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これからの働き方 ~“起業”という選択肢~【起業の世界vol.3】
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
起業トレンド① 約8人に1人が起業に関心あり
起業関心層の年齢分布(2017年調査)
日本政策金融公庫総合研究所
起業関心層の男女比は約2対1
起業に関する意識調査で、起業に関心がある方は12%男女比は約2:1、実際に起業した方は4.8%でした。一方、起業に関心がない方が全体の3分の2を占めています。いい悪いは別にして、これが日本の起業意識の現状となっています。
現在、日本では少子高齢化が進み、経済成長の鈍化、労働人口の減少という大きな問題を抱えています。その対策として、2018年6月には「働き方改革関連法案」が成立。多様で柔軟な働き方ができる社会の創生を目指すこととなりました。
そうした動きのなかで、政府は〝起業〟も促進しています。起業によって新たな製品やサービス、ビジネスモデルが誕生し、それらが経済の成長や雇用を牽引することを狙った施策です。
しかし、こうした状況にも関わらず、「2018年新規開業調査」によれば、起業に関心がある層、起業の準備をしている層、ともに1997年以降減少傾向が続いています。実際の起業件数も減少しており、新規開業率は5・8%と、国際的な水準と比較して半分程度という低水準にとどまっています。
これは、日本では〝将来いい会社で働くことが成功〟であるという根強い価値観があり、そもそも起業が選択肢になりにくいのかもしれません。
また、諸外国に比べて、起業についての基本的な知識を学ぶ機会が不足していることや、起業の社会的意義や起業のおもしろさなどについて知る機会も少ないという理由もあると考えられます。
今後、起業という選択肢を一般的なものにできるかどうかは、こうした部分をどう変えていくかにかかっているでしょう。
一方で、「自分のアイデアをビジネスにつなげたい」「既存の働き方や一般的な価値観にとらわれず、自分らしく働きたい」「社会貢献につながるビジネスをしたい」といった思いから、起業に関心を持つ方々がいます。 『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』を見てみると、起業に関心がある方、過去起業に関心があった方、実際に起業した方を合算すると約26%になります。つまり、約4人に11人が起業に対して、なんらかの興味を持っているわけです。
ところが、実際に起業した方は4.8%にとどまっています。ここから見えてくるのは、起業に興味を持つ層は多いのに、実際に起業には至らないという点です。いったいなぜそうなってしまうのか? ここに起業を考える際のヒントが隠されていますので、次にその理由を見ていきましょう。
起業トレンド② 起業関心層の年齢分布はほぼ均等
起業関心層の年齢分布(2017年調査)
日本政策金融公庫総合研究所
20代・30代・40代が約25%ずつ
50代以降はやや関心が薄れる
起業に関心がある層の年齢分布を見てみると、20代、30代、40代がそれぞれ約4分の1を占めていて、大きな偏りはありません。どの年齢層でも、ほぼ同じ割合で起業を考えている方がいることがわかります。一方、50代は約16%、60歳以上は7.6%と徐々に減少していきます。これは、この年代になると経済的に充実している方が多く、健康面やリスクを考えると起業という選択が現実的ではなくなるのが大きな理由でしょう。
起業トレンド③ 起業関心層の約40%が起業に前向き
起業予定の有無(2017年調査)
日本政策金融公庫総合研究所
女性よりも男性の方が起業に前向き
起業に関心がある層のうち、「10年以内に起業する」「いずれは起業したいが時期は未定」と起業に前向きに答えた方の割合は、全体の約40%でした。具体的な計画の有無は聞いていませんが、真剣に検討している方がそれなりの人数いることがわかります。一方、関心はあるものの「起業するつもりはない」という方も約10%いて、漠然とした夢として捉えているようです。
起業に踏み切れない理由とは?
『起業と起業意識に関する調査(2017年度)』によれば、起業に関心がある層の約40%が起業に前向きという結果が出ているにも関わらず、実際に起業に踏み切った方はその一部にとどまっています。
その理由でまず1番多かったのは、「自己資金不足」です。約57%の方が起業できない理由にあげており、十分な自己資金の調達ができないために、起業を断念している方が多いことがわかります。
そして、2番目に多い理由は「失敗したときのリスクが大きい」です。約40%の方がこれを理由にあげており、具体的には「借金や個人保証を抱えること」「事業に投下した資金を失うこと」「安定した収入を失うこと」をリスクとしてあげています。
また、「再就職が困難」「再起業が困難」という理由もあげられています。これは、一度会社員から離脱すると再就職が難しく、再び起業に挑戦できるチャンスも少ないという日本の社会構造に起因するといってよいでしょう。
つまり、起業に踏み切れない最大の理由は、経済的、金銭的なものにあるわけです。これは、収入がなければ生きていけませんので、当然といえます。
起業トレンド④ 100万円未満での起業が約半数
起業費用(2017年調査)
日本政策金融公庫総合研究所
起業費用100万円未満の場合約91%が
自己資金だけで起業
実際に起業した方の起業時の費用は、100万円未満が48%と約半分を占めています。これは、小額で起業できる自宅でパソコンを使ったインターネットビジネスが増えていることと関連しています。また、自己資金だけで起業した方が91%いるのも、大きな特徴で、借り入れ等のリスクを負わずに起業していることがわかります。一方で、500万円以上の起業も全体の約5分の1を占めており、二極化の傾向も見えてきます。
一方、実際に起業した方に目を向けてみると、「ひとり」「小額」での起業が増加しているという結果になっています。具体的な費用を見ると、100万円以下での起業が全体の約半数を占め、その自己資金比率は約91%です。つまり、実際に起業するには最初から何百万円も用意する必要はなく、わずかな自己資金でも問題なく始められるのです。
また、会社に勤めながら副業・兼業で起業するという方法もありますので、前述したような起業を考えている方が不安に思っている点のほとんどは、実は杞憂に過ぎないのです。
今、本誌を手に取られている方のほとんどが、起業に興味がある方かと思います。本誌は、過去13000社の起業をサポートしてきた「ベンチャーサポート税理士法人」の全面協力のもと、起業に関するさまざまなデータから心構え、実際の手続きまでを網羅しています。起業に関するさまざまな不安や疑問を解消できる内容になっていますので、起業を考えるみなさんの参考にしていただければ幸いです。
“案ずるより生むが易し”。起業してみたいという方は、まずは、低リスクな起業で最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
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