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独立・起業・自営業に向いている?独立後に失敗をしてしまうタイプ7選【起業の世界Vol.13】

森 健太郎

この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

独立・起業・自営業に向いている?独立後に失敗をしてしまうタイプ7選【起業の世界Vol.13】  

1 独立に向いている人と向いていない人の違いとは?

現在はサラリーマンとして企業に属して働いているけれど、いつかは独立して自分の会社を持ちたい…。

こんな風に考えている方も多いかもしれません。

これまでサラリーマンとしての経験しかない方であれば、独立して自営の仕事をしてみることはとても良い経験になると思います。

しかし、独立することはサラリーマンとしてのキャリアの断絶につながるというデメリットもありますから、「自分は本当に独立に向いているのか?」についてよく考えておく必要があります。

独立してから「こんなはずじゃなかった…」となってしまうケースも少なくありません。

そんなことにならないよう、独立に向いている人と向いていない人の違いについて具体的に考えておきましょう。

独立して3年経過した後にも倒産せずに生き残ることができる企業の数は全体の30%程度

独立の手続きそのものは税務署に書類一枚出すだけで無料でできますし、最近ではインターネットを通じて個人が自分でお金の発生する仕事をすることも簡単になっていますから簡単です。

しかし、独立してから1年以上にわたって継続的に収入を得続けることができる方は限られている…というのが現実です。

中小企業庁が過去に発表した統計によると、独立して3年経過した後にも倒産せずに生き残ることができる企業の数は全体の30%程度といわれています。

会社は「作ることは簡単だけれど、つぶさずに維持することは難しい」といわれるゆえんです。

独立の成功は経営者の適性による部分が大きい

企業が長期間にわたって経営を維持していくためには、経営者となる人の適性による部分が大きいです。

特に独立して数年間の間は組織も小さく、実質的に経営者個人の正確や仕事に関する考え方が企業の在り方を決定づけることになるためです。

独立後にも事業を安定的に成長させていくことができる人と、残念ながら数年間で廃業となってしまう人には違いがあります。

独立に向いていない人の特徴としては以下のようなものが考えられます。

2 自分ですべての作業をやらないと気が済まない人

独立すると本業の仕事以外にもたくさんの仕事をする必要があります。

日常的な経理入力作業や顧客からの電話、発送物の処理などたくさんの雑務が発生し、あなたの本業の仕事に取り組む時間をどんどん奪っていくことになるのです。

事業が順調に成長していくにつれて「この雑務にあてている時間を本業の仕事に充てられたらもっと収益をあげられるのに…」と悩むタイミングがおとずれるのは間違いないでしょう。

仕事を他人に任せるという視点も必要

独立後のあなたの仕事は事業全体の状況を見て利益を効率的に上げていくことですから、こうした雑務については他人にまかせることも選択肢に入れる必要があります。

他人に任せるとなると、外部のサービスに任せるか、従業員を雇うかのどちらかしかありませんが、この点とき「なんでも自分で完璧にやらないと気が済まない…」という方は注意が必要です。

経営者として仕事をする場合、完璧主義はむしろ避けるべきものです。

他人が自分の中の基準から6割程度の仕事をしてくれたらOKとできるぐらいの度量が必要になります。

本業の仕事で優秀な人ほど完璧主義に陥りやすい傾向がありますので注意しておきましょう。

3 お金の管理ができない人

自営業者にとって、お金の管理(資金繰り)は何よりも重要な仕事です。

資金繰りに失敗することは、すなわち事業がストップしてしまうことを意味しますし、事業がストップするとあなたの自身や従業員の生活をおびやかしてしまうことになります。

お金の管理をしていくうえでは、経理と資金繰りについて深く理解することが必要です(これら2つのものは別物であることがポイントです)

事業でどれだけ利益が出ていたとしても、金融機関からお金を借りているような場合には、毎月の返済日に支払いができなかったら倒産ということにもなりかねません(いわゆる黒字倒産ということもありえます)

利益の一定の割合は必ず税金用にとっておくこと

税金の計算についても重要です。

個人事業主としてあげた毎月の利益のうち、一定額は税金の支払いのためにとっておかなくてはなりません。

毎月の利益額が確定していれば、年間で負担しなくてはならない税金の金額はある程度<正確に計算することが可能です。

日本国内で事業をする以上、税金の支払いからは逃れることができませんから、資金繰りの計画の中に税金支払いは必ず含めるようにしましょう。

黒字倒産や税金を支払うことができないことによる倒産の事例は大企業ですら起こることがありますから、多くの仕事を自力で行う必要がある自営業者にとってはさらに重要な問題といえます。

経理スタッフや税理士の支援を受ける

最初の項目でも取り上げたように、独立後にはすべての仕事を自分でやろうとすべきではありません。

経理に詳しいスタッフを雇用したり、税理士と顧問契約を結んだりなどして正確なお金の管理ができる仕組みを作っておくことが重要です。

事業の規模にもよりますが、税理士は毎月数万円の顧問料と、年に1度支払う決算料(月額顧問料の3か月分程度)という形で顧問契約を結ぶことが可能です。

4 倫理観がない人

独立して経営者として仕事をするようになると、難しい決断を迫られることは日常茶飯事です。

経営者になると事業に関しては自分に「こうしなさい」と命令してくれる人は基本的にいなくなります。

一見、気楽なようですが、実際にこのような状況になってみると「むしろ誰かに決めてもらう方がはるかに楽…」と感じられることでしょう。

経営者として、難しい判断を行う際には人間として誰しも共通して持っている倫理観に基づいて決断することが求められます。

特に従業員を雇用して事業を行う場合、経営者の人間性が事業にかかわる人全体の倫理観に大きな影響を与えることになります。

この点で、「人間としてごく当たり前のこと」を果たすことへの意識が低い人(つまり倫理観の低い人)は、独立には向いていない可能性があります。

倫理観の高い、低いは現在どのような仕事に取り組んでいるかによって決まることではありません。

どのような仕事をしている人であっても自分の倫理観を高める努力をすることはできます。

将来的に独立を目指す方は、現在の目の前の仕事に一生懸命取り組むことの重要さも理解しておきましょう。

価格交渉ができない人

実際、独立して自分のサービスを売る立場になると、「いったい自分のサービスをいくらで売ったらいいんだろう?」という疑問が生じます。

まじめな人であれば「かかった経費に一定の利益率をのせて価格を決める」という考え方をするかもしれませんが、商品やサービスの価格というのはそれを「欲しい」と思う人の

直感で決まるものという側面もあります。

事業が営利を目的としている以上、一回の販売当たりの利益はできる限り大きくすることを考えなければなりませんから、自社の商品をいくらで売るかについてきちんと交渉できるかどうか?は独立後には重要な課題となります。

この点、京セラの創業者でJALの経営再建などにもかかわった稲盛和夫氏は、「値付けとは経営である」という意見を述べています。

自分の商品がどれぐらいの金額で売れるか?を知るためには、顧客のニーズや同業他社の動向について常に気を配っておく必要があるということですね。

自社の商品をいくらで売るか?は従業員の判断に任せるべきものではなく、経営者自らの判断のもとに行うべきものであることを理解しておきましょう。

5 「お金を稼ぐ」という意識が低い人

実際に独立してみるとわかることなのですが、「自営業者」といわゆる「ニート」との違いは本当に紙一重の差でしかありません。(特に一人で仕事をしている場合)

基本的に誰かから仕事をするように指示をされることはありませんし、「今日はやる気がでないから休みにしよう」というようなことも自由にできてしまいます。

独立後に事業者のモチベーションを維持するものは第一には「お金を稼ぐ」ということです。

お金を稼げばどんどん新しい事業に取り組むことも可能になりますし、従業員を雇用して社会のために有益な事業を作り出すことにもつながります。

崇高な理想を持って独立を目指すという方も多いと思いますが、まずは何よりもお金を稼ぐ、ということを目指して事業に取り組むことが大切です。

自営業者とニートの差は結局収入を得られているかどうか

自営業者とニートの違いは何か?というと、それは何よりも「きちんと収入を得られているかどうか」です。

あなたが収入を得ているということは、ごく当たり前のことですが誰かがあなたに対してお金を支払ってくれていることでもありますね。

誰しも何の意味もないサービスや商品にはお金を払おうなどとは思いませんから、収入を得ているということは「社会から必要とされている」ということの証明ともいえるでしょう。

お金なんかなくても他人のために働く?

「自分はお金なんか稼げなくても、他人のために働くんだ」という気持ちで独立を目指している人ももしかしたらいるかもしれません。

しかし、このことは裏を返すと「だれもお金を払おうという気持ちにならないようなサービスや商品しか提供していない」ということにもなりかねないのです。

あなたの提供するサービスが本当に価値のあるものであれば、たくさんの人があなたのサービスを取り合うことになるわけですから、そこにはお金が発生するはずです。

独立後には「いかにお金を発生させるか?」=「どういうサービスや商品であれば、お客さんはお金を払う価値を感じてくれるだろうか?」ということを常に考えながら仕事をする必要があります。

金融機関とのつきあいのポイント

どのような事業に取り組むかにもよりますが、多くの事業では金融機関との付き合いがとても重要になります。

上でも解説させていただいたように、資金繰りは企業の生死を決める重要な問題ですから、資金が枯渇してしまわないように金融機関から支援を受けられる準備は常に行っておく必要があります。

金融機関との付き合いのポイントは、「事業が好調のうちに関係を築いておく」ということにつきます。

多くの事業者がお金が無くなってにっちもさっちもいかなくなった時点で金融機関に相談する…という選択をしてしまいがちですが、金融機関は赤字の企業に対してお金を貸すということは基本的にしてくれません。

銀行は雨の日に傘を取り上げる…

「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨になると取り上げる」という話はよく聞くかと思いますが、銀行もビジネスである以上は返済能力のない事業者にお金を貸すことはできないのです。

もちろん、お金が必要な人に対して利息を付けてお金を貸すことで銀行はビジネスをしているという側面がありますから、きちんと返済できる見込みがある事業者であれば融資をビジネスチャンスととらえてくれる可能性があります。

できるだけ事業が好調な時(晴れの時)に金融機関に事業の将来の見込みについてよく理解してもらい、いざお金が必要になったとき(雨の時)に助けてもらえる関係を築いておくことが大切です。

開業間もない事業者が利用できる金融機関

一般的に金融機関というと、三井住友銀行や三菱東京UFJ銀行といった大手銀行をイメージする人が多いでしょう。

しかし、独立後にはこういった「都市銀行」ではなく、より中小企業者への融資に特化した信用金庫や信用組合、地方銀行といった金融機関との付き合いが重要になります。

また、政府が中小企業者向けに融資を行っている公的金融機関も融資を受ける際の重要な選択肢となります。

日本政策金融公庫などの公的金融機関では銀行や信用金庫などよりも有利な条件でお金を借りられることが多いですから、独立に際して融資を受けることを検討している方は相談してみるとよいでしょう。

6 「失敗」を恐れすぎている人

事業者として仕事をする上では、「失敗」というものについての理解の仕方を変える必要があります。

サラリーマンとして仕事をする場合、失敗は少なければ少ないほど評価が高くなることが多いでしょう。

これまでの延長で行っている仕事について失敗が生じるのは単なるミスである可能性が高いので、そのような失敗は当然避けるべきです。

しかし、「最近、失敗をしていない」ということは裏を返すと「最近、新しい視点に立った行動や、これまで経験したことのない分野への挑戦をしていない」ということかもしれません。

新しい挑戦には失敗がつきもの

独立して事業主として仕事をする場合、過去の延長でのみ仕事をしているとあなたの後から参入してくる事業者との競争に巻き込まれてしまいます。

失敗をおそれるあまり新しい分野への挑戦や、新しい行動パターンに基づく仕事の仕方を避けることは、長い目で見ると致命的な失敗となる可能性があるのです。

あなたの始めた事業が利益を得らえる魅力的なものであればあるほど、参入しようとする人が多いということになるのは明らかだからです。

事業主として仕事をする場合、「新しい挑戦をしたことによる失敗」は恐れるべきものではありません。

失敗によるリスクをコントロールするという視点

独立後に重要なことは「失敗によって生じる損失を、許容できる範囲にコントロールすること」です。

新しい事業や取り組みが軌道に乗る確率は、10個の取り組みから1つか2つという場合が多いでしょう。

これらすべての取り組みについて「失敗した時の損失がどれぐらいになるのか」を把握しておくことが必要です。

経営者の仕事は、会計的な側面からみてものすごくシンプルに言うと「企業全体の利回りを高めていくこと」です。

利回りとは投資に対してどのぐらいのリターンを得ているかという指標のことですね。

1つ1つの取り組みを投資とみて、許容できる範囲のリスクからいかにリターンをあげるかという視点が経営者には重要になります。

7 単に今の仕事を辞めたいだけの人

サラリーマンを辞めて独立することを考えている人の場合、「なぜ、自分は独立したいと考えているのか?」について、深く考えておかなくてはなりません。

独立後には自分の価値観に従って仕事をしていくことが求められるためです。

大切なことは、ただ今の仕事から逃れたいために「自分はどうせいつか独立するから…」という気持ちになっていないかどうかを見極めることです。

独立後にはあなたに指示をしてくれる人は基本的に誰もいなくなりますから、自分をコントロールする力をより求められることになります。

自分をコントロールする能力については今の目の前の仕事を通しても養うことができます。

独立は一つの選択肢にすぎない

また、独立はたくさんあるキャリアの選択肢の一つにすぎませんし、必ずしもすべての人に適した選択となるわけではありません。

今の仕事がどうしても自分には向いていない…と感じているのであれば、転職することも選択肢に入れましょう。

転職サイト経由で採用に応募する際に利用できる転職エージェントなどに相談すれば、思いもよらない自分の仕事の適性について気づかせてもらえる可能性もありますよ。

また、場合によっては副業などの形で仕事を始めてみるのも良いでしょう。

インターネットの普及によって個人でも自分の名前でお仕事を受注することはとても簡単になっています。

自分が独立に向いているか?を判断するためには、実際にやってみるのがもっとも確実ですね。

いきなり大きな投資が必要となる事業に取り組むことはおすすめしませんが、許容できる範囲のリスクで取り組める副業を始めてみるのも選択肢に入れてみるとよいでしょう。

サラリーマンとして優秀な人が独立して成功するわけではない

サラリーマンとして優秀であった人が自営業者としても成功できるというわけでもないことは理解しておく必要があります。

上でも説明させていただいた通り、サラリーマンとして仕事をする場合には基本的に「失敗をしないこと」が重要ですが、経営者として仕事をしていく上では「いかにリスクをコントロールしながら失敗を繰り返していくか」が重要になるためです。

また、経営者として仕事をする場合、個人プレーヤーとしての優秀さよりも、チームを効率的に運営していくリーダーとしての役割が重要になります(この点で、完璧主義の傾向がある方は注意が必要です)

将来的に独立を考えている方は、自分が独立をしたいと考えているのはどういう価値観や気持ちに基づいているのか?について深く掘り下げて考えておきましょう。

8 まとめ

今回は、近い将来に独立することを考えているサラリーマンの方向けに、独立に向いていない人の特徴や性格について解説させていただきました。

「独立に向いていない人」がいるのは確かですが、それはあくまでも「そういう傾向がある」というにすぎません。

重要なことは自分の傾向や性格、価値観を理解し、経営者として成功するために適した考え方に修正していくことです。

どのような人であっても自分を知ることで成長していくことは可能ですから、将来的に独立することを考えている方は自己鍛錬を絶えず重ねていくことを心がけてくださいね。

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