最終更新日:2020/6/24
開業したら1ヶ月以内に提出しよう!開業届を提出するタイミングや知っておきたいことをまとめてご紹介
この記事でわかること
- 開業届とはどんなものかがわかる
- 開業届を提出する適切なタイミングやいつを開業日にすべきかわかる
- 開業届の提出が遅れると発生するかもしれないデメリットがわかる
- 開業届を提出する前に知っておきたいことがわかる
- 青色申告を利用するには青色承認申請書を開業届と一緒に提出する方が良いことがわかる
個人事業主が事業を始める際は、1ヶ月に以内に開業届を提出する必要があります。
提出が遅れても特に罰則はありませんが、遅れるとデメリットもあるため、早いタイミングで出しておくことがおすすめです。
個人事業主にとって節税効果が高い青色申告を利用するためには、この開業届と併せて「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
申請書の提出期限は2ヶ月以内ですから、開業届の後で提出しても問題ありませんが、同時に提出することをおすすめします。
以下では、開業届とはどんなもので、開業日や提出時期をいつにすればよいか、提出が遅れると起こりうるデメリット、開業届の提出前に知っておきたいことなど、開業のツボを紹介します。
目次
開業届とはどんなもの?
個人事業主として事業を始める場合、所得税法により、1ヶ月以内に開業届を出さなければなりません。
開業届は、個人事業主の会社設立に相当する手続きです。
この規定にしたがって開業届を出せば、個人事業主として認められ、税務上のメリットを受けることができる立場になります。
開業届を出さないからといって、罰則があるわけではありませんが、提出が遅れると個人事業主に認められる優遇措置を受けることができないデメリットがあります。
開業届は、事業を開始した日から1ヶ月以内に、税務署に持参または郵送により提出します。
なお、手数料や添付書類はありません。
開業届を提出する適切なタイミングとは?開業日はいつにするべき?
「開業届」は開業から1ヶ月以内に提出する必要があるのですが、提出するのに適切なタイミングや、また、開業日をいつにすべきかについて紹介します。
提出するのに適切なタイミング
開業届を出す期日は、開業から1ヶ月以内と期間にゆとりがありますから、開業日と確定申告の方法をしっかり決めてから提出することがおすすめです。
開業日は、事業主の自己申告で決めることになりますが、開業日の決め方を紹介しますので、参考にしていただきつつ、適切な日に設定しましょう。
また、青色申告を選ぶのであれば、提出期限が2ヶ月以内の青色申告承認申請書も作成して同時に提出すれば、税務署に二度足を運ぶ手間も省けます。
開業日の一般的な決め方
法人の会社設立に相当する開業届は、個人で事業を開始した日や事務所を設置した日から1ヶ月以内に提出しなければならないとされています。
つまり、所得が発生する事業に着手した日や、事務所や事業所をオープンした日が開業日となります。
とは言うものの、開業日を決める特別なルールはなく、あくまでも、事業主の自己申告で決めることができます。
事業の内容にもよりますが、一般論として言えば、以下のような決め方になります。
事業所得が生じれば確定申告を行うことになりますが、所得の申告は基本的に「費用収益対応の原則」によることになります。
この原則は、当期の収益と因果関係のある費用のみが当期の費用として計上されるというもので、収入が発生した日、またはその月初日を事業の開始とする方法です。
たとえば、4月10日に最初の売り上げが発生する場合は、その日、または4月1日とします。
一方、事務所や店舗を開設する場合は、オープン初日、またはその月初日とする方法もあります。
また、事業を開始して経費が発生しているものの、収入が発生するのが翌月以降などの場合は、経費の支出が発生した日を開始日とする考え方もあります。
なお、最初の収入が発生した日より後を開業日とする設定方法はおすすめできません。
なぜなら、開業日以前の費用が経費や開業費用として認められない懸念があるからです。
特別な開業日の決め方
開業日は事業主の自己申告で決まりますから、一般的な決め方のほか、記念日などにあわせた開業日の設定も可能です。
たとえば、最初に開業日を決め、その日を目指して準備を進めるケースも少なくありません。
開業日にあわせてイベントを企画したいような場合には、祝祭日や大きなイベントとの関連も考慮しましょう。
祝祭日や他の大きなイベントと抱き合わせで企画する方が良い場合もありますし、逆に、そういった日を避けることで参加率が増える場合もあるでしょう。
開業届の提出が遅れたら!?発生するかもしれないデメリットとは
開業届を提出しなくても罰則はありませんが、青色申告を利用するためには提出が必須です。
特に、期限を過ぎてしまった場合は、青色申告できるタイミングが翌年からになってしまうことに注意が必要です。
青色申告を利用できない場合は、算入できる経費や、所得控除など税務上のメリットを受けることができなくなってしまう恐れがあります。
また、開業届の提出が遅れると、屋号による銀行口座の開設、補助金や助成金、融資手続き時期も遅れることになります。
特に、補助金や助成金、金融機関の融資を利用したい場合は、開業届を提出して個人事業主になってからでないと申請することができません。
また、申請期間が制限されていますから、利用の機会を失うことにもつながりかねません。
開業届を提出する前に知っておきたいこと
雇用保険による再就職手当の受給を希望する方は、開業届の提出時期に注意してください。
再就職手当は、離職者が1年以上の就業が見込める職場への再就職のほか、個人事業主として開業する場合も受給も可能ですが、失業認定後に開業日を設定する必要があります。
会社都合など「給付制限がない」場合は、受給資格決定日を入れて7日間の待期期間経過後、自己都合による退職などで「給付制限がある」場合は、7日間の待期期間からさらに1ヶ月経過後とします。
雇用されていた方が退職して開業する場合や、健康保険の被扶養者である方が開業する場合は、開業届を出すことによって不利になることがあります。
失業手当を受給する方が開業届を提出すると、失業保険が受けられなくなります。
失業手当を受給中の方や、退職後しばらくは売上が発生しないという方は注意が必要です。
配偶者の健康保険で被扶養者になっている方が開業届を提出すると、扶養の対象にならず、自身で国民健康保険に加入しなければならない場合があります。
健康保険組合の種類によりますが、扶養から外れて保険料を支払うことになれば、開業当初は予想外の出費になることも考えられます。
このような不利な状況が発生しないかどうか、事前に確認した上で、開業届の提出時期を判断することも大切です。
また、会社や組織に雇用されている方は、就業規定で副業が認められているかどうか、確認しておきましょう。
会社によっては、副業が奨励されている場合もありますが、副業が禁止されている場合は、処分の対象になる恐れもあります。
開業届と一緒に提出する方がいい?青色申告青色承認申請書とは
個人事業主が青色申告を利用するためには、開業届と所得税の青色申告承認申請書の提出が必要です。
青色申告承認申請書は、開業から2ヶ月以内、時期によっては青色申告をしようとする年の3月15日までに、管轄する税務署に提出しなければなりません。
期限を過ぎてしまった場合は、青色申告できるタイミングが翌年からになることに注意が必要です。
このため、開業時から青色申告の利用を考えている場合は、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出することをおすすめします。
青色申告承認申請書を作成する際の注意点
青色申告承認申請書は、税務署のほか、国税庁のホームページからダウンロードして入手できますが、作成する際の注意点を紹介します。
「屋号」は、法人で言えば会社名に相当する、個人事業主の事務所や店舗の名称を記入します。
個人事業主の場合は必ずしも必要ありませんが、登記も不要で、店舗や事務所名を利用できると事業を進める上で重宝します。
なお、特別な名称を必要とせず、個人名だけで十分なフリーランスの場合などは、屋号がなくても何も問題ありません。
「簿記方式」は、所得控除を受けようとする額が65万円の場合は「複式簿記」、10万円の場合は「簡易簿記」を選択します。
「備付帳簿」は、複式簿記の場合で、現金出納帳や売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、預金出納帳、総勘定元帳、仕訳帳の8種類です。
簡易簿記の場合は、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の5種類が基本的な「備付帳簿」です。
青色申告の節税効果
青色申告には、様々な節税効果を期待できるメリットがあります。
特別控除が最大65万円
複式簿記による記帳を行えば、所得控除を最大65万円まで受けることができることが大きなメリットです。
また、単式簿記による記帳でも、10万円の所得控除を受けることができます。
赤字の損失を3年間繰越して控除できる
青色申告では、赤字になって発生した損失を翌年以降最長3年の間、その年の所得から差し引くことができます。
経営が軌道に乗って安定するまでの期間に発生しやすい赤字損失を、繰り越して経費にできれば節税効果も大きいでしょう。
家族従業員給与も必要経費
制度を利用するためには事前申請が必要ですが、個人事業主が家族従業員に支払った「青色事業専従者給与」を経費として差し引くことができます。
経費として差し引くことができる従業員の条件は、同居または生計が同じ配偶者や親族、年末時点で15歳以上、年間6ヶ月を超えて事業に従事などの要件があります。
30万円未満の減価償却資産なら一括して経費
30万円未満の減価償却資産の場合、減価償却資産とせずに、一括して経費として差し引くことができます。
青色申告の場合は、年間で合計300万円分まで経費と認められます。
貸倒引当金も経費
商品やサービスを先に提供して、後から代金を回収する掛売りでは、売上が回収できないリスクに備えて一定額の資金を蓄える「貸倒引当金」を経費として差し引くことができます。
まとめ
開業届が受理されれば、税務上だけでなく、対外的にも個人事業主として公に認められたことになり、満を持して事業を展開することができます。
また、開業届に合わせて、青色申告承認申請書も提出すれば、様々な税務上の優遇を受けることが可能な青色申告事業者です。
ここから先は、それぞれ個人事業主が思い描くままに事業を展開できますが、そのためにはそれぞれの書類を適切なタイミングで提出することが大切です。
開業までは様々な準備に追われることになりますが、それぞれ1ヶ月以内、2ヶ月以内の期限がありますから、忘れないようにご注意ください。