最終更新日:2022/6/6
顧問税理士を変更する際に行うべき準備と手続き
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 税理士を変更する際の準備がわかる
- 税理士を変更する手続きがわかる
- 現在の税理士への断り方がわかる
税理士の変更を検討する時に気になるのは、「実際に税理士を変更する具体的な方法はどうしたらよいか」ということです。
そこで、税理士を変更する場合、どのような準備や手続きが必要なのか、などについて解説します。
税理士変更を考えている方は是非参考にしていただければと思います。
目次
最初に契約内容を確認しましょう
税理士変更をする際は、まず、税理士と契約の際に取り交わした契約書を用意します。
契約書には必ず契約の解除についての取り決めがありますので、その条文を確認しましょう。
そこに、「契約の解除はその2か月前までに書面をもって申し入れる」などと書かれていたら、必ずその通りに行う必要があります。
ちなみに、契約書を交わしていない場合は、いつでも好きなタイミングで契約の解除を申し出ることができますが、契約書を紛失した、交わしたかどうかよく覚えていない、などの場合は、いきなり申し入れを行うのではなく、丁寧に話し合った方が良いでしょう。
つぎに必要書類を集めましょう
つぎに、後任の税理士に引継をするために、必要書類を集めます。
全ての書類について、必ず、現在の税理士に解約を申し入れる前に用意しましょう。
必要書類は大きく分けて、次のものがあります。
- ・決算報告書
- ・届出書・申請書
- ・会計書類
- ・その他の書類
これらの書類は、基本的に社内に保存されているはずですが、税理士が保管している場合もありますので、探しても見つからなければ、早めに税理士に連絡して取り寄せます。
ただし、「税理士を変更するから書類を返して欲しい」とは言わずに、「会計について学んでいる」「過去の数字や書類を確認したい」などと言って、送ってもらいましょう。
決算報告書
顧問税理士と契約している場合、当然ですが決算に関する各種の申告書類は税理士が作成しています。
その内容は以下の通りです。
- ・法人税の確定申告書
- ・都道府県民税の申告書
- ・市町村税の申告書
- ・消費税の申告書
- ・償却資産税の申告書
- ・年末調整の関係書類
- ・決算書 など
一つひとつが別のものではなく、決算報告書として基本的に綴じられています。
これを直近の3年分用意し、後任の税理士に引き継ぎます。
届出書・申請書
設立から長い期間が経っている場合や、本社移転、社屋建て替えなどがあった場合は、探すのに苦労するかもしれませんが、下記の書類も引継に必要です。
- ・法人設立届
- ・青色申告の承認申請書
- ・棚卸資産、減価償却方法、為替換算方法などの届出書
- ・消費税に関する各種届出書
- ・給与支払事務所等の開設届出書
- ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 など
会計書類
日々の会計処理について、会計ソフトへのデータ入力も含めて依頼している場合は、税理士から会計データを全て入手しましょう。
会計ソフトを自社で導入して入力を行っている場合はデータを抽出します。
それら下記のデータと証票類を、後任の税理士に引き継ぎます。
- ・請求書・領収書などの証票類
- ・仕訳帳
- ・総勘定元帳
- ・試算表 など
その他の書類
上記の書類に併せて、次の書類も用意します。
- ・登記事項証明書(履歴事項全部証明書・登記簿謄本など)
- ・定款(原始定款・変更がある場合は変更登記申請書など)
登記事項証明書は近くの法務局で入手できます(全国どこでも可)。
また、定款が手元にない場合は、手続きを依頼した司法書士や行政書士に確認しましょう。
なお、履歴事項全部証明書について、名称から全ての事項が記載されていると思われがちですが、システムの関係などから、一部省略されて印刷されていることがありますので、注意が必要です。
その他の書類でも、後任の税理士から依頼があった場合は用意が必要になるため、打ち合わせ時に確認するようにします。
いまの税理士にお断りの連絡をしましょう
さて、いよいよ現在の税理士にお断りの連絡をします。
契約書に記載された解約の時期と方法を守れば、月一回の打ち合わせの時でも構いません。
後で揉めることがないように、打ち合わせの時は口頭で申し入れても、必ず後日正式に書面で送る、という方法を取りましょう。
断るときによく使われる理由として、
- ・親戚の者が税理士事務所を開業した
- ・友人が税理士を開業した
というのがありますが、よくよく考えると長年付き合いのあった税理士を変更する理由としては弱いので、できれば、
- ・取引先の社長の息子が税理士事務所を開業したので、社長から顧問の就任を依頼された
- ・出資を受けることになり、出資元からウチの顧問税理士に変更して欲しいと依頼された
といった、「仕方なく契約の継続ができない」という理由にすると、スムーズに解約ができます。
税理士の変更を行う際の注意点
税理士変更の手続きをする場合、他に注意した方が良い点はないのでしょうか。
上記のことを行えば、基本的に問題はないのですが、先代からの長い付き合いのあった顧問税理士など、円満に変更の手続きを行いたい、ということもあります。
そういった場合も含めて、次のようなことに注意します。
- ・変更のタイミングに注意する
- ・できるだけ繁忙期は避ける
- ・期限ギリギリに行わない
変更のタイミングに注意しましょう
現在の税理士に解約の連絡をした場合、契約期間終了後は一切会計の業務が行われませんので、必要書類を全て入手し、後任の税理士との打ち合わせが完了していないと、会計業務に支障が出てしまいます。
税理士を変更する際は、後任の税理士を探す所から、打ち合わせの期日、必要書類の入手、現在の税理士との解約時期と申し入れ時期など、全てのスケジュールについてあらかじめ計画を立ててから行うようにします。
できるだけ繁忙期は避けましょう
また、変更するタイミングは、いつでもできるからと言っても、税理士が多忙な時期である3月や税金の支払い時期などに行うのは避けましょう。
必要書類の入手に時間がかかったり、引継内容にミスが生じたりする可能性があるからです。
期限ギリギリは避けましょう
業務のミスなど、税理士側に変更せざるを得ない大きな理由がある場合はともかく、長年付き合いのあった税理士を変更するなどの場合、法的に問題ないと言っても、契約期限ギリギリに解約を申し出るのは避けましょう。
担当者間の連絡がうまくいかずに、きちんと伝わらなかったり、期限までに書面が届かず、申し入れが行われていない状態になったりする、など不測の事態を避けることができます。
決算月から余裕を持っておく
税理士変更のタイミングは、自社の決算月から余裕を持った時期にしましょう。
例えば3月決算なのに、2月に税理士変更を依頼すると、そもそも契約を結んでくれないかもしれません。
税理士としては定期的な訪問・会計のチェックをしたうえで、年間の決算作業をおこないます。
決算前のギリギリで前任の税理士から引き継がれたら、新任の税理士にとっては「ミスの可能性が高い危険な状態」になります。
新任の税理士だと、会社の事業状態・お金の流れ・ビジネスの状況など把握すべきことがたくさんあります。
なるべく決算まで余裕がある状態で、税理士の変更ができるようにしましょう。
新しい税理士を探すときのポイント
「顧問税理士を変更したい」と思っている人は、今の顧問税理士に不満があると思います。
「今の税理士が苦手なことに対応できる税理士がいい」と思っているかもしれませんが、他にも確認が必要です。
そこで下記では、新しい税理士を探すときのポイントを紹介します。
税理士の得意・苦手分野を把握する
税理士によって得意・不得意なことが違います。
例えば「今の税理士はITの知識がないから、次の税理士はITに強い人がいい」と思うかもしれません。
もしITに強い税理士を選んだとしても、最初の税理士よりも税務知識が少なかったり、経験が乏しかったりする可能性もあります。
自分はどういう税理士に依頼したいのか?を明確にしておきましょう。
できれば自分が苦手な分野を得意をしている税理士だと相性がいいです。
対面で会って判断する
税理士を選ぶときには、能力だけでなく人間性も重要になります。
なぜなら税理士とは長期的な信頼関係を築く必要があるため、自分が信頼できる人間性じゃないといけないからです。
例えば税理士としての能力が高いけど、自分との相性が悪かったりすれば、長期的な信頼関係が築けないかもしれません。
できれば一度対面で会って「どんな人なのか?」を直接判断しましょう。
意外と直接会わないと分からないことも多いため、面倒ですがあって判断するのは大切です。
税理士への希望を明確にしておく
税理士の変更したいなら、今の税理士になにかしらの不満があると思います。
新しく依頼する弁護士には、自分がやってほしいことを明確に伝えましょう。
例えば前の税理士で不満に思っていたことがあれば、新しい税理士には「ここだけはやってほしい」と伝えておきます。
契約前に明確な希望を伝えておくことで、お互いにすれ違いが生まれにくくなります。
相手の税理士としても明確な希望を伝えてもらうことで、自分がやるべきこと・注力すべきことが分かります。
まとめ
ここまで、「顧問税理士を変更する際に行うべき準備と手続き」について解説してきました。
きちんと準備をして手続きを行えば、特に難しくないことがわかっていただけたと思います。
現在の税理士に何らかの不満がある、会計処理方法などに疑問がある場合は税理士を変更すべきですし、いまの税理士からはなかった、節税や決算対策などに関する助言が、後任の税理士からはもらえる場合などは、収益の拡大に直接つながるメリットがあります。
ただし、税理士は地元の有力者や影響力のある有力企業とつながりがある場合もありますので、円満に関係を解消する最低限の努力はした方が良いとも言えます。
税理士の変更には大きなデメリットは存在しませんので、何か変更を考えるきっかけがある場合は、検討を始めてみてはいかがでしょうか。