最終更新日:2022/12/16
インボイス制度は副業中のサラリーマンにも影響あり!準備しておきたいこととは
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 副業をしている人にインボイス制度がどのように影響するかわかる
- 副業の種類によってはインボイス発行をすべきであることがわかる
- サラリーマンが副業に関してインボイス制度にどう対策すべきかわかる
サラリーマンの中にも、副業として収入を得る方が増えつつあります。
インボイス制度が始まると、すべての事業者に何らかの影響がありますが、それは副業中のサラリーマンも例外ではありません。
副業をしているサラリーマンは、どのようにインボイス制度に対処していけばいいのでしょうか。
また、副業の種類によって影響の大きさが異なるため、その点についても確認していきます。
目次
インボイス制度とは
年間の売上高が1,000万円を超える事業者は、税務署に対して消費税を納税しなければなりません。
納付する消費税額は、売上時に預かった消費税から仕入時に支払った消費税額を差し引いて計算します。
そのため、仕入にかかる消費税額を集計することがとても重要になります。
インボイス制度が始まると、仕入にかかる消費税の計算は、インボイス(適格請求書)と呼ばれる書類に基づいて行います。
たとえ仕入や経費の支払いを行っても、インボイスがなければ仕入にかかる消費税を計算することはできません。
消費税の課税事業者は、インボイスを発行する事業者の登録をしなければならず、この申請はインボイス制度が始まる前にできます。
インボイス制度が副業に与える影響
サラリーマンの副業の売上が、年間1,000万円を超えることはそれほど多くないでしょう。
そのため、インボイス制度には無縁と考える方もいるかもしれません。
しかし、実際は消費税の免税事業者であっても、インボイス制度の開始にあたっては影響があると予想されています。
売上高が減少してしまう
インボイス制度が始まると、免税事業者から購入した取引先では、支払代金から仕入にかかる消費税を認識できなくなります。
これは、免税事業者がインボイスを発行することができないためです。
そこで、これまでは普通に取引してくれていた事業者の中に、免税事業者との取引を見直すケースが出てくることが予想されます。
同じ商品を購入するのであれば、免税事業者より課税事業者から購入する方が、取引先にメリットが大きいからです。
もちろん、すべての事業者がこのような対応をするとは限りません。
また、事業者ではない一般消費者にとっては、課税事業者か免税事業者かの違いは関係ありません。
ただ、免税事業者のままである場合、これまでと同じように売上を計上することは難しくなるでしょう。
売上金額の単価を見直す
他の事業者と同じような商品・サービスを取り扱っている場合、価格が他より高いと競争力は低下します。
特に免税事業者のままでいく場合、これまでと同じ価格設定では、事業者からの受注を得にくくなります。
たとえば同じ商品を販売している場合、課税事業者の価格から1割程度引き下げないと、課税事業者との競争に負けてしまいます。
そこで、これまでの金額より低い金額に価格設定を見直し、他の事業者との競争に負けないようにする必要があるでしょう。
課税事業者にならざるを得ない
これまで免税事業者として副業を行ってきた人の中には、取引先の要望に沿う形で、課税事業者にならざるを得ない場合もあります。
課税事業者になると、受け取った売上金額から消費税を計算し、仕入や経費の支払い時に消費税を認識います。
その上で、差し引いて計算された消費税を税務署に納付しなければなりません。
インボイス発行を検討すべき副業
インボイス制度が始まると、すべての事業者が何らかの影響を受けることとなります。
ただ、副業の種類によってはほとんど影響がない場合もあります。
実際、どのような副業を行っている人がインボイス発行をすべきなのか、ご紹介していきます。
インボイスを発行すべき副業
インボイスの発行が求められるのは、取引先(売上の相手)が消費税の課税事業者である場合です。
取引先が自身の消費税を計算する際に、仕入にかかる消費税を認識する必要があるからです。
取引先が法人である場合、かなりの確率で消費税の課税事業者となっているはずです。
そのため、具体的に下記のような副業を行っている場合は、インボイスを発行する必要に迫られます。
- ライター
- デザイナー
- プログラマー
- 企業発注の動画作成
上記の職種の場合、先方から適格請求書発行事業者の登録状況を確認されることや、登録番号を教えてほしいと聞かれることになると予測されます。
適格請求書発行事業者になると決めた場合は、手続きを進めておき、対応できるようにしておきましょう。
インボイスが不要な副業
副業の種類によっては、インボイス制度が始まってもインボイスの発行が必要ないものがあります。
具体的には下記のような副業の場合、適格請求書発行事業者になる必要がないケースも考えられます。
- ハンドメイドなどの物販
- 週末だけのカフェ
- 塾や教室の先生
- 取引先事業者の年間売上高が5,000万円以下
上記のうち、最初の3つの副業は、いずれも最終消費者を対象にした事業となっています。
このような事業の場合、売上先が消費税を計算する事業者でないことが多く、特にインボイスを必要としません。
そのため、適格請求書発行事業者になる必要がない場合もあり得ます。
一方、取引先が事業者であっても、年間売上高が5,000万円以下の場合は、インボイスが不要となる理由が異なります。
この場合、相手の事業者は簡易課税制度と呼ばれる計算方法で消費税の計算を行っている可能性が高いためです。
簡易課税制度は、売上にかかる消費税額から、仕入にかかる消費税額を簡便的に計算する方法です。
業種によって控除できる消費税額が定められており、実際に仕入れた金額を集計する必要はありません。
そのため、仕入や経費の支払い時にインボイスを受け取る必要もないことになります。
ただし、売上が5,000万円以下だからといって、必ず簡易課税制度を利用しているとは限りません。
また、そもそも取引先の売上高がどれくらいなのか、正確に把握することは難しいでしょう。
直接確認できる時だけ、簡易課税によりインボスが不要になると覚えておきましょう。
副業中のサラリーマンのインボイス制度対策
副業を行っているサラリーマンがどのようにインボイス制度に対応していくのか、その手順をご紹介します。
取引先との関係や自身の生き方など、広い視野で考えるようにしましょう。
課税事業者になるかどうか検討する
課税事業者になれば、消費税を納税しなければならないため、手取りの収入はこれまでより減ってしまいます。
一方、課税事業者にならずインボイスを発行しないものとすれば、現在の取引先との関係が終了してしまう可能性もあります。
いずれを選択するのがいいのか、それぞれの人の状況によって異なるため、答えは1つではありません。
免税事業者は、インボイス制度開始により収入減となる可能性が高いため、より影響が少ない方法を選ぶようにしましょう。
副業をこのまま続けるか考える
インボイス制度の導入により、規模の小さな免税事業者は、収入減となってしまう可能性があります。
そこで、現在より収入が減ってしまうにもかかわらず、今後も副業を続けるべきか考えるタイミングとも言えます。
これまでとは違う副業を始めることもできますし、これまでの副業で新しい取引先を探すこともできます。
また、副業自体をやめてしまう選択をすることもできます。
インボイス導入にあわせて、一度自身を見つめなおす機会にしてもいいでしょう。
課税事業者になるための手続きを行う
課税事業者になる選択をした場合は、インボイス制度開始前に必要な手続きを行わなければなりません。
具体的な手続きの方法は、次に詳しく紹介していきます。
免税事業者から課税事業者に切り替える方法
インボイス制度により課税事業者になる場合、ほとんどの人はインボイス制度の開始に合わせて課税事業者になりたいはずです。
このような場合は、管轄の税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出しなければなりません。
この時、免税事業者が登録を行う場合でも、課税事業者選択届出書を別に提出する必要はありません。
ただ、課税事業者として簡易課税制度で消費税の計算を行うためには、「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。
まとめ
副業を行っているサラリーマンにとって、インボイス制度はあまり関係のない話と思っているかもしれません。
しかし、実際にはインボイス制度の導入により、大きな影響を受ける可能性があると言えます。
免税事業者のまま副業を続けるのか、あるいは課税事業者になるのか、よく考えなければなりません。
また、インボイス制度により収入減となる可能性があるため、副業のあり方についても考えてみましょう。