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起業した人の属性とキャリア【起業の世界Vol.5】

森 健太郎

この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

起業した人の属性とキャリア

起業した人の属性とキャリア【起業の世界Vol.5】

2017年度の調査で分かった最も多い起業家の属性は「30〜40歳代で開業した、大学・大学院卒の正社員・職員の男性」。およそ19年勤めたのちに起業する人が多いようです。

開業時の年齢

開業時の年齢 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※値は小数第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計100%にならない
 

開業時の平均年齢の推移

開業時の平均年齢の推移 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所

起業家の開業時年齢は上昇傾向にある

起業家の開業時の年齢分布を見ると30歳代が34.2%と最も多く、次いで40歳代が34.1%で、両年代だけで約7割を占めています。
両年代の差は2000年代後半に開きはじめ、30歳代が最大で約15ポイント近く上回る時期もありましたが、近年は再び差が縮まっています。
そのほかの年代では、29歳以下が8.1%で長期的な減少傾向が続いています。また、50歳代も減少していますが、近年は大きな変動は見られず15~17%程度を推移。代わりに60歳以上は2000年代前半から微増し、6%前後が続いています。
一方、開業時の平均年齢は42.6歳で、2013年から5年連続で上昇。調査を継続的に開始した1990年代は38~39歳で、平均年齢は上昇傾向を続け、2000年代後半からは42歳前後で推移しています。

性別

性別 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所

女性の起業家が増加した3つの要因

性別は男性が81.6%、女性が18.4%で、女性の割合は2015年から3連続で調査開始以来最高を更新しています。
日本政策金融公庫総合研究所は、女性の起業家が増えている要因として「働く女性が増えたこと」「女性の視点がビジネスにおいて重視されるようになってきたこと」「女性の創業に対する支援策が拡充されたこと」の3つを挙げています。
最終学歴は、2000年代前半から高校の減少傾向が続いているなか、微増した大学・大学院の割合が逆転する恰好でトップを占めています。
また、近年は専修・各種学校の増加が顕著で、2000年代前半から10ポイント近く上昇しています。ここ数年は25%前後を推移していて、減少が続く高校の割合を上回る可能性も出てきました。


最終学歴

最終学歴 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所 ※2011年度調査では最終学歴を尋ねていないためデータなし
※値は小数第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計100%にならない

開業直前の職業(2017年度)

開業直前の職業(2017年度) 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※値は小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない
 

勤務キャリア(2017年度)

キャリア 割合 経験年数
平均値 中央値
勤務経験あり 98.7% 19.3年 18.0年
斯業経験あり 84.8% 14.1年 12.0年
管理職経験あり 69.9% 9.8年 8.0年
経営経験あり 14.2% 9.2年 7.0年
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※斯業経験は調査時点の事業に関連する仕事をしていた経験。経営経験は開業前に別の事業を経営した経験(すでにその事業をやめている場合も含む)

勤務先からの離職理由

勤務先からの離職理由 出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所 ※小数点第2位を四捨五入しているため内訳と合計が一致しない場合がある    

約15%の起業家が未経験の仕事で開業

開業直前の職業は、正社員・職員(管理職)が40.8%と最も多く、正社員・職員(非管理職)が31.9%、会社や団体の常勤役員が10.0%と続き、これら3つを合わせた正社員・職員が8割以上を占めています。
非正社員(パートタイマー・アルバイト、契約社員・派遣社員)は2000年以降、増加傾向が続いていますが、2017年は前年より減少しています。
勤務キャリアについては、勤務経験のある人がほとんどで、斯業経験者も84.8%と高い水準です。多くの起業家が経験のある仕事で開業していることがわかりますが、その一方で、およそ15%の起業家が未経験の仕事で起業している点は興味深い事実といえそうです。
離職理由は自らの意思で退社する人が大多数を占めています。日本では2012年からはゆるやかながら景気拡大が続いていて、勤務先都合の離職(勤務先の倒産・廃業、事業部門の縮小・撤退、解雇)が減少していると考えられます。

開業動機(3つまでの複数回答/2017年度)

1位 仕事の経験・知識や資格を生かしたかった/52.8%
2位 自由に仕事がしたかった/49.0%
3位 収入を増やしたかった/44.4%
4位 事業経営という仕事に興味があった/37.6%
5位 自分の技術やアイデアを事業化したかった/30.3%
6位 社会の役に立つ仕事がしたかった/28.9%
7位 時間や気持ちにゆとりが欲しかった/14.9%
8位 年齢や性別に関係なく仕事がしたかった/10.6%
9位 趣味や特技を生かしたかった/8.3%
10位 適当な勤め先がなかった/5.4%

起業家が起業に関心を持ったきっかけ

男性
  1位 2位 3位 4位 5位
49歳以下 周囲の起業家・経営者の影響/40.7% 勤務先ではやりたいことができなかった/29.2% 勤務先の先行き不安・待遇悪化/27.5% 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/20.3% 事業化できるアイデアを思いついた/16.6%
50~59歳以下 勤務先の先行き不安・待遇悪化/35.7% 勤務先ではやりたいことができなかった/28.4% 周囲の起業家・経営者の影響/27.3% 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/19.5% 事業化できるアイデアを思いついた/16.9%
60歳以上 周囲の起業家・経営者の影響/25.2% 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/21.9% 勤務先の先行き不安・待遇悪化/21.7% 事業化できるアイデアを思いついた/21.5% 勤務先ではやりたいことができなかった/19.9%
女性
  1位 2位 3位 4位 5位
49歳以下 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/33.3% 家庭環境の変化(結婚・出産・介護等)/25.3% 周囲の起業家・経営者の影響/22.7% 一緒に起業する仲間を見つけた/21.3% 勤務先ではやりたいことができなかった/20.0%
50~59歳以下 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/37.4% 家庭環境の変化(結婚・出産・介護等)/29.0% 勤務先ではやりたいことができなかった/23.4% 周囲の起業家・経営者の影響/20.6% 事業に生かせる免許・資格の取得/17.8%
60歳以上 勤務先ではやりたいことができなかった/30.3% 周囲(家族・友人・取引先等)に勧められた/26.3% 事業に生かせる免許・資格の取得/24.2% 家庭環境の変化(結婚・出産・介護等)/22.2% 事業化できるアイデアを思いついた/21.2%
出典:『中小企業白書2017』中小企業庁 ※複数回答のため合計は100%にならない

男性と女性で異なる起業関心のきっかけ

開業動機は、仕事の経験・知識や資格などを生かしたいという理由が最も多く、自由に仕事がしたい、収入を増やしたいという意見が続きます。
これら3つの動機は2016年と2015年も上位でしたが、事業経営そのものへの興味や社会の役に立つ仕事がしたいなども一定の割合を占めていて、開業する動機は人によってさまざまであることがうかがえます。
一方、起業に関心をもったきっかけを男女別に見ると、男性側は周囲の起業家に影響を受けた人が多く、女性は周囲に勧められて起業を意識したケースが多いようです。
また、男性は全年代が勤務先の不安や待遇の悪化、やりたいことができないといった理由を挙げる割合が高く、女性に比べて勤務先に対する不満が強く見られます。
これに対して女性は、結婚や出産などの家庭環境の変化を挙げるなど、男女で明確な意識の違いが感じられます。

   
▼ 起業の世界


 
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