最終更新日:2023/7/28
自営業として独立したい!自営業の職業と開業までのステップとメリット・デメリット
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 自営業と個人事業主やフリーランスとの違いがあるのかを知ることができる
- 自営業となることによるメリットとデメリットを知ることができる
- 自営業を始める時の流れや自営業となってからの注意点が分かる
多くの人にとって、独立して自分で事業を始めることは憧れであり、また目標でもあります。
今は会社員という方でも、実際に自営業として独立したいと考えている人は大勢いることでしょう。
はたして自営業として独立する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
また、実際に事業を開始する時には、どのような手続きが必要になるのでしょうか
ここでは、これから自分で事業を始めたいと思っている方の疑問について解説していきます。
目次
自営業とは?個人事業主やフリーランスとの違い
自分で事業を行うことを自営業といいます。
職種や、実際に店舗を構えているかオンライン上の店舗で営業しているかといった営業形態には様々なものがあります。
また、フランチャイズに加盟したり代理店となったりして営業しているのか、完全に独立して行っているのかといった違いもあります。
ただ、いずれも独立して事業を行っているという点では、広く自営業ということになります。
自営業と自由業との違いとは
自営業とよく似た言葉に自由業があります。
自由業という言葉に明確な定義はありませんが、特定の時間や場所にとらわれず、自由に働くことのできる仕事がイメージされると思います。
つまり自由業とは、自営業の中の1つの形態ということができるのです。
自営業と自由業の大きな違いとして、自営業の場合は店舗や事務所を構えるなどして、決められた営業時間の間は営業を行います。
これに対して自由業の場合は、時間を決めて営業するのではなく、依頼された仕事の量に応じて自分の裁量で仕事をする時間を決める形となります。
古くからある職種としては、作家やアーティスト、デザイナーなどが自由業に分類されることが多いと思います。
また、WebライターやWebデザイナー、プログラマーといったサイトやアプリの作成に関する仕事も自由業とされます。
さらに、ブロガーやYouTuberなども自由業に分類されます。
自営業と個人事業主との違いとは
個人事業主とは、文字どおり個人として事業を営んでいる人のことをいいます。
これに対して、自営業という場合は個人として事業を行っている場合もありますし、法人を設立して事業を行う場合も含みます。
個人で事業を行うか、法人で事業を行うかは法律上も明確に区分されますし、課税される税金も異なります。
個人事業主の場合は所得税が課されるのに対し、法人の場合は法人税が課されることとなるのです。
自営業の場合は個人事業主を含みますが、個人事業主の場合は法人経営者は含まれないので注意しましょう。
自営業とフリーランスとの違いとは
フリーランスという言葉は、他と比べると比較的新しい言葉です。
一般的に、特定の会社や組織などに所属せず、仕事に応じて契約する人のことをフリーランスといいます。
フリーランスも、広い意味では自営業の一種といえます。
これに近い意味を持つものとして、作家やアーティストなどを指す自由業という言葉が古くから使われていました。
しかし、近年ではこのような専門性の高い職種だけでなく、クラウドソーシングを利用した仕事を行う人も増えています。
そこで、これまでの自由業より広い範囲の人を指す言葉として、フリーランスが用いられることが増えているのです。
自営業のメリット・デメリット
自営業は自分で独立して仕事を行う人ですから、会社員とは大きな違いがあります。
そこで、自営業のメリットとデメリットについて知っておきましょう。
自営業のメリット(1) 時間に拘束されない
サラリーマンなどの会社員と自営業の最大の違いは、時間の使い方が変わるということです。
会社員の場合は、会社の就業規則で定められた時間は会社の業務を行う必要があります。
自分で勝手に働く時間を決めることはできないため、仕事がなくても会社にいなければなりません。
また逆に、仕事が残っているのに切り上げて帰らなければならない場合もあります。
しかし、自営業の場合は仕事の状況に合わせて働くことができます。
また、店舗や事務所を来客のために構えている場合でも、その開店時間・閉店時間は自分で決めることができます。
この点、会社員の場合は仮に店長や所長となっても自分で時間を決めることはできないのとは、大きな違いがあります。
自営業のメリット(2) 自分のペースで働くことができる
会社員の場合は、大きな組織の一員として、上司の指示に従って働くことが求められます。
しかし、自営業の場合は日々の業務を監督する上司のような人はいません。
自分のペースで、ストレスを抱えずに働くことができるといえます。
さらに、自営業を行う人の中には自宅で仕事ができる人も多く、通勤にかける時間を少なくすることができます。
その結果、通勤時間の削減と通勤に伴うストレスの削減ができるのです。
自営業のメリット(3) 節税できる
会社員の場合、会社から支給される給料やボーナスが収入となる一方、経費はほとんど発生しません。
そのため、勤務先で行う年末調整以外に節税を行うことはほぼできません。
これに対して自営業の場合、事業に要した支出はすべて必要経費となって、税額の軽減に役立ちます。
自宅で仕事を行う場合でも、自宅で発生する支出のうち事業のために用いた部分については必要経費とすることができます。
そのため、自営業となることで大幅な税額の削減が期待できるのです。
自営業のデメリット(1) すべて自分の責任となる
会社員の場合は、仮に仕事で失敗をしても、すぐに給料が減らされることはないかもしれません。
しかし、自営業の場合は、その失敗のために収入がゼロになるということも実際に起こり得ます。
会社員とは違い、自営業を行う人を誰かが守ってくれることはありません。
もし失敗をすれば、その責任はすべて自分で負わなければならないのです。
自営業のデメリット(2) 収入が不安定になる
自営業の人は、会社員とは違い給料が安定的に支給されるわけではありません。
事業が軌道に乗るまでは、安定した収入は見込めないかもしれません。
また、事業がうまくいったとしても、社会情勢の変化など何らかの理由でその収入が激減する可能性もあります。
このような場合には、個人の収入を減らさざるを得ないのです。
会社員の場合は、安定した給料を受け取ることができますが、自営業の場合はそうはいかないのです。
自営業のデメリット(3) すべての業務を自分で行わなければならない
自営業の場合、本業の運営だけでなく、会社の経理や総務が行うような業務も自分で行わなければなりません。
特に、自営業の場合は税金の計算を行うために、日々の帳簿の作成や現金出納を自分で行う必要があります。
会社員の場合は、自分の担当業務だけ行っていればよかったのですが、自営業の場合は大きく異なるのです。
代表的な自営業の種類
実際に自営業を行いたいと考えていても何を始めたらいいか分からないという人のために、代表的な自営業をご紹介します。
すでにどの職種を始めようか考えている方も参考としていただけると思うので、ぜひご覧ください。
自営業の種類(1) 飲食業
居酒屋やカフェ、レストランなどの店舗を経営することです。
特別な資格が必要ないため始めやすい一方、競争が激しく、絶えず入れ替わりがある職種といえます。
自営業の種類(2) 小売業
消費者向けに商品を販売するものです。
小売業というと、一般的に店舗に商品を陳列して販売することをイメージするかもしれません。
ただ、最近はネット販売専門の小売店が増えています。
これは、家賃などの固定費が抑えられること、世界中の人がターゲットとなることといったメリットがあるためです。
ただ、ネットでの販売も競争が激しくなっており、何らかの特色がないと埋没してしまう危険性もあります。
自営業の種類(3) 建設業
一口に建設業といっても、その中では多種多様の職種に細分化されています。
建設業を営んでいる人の中には、「一人親方」と呼ばれる人が多くいます。
まずは建設業を営んでいる会社などで経験を積み、その後独立して一人親方となるのが一般的です。
何も経験のない状態で独立して始めることは、極めて難しいといえます。
自営業の種類(4) 理容・美容業
理容師や美容師の資格を保有していなければ、独立して店舗を持つことはできません。
また、店舗を持つ際には、多くの設備を用意する必要があります。
そのため、ほとんどの人は専門学校に通って資格を取得し、就職して経験を積んでから独立します。
また、独立しても店舗を持たずに、ヘアスタイリストとして仕事をする人もいます。
自営業の種類(5) 農業・漁業
農家や漁師も自営業となります。
親の跡を継いで農業や漁業を行うのであれば、スムーズに仕事を行うことができます。
しかし、新規に農業や漁業を始めようとする場合は、農地や漁業権を確保しなければなりません。
農地を簡単に購入することはできませんし、漁業権を確保することも大変困難です。
現実的には、農家や漁師での働き口を探し、その仕事を覚えることから始める必要があります。
自営業の種類(6) その他
このほかにも自営業と呼ばれる職種は多数あります。
特にIT関連であるプログラマーやWebデザイナーなどの職種は、スキルを持った人には魅力的な仕事となります。
また、実務経験のある人がコンサルタントとして開業することもあります。
自営業として独立するには、自分自身の能力や経験とともに顧客の確保が重要です。
どのような職種で開業する場合でも、人とのつながりは非常に大切となります。
【儲かる・始めやすい】自営業ランキング
それでは、これから自営業を始めるにあたって、儲かる業種にはどのようなものがあるでしょうか。
また、簡単に始められる業種にはどのようなものがあるのでしょうか。
儲かる自営業ランキング
儲かる自営業の業種としてまずあげられるのは、セールスコピーライターです。
セールスコピーライターとは、インターネット上の商品やサービスの提供を行うサイトで、集客を狙った文章を書く仕事です。
初期費用がほとんどない状態から始めることができるため、比較的簡単に始めることができます。
報酬はコピーライターによって大きく変わります。
また、サイトでの売り上げに比例して増えるという契約もあります。
人気のコピーライターの場合は、1件数百万円・年間数千万円稼ぐ人もいるなど、非常に儲かる業種となっています。
レンタルビジネスとは、自分が所有するものを不特定の人に貸し出すことです。
最初に貸し出すものを自分で購入する必要がありますが、いったん購入すれば貸し出すたびにレンタル料を受け取れます。
軌道に乗れば、次々に新たな借り手が現われることとなるため、大きな儲けをあげることができます。
もちろん、集客を継続することは簡単なことではないため、ホームページやSNSなどをうまく活用する必要があります。
ネットショップは、インターネット上の商店です。
多くの人がすでに利用しており、イメージしやすいと思います。
実店舗を構えるのとは違い、高額な家賃を支払う必要もなく、大量の在庫を抱える必要もありません。
人気の商品を取り扱えば、大きな儲けをあげることができます。
始めやすい自営業ランキング
始めやすい自営業のポイントは、初期費用が少なく済むことです。
そのためには、投資の必要がないこと、在庫を持つ必要がない業種を選ぶことが重要です。
最もこの条件に合致するのが、IT・ネット関係の業種です。
またブログの執筆やWebライターなどであれば、ほとんど初期費用はかかりませんし、大きな利益を上げる可能性もあります。
自営業を始める流れ
実際に自営業を始める際には、どのような流れで何から始めればいいのでしょうか。
その流れを順番に解説していきましょう。
開業する場所を決定する
どのような業種を始めるかを決めたら、その業種に合わせて開業する場所を決めましょう。
店舗が必要となるのであれば、開業する場所は非常に重要となるため慎重に選びましょう。
また、ネット関連の業種で大きな事務所が必要ないのであれば、まずは自宅で開業するのも選択肢となります。
占有スペースが必要ないのであれば、シェアオフィスなどを利用することもできます。
開業のために必要な手続きを確認する
開業する場所を決めたら、実際に開業のために必要な手続きを行いましょう。
例えば、飲食店を始める際には、保健所に食品衛生法に基づく届け出を行い、店舗の検査を受けなければなりません。
この手続きを行わなければ、営業許可を得ることはできないのです。
業種によって必要な手続きは異なるため、必ず開業前に確認しておく必要があります。
開業届を税務署に提出する
実際に開業する場所を決め、開業のための手続きを終えたら、住所地か事業所の所在地を管轄する税務署に開業届を提出します。
開業から1か月以内に提出することとなっているため、忘れずに提出しましょう。
なお、店舗などでなければ開業した日がいつなのかはっきりしないかもしれませんが、この日と決めて開業する必要があります。
開業届は税務署のホームページからダウンロードしましょう。
自営業の所得の種類
個人事業主として自営業を行う人は、その事業から得た所得について確定申告を行わなければなりません。
その業種によって所得の種類が異なるため、どのような業種の場合にどのような所得が発生するのか確認しておきましょう。
事業所得
自営業の場合、その事業から得られた所得は事業所得となります。
収入金額から必要経費を差し引いて計算された金額となります。
不動産所得
アパート経営や駐車場経営などをしている人については、事業所得ではなく不動産所得となります。
計算方法自体は事業所得と同じく、収入から必要経費を差し引いて求められます。
譲渡所得
所有する株式や不動産を売却した時に発生します。
購入した時の価格より低い価格で売却した場合には損失が発生しますが、原則として他の所得と相殺することはできません。
配当所得
株式を保有している場合に、その株式から得た配当については配当所得となります。
配当収入は、事業所得や譲渡所得とは別に計算されるのです。
その他
自営業者でも給与を受け取ることがあり、この給与は給与所得となります。
また、加入している生命保険が満期になったために保険金を受け取った場合などは、一時所得となります。
さらに、自営業者が取引先などにお金を貸して利息を受け取った場合は、雑所得となります。
所得金額の計算は、所得の種類ごとに行う必要があるため、所得の区分を間違えないようにしましょう。
自営業の健康保険はどうなる?
最後に、自営業の方が加入する健康保険について解説します。
会社員が加入する健康保険とは明確な違いがあるため、必ず独立する前に確認しておかなければなりません。
会社員の場合は、協会けんぽや企業が設立した健康保険組合の保険に加入します。
しかし、個人事業主となった自営業者はこれらの保険制度に加入することはできません。
個人事業主である自営業者は、自治体などが運営する国民健康保険に加入します。
会社員の場合は、支払う保険料の半分は会社負担、残りの半分は本人負担となっています。
これに対して、自営業の場合は全額本人が支払わなければなりません。
まとめ
会社員として働いている人の中には、自営業となることに漠然としたあこがれを持っている人もいるでしょう。
しかし、実際には自営業を始めるために準備を行うのは大変ですし、事業を始めても軌道に乗るまでに相当の時間を要します。
それでも成功するまで事業を継続するためには、どのような業種で独立するのか、開業する場所は問題ないかなどを慎重に検討しなければなりません。
単なる憧れだけでは自営業を行うことはできないため、事前のリサーチや準備をしっかり行うようにしましょう。