最終更新日:2023/12/20
【知らないと損?】法人成り(法人化)の前に知っておきたい消費税の扱いと免除条件
この記事でわかること
- 法人として理解しておく消費税の仕組み
- 消費税の免税の期間や条件
- 簡易課税の計算方法
個人事業から、株式会社などの法人になることを法人成りと呼びます。
法人成りの際に損をしないためには、消費税の取り扱いについて知っておく必要があります。
今回は、法人成りと消費税との関係についてご紹介します。
事業主からみた消費税の扱い
まず、消費税とはどのような税のことをいうのか、そもそもどのように納税するのか、基本的なところから確認しましょう。
消費税は商品などの販売にかかる税
消費税は、商品などの販売にかかる税金のことを言います。
商品だけではなく、サービスの提供などについてもかかります。
税金は、所得に応じた負担(所得税など)という形を取ることもありますが、消費税の場合は消費した金額について何パーセントという決め方をします。
現在の消費税は10パーセントです。
所得が多い人であれ、少ない人であれ、商品価格の10パーセントが消費税として課税されます。
そのため、所得の低い人にとっては所得が低いにもかかわらず、所得の高い人と同じ負担をしなければいけないので割高感が出てしまうでしょう。
所得が高い人にとっては、所得が高くても商品の10パーセント分しか税金を負担しませんので、割安感が出ます。
このような問題を、消費税の逆進性と言います。
所得に関わらず消費税は10パーセントと決めることは、一見公平でありますが、所得がいくら安くても消費税を払わなければいけないということになるので、社会政策的に配慮が必要な分野については、消費税はかかりません。
例えば、社会保険料や出産にかかる費用、火葬料などについては消費税非課税の措置が取られています。
消費税は負担者と納税義務者が別の人
所得税の場合は、税金を負担する人と納税する人は同じです。
消費税の場合はどうなるのでしょうか。
消費税の場合は、負担者は消費者です。
納税義務者は消費税を受け取った事業者になります。
つまり、店頭でものを販売して、消費者が販売価格の10パーセントの消費税を負担します。
事業主は、消費者から預かった消費税を納税します。
消費税は累積しない
消費税を各流通段階で徴収していると、どんどん消費税が商品価格に累積していってしまいます。
そこで、消費税を納税するときには、事業主は課税売上の仮受消費税から、事業主が取引先に払う仮払消費税を差し引いて納税額を計算します。
こうして、消費税が二重計上されない仕組みを取っています。
消費税の納税義務の免除とは
消費税は、事業者が消費者にかわって納める税金だといいましたが、全ての事業者が消費税を収めなければならないということではありません。
一定の条件を満たせば、消費税の納税義務が免除されます。
国税庁ホームページには、「基準期間の課税売上高及び特定期間の課税売上高等が1,000万円以下の事業者(免税事業者)は、その年(又は事業年度)は納税義務が免除されます。」という記載があります。
納税義務はなくても、消費者からは消費税を集めても良いというところがポイントです。
基準となる期間の売り上げが1,000万円以下の場合の場合、消費税の納税義務が免除されます。
個人事業主の場合は前々年、会社の場合は前々年度の売り上げについて、基準が適用されます。
免除期間は2年。
個人事業主と合わせれば4年間可能
個人事業主が事業を始めると、そもそも2年間は免税事業者となります。
2年経ったタイミングで、今度は法人化するとします。
すると、合計4年間免税事業者となります。
法人成りは、今まで個人事業として営んできた事業を法人として営むようにすることなので、例えば個人事業で2年経過した後法人成りした場合、法人として最初から消費税を収めなければならない気がしている人も多いでしょう。
というのも、法人成りするときの仕組みとして、個人から資産と負債を引き継ぐ形になるためです。
資産や負債を引き継ぐのだったら、消費税の納税義務も引き継ぎそうなものです。
しかし実際には、個人事業から法人成りするときには、個人事業については廃業をします。
新しく作られた法人は、廃業された個人事業を引き継ぐものの、個人事業とは別の存在です。
したがって、法人成りした法人は、元の個人事業とは別なので、再び2年間、免税事業者となれるという仕組みです。
そもそも、どうして消費税が免除されるのか、詳細を見て行きましょう。
2期もしくは2年前の課税売上が1,000万円を超えるかどうかで判断
まず、個人事業主だと暦年の2年前、法人だと2期前の売上について、課税売上1,000万円というラインを超えるかどうか判定します(消費税法第9条1項)。
暦年の2年前の売上そのものがありませんので、最初の1年目、2年目は消費税の納税が免除されるというわけです。
法人については、決算期を設立時に定款で定めていますので、決算期は会社によっていろいろです。
法人の場合も個人事業主と似たような仕組みをとっていて、2期前が存在しない第1期と第2期については、消費税は課税されません。
第3期になって初めて、課税売上げ1,000万円のラインについて検討します。
この規定通りにすると、例えば個人事業主を2年間したあと、法人化して4年経った場合、最初の個人事業主である時も、法人化してから2期目の終わりまでもいずれも消費税がかからないことになります。
つまり、単純に足し算をすると4年間は消費税がかからないことになります。
免除されないあるいは免除期間が短縮されるケース
しかし、個人事業主だからといって、全ての個人事業主が開業から2年間の制度を使えるのではありません、場合によっては、個人事業主で開業したばかりでも、免税事業者とならない可能性があります。
開業当初から儲かってしまうと免税事業者にならない場合がある
簡単に言えば、開業した最初の年からたくさん儲かってしまった場合については、免税事業者とならない場合があります。
具体的には、第1期目の最初の6ヶ月間の売上と給与の額がどちらも1,000万円を超えた場合については、第2期目から消費税を納める義務が生じます(消費税法第9条の2)。
この規定は後からできたものなので、「法人化すると必ず2年間は消費税がかからない」と周りから聞いて誤認している方も多いことでしょう。
消費税法の改正前は確かにそうでした。
しかし、新しい規定が追加された現在は違いますので、ご注意ください。
売上と役員報酬が最初の6ヶ月で1,000万円を超えてしまった場合
法人化した後、第1期目の最初の6ヶ月間の売上と給与の額がどちらも1,000万円を超えた場合には免除期間が1年に短縮されてしまいます。
消費税の判定要件の給与については、発生主義ではなく支払った給与を計算の根拠にします。
例えば、末締め翌月15日支給の役員報酬の場合、翌月の給与として取り扱います。
最初からうまくいく事業については納税義務にご注意を
そもそも、法人成りをする目的として、個人事業のままだとより多くの税金がかかってきてしまうからという場合があります。
法人税を払ったとしても、法人から報酬をもらうという形をとったほうが節税になるということです。
そもそもそこまで儲かっているのですから、最初の6ヶ月間で売り上げが1,000万円を超える可能性についてはあり得ると考えておいたほうがいいでしょう。
免除期間後は簡易課税で節税しよう
いずれにしても、ずっと課税売上が1,000万円まで届かない場合は、消費税を納める義務は発生しません。
ビジネスをする側の人としては、事業にきちんと成長してほしいと思うでしょう。
ずっと課税売上が1,000万円にも満たないケースももちろんありますが、将来的には課税売上をもっとたくさん欲しいという場合は、課税売上1,000万円の壁は超える予定で計算しておきましょう。
さて、消費税の納税義務が免除される期間が終わったら、どのように節税をすればいいのでしょうか。
法人の収益の構造や業態にもよる問題なので一概には言えませんが、免除期間後に簡易課税で節税するという手段はあります。
簡易課税とは
通常は、消費税の納付税額を、「課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額」という計算式で計算します。
国税庁ホームページによると以下のように記載があります。
「その課税期間の前々年又は前々事業年度(以下「基準期間」という。)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。」
また、以下のうように説明されているとおり、簡易課税のメリットはみなし仕入れ率を使うことによって計算が簡単になることです。
「この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等(注)、サービス業等、不動産業及びその他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。」
ただし、業態によっては簡易課税が必ずしも節税にならない場合もあります。
簡易課税か、本則課税のどちらを選ぶべきかは、税理士に相談されることをおすすめします。
簡易課税を選択するには期限がある
簡易課税を選択するには、期限があります。
2期目の決算日までに、簡易課税を選択するための届出書を提出すると、簡易課税を選択することができます。
忙しくてつい忘れがちなので、もし簡易課税を検討している場合は期限を意識してください。
まとめ
今回は、法人成りに伴う消費税の扱いと免除条件についてご紹介しました。
究極の目的は節税ではなく、ビジネスとして会社を成長させることであるという人も多いでしょう。
節税は大事ですが、全てではありません。
使える制度を使いつつ、会社の成長を目指して行きましょう。