最終更新日:2024/8/6
2020年度版高所得のサラリーマン必見の節税方法10+2選【手取りを増やして資産形成】
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 高所得のサラリーマンが今すぐに試せる節税方法が理解できる
- 副業をして個人事業主になった場合にできる節税がわかる
- 資産管理会社を設立して法人化するとできる節税がわかる
高所得のサラリーマンの方は、納める税金が高額になり、節税に頭を悩ませることが多いかと思います。
手取りを増加させ、築き上げた資産をしっかりと守っていくためには、適切な節税対策が必要不可欠です。
今回は、今すぐに実践できる節税方法10選を紹介します。
また、副業をして個人事業主になった場合に可能となる節税と、資産管理会社を設立して法人化することで可能となる節税についても解説していきます。
高所得のサラリーマンで、節税についてお悩みの方は、本記事を参考にしてみてください。
目次
サラリーマンの節税方法10選【今すぐ試せる】
まずは、高所得のサラリーマンが今すぐに試せる節税方法10選から紹介していきます。
節税方法については、以下の通りです。
- ・ふるさと納税
- ・個人型確定拠出年金(iDeCo)
- ・特定支出控除
- ・医療控除
- ・セルフメディケーション税制
- ・配偶者控除
- ・扶養控除
- ・生命保険料控除、地震保険料控除
- ・住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- ・NISA
それぞれ詳しく説明しますので、確認していきましょう。
ふるさと納税
高所得のサラリーマンが実践できる1つ目の節税方法として、ふるさと納税の活用があります。
ふるさと納税とは、寄附金税制の一種です。
自身で選んだ自治体(生まれた故郷や応援したい自治体など)に寄付することで、その自治体から、寄附金の額に応じた特産品を受け取ることができます。
それだけでなく、ふるさと納税を活用すると、寄付金のうち2,000円を超過した部分について所得税や住民税が控除・還付されます。
また、このふるさと納税は「ワンストップ特例制度」という制度を設けていて、確定申告を行うことなく、税金控除(寄附金控除)を受けることが可能です。
ただし、ワンストップ特例制度を適用するためには、下記の2つの条件を満たしていなくてはなりません。
- ・寄付先が1年間で5自治体以下であること
- ・確定申告をする必要がない給与所得者等であること
- ・申込みの都度、自治体へ申請書を郵送していること
さらに、ふるさと納税はクレジットカードで納めることも可能です。
クレジットカードで納税することにより、節税を叶えながら、クレジットカードのポイントも獲得できます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
高所得のサラリーマンが実践できる2つ目の節税方法は、個人型確定拠出年金iDeCo (イデコ)の活用です。
iDeCoとは、公的年金の上乗せ給付を保障する私的年金の一種です。
老後のより豊かな生活の実現のために、毎月自身で掛け金を拠出して積み立てていき、その資産を自身で運用することができます。
このiDeCoは拠出した掛け金の全額が所得控除となるため、将来に備えることができると同時に、所得税と住民税を節税することができます。
また通常、運用益に対し約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が課せられますが、iDeCoで運用益を出した場合には非課税です。
年金や一時金で受け取る際も、公的年金控除や退職所得控除などを利用できます。
高所得のサラリーマンが行う節税として、非常に有益な方法と言えるでしょう。
特定支出控除
高所得のサラリーマンが実践できる3つ目の節税方法は特定支出控除です。
サラリーマンであれば通常、仕事のための支出を経費計上することはできません。
しかし、サラリーマンの場合であっても特定支出控除という制度を活用すれば、給与等から経費が控除される場合があります。
この特定支出控除が認められる経費には、以下のようなものがあります。
- ・新聞図書費
- ・交際費
- ・単身赴任者の帰宅にかかる交通用
- ・研修費用
- ・資格取得費用
- ・通勤費用
- ・引越し費用
- ・仕事に関するスーツなどの衣服
ただし、これらの控除を受けるためには、経費の合計額が給与所得控除の半分を超えることが前提となっています。
また、雇用先から特定支出控除を受けるための証明書をもらわなくてはなりません。
医療費控除
4つ目の節税方法は、医療費の適用です。
医療費控除とは、1年間で支払った医療費の合計が一定の金額を超えたとき、 その医療費に基づき計算した金額分の所得控除を受けられる制度です。
自身だけでなく、生計を一にする配偶者やその他親族のために支払った医療費も控除の対象となります。
つまり、自身だけではなく、配偶者や家族の分の医療費も合計して所得控除が受けることが可能になるのです。
ただし、この医療費控除を受けるためには確定申告が必要となります。
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
- (1) 保険金などで補てんされる金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注) 保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。- (2) 10万円 (注) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
セルフメディケーション税制
5つ目の節税方法は、セルフメディケーション税制の適用です。
セルフメディケーション税制とは、上記の医療費控除に設けられている特例のことを言います。
このセルフメディケーション税制を活用することで、医療費のみならず、薬局などで購入した医薬品の費用に対しても、所得控除が受けられます。
セルフメディケーション税制を適用できるのは、厚生労働省が指定する「スイッチOTC医薬品」に該当する医薬品を、年間で12,000円以上購入している場合、かつ、控除限度額88,000円を超過している場合です。
セルフメディケーション税制の対象医薬品については、厚生労働省のホームページに詳しく掲載されていますので、下記をご参照ください。
参考:セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
この制度では前述の医療費控除と同様に、確定申告が必要となります。
健康の維持増進および疾病の予防への一定の取組を行っていることを証明する必要が生じるので、検診や予防接種の領収書・結果通知表、医薬品のレシートは保管しておきましょう。
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方のみしか利用することができません。
申請する際には、自身にとってどちらがより節税に有効になるか、十分に考慮しましょう。
配偶者控除
ご家族がいる場合、6つ目の節税方法として配偶者控除の適用があります。
配偶者控除とは、納税者に、所得税法上の「控除対象配偶者」に該当する人がいる場合に認められる所得控除制度のことを言います。
控除対象配偶者の対象となるには、以下の条件を全て満たす必要があります。
- ・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
- ・納税者と生計を一にしていること。
- ・年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下) - ・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
なお、平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
配偶者控除の金額については次の通りです。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 控除額 一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者(※) 900万円以下 38万円 48万円 900万円超950万円以下 26万円 32万円 950万円超1,000万円以下 13万円 16万円 (注) 老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)が控除できます。また、配偶者控除の適用がない方でも、以下の2つの条件に該当する場合は、「配偶者特別控除」の適用を受けることができます。
- ・納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
- ・配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下
(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)配偶者特別控除額は最高で38万円ですが、配偶者特別控除の適用を受ける納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて異なります。
扶養控除
7つ目の節税方法は、扶養控除の適用です。
こちらも、先ほど紹介した配偶者控除と同様、家族がいる場合に活用できる方法です。
扶養控除とは、納税者に所得税法上の「扶養親族」(配偶者以外)いた場合に、その人数に応じ、所得額から控除する制度のことです。
この制度の適用により、所得税や住民税の納税負担を軽減させることができます。
「扶養親族」の対象範囲となるには、以下の条件を全て満たす必要があります。
- (1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- (2)納税者と生計を一にしていること。
- (3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)- (4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
なお、この扶養控除の金額については次のように定められています。
区分 控除額 一般の控除対象扶養親族 38万円 特定扶養親族 63万円 老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円 同居老親等 58万円
生命保険料控除・地震保険料控除
8つ目の節税方法として、生命保険料控除と地震保険控除があります。
まず、生命保険料控除についてお話ししましょう。
生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合は、所得控除を受けることができるというものです。
この生命保険料控除は、下記のように、新契約と旧契約で控除額が異なってきます。
(1) 新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
新契約に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。
年間の支払保険料等 控除額 20,000円以下 支払保険料等の全額 20,000円超 40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円 40,000円超 80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円 80,000円超 一律40,000円 (2) 旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
旧契約に基づく旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。
年間の支払保険料等 控除額 25,000円以下 支払保険料等の全額 25,000円超 50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円 50,000円超 100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円 100,000円超 一律50,000円
詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。
次に、地震保険料控除についてです。
地震保険料控除とは、地震保険の保険料や掛け金を支払った場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。
地震保険料控除の金額については、次の通り定められています。
区分 年間の支払保険料の合計 控除額 (1)地震保険料 50,000円以下 支払金額の全額 50,000円超 一律50,000円 (2)旧長期損害保険料 10,000円以下 支払金額の全額 10,000円超
20,000円以下支払金額×1/2+5,000円 20,000円超 15,000円 (1)・(2)両方がある場合 - (1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
9つ目に紹介するのが、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)です。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、10年以上の住宅ローンを組んで、一定の住宅を購入・新築・増改築を行った場合に、所得税が控除される制度のことです。
この控除を受けるためには、主に以下の条件を満たす必要があります。
- ・新築または取得日から6カ月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで、継続して居住していること
- ・控除を受ける年の所得金額の合計が3,000万円以下であること
- ・床面積50平方メートル以上、かつ、床面積の2分の1が居住の用に供していること
- ・ローン返済期間が10年以上であること
- ・長期譲渡所得の課税特例などの対象になっていないこと
参考:No.1213 住宅を新築または新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
NISA(小額投資非課税制度)
最後に紹介したいのが、NISA(少額投資非課税制度)を活用した節税方法です。
NISA(少額投資非課税制度)とは、株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を、一定の制限の元で非課税とする制度です。
このNISA口座内での取引であれば、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる運用益が非課税になります。
株式などの取引で運用益を出した場合、通常であれば、20.315%の税金が課せられることになります。
高所得のサラリーマンで投資を行っている方にとっては、高い節税効果が期待できるでしょう。
もっと節税したいなら副業+個人事業主がおすすめ
昨今では、節税への意識が高まり、サラリーマンでも副業をされる方が増加していますが、さらに節税したい場合には、副業で個人事業主になることで、より効果的な節税が見込めます。
ここからは、なぜ副業で個人事業主になると節税できるのかについて、また、個人事業主になるまでの流れや注意点について詳述していきます。
副業をして個人事業主になると節税できる理由
個人事業主となることで節税のメリットが多く受けられる理由は、何でしょうか。
それは、仕事で必要な支出を経費にすることが可能となるからです。
経費とは、仕事上で発生した費用のことです。
たとえば、通勤などにかかる交通費、出張でかかる宿泊費、仕事で使うパソコンの購入費用に至るまで、すべて経費として計上することができます。
この経費は、収入から差し引くことが認められているため、正確に計上して確定申告することで節税が可能です。
一般的に、サラリーマンの副業における支出は、あくまで本業の合間で発生した費用として扱われることが多く、仕事上で必要な経費として認められることが難しいという傾向があります。
個人事業主になれば、本業と同等に扱われ、経費として認められる可能性が格段に高くなります。
サラリーマンが個人事業主となるときの流れ・注意点
サラリーマンが個人事業主となるためには、まず税務署へ開業届を出す必要があります。
この開業届は、事業を開始してから1カ月以内に行うこととされていますが、罰則はなく、事実上、届け出をする日はいつでも構いません。
また、開業届の提出に伴って、青色申告の申請も行うと良いでしょう。
これは、白色申告と比べて、青色申告の方が経費計上できる範囲が広いためです。
開業から2カ月以内か、青色申告を行いたい年の3月15日までに行う必要があります。
年収3,000万円以上なら会社設立も検討してみる
年収が3,000万円以上で、節税を検討しているサラリーマンの方は、資産管理会社(不動産投資や資産形成を行っている人が自らの資産を管理する目的で設立する会社)の設立を検討するのが得策かもしれません。
ここからは、年収3,000万円以上の場合に会社を設立するとなぜ節税できるのかについて解説するとともに、会社を設立するまでの流れと、その際の注意点について詳述します。
資産管理会社を設立するとなぜ節税に繋がるのか
まず、会社を設立することによって節税できる理由の1つ目としては、経費計上できる範囲の拡大です。
個人事業主の場合、基本的に自身や家族への給与給料を経費とすることができませんが、法人成りすることによって経費として計上することが可能になります。
この他にも、家賃や出張手当なども、一部または全額を経費として計上できます。
このように、経費計上できるものが多くなる分、節税効果も高くなるのです。
そして2つ目の理由は、所得税と法人税の税率差にあります。
個人事業主にかかる所得税率も法人化した会社にかかる法人税率も累進課税であり、年間の所得に応じて税率が異なってくるわけですが、年収3,000万円以上になると、所得税率が法人税率を上回ってきます。
そのため、個人事業主の場合よりも法人化した場合の方が、節税できるのです。
資産管理会社を設立して法人化する流れ
資産管理会社の設立も、一般的な会社法人を設立と同様です。
資産管理会社を設立するにあたって大まかな流れとしては、定款などの作成、資本金の払込み、登記申請手続きがあります。
最初に会社法で定められている規定に従い定款などの書類を作成し、その後、金融機関で出資者名義の口座へ資本金の払込みを行います。
これらの手続きを終えたら、最終的には、必要書類を揃えて法務局に設立登記申請の手続きを行います。
このような一連の作業を自身ですべての手続きを行うこともできますが、専門家に代行を依頼することも可能です。
法人化するときの注意点
会社を作ることによって節税面で多くのメリットを得ることができますが、その一方で、いくつかのデメリットが生じる可能性があることも留意しておかなくてはなりません。
会社設立の際には、赤字でも法人住民税や社会保険料を支払わなくてはならず、会社の設立・運営・解散にもコストがかかります。
また、資産管理会社の所有する資産のうち、一定の割合以上に株式もしくは不動産が占めると、課税が強化されることもあるので注意しましょう。
まとめ
高所得のサラリーマンが今すぐに実践できる節税方法を紹介してきました。
節税のポイントは、主に「所得税・法人税の税率差」と「経費計上できる範囲」です。
法人成りを検討するときは、メリット・デメリットを把握して、十分に考慮する必要があります。
今回紹介した節税方法をぜひ参考に、自身の状況と照らし合わせて適切な節税方法を見つけていきましょう。