最終更新日:2022/11/25
インボイス制度で領収書は何が変わる?適格簡易請求書に利用できる書き方を解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- インボイス制度とはどのような制度なのか概要がわかる
- インボイス制度導入後の領収書がどう変わるのかがわかる
- 適格簡易請求書に利用できる領収書の作成方法を知ることができる
2023年10月1日からインボイス制度が開始され、これまでの消費税の計算や書類保存の方法が変わっていきます。
ただし、インボイス制度導入が目の前に迫っている中、その対応が後回しになっている事業者も多いのではないでしょうか。
そこで、インボイス制度により作成・受け取る領収書に、どのような変化があるのか解説していきます。
また、簡易インボイス制度と呼ばれる領収書もあるため、その内容や作成方法についてご紹介します。
目次
インボイス制度とは
インボイス制度とは、消費税の計算を受け取った請求書にもとづいて行うものです。
消費税の納税額を計算する際には、売り上げた際に預かった消費税から、仕入れ時に支払った消費税を差し引く計算を行います。
この時、仕入れ時に発生する消費税額を、購入先の事業者から受け取った適格請求書(インボイス)に従って計算するのがインボイス制度です。
インボイス制度が始まると、これまで以上に請求書の記載内容が重要になります。
仕入れから発生する消費税について、申告書に正しく記載するための情報を網羅していなければならないからです。
そこで、インボイス制度が開始されると、作成する請求書にいくつか変更点があります。
(1) 請求書を発行する事業者の登録番号を記載する
登録番号を取得した事業者からの仕入れでなければ、仕入れにかかる消費税額を認識することはできません。
インボイス制度において、最も重要なポイントとなります。
(2)軽減税率の対応商品であることを個別に表示する
軽減税率が適用されている商品を販売・購入することも少なくありません。
また、軽減税率が適用されない商品と一緒に取引が行われることもあります。
この時、どの商品が軽減税率の対象となっているか、明細の中でわかるようにしなければなりません。
(3)適用税率ごとに消費税額を計算する
複数の税率が適用される商品が混在している場合、それぞれの税率ごとに消費税額を計算します。
なお、消費税額を計算して端数が出る場合には、税率ごとの合計額から1回のみ切り捨てることとなります。
またインボイス制度では、領収書やレシートは簡易インボイス(適格簡易請求書)として取り扱われます。
記載事項などの要件を満たした領収書やレシートであれば、仕入れにかかる消費税額を認識できます。
ただし、簡易インボイスとして認められるには厳格な要件があり、どのような領収書でも認められるわけではありません。
また、適用を受けられる業種にも制約があるため、誰もが利用できるわけではない点に注意が必要です。
インボイス制度導入により領収書で起きる変化
インボイス制度では、支払った消費税額を預かった消費税額から控除するためには、書類を保存しなければなりません。
請求書を受け取る取引であれば、その請求書を保管しなければならないということです。
しかし、請求書を受け取らない取引の場合は、領収書を保存しておく必要があります。
インボイス制度に対応した領収書は、これまでとは異なる点がいくつかあります。
その違いについて、領収書を発行する場合と領収書を受け取る場合に分けて解説していきます。
領収書を発行する場合
インボイス制度に対応した領収書は、簡易インボイス(適格簡易請求書)と呼ばれます。
簡易インボイスには、従来の領収書には必要のなかった記載事項も含めて、以下の項目を記載しなければなりません。
- (1) 簡易インボイスを発行した事業者の氏名または名称と登録番号
- (2)取引が行われた日
- (3)取引された商品やサービスの内容と軽減税率対応の表示
- (4)取引の税抜価格あるいは税率ごとに区分して算出した消費税額
- (5)取引金額のうちに含まれる消費税額または適用税率
また、仕入れにかかる消費税額の計算を行うためには、領収書が必要になります。
これまでは、取引価格が3万円未満であれば領収書はなくてもよいとされていたのですが、その取扱いがなくなります。
そのため、課税事業者はどのような金額のケースでも領収書やレシートを発行しなければなりません。
領収書を受け取る場合
受け取った領収書は、仕入れにかかる消費税額を計算するために使用します。
消費税額を計算する際には、領収書に記載された内容から、計算に必要な項目を抜き出して確認します。
まずは、領収書が適格請求書発行事業者により作成されたものかどうかを確認しなければなりません。
もし適格請求書発行事業者でない事業者に対して消費税に相当する金額を支払っても、その金額を消費税の計算に含めることはできないためです。
その他、適用されている税率、取引金額とそこに含まれる消費税額などを領収書から確認する必要があります。
また、受け取った領収書は、電子帳簿保存法に対応した形で保存しなければならなくなります。
受け取った紙媒体の領収書をそのまま保管しておけばいいわけではないため、注意が必要となります。
受け取った領収書をもとに会計処理を行う際に、簡易インボイスがあれば消費税額を認識することができます。
しかし、簡易インボイスの要件を満たさない領収書の場合は、消費税額を認識できなくなります。
同じような取引内容であっても取引先によって違いがあるため、必ず領収書を確認して会計処理を行いましょう。
簡易インボイス制度(適格簡易請求書)に利用できる領収書の書き方
取引ごとに請求書が発行されない業種の場合、請求書ではなく領収書にもとづいて消費税の計算を行います。
そのため、領収書には決められた記載事項があり、それらが記載されていない領収書では消費税が計算できません。
特に注意が必要な5つの記載内容について、確認していきます。
発行した事業者の氏名または名称と登録番号
事業者の氏名や名称を記載していなければなりません。
またこの他に、インボイスを発行するための登録番号が記載されている必要があります。
登録番号は、インボイスを発行するために事前に登録して受けていなければなりません。
この登録番号がなければ、仕入れを行った事業者は仕入れにかかる消費税を認識することはできません。
取引が行われた日
取引が行われた日は、これまでの領収書やレシートにも記載されていました。
インボイス制度導入後も、引き続き記載する必要があります。
取引の内容
どのような商品を購入したのか、あるいはどのようなサービスの提供を受けたのか、わかるようにします。
この取引の内容に応じて、軽減税率が適用されるのか、あるいは通常の税率が適用されるのかが決まります。
取引の税抜価格あるいは税率ごとに区分した価格
1枚の領収書に記載された商品の中には、軽減税率が適用されるものと、通常の税率が適用されるものがあります。
そこで、税率ごとに区分してその金額を合計し、8%適用分○○円、10%適用分○○円と記載します。
取引金額に含まれる消費税額
領収書に記載された取引金額のうち、消費税額がいくらあるのかを記載します。
なお、消費税額を記載する際も税率ごとに区分し、8%適用分○○円、10%適用分○○円とします。
領収書を受け取った事業者は、ここに記載された消費税額をもとに、消費税の納税額の計算を行います。
まとめ
消費税のインボイス制度の導入は、消費税を納税している事業者だけでなく、消費税を納税していない事業者にも関係します。
適格請求書発行事業者になると、要件を満たした請求書や領収書を発行しなければなりません。
また、請求書を発行しない事業者でも、領収書で対応する必要があります。
前もって、インボイス制度に対応した書類を作成することのできるような準備をしておきましょう。