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相続税対策は「二次相続」や「認知症」まで考えよう-社長のための資産形成戦略Vol40
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
相続税対策は二度目の相続も考える
相続税対策は、二次相続への影響も考えておく必要があります。
たとえば、両親と子2人の家族の場合、両親のどちらかが亡くなると一次相続が行われます。
次に残された親が亡くなったときの相続を二次相続といいます(図表4-17)。
一次相続には配偶者に対する優遇措置が大きく2つあります。
ひとつはすでに説明した「小規模宅地等の特例」です。
配偶者であれば、相続する自宅の評価額が無条件で80%減額されます。
もうひとつは、配偶者の相続した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分」以下なら相続税はゼロになるという「配偶者の税額軽減」です。
二次相続になると、配偶者はすでに他界しているわけですから、これら2つの特例は使えません(子どもが親と同居している場合、子どもが持ち家を所有していない場合などは、諸条件を満たせば小規模宅地等の特例は使えます)。
そのため、一次相続よりも税負担が大きくなるのが一般的です。
もし、相続税対策をしっかりして財産を守りたいのであれば、二次相続まで視野に入れたうえで対策をする必要があります。
一次相続のことだけを考えれば、残された配偶者に多くの財産を相続してもらい、相続税の配偶者控除を使って相続税の支払い額を小さくすることが可能です。
しかし、二次相続まで考えると、必ずしもそれが得策とは言えません。
二次相続で相続税をかなり払わなければならないことになってしまいます。
もし、二次相続の段階になって「多額の相続税を払えない」という状況になれば、相続財産を売却する必要も出てきます。
二次相続で困らないために、一次相続の時点で二次相続まで視野に入れた遺産分割や節税対策をすることが重要です(図表4-18)。
認知症や二次相続対策に民事信託を活用
ここまでに説明してきた相続税対策は、基本的には生前に行う必要があります。
もし、認知症になってしまうと、不動産を購入したり生命保険に加入したりするのは不可能です。
また、本人自ら相続財産を減らすような行為や財産隠しが行われるリスクも考えられます。
こうした問題を避けるために、早くから遺言を残すことが有効です。
しかし、遺言は一次相続には効果があっても、二次相続の遺産分割まで指定することができません。
そういった意味で検討したいのが「民事信託」です。
民事信託とは、営利を目的とせずに、家族や親族が委託者に代わって財産を管理できるしくみです。
民事信託は、信託契約時から効力が発生し、相続開始後はもちろん、二次相続以降の財産の管理方法も決めることができます(図表4-19、4-20)。
さらに、社長の場合は民事信託を事業承継に活用できます。
これは「事業承継信託」と呼ばれる手法で、簡単に言うと「自社株を信託する」ということです。
事業承継信託を利用すると、会社の株式を信託し、当事者間で取り決めた条件に従って、後継者に株式を受け渡すことができます。
事業承継信託にはいくつかの方法がありますが、そのひとつに「自己信託」というものがあります。
自己信託を事業承継に活用する場合、社長が「委託者」であるのと同時に「受託者」にもなります。
そして後継者を「受益者」として指定します。
このようにすることで、社長は経営権を維持したまま、自身に相続などが発生した場合などの自社株の取り扱いを指定することができます。
以上のような方法で、後継者に確実に経営権を譲り渡せるようになります。
また、生前に信託をしておくことで、遺産分割協議や遺言書の検認などが不要となり、社長が亡くなった後、速やかに経営権が後継者に渡るため、経営に空白期間が生じません。
このようにメリットの多い民事信託ですが、利用するにあたってはさまざまな専門知識が必要となります。
信託に関する法律の知識はもちろん、税金への影響も考慮しなくてはいけないので、民事信託を検討する場合は早い段階で専門家に相談しておくといいでしょう。
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