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最終更新日:2021/8/3

個人事業主になるには?メリット・デメリットと開業届や確定申告などやるべきことを解説

この記事でわかること

  • 個人事業主となる上で、注意点がわかる
  • 個人事業主のメリット・デメリットがわかる
  • 個人事業主が開業時に行うべきこと、開業後に行うべきことわかる

「個人事業主」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

一般的には町の商店や工務店など、小さなお店が浮かぶというイメージをお持ちの方もおられるかと思います。

ですが、実際「個人事業主」というくくりになる人は多くいるのです。

たとえば、フリーランスのプログラマー、デザイナー、ライターやUber Eatsの配達員、美容室にて業務委託契約で働く人など、「個人事業主」の範囲は想像以上に広いといえます。

当記事では、個人事業主の定義からメリット・デメリット・注意点などに関し説明します。

個人事業主とは?

個人事業主とは、自営業・フリーランスなど、別の会社と雇用契約を結ばずに働く人全般を指します。

個人事業主を始めるには、開業時に税務署へ「開業届」を提出している必要があります(他に必要な書類があるケースもあり、後ほど述べます)。

個人事業主に関しては、非常に包括する幅が広いといえるでしょう。

法人化していない通常の商店、飲食店だけでなく、法人化していない病院・歯科医院・助産院・弁護士事務所、税理士事務所など専門的な事業であっても、法人化していない限りは「個人事業主」と見なされます。

これは、人の雇用があっても同じです。

個人事業主とフリーランスの違い

フリーランスの場合はプロジェクト・現場・単発の作業ごとに企業と業務委託契約を結ぶ形が多くあります。

業種・業界によっては、契約書を結ばず口約束やメール上での契約というケースもありますが、リスク回避のためにも、業務委託契約を書面にし、双方差し入れることが望ましいといえるでしょう。

また、大きな金額の案件や、先方がこちらに不利な契約書、わかりにくい契約書を差し入れてきた場合は、専門家のリーガルチェックを受けると理想です。

特に、業務の完成をどの時点とするか、損害賠償の事項等は注意して目を通しましょう。

場合によっては、契約書の修正を提案が必要になることもあります。

あくまで契約は「業務委託契約」であり、企業と雇用契約を締結しているわけではないので、フリーランスも個人事業主の一形態といえます。

個人事業主のメリットとデメリット

個人事業主のメリット・デメリットを挙げてみましょう。

<個人事業主のメリット>

開始が簡単会社設立と異なり、税務署に開業届を1枚提出するだけでスタートできるため、開始することは非常に簡単
自由度が高い複数の企業と契約を結び、働くことができる
労働契約に縛られないので、働き方の自由度が高い
収入の上限がない会社勤めの場合、会社の内部規定により、ポジションに応じた給与となるケースが多い
個人事業の場合は、自身がやればやるほど売上が伸びる、成果として自身に積み重なる側面がある
場所にとらわれにくい・作業環境を自由に用意できる近年注目をあびているテレワーク(リモートワーク)なども、正社員・派遣社員のような勤怠管理に関する厳密な定めがないため、特定時間に特定場所で勤務をする必要があるわけではない
働き方も自由に選べ、自分の使いやすい机・イスやハイスペックPC、キーボード・マウスなど自由に選べるケースが多い(一部、客先常駐など例外もある)
法人と比較して、廃業にお金がかかりにくい法人の場合は、解散登記・清算人登記・清算結了登記・官報公告・厚生年金保険・雇用保険等、各種手続きが必要。廃業費用の負担は意外と大きい
廃業の際の費用が、専門家報酬も含め10万円弱~20万円、場合によってはそれ以上かかる可能性もある
しかし、個人事業の場合は、廃業届を1枚提出するだけ(ただし、規模・業態によっては手続き費用や原状回復費用などがかかることがある)
会計処理が、法人に比べ簡単法人の場合、提出書類の多さもあり、個人で手続きを行うのは相当厳しい。また、毎月の顧問料、決算手数料で年間数十万の費用が必要となることは想定しておいた方がよい
一方、個人事業主の場合は法人に比べ会計処理が難しくないため、個人でも会計処理をやろうと思えばできてしまうケースもある
ただし、最初の処理で間違いがあると、後々直すのが大変である
できれば、個人事業主の段階から、専門家等に依頼しておくことが理想といえる
最初から専門家等に依頼していれば、法人化のタイミングも含め、様々な事を相談したり、手続きの窓口となってくれたりするメリットもある

<個人事業主のデメリット>

万一の保証がない自身が体調を崩すなどして働けなくなった場合、従業員等で事業運営をできる体制を整えていないと、収入が途絶える
収入保障保険に加入する、各種生命保険に加入するなど、保険加入は必須といえる
健康診断がおろそかになる会社員だと、会社で年に1回以上、健康診断を受診することになるが、個人事業主になると、自分で健康診断を受けに行かないといけない
そのため、忙しさにかまけて健康診断が後回しになってしまう恐れがある
年金支給額が手薄い会社員の場合は、退職事情や職業訓練の受講に応じた一定期間の失業給付がある
しかし、個人事業主は雇用保険に加入していないため、失業給付がない
年金に関しても原則は国民年金のみのため、満額支給でも年間約78万円であり、多くのケースではこれを下回る
国民年金受給額は、1ヶ月にすると、最大で約6万5千円程度にしかならず、多くの人のケースではこれよりも低い年金支給額となる可能性もる
よって、年金だけで生活するのは極めて厳しいといえる
社会的な信用性が低い一般的に、会社員と比べ、自営業・フリーランスの信用度は低いのが実情
金融機関の融資、クレジットカードの作成、賃貸物件の入居審査など様々な面で、会社員に比べ厳しく審査される傾向がある
後ほど詳しく解説するが、会社員から個人事業主・フリーランスになる場合は、ローン契約・賃貸物件の契約・クレジットカードの作成など信用が重要になるため、退職前に各種契約、クレジットカードの作成を行うことが望ましい
企業によっては、法人としか取引しないところがある近年は減少傾向にあるものの、法人への発注は可能でも、個人事業主への発注は行わないという企業も存在するので注意が必要

個人事業主になる前にやっておいた方がいいこと

個人事業主(フリーランス)は、一般企業と比較しても、信用力に劣る面があります。

理由として、法人の場合は登記簿での資本金確認、各種信用調査会社の信用調査で、会社の財務面での手厚さを知ることが可能です。

しかし、個人事業主の場合は「信用」という要素が、ある意味ブラックボックスと化しているためです(ただし医師・歯科医師・弁護士・税理士などの難関公的資格の事業者は除く)。

そのため、先ほどの説明とも重なりますが、会社員からフリーランスになる前にやっておいた方がいいことをおさえておきましょう。

<会社を辞めて個人事業主になる場合>

ローンの契約・賃貸契約・クレジットカード作成など、信用が重要となる手続き会社員とフリーランスでは、契約の難易度が大きく異なる
会社員の場合は、会社員という信用があるうちに、できる契約は行っておくことが望ましい
社会保険の任意継続の手続きこれまでの仕事・職種内容や独立後の利益にもよるが、国民年金保険料の負担は大きく、一般論としては、会社の社会保険を任意継続した方が、負担が小さいケースが多い。任意継続は2年間まで可能
税金・社会保険料などのための現金確保退職後の翌年(住民税など一部は翌々年)は、それぞれ各種税金支払いが本人に請求される
特に、在職時に高い給与を得ていた人ほど、税額が高くなる可能性がある
会社や自治体に確認しても、答えが出ないケースもあるので、できれば専門家に相談することと、一定のまとまった現金を納税用に手元に置いておくことが望ましい
現在の仕事をしっかり行う退職するからと、現在の仕事がいい加減になっては、現在の仕事の関係者に迷惑をかける
そうすると、元の職場はもとより、今後フリーランスとして仕事をしていく上で「この人は信用できない」という話が出てくる可能性もありうる
立つ鳥跡を濁さずの精神で、退職するときだからこそ仕事をしっかりと行う
また、退職後も在職先から仕事を受注できる関係性が構築できると理想
仕事の関係者・知人にこれまでの御礼の挨拶・ハガキ・手紙・メールなどを送る仕事の関係者への挨拶、ハガキ・手紙・メールなどの形で、これまで御礼を主体にして、退職を周知するのが望ましい
あくまでこれまでお世話になったことに対する感謝を伝えるのが主目的であり、フリーになった後の事業のアピールばかりを行うのは好ましくない
事業内容よっては会社法人にした方がよい場合もあるので、専門家に相談する行う事業によっては、個人事業からスタートするより、法人からスタートした方がよい事業・状況も存在しうる
専門家に、個人事業主からスタートした方がよいか、法人からスタートした方がよいかについて、アドバイスを受けることが望ましい

<副業で個人事業主になる場合>

会社の職務規定で、副業が禁止されていないかを確認しておく近年、副業推進の動きは出ているが、今でも伝統のある企業の場合は副業を認めていないケースもある
副業禁止という社内規定ある状況で副業を行うと、懲戒処分、場合によっては解雇など厳しい措置もあるため、職務規程で副業が禁止されていないかを確認すること
なお、公務員については、議会議員など一部の職を除き、副業・兼業は禁止されている
また、アパート経営を行ったことで懲戒処分を受けた公務員もいるので、最小限の家の農業の手伝い、家族から相続した最小限のアパート管理を除いては、副業はやめておくことが望ましい
会社には、副業をオープンにするとともに、「副業をやっているから本業がおろそかになっている」という批判を受けないように、本業にしっかりと取り組む会社には副業をオープンにするとともに、オープンにできない副業は辞めた方が望ましい
また、できるだけ現在の業務と相乗効果のある副業を手がけることが望ましい
理想的なのは、すでに複数の人が副業を行っており、副業に対しオープンな職場であることだが、目立った人がいない場合は、上司・人事など必要最小限にとどめた方が望ましい
また、儲かっている風を吹かすと、要らない反感を買う恐れもあるので、あくまで副業はサブで静かに進め、本業で明確な実績を出せるよう工夫・努力をするのが望ましい

上記の点に留意すると、望ましいといえるでしょう。

個人事業主になるために必要な書類と手続き

個人事業主になるという点では、「開業届」のみを税務署に提出すればよいです。

しかし、他にも届出を行うことがメリットになる書類もありますので、ご紹介します。

<開業時に提出が必要な書類、提出すると望ましい書類>

開業届個人事業主になる人全員が届け出る必要がある
また、ある程度年数が経っても、個人事業を行っているという証明のために、開業届に税務署の確認印が押された書類の写しが必要となるケースがありうる
そのため、開業届は大切に保管しておくことが大切
青色申告承認書青色申告という申告方法を選択する、という書類。申告には、白色申告と青色申告の2種類があるが、青色申告の方が税制上有利
青色申告は複式簿記という、お金の移動及び原因を記載する方式で行うので、少々複雑
ただし、
・最高65万円の特別控除を受けることができる
・家族に対し支払う給与を経費にできる
・純損失(赤字)の繰り越し・繰り戻しが3年間できる
・貸倒引当金計上が可能
などのメリットがある
具体例に関しては、専門家等に相談することをおすすめ
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書家族を従業員として、給与を支払う場合は提出が必要

個人事業主になった後にやるべきこととは

個人事業主になった後に行うこととして、国民健康保険への加入(任意継続制度が適用されている場合は不要)や、国民年金の加入手続きを、市区町村で行う必要があります。

会社で代行してくれるケースもあるかもしれませんが、自分で行うか、会社が手続きを行ってくれるかは確認した方がよいでしょう。

<手続きについて>

国民健康保険への加入住所地の市区町村役場へ、
・健康保険の資格の喪失がわかる書類(会保険資格喪失証明書・離職票・退職証明書など
・マイナンバーカードかマイナンバーの通知書
を持参
国民年金の加入手続き住所地の市区町村役場へ、
・年金手帳または基礎年金番号通知書
を持参し国民年金加入手続きを行う

個人事業主と法人の違いについて

独立するときに「個人事業主の方がいいのか?法人を設立した方がいいのか?」と気になるかもしれません。

ここからは個人事業主と法人の違いについて紹介します。

法人設立は費用がかかる

個人事業主と法人設立では、費用が大きく異なります。

個人事業主は費用が一切かからず、開業届を税務署に出すだけでOKです。

専門的な知識も必要なく、書類に記入して提出するだけです。

それに対して、法人設立では20〜30万円の費用が必要になります。

会社のルールである定款を決めたり、法人の登記が必要だったりと、手続き自体も大変になります。

それぞれのメリット・デメリットはありますが、個人事業主の開業よりも法人設立の方が費用・手間がかかります。

赤字の繰り越し期間が異なる

開業すると、年間の売上から経費を引いて、事業利益を確定させます。

確定した事業利益は確定申告で、税務署に申告して、売上・利益に対して住民税・所得税・事業税・国民健康保険などが課税されます。

事業をやっていると毎年黒字になるわけではなく、赤字になってしまう年もあります。

赤字になった場合に、赤字金額と翌年も計上できる「赤字繰り越し」が認められます。

ただし個人事業主の場合は赤字繰り越しが3年、法人の場合は9年まで可能です。

赤字の繰り越し期間が長いほど、節税にも繋がるため、法人の方が節税効果は高いです。

法人の方が節税できる

法人設立すると、自分への給与が発生します。

自分を法人の役員として、法人から「自分にいくらの給料を払うのか?」を決めて、支給します。

給料をもらっていると、給与所得控除が発生して、もらった給料の何割かを控除できます。

個人事業主の場合は、自分に対して役員報酬を渡すこともできないため、法人のような給与所得控除はありません。

「自分がお金を稼いで使う」という構図は一緒ですが、法人設立をして役員報酬にするだけで給与所得控除が利用できるため、法人は大きな節税が期待できます。

その他にも法人なら経費として認められる範囲が広がるため、ガッツリ節税したいなら最初から法人設立した方がいいでしょう。

事業利益が800万円を超えそうなら法人の方がおすすめ

「法人の方が節税できると分かったけど、具体的にどれぐらい利益出れば法人に切り替えた方がいいの?」と思うかもしれません。

具体的に事業利益が800万円以上ありそうなら、法人設立した方がいいです。

なぜなら800万円を基準にして、個人事業主の節税よりも法人の節税の方が大きく効果が出やすいからです。

ただし業種・会社によって状況は異なるため、不安な方は一度税理士への相談がおすすです。

初回の相談を無料で受け付けている税理士も多いため、気軽に相談してみましょう。

まとめ

個人事業主として独立することは、会社設立と比較すると、比較的手続きが少ないということは想定いただけるかと思います。

ただ、事業内容によっては、個人事業主からよりも法人化の状態でスタートした方がよい事業もあります。

個人事業主にとっても、税金、利益が増えてからの法人成りなど、専門家の判断を最初から仰げる状況にあると、理想的といえるでしょう。

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