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最終更新日:2022/6/9

【個人事業主が納める税金シミュレーション】税金の種類と計算方法について

税理士 鳥川拓哉
この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

この記事でわかること

  • 個人事業主が納める税金の種類について理解できる
  • 個人事業税・消費税・所得税・住民税とは何かがわかる
  • 各種税金の具体的な計算方法がわかる
  • 税金が払えない場合の対処法がわかる

個人事業主には、様々な税金が課されます。

会計経理上の「租税公課」と「事業主貸」の違いから、具体的な税金の種類を説明します。

また、各種税金の計算シミュレーションを行うことで、どのくらいの税金が課せられるのかを把握できるようになります。

個人事業主が納める税金とは

個人事業主が納める税金は、会計経理上、「租税公課」と「事業主貸(じぎょうぬしかし)」の2種類に分けられます。

まず、この2種類の勘定科目の違いについて説明します。

租税公課とは

租税公課とは、税金や賦課金のことを指します。

国税や地方税等の税金を意味する「租税」と、国や地方公共団体から課せられる公的な課金の「公課」(交付金・会費等)を合わせた勘定科目です。

租税公課は、事業運営に必要なコストですから、経費として計上できます。

勘定科目「租税公課」として計上される具体例は、下記のような税金等です。

  • ・個人事業税
  • ・消費税
  • ・固定資産税
  • ・不動産取得税
  • ・登録免許税
  • ・印紙税
  • ・自動車税
  • ・会費等

事業主貸とは

事業主貸(じぎょうぬしかし)とは、個人事業主のみが使用する勘定科目です。

事業用資金から、事業に関係のないプライベートなことに資金を使うときに使用する勘定科目で、個人事業主自身にかかる税金の計上にも使用されます。

これらの税金等は、事業と関係がありませんので、経費としての処理はできません。

勘定科目「事業主貸」として、経費計上できない税金は下記のようなものです。

  • ・所得税
  • ・住民税、都道府県民税、市町村税
  • ・相続税
  • ・国税、地方税の延滞金や加算金
  • ・罰金(交通違反等)

租税公課と事業主貸の複合仕訳

大まかにいうと、「租税公課」=事業用、「事業主貸」=プライベート用という勘定科目ですが、個人事業主の場合、これらを完全に分離できないこともあります。

例えば、土地建物を自宅兼店舗にしている場合や、所有している自動車を事業とプライベート両方で使用している場合などです。

例のように、事業での使用用途と個人の使用用途が重複している場合は、固定資産税、不動産取得税、自動車税等を、「租税公課」と「事業主貸」の2つに税金額を分散させる必要があります。

このような処理を、複合仕訳といいます。

個人事業税・消費税

個人事業主が納める税金の中で代表的な「個人事業税」と「消費税」の2つをさらに詳しく説明したいと思います。

これら2つの税金は、勘定科目「租税公課」に仕訳され、経費として計上できます。

個人事業税とは

個人事業税とは、個人事業主が行う事業内容に応じて課される地方税です。

法人には課されない税ですので、馴染みのない方も多いのではないでしょうか。

個人事業税は、指定された業種の個人事業主のみに課税されます。

税率は、業種ごとに決まっていていますが、業種を見るとほとんどの個人事業主が該当することになっています。

第1種事業:税率5%=小売業、飲食店業、出版業など37業種
第2種事業:税率4%=水産業、畜産業、薪炭製造業の3業種
第3種事業:税率5%=理美容業、弁護士業、医業などの28業種 / 税率3%=鍼、マッサージ指圧などの医業、装蹄師業の2業種

引用:東京都主税局:個人事業税の概要「法定業種と税率」

個人事業税は、住民税と同様に、確定申告していれば自ら税額の計算を行う必要はありません。

所得税の確定申告を行うと、該当する都道府県税事務所から、納税通知書が送られてきます。

そして、記載の納付期限通りに金融機関等で納付する必要があります。

納付期限は、第一期分が8月末、第二期分が11月末です。

地域によって異なる場合もありますので、納税通知書をご確認ください。

ただし、事業所得が年間290万円までの個人事業主は支払う必要がありません

消費税とは

消費税とは、商品の購入やサービスを受けた際に、その価格の8%~10%相当の金額を負担する税金です。

個人事業主の場合は、消費税を支払うだけではなく、購入者などから消費税を預かる立場でもありますので、注意が必要です。

ただし、消費税の納税については、いくつか条件があるため、消費税を納付しなくていい個人事業主も多いです。

まず、「小規模事業者の納税義務の免除」という制度があります。

前々年(2年前)の課税売上金額が1,000万円以下の場合は、消費税の納付を免除されます。

言い換えると、2年前という条件がありますので、どんなに売上金額があっても、開業して2年間は消費税の納付は免除されるということです。

また開業後2年以上経過しても、前々年の課税売上金額が1,000万円を超えない限り、消費税の納付は必要ありません。

所得税・住民税

個人事業主が納める税金のうち、「事業主貸」の勘定科目にあたる所得税と住民税の2つについて、詳しく解説します。

ちなみに、これらの税金は、事業の経費としては計上できません。

所得税とは

所得税とは、毎年1月1日~12月31日までの1年間で得た所得(利益)にかかる国税です。

所得税は、「申告納税制度」が採用されており、自ら1年間の所得金額を計算し、翌年の3月15日までに確定申告を作成・提出します。

所得税の納付期限日も多くの場合、同じく3月15日となっています。

なお、ここでいう「所得」とは、売上から経費などを差し引いたものです。

所得=売上金額ではありませんので、ご注意ください。

また、2037年までは、東日本大震災復興の財源となる「復興特別所得税」(所得×2.1%)がかかります。

住民税とは

住民税とは、地域社会での生活に必要な費用を、その地域の住民に広く分担してもらう目的で課される地方税です。

所得税の確定申告を行うと、自動的に計算・決定され、住所のある市区町村から納税通知書が届きます。

納付期限は、一般的に「普通徴収」と呼ばれる分割払いで、6月・8月・10月・翌年1月の年4回となっています。

住民税は、一括払いか分割払いか選択可能ですが、納める税金額は変わりません。

各種税金の計算シミュレーション

これまで代表的な4つの税金、「個人事業税」「消費税」「所得税」「住民税」について、説明しました。

続いて、これらの税金の計算方法についても解説したいと思います。

個人事業税の計算

個人事業税は、事業所得から各種控除を差し引いて算出した額に一定の税率をかけて計算します。

事業所得とは、総収入金額から必要経費を差し引いた金額のことです。

必要経費には、売上原価、販売管理費、地代家賃などが含まれます。

参考に下記の例で計算してみましょう。

  • ・飲食業を経営(第1種事業なので税率5%です)
  • ・事業所得金額は600万円
  • ・青色申告特別控除・その他控除額は103万円
  • ・事業主控除は290万円

個人事業税=(事業所得600万円-各種控除80万円-事業主控除290万円)×5%=103,500円

個人事業主には、事業所得金額から事業主控除を差し引くことができます。

事業主控除は290万円であるため、事業所得が290万円より少ない場合は、個人事業税がかかりません。

消費税の計算

消費税は、原則預かった消費税から支払った消費税を差し引いて、その差額を消費税として納めます。

参考に下記のような例で計算してみましょう。

  • ・売上額が3,000万円(税抜)
  • ・仕入等の支払額が1,000万円(税抜)
  • ・消費税率が10%

納付すべき消費税額=売上3,000万円×10%-仕入費1,000万円×10%=200万円

なお、前々年(2年前)の売上が1,000万円以下の個人事業主は基本的に免税事業者となりますので、消費税の納付は必要ありません。

前々年ということですので、開業後2年間は、どんなに売上が高くても消費税の支払義務はありません。

売上が順調に伸びて、1,000万円を超えるころには、意識するようにしましょう。

所得税の計算

所得税の計算では、まず「事業所得」を出して、生命保険料などの控除を差し引きます。

その課税所得額に、該当する税率を掛けて、控除額を差し引いた額が、所得税額となります。

参考に下記のような例で計算してみましょう。

  • ・事業所得が520万円(総収入額-必要経費)
  • ・生命保険料等の経費控除が20万円

課税所得額=事業所得520万円-生命保険料等の控除20万円=500万円

  • ・課税所得金額は500万円
  • ・課税所得金額500万円に該当する税率は20%、控除額427,500円

所得税額=課税所得500万円×税率20%-427,500円=572,500円

課税所得額に対する所得税の金額は、下記の速算表の税率と控除額を使用すると簡単に計算できます。

所得税の速算表

課税所得額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超~330万円以下10%97,500円
330万円超~695万円以下20%427,500円
695万円超~900万円以下23%636,000円
900万円超~1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超40%2,796,000円

なお、2037年までは、上記で計算された所得税額に加え「復興特別所得税」(所得×2.1%)が課されます。

住民税の計算

住民税は、「市区町村民税」と「都道府県民税」の2つの税金の合算額になります。

また、所得に関係なく一定金額の均等割(基本5,000円)と、所得に応じて変わる「所得割」の合計額で算出されます。

所得割は、確定申告の際に計算した課税所得金額に税率をかけて計算します。

税率は、原則として、市区町村民税が6%、都道府県民税が4%の合計10%です。

住民税は所得税の税額で自動的に算出されるため、自分で計算する必要はありませんが、計算方法は以下のようになります。

住民税=「均等割」+「所得割」
所得割=課税所得(所得金額-所得控除額)×税率10%-税額控除額

最後の「税額控除額」は、税額から直接差し引かれる控除です。

いくつか調整のための控除がありますが、例えば「ふるさと納税」は寄付金税額控除で調整されます。

税金が払えない場合の対処法

個人事業主には、ここまで説明してきたように様々な税金の納税義務があります。

この税金が払えない場合は、どうしたらよいでしょうか?

万が一、税金を支払うことができない事情がある場合は、猶予制度を利用できる可能性があります。

納税の猶予が認められる条件としては、

  • ・自然災害、テロなどの人為的災害、盗難などに遭ったとき
  • ・個人事業主やその家族に傷病が発生したとき
  • ・事業に著しい損失・損害を受けたとき

などです。

このような特定の事情によって納税が困難となる場合は、税務署に申請することによって、納税が最大1年間猶予されます。

また、令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行により、新型コロナの影響によって収入が大幅に減少している方向けに、特別猶予が創設されています。

申請が承認されると、最大1年間の据え置き、もしくは猶予期間中の分割納付となります。

しかし、免除されるわけではありませんので、支払う税金については正しく理解しておきましょう。

まとめ

個人事業主に課せられる様々な税金について説明してきました。

それぞれの税金の内容を理解し、あらかじめ計算し、把握しておきましょう。

税金の猶予制度もありますが、免除されるわけではありませんので、事業の利益を考える際には、税金のことまで考えることが重要です。

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