合、青色申告より税額が増えてしまいます。
また、青色申告は赤字になった場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。
しかし、白色申告の場合は赤字を繰り越すことはできません。
具体例をあげて説明していきましょう。
例えば、2020年の所得金額がマイナス100万円、2021年の所得がプラス150万円になったとします。
青色申告の場合、2020年分の確定申告を行う際にはマイナス100万円の申告をして、その赤字を翌年に繰り越すことができます。
すると2021年の確定申告を行う際には、その年に発生した150万円の所得から前年から繰り越した100万円を控除できます。
そのため、所得税の計算対象となるのは50万円ということになります。
しかし、白色申告の場合、2020年のマイナス100万円を翌年に繰り越すことはできません。
そのため、2021年の確定申告を行う際には、その年に発生した150万円の所得に対して税金の計算を行います。
結果的に、所得が発生して税金が生じる場合、白色申告の方が青色申告より税負担が大きくなってしまうのです。
白色申告の手続きの流れ
白色申告は、1年間の所得金額を計算して税額を求めるとともに、確定申告書と収支内訳書を作成することが大きな目的です。
実際に、白色申告を行って確定申告する際の手続きの流れについて確認しておきましょう。
日々の取引の記帳を行う
確定申告を効率的に行うために重要なのは、日々の記帳作業をこまめにしておくことです。
税務署へ書類を提出するのは1年に1回ですが、記帳を1年に1回まとめて行うやり方では大変効率が悪くなります。
店舗のように毎日売り上げが発生するのであれば、毎日記帳を行うのが望ましいでしょう。
月末に請求を行う、あるいは特定の日に入金が集中するのであれば、そのタイミングで記帳を行うようにします。
また、必要経費となる支出は常に発生する可能性があるため、その都度項目ごとに集計していくのが望ましいでしょう。
決算時の作業を行う
決算の際には、日々発生する取引とは別に、その経費の計算を行わなければならないものがあります。
その代表的なものが固定資産の減価償却費の計算と、期末(12月31日)時点の棚卸高の計算です。
減価償却とは、事業に用いた固定資産について、決められた年数にわたって経費にする計算方法をいいます。
事業のために使う軽自動車を例にとると、その耐用年数は4年と定められています。
例えばこの軽自動車が200万円であった場合、その減価償却費は200万円×0.25(4年の定額法償却率)=50万円となります。
固定資産ごとに耐用年数や償却率が異なるため、それぞれの固定資産について減価償却費の計算を行うこととなります。
また、店舗や倉庫にある商品の在庫の数を数えて、棚卸表を作成します。
この在庫の金額は、収支内訳書に期末商品棚卸高として記載される金額となります。
収支内訳書を作成する
収支内訳書は1年間の経営成績をまとめた書類です。
この収支内訳書で、事業から生じた所得金額を把握することができるのです。
項目別に1年間の金額を計算し、収支内訳書に記載していきます。
確定申告書を作成する
収支内訳書を作成して計算された事業所得の金額は、そのまま確定申告書に転記します。
さらに、事業所得以外に所得がある場合は、その所得についても確定申告書に記載します。
また、医療費控除などの所得控除の計算は確定申告書で行うため、必要な項目について金額を集計し計算を行います。
必ず収支内訳書を作成してから、確定申告書を作成するという流れになることに注意してください。
白色申告の必要書類
白色申告を行う際に必要な書類にはどういったものがあるのでしょうか。
また、その作成方法はどのようになり、保存期間はどう定められているのでしょうか。
その内容について確認しておきます。
作成する帳簿の種類と作成方法
白色申告を行うためには、収支内訳書を作成しなければなりません。
収支内訳書を作成するためには、以下の5種類の帳簿を作成することが求められます。
(1)現金出納帳
現金の収支を時系列に並べて記録するものです。
毎日の入金や支払のたびに帳簿に記載をしていけば、帳簿上の残高と実際の現金の残高があっていることが確認できます。
事業開始時には、元入金として事業用の現金の金額を記載します。
取引のたびに記載し、収支を計算したうえで、年末時点の残高は翌年に繰り越す処理を行います。
同様に、新年度の現金出納帳では、最初に前年の残高を繰り越す処理を行います。
(2)売掛帳
取引先ごとに売上高を記載するとともに、掛売りとなっている場合の未回収残高を記載します。
売上については、日々記載する場合もありますが、取引件数が多い場合には毎月月末に1か月分の金額をまとめて記載します。
また、回収した金額については、売掛金残高を消し込むように記載することとなります。
(3)買掛帳
仕入先ごとに仕入高を記載するとともに、掛買いを行っている場合の未払残高を記載します。
売掛帳と同じように、毎月月末に1か月分の仕入高をまとめて記載することができます。
また、支払った掛代金について記載し、買掛帳の残高と先方から送られてくる請求書の残高が一致することを確認するようにします。
(4)経費帳
仕入以外の経費としては、通信費、旅費交通費、水道光熱費、租税公課、消耗品費などの項目があります。
それぞれの項目別に、1年間に発生した経費の額を集計していきます。
(5)固定資産台帳
機械装置、器具備品、車両などの固定資産については、取得した時に経費とするのではなく、毎年減価償却の計算を行います。
個々の固定資産について、その取得価額や耐用年数、減価償却費などを記載した固定資産台帳を作成しなければなりません。
作成した帳簿の保存期間
作成した帳簿類や、その取引の段階で作成したり受領したりした書類には、保存期間が定められています。
保存すべきもの | 保存期間 | |
---|---|---|
帳簿 | 法定帳簿(収入金額・必要経費を記載したもの) | 7年 |
任意帳簿(業務上作成した法定帳簿以外の帳簿) | 5年 | |
書類 | 棚卸表その他の作成書類 | 5年 |
請求書・納品書・領収書等の書類 | 5年 |
基本的に、確定申告書や収支内訳書の作成において使用した書類の保存期間は、5~7年ということになります。
【注意】白色申告も帳簿の記帳が義務化
従来、白色申告を行う人で記帳・帳簿の保存義務の対象は、前年または前々年の所得金額が300万円を超える人に限定されていました。
しかし、平成26年1月以降は、事業や不動産貸付を行っているすべての人について、記帳・帳簿書類の保存義務が課されています。
このため、これまで保存義務がなかった小規模な事業者についても記帳や帳簿の作成が必要とされています。
売上、仕入、経費に関しては、その取引の内容を明らかにする帳簿を作成しなければならないため、注意が必要です。
なお、帳簿作成にあたっては、取引ごとではなく一定の期間ごとにまとめて記載する方法でも問題はありません。
帳簿の作成は税務署のためではなく自分のためでもあるので、作成しやすい方法で行うようにしましょう。
まとめ
白色申告は青色申告に比べて手続きが少なく、簡単に確定申告ができるというイメージを持たれています。
しかし、記帳や帳簿の作成が義務付けられていることもあって、青色申告との差は以前より縮まっています。
また、白色申告を行うにしても青色申告を行うにしても、最終的に確定申告書を作成しなければならないことに変わりはありません。
白色申告を行うことに大きなメリットはなく、少しの手間をかけて青色申告を行う方が節税などのメリットがあります。
今は白色申告を行っている人も、白色申告から青色申告に移行することを考えておくといいでしょう。