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最終更新日:2020/7/29

消費税の免税事業者とは?要件や注意点を徹底解説!

この記事でわかること

  • 消費税とは何かが分かる
  • 消費税の免税事業者とは何かや要件が分かる
  • 免税事業者が消費税を請求してよいことが分かる
  • 免税事業者より課税事業者になったほうがよいパターンが分かる
  • 免税事業者と課税事業者の切り替えには注意が必要なことが分かる

事業者は、モノやサービスを提供する対価として、顧客から消費税を預かり、申告と納税を行います。

ただし、全ての事業者が消費税を納付しなければならないわけではありません。

一定の要件を満たす事業者については、消費税の納付が免除される「免税事業者」の仕組みがあります。

では、免税になった場合、モノやサービスを提供する際に、消費税を納税する事業者と同じように消費税を請求できるのでしょうか。

答えは、「請求できる」です。

事業を始めたばかりの個人事業主に多いとされる免税事業者も、胸を張って消費税を請求してよいのです。

以下では、免税事業者についてやその要件、また、免税事業者が消費税を請求してよい理由について、詳しく紹介します。

さらに、場合によっては、免税事業者より課税事業者になるほうがよいパターンがあることについても、あわせて紹介します。

消費税とは何か?

消費税は間接税の一種で、モノやサービスの提供を受けた対価として消費者が負担する税金です。

ただし、所得税などの直接税とは異なり、申告と納税を事業者が担う方式が採用されています。

消費税は、最終消費者だけでなく、商品やサービスを提供する事業者など、一つの商品やサービスが発生するまでの流通段階すべてにおいて発生します。

ただし、それぞれの段階では、新たに発生した価値部分に対してのみ課税されるため、重複して課されることはありません。

それぞれの事業者は、売上分の消費税額から仕入れ分の消費税額を差し引いた、差額だけを納付することになります。

最終的に、それぞれの事業者が納付する消費税額の合計は、消費者が払った消費税の額と一致する仕組みになっています。

消費税の各段階における消費税負担の流れ

消費税の免税事業者とは?

消費税額を申告して納付するためには、収支に関する消費税について、すべてを記帳して計算しなければなりません。

小口取引が多い商品の小売業などの場合は、その負担は相当なボリュームに及ぶことになります。

しかしながら、一定の要件に当てはまる事業者の場合、預かった消費税の納付が免除されることになり、事務負担から解放されます。

この「一定の要件」に該当する事業者を「免税事業者」と呼び、逆に、消費税を納付する義務がある事業者を「課税事業者」と呼びます。

「免税事業者」は、売上が少ない小規模な事業者のことです。

免税事業者は、納付額を申告するために行う計算事務と、消費者から仮に預かった消費税の納付が免除されます。

免税事業者の要件

「一定の要件」に当てはまる事業者なら、消費税の申告事務負担や納税負担が免除される「免税事業者」になることを紹介しました。

個人事業主の場合、売上高にもよりますが、免税事業者となることがほとんどといえます。

では、一定の要件がどのように定められているのか、具体的に確認していきましょう。

基本的に、課税事業者に該当するかを5つのステップで判定し、すべてに該当しない場合に免税事業者と判定します。

一つでも要件に該当すると、課税事業者となります。

ステップ1 基準期間の課税売上高

まず、「基準期間」における「課税売上高」が1,000万円超であるかどうかが、課税事業者となる一つ目の要件です。

「基準期間」とは、前々年(度)、つまり2年前を指します。

なお、個人事業主の場合は暦年、法人の場合は年度が期間を区切る単位になります。

「課税売上高」は税抜価格で計算し、土地の売買など消費税が課されない売上は、対象になりません。

ステップ2 特定期間の課税売上高

二つ目の要件は、「特定期間」における「課税売上高」および「給与等支払額」が1,000万円超であることです。

「特定期間」とは、前年の上半期、1月から6月までを指します。

「給与等支払額」は、課税売上高の代わりに用いられる判定指標です。

給与支払額は所得税の対象となる給与や賞与などのことで、未払金や、非課税である通勤手当や旅費などは含みません。

ステップ3 (法人のみ)設立からの経過年数と資本金の額

三つ目の要件は、「設立から2年以内」で、「資本金の額」または「出資金の額」が1,000万円以上であることです。

なお、資本金や出資金の額が判定の要件となるのは、法人の場合に限られます。

ステップ4 課税事業者届出書の提出

四つ目は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出していることです。

これは、課税事業者を選択した事業者が税務署に届け出る書類です。

課税事業者を希望して届け出たのですから、免税事業者にはなりません。

ステップ5 免除の例外

五つ目は、消費税の納付義務が免除される事業者について、例外的に課税事業者として扱われるケースに該当する場合です。

相続により事業を承継した場合や、法人の合併や分割の場合、新設法人の場合などは、免税事業者とはなりません。

免税事業者は消費税を請求してよい?

免税事業者は、顧客に消費税を請求できる一方で、消費税の納付が免除されます。

このため、消費者から預かった消費税は、そのまま事業者の利益となります。

これは、「益税」と呼ばれるように、多くの場合は免税事業者に有利になります。

しかしながら、消費税の納付が免除される免税事業者が、消費税を請求できるかについては不安が残るでしょう。

そこで、そんな不安を解消するために、免税事業者が消費税を請求してよい理由を確認しておきましょう。

免税事業者も仕入れで消費税を支払う義務がある

預かった消費税の納付は必要なくとも、商品やサービスを提供するための資材購入や材料の仕入れ、外注などのサービスを受けたとします。

その場合は、事業者も消費税を含んだ対価を支払います。

このように、免税事業者でも仕入れなどで支払う消費税が免除されるわけではなく、消費税制度にしたがうことに違いはありません。

新たに生み出した価値に対する消費税は受け取る権利

課税事業者・免税事業者いずれでも、新たな付加価値を生み出せば、付加価値に対し消費税が発生するため、それを受け取る権利があります。

免税事業者も、新たに発生した付加価値に対する消費税を受け取ることは当然で、納付が免除されているだけなのです。

消費税を請求できなければ仕入れの消費税が全額自己負担

仮に、商品やサービスを提供する際に消費税を受け取らなければ、支払った消費税は、事業者の全額自己負担になってしまいます。

法律や通達にも請求できないとの記載はない

消費税法や関連通達に、免税事業者が消費税を請求できないとは記載されていません。

これは、免税事業者が消費税を請求できる重要な根拠となっています。

課税事業者になったほうがよいパターン

消費税納付申告の事務負担を避けることができ、益税のメリットも受けられる免税事業者ですが、課税事業者を選択したほうがよいパターンもあります。

大きな設備投資を伴う場合

開業当初から設備投資を行えば、設備投資に伴って支払う消費税が、売上で消費者から預かる消費税額より多くなるケースがあります。

このような場合は、原則課税方式で納付する課税事業者なら、支払い超過となった消費税の還付を受けられます。

これに対して、免税事業者や簡易課税方式による課税事業者は、還付を受ける資格がありません。

つまり、消費税の還付が必要な場合は、原則課税方式による課税事業者が有利になります。

課税仕入れより課税売上げが少ない場合

開業当初や商品の入れ替えなど、扱う商品を取り揃えるために大量の仕入れが必要な場合はどうでしょうか。

売上から預かる消費税額より、仕入れの消費税額が多くなるケースもあるのです。

開業当初の売上が極端に少ない時期に発生しやすい状況ですが、設備投資などと同じく、払いすぎた消費税は還付が受けられます。

この際も、原則課税方式で納付する課税事業者だけが還付の対象となるため、課税事業者を選択するほうが有利になります。

免税取引をしている場合

輸出を営む事業者の場合、免税取引となるため、売上に消費税は課税されません。

一方で、国内取引がメインとなる支出に関しては、当然消費税支払いの対象です。

このようなケースでは、支出に含まれる消費税額が、売上で預かる消費税額よりも経常的に大きくなります。

端的に言えば、売上すべてが免税取引なら、売上に消費税は発生しません。

このため、消費税の課税事業者には該当せず、どれだけ売上高が増加しても、仕入れで発生した消費税を還付してもらうことができません。

このため、経常的に免税取引をする輸出事業者などの場合、課税事業者を選んだほうが有利になる可能性が高くなります。

免税事業者と課税事業者の切り替えには注意が必要

免税事業者の要件を満たさなくなった事業者は、課税事業者に切り替える必要があります。

逆に、消費税納付が免除される要件を満たした課税事業者が、免税事業者に切り替えたいケースもあるでしょう。

このような場合、必要な手続きや、切り替わる時期のズレや期間の制限が生じ得ることには注意が必要です。

課税事業者と免税事業者の切り替え手続き

新規に事業を始めた個人事業主で、免税事業者の要件に該当している場合は、特別な手続きも必要ないまま免税事業者として扱われます。

一方、途中で課税事業者に切り替えたい場合や、課税事業者から免税事業者に戻りたい場合は、必要な届け出を行わなければなりません。

切り替えに必要な書類の提出を怠っていると、免税事業者に該当する場合でも、消費税の納付義務が免除されないままになってしまいます。

また、消費税の還付を受けたくても、免税事業者のままであれば、その資格を得ることができなくなってしまいます。

2年間は免税事業者に戻れない

免税事業者と課税事業者の切り替えを行ってから適応するまでの時期や期間について、ズレや制限があるため注意が必要です。

免税事業者が課税事業者に変更したい場合は、「消費税課税事業者選択」届出書を税務署に提出します。

この届出は適用する課税期間開始前日までに提出が必要なため、単純に表現すれば「適用は提出日の翌年から」となることに注意が必要です。

また、課税事業者を選択した場合、切り替え後2年間は免税事業者に戻ることができません。

開業初年度に設備投資で支払った消費税を還付してもらうために、課税事業者を選択するとします。

その場合、その後2年間は、課税売上が少なくても消費税の申告と納付が義務になります。

まとめ

免税事業者になれば、消費税の申告事務と支出負担の免除というメリットがあるため、有効に利用することが得策です。

その証拠に、現在、免税事業者としての優遇措置の見直しを視野に、税制の専門的立場からの検討が進められています。

つまり、逆の見方をすれば、この制度を有効に利用すれば、賢く節税できることが証明されているのです。

一方、免税事業者でも、消費税の還付を受けたい場合には、課税事業者を選択するほうが得なケースもあります。

ただし、切り替えを行う場合、適用は提出日の翌年度からとなることや、次回切り替えまでの期間の制限などがあるため、選択には慎重な検討が必要です。

たとえば、開業1年目に設備投資による消費税還付を受けた場合でも、2年間は消費税負担が経営を圧迫する事態も起こり得るわけです。

個人事業を始める際は、数年先を見越した事業展開が、消費税の面からも重要といえるでしょう。

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