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最終更新日:2022/6/7

税務調査が来る頻度や確率|特に警戒が必要な業種や事業者は?

税理士 鳥川拓哉
この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

税務調査は税務署の職員が会社や事務所にやってきて、納税申告が適切に行われているかどうかを調べるものです。

税務調査は、ある日突然、税務署から電話がかかってきて始まります。

税務署というだけでなんだか怖いのに、いつかかってくるかわからないのは不安ですよね。

税務調査が入りやすい確率がわかっていれば、少しは安心できるかもしれません。

税務調査が来る確率はどのくらいなのか、詳しくご説明します。

税務調査とは

税務調査とは、税務署などの国税庁管轄職員によって行われる納税者に対する訪問調査のことです。

職員が直接会社や事務所を訪れて帳簿や領収書などをチェックし、正しい税務申告が行われているかを調べます。

調査は2~3日ほどかけて行われ、過去のデータまでさかのぼって詳しく調べられます。

調査の結果、不適切な部分が見つかった場合には、追徴課税などの処分か課せられることもあります。

税務調査の対象

税務調査はなんとなく大きな会社だけを対象にしているイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。

税務調査の対象は事業者すべてで、大企業も中小企業も個人事業主も調査対象です。

申告方法も関係がなく、白色申告も青色申告も無申告も税務調査の対象になる可能性があります。

税務調査の頻度

会社などの法人の場合、一般的には10年に1度の頻度で税務調査が来るといわれています。

業種や過去の不正歴などによっては、3~5年の頻度で調査を受ける場合もあるようです。

個人事業主の場合は、創業から5年以上経過している場合に調査対象になることが多いようです。

ときどき「個人事業主だから税務調査なんて入らない!」と安心しきっている人をみかけます。

たしかに、個人事業主は会社に比べると事業規模が小さいため、調査頻度は低いです。

しかし、個人事業主だからといって税務調査をスルーできるわけではありません。

少ないながらも、毎年個人事業主に対する税務調査が確実に行われています。

注意しておきましょう。

税務調査の実施状況

税務調査の詳しい実施状況については、国税庁が毎年発表しています。

それによると、平成28年度の税務調査率は法人で3.2%、個人事業主で1.1%です。

参照:国税庁「税務行政の現状と課題」

単純に計算すると、法人の場合は30年に1度、個人事業主の場合は100年に1度くらいの確率になります。

そんなに高い確率ではなく、個人事業主にいたっては生涯税務調査を受けない人も少なくないといえる数字です。

先ほど、一般的には法人は30年に1度と説明しましたが、実際はもっと低い確率じゃないかと思ったかもしれません。

一般的にいわれている頻度と現在の実際の頻度に乖離があるのは、以前はもっと税務調査の頻度が高かったためです。

税務調査は減少傾向

税務調査の実施率は減少傾向にあります。

国税庁の発表によると、平成元年度の法人実施率は8.5%でしたが、平成29年度には3.2%と半分以下の割合まで減少しています。

個人事業主の場合も同様で、平成元年度は2.3%だったのが平成29年度には1.1%とこちらも半分以下まで落ち込んでいます。

国税庁の統計では毎年多少の上下はあるものの、法人も個人事業主もじわじわと実施率が下がりつつあります。

今後もこの傾向は続くと予想されており、税務調査の確率は少しずつ下がっているものと思われます。

税務調査の減少理由は?

税務調査の確率が下がっている理由としては、次の3つが考えられます。

  • ・税務申告の件数自体が増加している
  • ・事業や脱税の国際化により税務が複雑化している
  • ・脱税の手口の巧妙化

会社法の改正によって資本金要件がなくなり、会社設立のハードルがぐっと下がりました。

また通信技術の発達により、パソコン1台で事業を起こすことも珍しくない時代です。

税務申告をする人が増えた分、税務署職員のマンパワーが足りなくなり、実施率が下がっているのです。

さらに、税務もどんどん複雑化していっています。

脱税の手口も同じく複雑化するため、今後もこれ以上税務調査率を上げることは難しいと予測されています。

注意して欲しいのは、税務調査自体の件数が減っているわけではないということです。

多少の増減はあったとしても、税務調査自体が今後極端に少なくなったり、制度としてなくなったりすることはないと思われます。

「事業を行っている以上、税務調査の対象になりうる」ということを忘れないようにしましょう。

特に警戒が必要な業種

税務調査の確率が全体的には低くなっている中でも、高い頻度で税務調査を受けやすい業種があります。

過去の経緯から不正が起こりやすい業種は税務調査の対象になりやすいのです。

平成29年度「不正発見割合の高い10業種(法人税)」

業種不正発見割合
バー・クラブ0.664
外国料理0.481
大衆酒場、小料理0.418
その他の飲食0.362
土木工事0.3
その他の道路貨物運送0.293
パチンコ0.292
職別土木建築工事0.279
自動車修理27.8
一般土木建築工事27.2

引用:国税庁HP:平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要

また、追徴課税の額が大きくなりやすい業種も注意が必要です。

平成29年度「不正1件当たりの不正所得金額の大きな10業種(法人税)」

業種追徴税額(一件あたり)
キャバクラ834万円
風俗業443万円
不動産代理仲介478万円
システムエンジニア176万円
機械器具、部品修理230万円
焼肉322万円
冷暖房設備工事237万円
人材派遣263万円
バー249万円
ダンプ運送174万円

引用:国税庁HP:平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要

こうした業種が税務調査の対象になりやすいのには、次のような理由があります。

  • ・現金による取引が多い
  • ・エンジニアなど物ではないものを扱っている
  • ・運送などのサービスを売っている
  • ・税務に無頓着で申告をしない人が多い

現金による取引はミスが起こりやすく、お金の流れを把握するのが難しいです。

また、エンジニアや運送業などのように物ではないものや形のないサービスを取り扱っている場合も、在庫などがないため物やお金の流れがわかりにくくなります。

そのためごまかしもしやすく、脱税の可能性が高いとして税務調査の対象になりやすいのです。

工事業などは昔からの傾向として帳簿をきちんとつけない人が多い業種で、税務署としても申告内容が正しいのか確認する必要があるため、調査確率が高くなっています。

特に警戒が必要な事業者

業種だけでなく、税務調査に入られやすい事業者にも特徴があります。

  • ・規模が大きい会社
  • ・短期間で業績が大幅に変動した会社
  • ・不正が多い業種
  • ・過去に重加算税を課せられたことのある会社

これらの会社は適切な税務申告が行われていない可能性があるため、税務調査の対象に選ばれやすいです。

まとめ

税務調査の確率は年々減少傾向にあり、平成29年度は法人で3.2%、個人事業主で1.1%です。

法人は30年に1度、個人事業主は100年に1度くらいの確率になります。

しかし事業を行っていれば、会社も個人事業主も税務調査の可能性があります。

税務調査に入られやすい業種や事業者は、特に注意して日々の税務作業にあたりましょう。

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