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投資信託とは?メリットと注意点をわかりやすく解説-社長のための資産形成戦略Vol24
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
投資信託とは
長期分散投資の対象として、世界中の株式や債券、先物などさまざまなタイプの金融商品があります。
しかし、こうした金融商品に投資をするときの銘柄選びは簡単ではありません。
投資初心者であればとくに、今後値上がりする株式などを見つけるのは極めて困難でしょう。
そこで投資対象としておすすめしたいのが、「投資信託」です。
最初に、投資信託のしくみについてお話しましょう。
投資信託とは、「不特定多数の投資家が出し合ったお金を専門家が運用し、リターンを投資家に分配する」というしくみの金融商品を指します。
投資信託には「会社型」と「契約型」という2つの形態がありますが、日本において主流なのが契約型です。
契約型の場合、運用会社と信託銀行が信託契約を結ぶことにより、投資信託が組成されます。
ちなみに信託契約とは、委託者が資産の運用方法を指図し、その指図に基づいて受託者が財産の保全管理を行う契約を意味します。
この契約に基づき運用された成果が、やがて受益者である投資家に還元されるという流れです(図表3-7)。
投資信託のメリット
次に投資信託が個人の長期分散投資にとって最適なツールであることをお話ししましょう。
投資信託には主に①安全性、②税制面、③効率性、④専門性という4つのメリットがあります。
①安全性
投資信託を選ぶメリットその①は安全性です(図表3-8)。
投資信託には販売会社、運用会社、信託銀行が関わっていますが、このどこが破綻したとしても、投資家の財産はきちんと保護されるのです。
投資信託を買うと、その投資信託は信託法に基づいて金融機関の口座とは分けて管理されるため、「預けた資金が全然返ってこない」といった事態にはなりません。
「銀行は安全」というイメージがあるかもしれませんが、銀行の場合、万が一破綻すると、預金は完全に保護されません。
ペイオフのルールにより、保護されるのは「1金融機関1預金者あたりの元本1,000万円までと、その利息等」に限られます。
投資信託には、このような保護金額の制限はないため、まとまった資金を安心して投じることができます。
投資信託の換金性の高さも安全性のひとつと言えるでしょう。
せっかく育てた資産も、いざというときに使えなければ意味がありません。
そのため、できるだけ速やかに現金化できたほうが望ましいのですが、投資先によって換金性は大きく異なります。
たとえば、不動産の場合、売却をして現金化するまでに数カ月、場合によっては数年の時間がかかります。
これでは、緊急でお金が必要なときは困ることになるでしょう。
しかし、投資信託は流動性が高く、4~5営業日程度で換金することができます。
今はインターネット上で換金の手続きを行えるので、複雑な作業は必要ありません。
ちなみに、投資信託は換金性が高いとはいえ、「預金はやめて、すべて投資信託にすればよい」というわけではありません。
預金は決済手段としては非常に優れていますし、預金なしで生活を送るのは困難です。
社長の場合、会社の資金繰りの都合から、急に会社に個人の資金を入れる事態になることもあり得ます。
普段の生活費や緊急事態への備えとして預金はある程度確保しながら、資産形成のために投資信託を使うというように、役割を考えることが大切です。
②税制面
投資信託を選ぶメリットその②は税制面です(図表3-9)。
日本で投資信託を買うことのメリットは、税制面にもあります。
実は国際的に見ても、日本人が投資信託を持つことは非常にメリットが高いのです。
投資信託に税金がかかるのは、売却益や分配金を得たときです。
つまり、利益が実際にかたちになって投資家が利益を受領したときに初めて税金がかかるのです。
したがって、投資信託のなかで配当や利子、売却益が発生しても、その時点では課税されることはありません。
このようなルールを「パススルー方式」と言います。
たとえば、あなたが持っている投資信託の中にアマゾンの銘柄が入っていたとしましょう。
このアマゾンの株式が50倍に値上がりしたときに、テスラの株式に乗り換えたと考えてください。
投資信託の中ではアマゾン株の売却益が確定したわけですが、この時点では課税されません。
その結果、あなたが持つ投資信託はテスラの株式をより多く手に入れることができます。
これは、投資信託を育てるうえで非常に大きな効果があります。
ちなみに海外の場合、たとえ投資信託の運用益は年度ごとに、何らかのかたちで課税されるのが一般的です。
税率の面でも、日本の投資信託は有利です。
たとえば、暗号資産に投資した場合、所得税の累進税率が適用され、最高税率は45%にのぼります。
これを住民税と合わせると55%です。
いわゆる「億(おく)り人(びと)」と呼ばれるような暗号資産で億単位の利益を得た人は、利益の半分以上を税金で取られる計算になります。
これに対して、投資信託から得た利益については、所得税と住民税を合わせて一律で約20%の税金で済みます。
いくら利益が多くても、税率が上がることはないので安心です。
さらに、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すれば、投資家が実際に得たリターンさえも非課税になります。
とくにiDeCoについては、小規模企業共済のように投資額が全額所得控除となるため、個人の所得税や住民税を下げる働きもあります。
なお、NISAもiDeCoも、非課税扱いとなる投資額に上限がありますが、この上限額に縛られる必要はありません。
上限額に無理に収めようとすると、投資額が少なくなり、将来得られるリターンが減ってしまうからです。
まずはご自身の適正な投資額を決めたうえで、NISAやiDeCoを使えるなら、投資額の一部を非課税で運用するといった使い方がいいでしょう。
③効率性
投資信託を選ぶメリットその③は効率性です(図表3-10)。
投資信託のメリットは複数あり、そのひとつが「効率性」にあります。
投資を行う際に分散投資が有効とお伝えしましたが、個別株や債券などを組み合わせて分散投資をするのは非常に面倒です。
その点、投資信託であれば、商品ごとにさまざまな分散投資が行われているため、投資信託を買うだけで分散投資の効果を得ることができます。
また、分散投資を行うとして、「どの銘柄を選ぶべきか」という問題がありますが、この点も投資信託は解決してくれます。
投資信託を運用するのは投資に長(た)けた運用会社です。
したがって、投資家が自ら銘柄選択を行う必要がなく、運用会社が高い専門性を持って銘柄選択を行ってくれます。
しかも、投資信託というしくみを使うことで、個人ではアクセスできない投資先へのアクセスが可能になる点もメリットです。
さらに、投資信託の場合、運用会社が投資信託の中で保有している資産を詳細に分析して投資判断を行っていることから、個別銘柄の売買タイミングについてもしっかり対応してくれており、投資家自身が個々の株価の動きを気にしなくても問題ありません。
資産運用をカスタマイズできるところも、投資信託の効率性の高さのひとつと言えます。
投資信託の買い方や売り方は柔軟に設定することができます。
たとえば、「毎月1万円分ずつ、投資信託Aを積立投資したい」「毎月○日に投資信託Bを○円分売却したい」といった細かな設定が可能です。
このように、ライフスタイルに合わせた投資ができる点も、投資信託の魅力と言えるでしょう。
④専門性
投資信託を選ぶメリットその④は専門性です。
世界には数多くの投資信託を運用する運用会社が存在します。
ここではその詳細をご紹介することはしませんが、さまざまな資産クラス(株式・債券・オルタナティブ)を対象に、さまざまな運用哲学や運用スタイルを持った会社があるのです。
ちなみに日本で活動している運用会社は国内系、外資系あわせて109社(2022年4月現在、投資信託協会加入数)ですが、率直に言うと、日系の運用会社はまだまだ世界のトップレベルには至っていません。
日本では戦後に証券会社の子会社からスタートした運用会社が多いので、親会社(証券会社)の意向で経営が左右されてきたという歴史があり、本物の資産運用哲学が培われてこなかったというハンディキャップが今でも残っているように思います。
しかし、1998年の規制緩和で、日本の一般投資家も欧米のトップクラスの運用会社の投資信託を利用できるようになりました。
彼らのスキルは、とてもではありませんが、個人投資家が自分の仕事をやりながらできるようなレベルではないことを十分認識しておいたほうがいいでしょう。
個人投資家としてプロと競いながらマーケットで戦い(自分自身で株の売買を行う)、そして打ち勝って豊かな人生を手に入れるか、それとも彼らの運用スキルを活用(投資信託で長期運用を行う)して豊かな人生の一助とするかは、個人の選択の自由です。
投資信託の注意点
ここまでで複数の観点から投資信託のメリットを説明しましたが、注意点がないわけではありません。
まずは、自分で運用をするよりも相対的に「コストが高い」という点です。
これはあらゆる投資に言えることですが、手数料をまったくかけずに投資信託を運用するわけにはいきません。
投資信託を運用する際、一般的には次の費用がかかります。
- 購入時手数料……投資信託の購入時に投資家から販売会社に支払う費用
- 運用管理費用(信託報酬)……運用中にかかる費用で、信託財産から間接的に差し引かれる費用
- 信託財産留保額……投資信託の換金時にかかる費用
コストの他にも注意点はあります。
投資信託には、その数、種類とも多すぎて「どれを選べばよいかわからないという問題」や「運用成績が悪い投資信託も数多く存在するという問題」があります。
その他に当初は運用成績が良くても、途中で運用チームの中心メンバーが退職や転職をした後、すっかり成績が振るわなくなるといったリスクも存在します。
投資信託という素晴らしいしくみも、運用会社次第では将来の計画が絵に描いた餅に終わることもあるということです。
しかし、個人投資家の立場で、運用会社の質を継続モニタリングするのは至難の業(わざ)です。
実際、年金基金などの機関投資家なども、投資信託の評価・モニタリングできるスキルを有するコンサルティング会社や専門家を利用して、「運用会社の選択を間違うリスク」を抑えています。
▼社長のための資産形成戦略 シリーズ
- Vol1 社長のための資産形成戦略-【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは
- Vol2 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント①ガムシャラ期
- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
- Vol6 社長のための資産形成戦略-パーソナルファイナンスとは?3つのポイントから資金繰りの戦略を考える
- Vol7 社長のための資産形成戦略-創業期は「生き残り」を最優先に!キャッシュを手元に残すためにできること
- Vol8 社長のための資産形成戦略-儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法
- Vol9 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(1)役員報酬最適化
- Vol10 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(2)旅費日当の活用
- Vol11 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(3)社宅の家賃を経費に
- Vol12 社長のための資産形成戦略-利益が出た後ではもう遅い?創業期から税理士と顧問契約するメリット
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