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リタイア後に年金はいつから受け取る?退職金はどう準備する?-社長のための資産形成戦略Vol33
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
年金の繰り下げ・繰り上げ
老後に金融資産から収入を得るようになると、公的年金にも選択肢が増えます。
現在の公的年金は原則として65歳から受給がスタートしますが、任意で受給開始時期を「繰り上げ(早くもらう)」または「繰り下げ(遅くもらう)」のなかから選択することが可能です。
従来、受給開始時期の選択は「60歳から70歳」の間となっていましたが、2022年4月以降は「60歳から75歳」に拡大します。
ここでポイントとなるのが、繰り上げをすると毎年の年金額は減り、繰り下げをすると逆に増えるという点です。
2022年4月以後は、次のとおり影響します。
- 繰り上げ受給……1月あたり0.4%減額
- 繰り下げ受給……1月あたり0.7%増額
もしも受給開始時期を75歳まで遅らせると、年金の月額は184%にアップします。
とはいえ、年金は生存中に受け取るものですから、「繰り上げをすればトク」という単純な話ではありません。
自身がどれくらい生存するのかを踏まえて選択を行う必要があります。
ただ、繰り下げ受給を希望する場合でも、資産や収入が十分になければ、年金受給がスタートするまでの生活が不自由になります。
もしも60歳で社長を引退して75歳まで年金を繰り下げるのであれば、その間の15年の生活費が必要です。
そのような意味からも、社長引退後に、年金以外の収入をつくっておく必要があります。
理想的な姿は、引退する時点で金融資産から得られるキャッシュフローだけで生活できる状態にしておき、年金は繰り下げて受給額を増やすという姿です。
そのためにも、現役時代から投資信託を育てつつ、保険で退職金を準備することが求められます。
退職金は税負担が軽い
退職後のプランを描くうえで、退職金を外すわけにはいきません。
社長が会社を退くときは、保険などで準備をしていた資金を使って退職金を支払いましょう。
このように退職金として支給することで、役員報酬として支給するよりも大幅に税負担を減らすことができます。
その理由が「退職所得控除」にあります。
退職金は「退職所得」として課税されますが、次の計算による退職所得控除を差し引くことができます。
- 勤続年数が20年以下の場合……勤続年数×40万円
- 勤続年数が20年を超える場合……800万円+70万円×(勤続年数-20年)
さらに、退職金から退職所得控除額を引いた額に2分の1を掛けると、退職所得が算出されます。
たとえば勤続30年でリタイアし、退職金を2,500万円受け取った場合、次の税額になります(図表4-9)。
- 所得税および復興特別所得税……58万4,522円
- 住民税……50万円
この税額は、退職金に占める率で言えば5%未満ですから、かなり低いと言えるでしょう。
退職金をもらえる機会は限られていますから、確実に節税効果を得るようにしましょう。
なお、小規模企業共済やiDeCoの給付を一括で受け取る場合も、退職所得として扱われます。
ただし、複数の会社から退職金を受け取る場合は「5年以上空ける」ことを覚えておいてください。
もし、このように間を空けずにいると、退職所得控除に特別な調整がなされるからです。
▼社長のための資産形成戦略 シリーズ
- Vol1 社長のための資産形成戦略-【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは
- Vol2 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント①ガムシャラ期
- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
- Vol6 社長のための資産形成戦略-パーソナルファイナンスとは?3つのポイントから資金繰りの戦略を考える
- Vol7 社長のための資産形成戦略-創業期は「生き残り」を最優先に!キャッシュを手元に残すためにできること
- Vol8 社長のための資産形成戦略-儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法
- Vol9 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(1)役員報酬最適化
- Vol10 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(2)旅費日当の活用
- Vol11 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(3)社宅の家賃を経費に
- Vol12 社長のための資産形成戦略-利益が出た後ではもう遅い?創業期から税理士と顧問契約するメリット
- Vol13 社長のための資産形成戦略-成長期の節税は攻守のバランスがカギ!攻めの節税対策とは?
- Vol14 社長のための資産形成戦略-成長期はリスクへの備えも万全に!守りの節税対策について
- Vol15 社長のための資産形成戦略-社長個人の節税になる?資金繰りにも役立つ「小規模企業共済」とは
- Vol16 社長のための資産形成戦略-消費型節税はホントに節税になるのか見極めが肝心
- Vol17 社長のための資産形成戦略-融資の活用は慎重に!融資との付き合い方やタイミングについて
- Vol18 社長のための資産形成戦略-成熟期に社長個人の資産形成を本格化すべき理由
- Vol19 社長のための資産形成戦略-銀行の言いなりはNG!成熟期の銀行との付き合い方
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- Vol22 社長のための資産形成戦略-リスクの意味とリターンとの関係性を正しく理解しよう
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