最終更新日:2022/12/16
インボイス制度がせどりに与える影響【仕入れ先は適格請求書を発行してくれる?】
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 新しく始まるインボイス制度とはどのようなものかわかる
- インボイス制度によってせどりにどのような影響があるかがわかる
- インボイス制度に対応して免税事業者が課税事業者になる方法がわかる
2023年10月1日から、消費税に関する新しい制度としてインボイス制度が始まります。
このインボイス制度は課税事業者にも免税事業者にも、それぞれ多くの事業者に影響を与えるため、対応が必要です。
購入した商品を購入額より高く売ることを「せどり」といいますが、せどりを行っている人もまた、消費税の課税取引を行っていることから、インボイス制度の影響を受けることとなります。
どのような影響を受けるのか、そしてインボイス制度にどう対応するのか、確認していきましょう。
目次
インボイス制度とは
インボイスとは、国が定める記載事項をすべて満たした書類のことで、正式には適格請求書と呼ばれます。
このインボイスを使って消費税を計算するのがインボイス制度であり、2023年10月1日より正式に適用されます。
インボイス制度が始まると、事業者が消費税を受け取るためにはインボイスを発行する必要があります。
また発行したインボイスは、商品やサービスを利用した事業者が保管しなければなりません。
インボイス制度導入後は、消費税の計算をこのインボイスに基づいて行うこととなります。
インボイス制度がせどりに与える影響
インボイス制度は、消費税の課税事業者・免税事業者に関係なく、すべての事業者に影響を与えます。
ここでは特に、せどりを行う事業者にとっての影響をご紹介します。
免税事業者は課税事業者になるか検討する
消費税の免税事業者とは、1年間の課税売上が1,000万円以下であるため、消費税の納税義務がない事業者のことです。
免税事業者に該当すると、消費税を納める必要はありません。
また一方で、インボス制度開始前であれば、免税事業者が商品を販売した時に消費税を受け取ることができます。
これは、消費税の課税対象になるかどうかの判定は、その取引の中身によって判定するものとされているからです。
事業者が税務署に納める消費税の税額は、受け取った消費税から支払った消費税を控除することとされています。
免税事業者に対する支払いも、これまでは支払った消費税の対象として、消費税を控除することができました。
しかし、インボイス制度が始まると、免税事業者に対する支払いについて、消費税を認識することができなくなります。
そこで、免税事業者との取引を行わないようにする動きが、企業の中には見られます。
同じ商品を同じ金額で免税事業者と課税事業者から購入した場合、免税事業者から購入する方が大きな負担になるからです。
その結果、せどりを行う事業者が免税事業者のままであり続けると、これまでより売り上げが減ってしまう可能性があります。
そこで、免税事業者は課税事業者になり、インボイスを発行する事業者になるかを検討しなければなりません。
課税事業者は適格請求書発行事業者の申請を行う
これまで消費税の課税事業者であった人は、インボイス導入と同時に自動的に適格請求書発行事業者になれるわけではありません。
必ず事前に、適格請求書発行事業者の登録申請を税務署に対して行わなければなりません。
なお、登録を行うと税務署から適格請求書発行事業者登録番号が通知されます。
また、インボイスの開始に合わせて課税事業者になることもできます。
この場合も、適格請求書発行事業者の登録申請が必要です。
インボイス制度導入度にインボイスを発行できるよう、必要な申請を忘れないようにしましょう。
Amazonはインボイスの取得を勧めている
Amazonはその出品者に対して、メールを送っています。
その内容は、2023年10月1日より、インボイス制度が開始されることを伝えるものです。
また、Amazonで販売を行うにあたって対応が必要になる、とも記載されています。
対応とは何を意味するのか、はっきりとは明記されていません。
ただ、Amazonの出品者は、適格請求書発行事業者登録番号を登録しなければならないといったシステムになる可能性もあります。
そのため、Amazon出品者はインボイスの取得が強制される可能性も指摘されています。
この点については、Amazonからの続報を待って対応しなければなりません。
免税事業者から課税事業者に切り替える方法
免税事業者の中には、インボイス制度の開始と前後して課税事業者になることを選択する場合もあります。
免税事業者が課税事業者になるには、何らかの手続きが必要なため、その内容を確認しておきましょう。
インボイス制度開始前に課税事業者になる場合
免税事業者が課税事業者になるのは、大きく2つのパターンがあります。
まずは、(1)自ら選択して課税事業者になる場合です。
課税売上高はそれほど大きくなくても、自ら選択して課税事業者になることができます。
たとえば、仕入れが大きな年に課税事業者となっておけば、その仕入れにかかる消費税を還付してもらうことができます。
そのため、自ら課税事業者になることを選択する場合があることが予測されます。
自ら課税事業者になる場合は、税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
課税事業者になろうとする課税期間の初日の前日までに、管轄の税務署に郵送または持参して提出します。
もう1つは、(2)2年前の課税売上が1,000万円を超えた場合です。
課税事業者になるかどうかは、2年前の課税売上高の金額が1,000万円を超えるかどうかで判定します。
2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の申告・納付義務が発生するため、課税事業者になります。
税務署でも、2年前の課税売上高は把握しているため、税務署から届出書を提出するよう連絡を受ける場合があります。
この場合、「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出しなければなりません。
ただ、こちらはいつまでに提出しなければならない、ということはありません。
課税事業者になることがわかったら、できるだけ速やかに手続きの準備を行いましょう。
なお、インボイス制度開始前に課税事業者になった場合でも、自動的に適格請求書発行事業者に登録されるわけではありません。
そのため、適格請求書発行事業者になるには、事前に適格請求書発行事業者の登録申請を行わなければなりません。
インボイス開始と同時に課税事業者になる場合
インボイス制度の仕組み上、これまでは免税事業者であったものの、インボイス制度開始と同時に課税事業者になる場合があります。
このような場合、国税が定める経過措置の適用を受けることができます。
免税事業者が2023年10月1日~2029年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合、その登録日から課税事業者となることができます。
通常は、課税期間の途中で免税事業者から課税事業者に代わることはできませんが、特例として認められています。
この経過措置の適用を受ける場合は、課税事業者選択届書を提出する必要はありません。
せどり仕入れ時のインボイス発行可否
インボイス制度が始まると、せどりを行うためにどのような方法で仕入れを行うかにより、消費税の負担が変わってきます。
ここでは、仕入れによる消費税の違いを確認しておきましょう。
フリマサイトなどで個人から仕入れる場合
フリマサイトを利用しているのは個人だけとは限りませんが、適格請求書発行事業者が出品している可能性は低いでしょう。
適格請求書発行事業者でない個人や事業者から仕入れを行った場合、適格請求書の発行を受けることはできません。
この場合、仕入れ時に支払った金額は全額が仕入れたものの本体価格となり、仕入れにかかる消費税を認識することはできません。
ECサイトで仕入れを行った場合
ECサイトを通じて商品を購入するなど、仕入れを行うことがあります。
ECサイトを利用する場合、そのサイトの仕様によって、適格請求書を受け取れない場合があります。
また、Amazonや楽天市場のようなECサイトに出品している事業者は、免税事業者の場合と課税事業者の場合があります。
この場合は、各出品者の情報をよく確認しておき、課税仕入れとなるように適格請求書発行事業者から購入するといいでしょう。
実店舗で仕入れた場合
実店舗で購入して仕入れを行う場合は、その店舗を運営している会社が適格請求書発行事業者かどうかを確認しましょう。
適格請求書発行事業者であれば、インボイスを受け取ることができます。
一方、適格請求書発行事業者でない場合も考えられます。
このような時は、仕入れにかかる消費税の額を計算することができません。
今後もその店舗を利用するか、あるいは今後は利用しないようにするか、考える必要があります。
まとめ
せどりを行っている人の中には、消費税の免税事業者も多くいるでしょう。
インボイス制度開始後も免税事業者のままでいると、購入先の中には取引を行わないようにする業者も現れると予想されます。
消費税の課税事業者に対する売上が減少する可能性があるので、免税事業者のまま行くか課税事業者になるか検討しましょう。
また、課税事業者になることを選択した場合は、必要な手続きがあるため、忘れないようにしましょう。