最終更新日:2022/6/6
税理士を変更したい!手続きとタイミングや顧問契約の断り方を解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 税理士を変更する理由がわかる
- 税理士を変更するタイミングがわかる
- 税理士を変更する方法がわかる
事業運営を続けていく際に、税理士を変更することはよくあることです。
そこには変更するさまざまな理由があったり、また、そうせざるを得ない事情があったりもします。
税理士は事業運営にとってとても大切なパートナーであり、より適切な税理士に変更することは、業務の拡大に関わる重要な問題です。
そこで、税理士を変更するにあたって、どのような理由で変更をするのか、いつ変更すれば良いのか、また、具体的な税理士変更の手順などについて簡単に解説します。
どんな時に税理士変更を考える?
税理士変更を考える理由はいろいろとありますが、大きく分けて次のように分類できます。
- ・相性の問題
- ・業務の問題
- ・報酬の問題
- ・その他の問題
相性の問題
企業(事業)と税理士(会計)事務所との関係は、結局、担当者間や経営者と税理士といった、人間関係で成り立っています。
そのため、この関係性が下記のような事情でうまくいっていない場合、税理士を変更した方が良いのでは?と思うはずです。
- ・態度が悪い
- ・レスポンスが遅い(悪い)
- ・話が合わない
態度が悪い
人間同士ですから、相性の問題はありますので、ある程度は許容するとしても、明らかに態度が悪い税理士がいます。
税理士がベテランで、経営者などが起業したばかりでまだ若いなどという場合にも、起こり得る状況です。
レスポンスが遅い(悪い)
忙しいのかもしれませんが、連絡してもつながらない、伝言が伝わらない、回答までに時間がかかる、という状況は、経営者にとってとてもストレスがかかります。
決算対策や資金繰りなど、速やかに会計処理や対策をするために、できるだけ早く相談したい時にはとても困ってしまいます。
そのための顧問税理士であるはずですから。
話が合わない
経営者が代替わりをしたが、税理士は先代社長の時から顧問になっていて、年齢差が大きい場合によくあります。
年が近いと話が合うのは当然ですし、何かと相談しやすいですが、年齢差が大きいと、話題も異なりますし、アドバイスされても上から目線で言われているような気がして、気軽に相談しにくくなります。
業務の問題
報酬を支払って業務の依頼をする以上、きちんとできていなければ税理を変更したくなるのは当然です。
下記のような問題が考えられます。
- ・節税や決算対策などに関する助言がない
- ・税務調査に弱い
- ・会計処理や税務手続きでミスをされた
節税や決算対策などに関する助言がない
節税や決算対策などに関する助言が欲しいから、顧問税理士に就任してもらっていると言っても過言ではありません。
担当者だけが来社して、帳票や会計の処理だけを行い、所長税理士が全く訪問しない場合もこれに該当します。
税務調査に弱い
税務調査の段階で、会社側に立って税務署に対処してもらえないことがあります。
会社としての意見を堂々と述べて欲しいから、顧問税理士としてお願いしているはずです。
会計処理や税務手続きでミスをされた
これは、専門家としてあるまじき行為になります。
程度問題ではありますが、修正に時間や手間が取られるため、絶対に避けて欲しいことです。
報酬の問題
報酬の問題も、税理士変更を考える際の大きなポイントになります。
次のような問題が考えられます。
- ・報酬が高い
- ・現在の税理士の報酬が適切か確認したい
報酬が高い
報酬が高いと感じられるのは、単なる金額の大小ではなく、支払っている報酬に見合う業務内容が得られていない、と思えるからです。
助言がもらえない、所長税理士が来ない、なども結果として報酬が高いと感じられます。
現在の税理士の報酬が適切か確認したい
まわりの経営者に税理士報酬の話を聞いて、不安というより疑問に思うことがあります。
業務の内容や事業規模などによって変化するものであり、決まった金額がある訳ではありませんが、他の税理士だと報酬がどうなるのか確認したくなるのは当然です。
その他の問題
上記以外でも、やむを得ない状況で税理士の変更をしなければならない場合もあります。
次のような問題が考えられます。
- ・税理士の死亡や事務所の閉業で顧問が不在になった
- ・業務内容の変化や規模の拡大などで現在の税理士が対応できなくなった
税理士の死亡や事務所の閉業で顧問が不在になった
税理士が死亡したり、高齢により事務所を閉業があったりすることで、顧問税理士が不在となり、他の税理士を探さなければならないことがあります。
士業も高齢化が進んでいるため、今すぐではなくても、将来的に検討が必要になることもあります。
業務内容の変化や規模の拡大などで現在の税理士が対応できなくなった
業務の転換や合併、自社の経営者交代などによって、事業内容が大幅に変更になった場合、税理士が対応できなくなることがあります。
また、事業規模が拡大して会計処理が膨大になると、小規模な税理士(会計)事務所では対応が難しくなることもあります。
税理士変更を考えるタイミング
上記のような場合に、税理士変更を考えることがありますが、実際に変更する場合は、次のような特定のタイミングがあります。
- ・税理士の対応に不満がある
- ・経営者が交代した(する予定がある)
- ・税理士が交代した(する予定がある)
- ・事業内容が大幅に変化した(する予定がある)
税理士の対応に不満がある
税理士との相性に問題がある、税理士が行っている業務に問題がある、などの理由で、現在の税理士の対応に不満がある場合、税理士変更を考える可能性が最も高くなります。
改善を申し入れても対応されない、軽度でもミスが多いなど、放置することで余計問題が大きくなることがあるため、見直しのきっかけとなります。
経営者が交代した(する予定がある)
経営者が交代した、または、交代することが正式に決まっていた場合、後継者との大きな年齢差による税理士との相性が問題になることを考慮することがあります。
大きな不満はなくても、なかなかない税理士変更の良い機会でもありますので、少なくとも検討を行うタイミングであると言えます。
税理士が交代した(する予定がある)
税理士が交代した、または、交代することが正式に決まっていた場合、最初から信頼関係を構築する必要がありますので、こちらから税理士を変更するのとほぼ同じことになります。
他の税理士事務所との報酬も比較しやすい状況ですので、良いタイミングとなります。
事業内容が大幅に変化した(する予定がある)
税理士にも専門分野がありますので、対応がしやすい業界としにくい業界が存在します。
業務転換や合併、新規事業、株式上場などで、事業内容や社内業務に大幅な変更がある場合は、変更後の分野を得意とする税理士に変更することを検討すべきです。
また、業務の拡大だけでなく、縮小する場合も報酬などそれなりの対応が必要となりますので、やはり変更の検討が必要になります。
税理士変更の手順
実際に税理士を変更する場合は、下記のような手順で行います。
- ・後任の税理士を探す
- ・契約の解除を行う
- ・書類の返却を受ける
- ・後任の税理士と契約する
後任の税理士を探す
税理士の変更をする場合、現在の税理士に契約の解除を告げた後に後任を探し始めると、契約解除に間に合わない恐れがでてきます。
そのため、税理士変更の可能性が高くなった段階で、後任の税理士は速やかに探し始める必要があります。
専門分野や実績、報酬面について確認するのはもちろん、その際の対応の様子も今後の参考にします。
レスポンスの速さも重要です。
契約の解除を行う
契約の解除を行う際に、まず行うのが契約書の確認です。
必ず契約解除の条文がありますので、解除の際の条件を確認します。
「解約の3か月前までに書面をもって申し出る」などの内容が書かれていたら、必ずその通りに行います。
ここで気をつけたいのは、申し出る時期です。
契約書の内容通りにするとしても、各社の決算期が重なる3月など、税理士の繁忙期は避けるようにしましょう。
書類の返却を受ける
通常、顧問税理士には、会社の重要な経理書類を預けていることが多いです。
総勘定元帳・試算表・仕訳帳などの会計データ、請求書・領収書などの帳票、給与関係の書類や税務署への届出書など、さまざまなものがあります。
契約の解除を申し出る際に、必ず書類の返却について、いつ行うのかを明確にしておきます。
全ての関連書類を預けている場合などは、結構な量になりますし、後任の税理士への引継もありますので、速やかに行います。
なお、書類は税理士の所有物であるなどと主張して、まれに書類を返却してもらえないことがありますが、再度申し入れても返却されないなど、困った場合は、税理士の所属する税理士会に苦情相談室がありますので、そちらに連絡をしましょう。
後任の税理士と契約する
後任の税理士を探した際に確認した内容で契約を締結します。
報酬面や引継の内容、預ける書類の確認など、詳細についての打ち合わせも重要です。
経営方針や戦略など、事業の今後の方向性などについても必ず共有し、どのような助言が欲しいのか、などについても伝えておきます。
実際には、早めに契約の締結をしておいてから、前任の税理士の契約解除と書類返却を経て、後任の税理士との業務開始となるのですが、形式上は、契約日と業務開始日は同じである必要があります。
報酬や解約時に時期の問題が出てしまうからです。
税理士によって、業務の段取りなどが異なりますので、交代した直後は、小まめにコミュニケーションを取るなど、信頼関係の構築に気を配りましょう。
税理士変更時の断り方
前章までで、税理士変更はできたのですが、実際に現在の税理士に解約を申し出るにはどうしたら良いのでしょうか。
直接的な理由は避ける
弁護士の変更を行う際に、その理由が、契約当初の約束が守られない、会計処理にミスが多い、節税対策や経営サポートが受けられないといったものであった場合、直接的にそれに言及するのは、なかなか言い出しづらいですし、できればスムーズに解約ができるようにしたいものです。
そのため、断り方を工夫して伝えるのが良いようです。
断り方の工夫
解約の申し出で、「親戚の者が税理士事務所を開業したので」「友人が税理士事務所を開業したので」という理由を使われることが多いのですが、半ば常套句になっており、税理士によっては、気づかれることもあるようです。
そこで、断り方を工夫して、「取引先の社長の息子が税理士事務所を開業したので顧問になって欲しいとその社長からお願いされた」「出資を受けることになったのでそちらの顧問税理士に変更して欲しいと言われた」などといった、「仕方がないので契約を続けることができない」という理由にすると、円満に関係を解消できます。
税理士変更のメリット
冒頭にも書いた通り、より適切な税理士に変更することは、事業運営にとって重要な事柄ですから、慎重に検討すべきなのは、言うまでもありません。
税理士変更によって得られるメリットは下記のように多くあります。
- ・報酬が削減できた
- ・年齢が近いことでコミュニケーションが密になった
- ・節税対策や経営サポートを受けられるようになった
- ・自社の業界に詳しく、さまざまな情報提供が受けられるようになった
- ・新しい取引先を紹介してもらえた
- ・最新の税務知識を詳しく教えてもらえた
後任の税理士を探すには
後任の税理士を探すには、次の点に注意して行う必要があります。
- ・現在不満に思っている内容が解消できるか
- ・約束がきちんと守られるか
- ・節税対策や経営サポートなど希望するものが得られるか
- ・必要とする知識と経験を持っているか
「良い税理士がいるから」と人に紹介されることがありますが、具体的にどの点が良いのかわからず、後々解約しにくくなるため避けた方が無難です。
上記の点について、報酬・業務内容などを併せて客観的に比較することが何よりも重要です。
まとめ
ここまで、税理士変更の理由やタイミング、具体的な税理士変更の方法などについて解説してきました。
事業運営のパートナーは、適切な税理士である必要がありますが、地域や業界、経営規模や経営方針によって最適な税理士はさまざまです。
税理士の変更も経営課題の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。