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リスクの意味とリターンとの関係性を正しく理解しよう-社長のための資産形成戦略Vol22
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
リスクを正しく認識する(リスクはリターンを生み出す源泉)
不確実性が高いリターンではありますが、それは資産配分と銘柄選択とタイミングの3つの要素で決まることはご理解いただけたのではないでしょうか(とくに資産配分は大切)。
しかし、だからと言って根本的な解決がなされたわけではありません。
決定要因がわかったところで、リスクがなくなるわけではないからです。
ここからは、そのリスクについて理解を深めていきましょう。
「リスク」とは
日本では「リスク」と言うと「危険」と解釈する人が多く、できるだけ避けるべきものというイメージがあるようです。
しかし、投資の世界で言うリスクは、「リターンのばらつき具合」を示します。
つまり「リスクが高い」というのはリターンの振れ幅が大きいということ、逆に「リスクが低い」というのはリターンの振れ幅が小さいことを意味します。
たとえば、A社の株価は過去10年間で2倍になったとします。
同期間でB社の株価も2倍になったとすると、2社とも10年間の平均年率リターンは同じになります。
しかし、A社の業績はかなり不安定で株価は毎年大きく上下しています。
一方で、B社は毎年地道に業績を向上させ、それに連動するように株価も毎年少しずつ上がっているとします。
この場合、同じリターンでもA社のほうはB社よりリスクが高い(逆にB社はA社よりもリスクが低い)ということになります。
ここでは個別株式を例にとりましたが、資産種別ごとの「リスク-リターン特性」を抑えておくと、「資産配分をどうすべきか」という判断の際に役に立ちます。
図表3-3は、株式と債券、預金のリターンおよびリターンのばらつき具合をまとめたイメージ図です。
預金に元本割れのリスクはほとんどありませんが、得られるリターンもほぼゼロです。
株式は企業業績や景気サイクルの影響を受けて大きく変動しますが、平均値で見ると最も高いリターンが期待できます。
その間には「ミドルリスク・ミドルリターン」の債券が存在します。
債券は、保有期間中に利息が得られ償還時(満期)に元本が戻ってくるのが基本ですが、途中換金したいときには、その時々の金利水準で価格が変動したり、債券を発行した国や会社の債務不履行になったりする可能性もゼロではありません。
要するに預金よりはリスクがある分、預金よりリターンも高くなっているというわけです。
このように、リスクとリターンは正比例の関係にあり、「ローリスク・ハイリターン」といったうまい話は、基本的にはありません。
言い換えれば、リスクとはリターンを生み出す源泉なのです。
自身が許容できるリスクを見極めつつ投資をすることが、効率的に資産を増やすために必要な考え方となります。
リスク許容度の目安
なお、「どれくらいのリスクに耐えられるか」を示す度合いを「リスク許容度」と言い、各自の価値観や、経済状況、職業などさまざまな要素が影響します。
ただ、一般的な目安は存在します。
預金や債券のようなリスクの低いものを「安全資産」、株式をはじめとするリスクの高いものを「成長資産」とすると、次の算式で目安を考えてください。
成長資産に投資できる割合=100-年齢
たとえば、あなたが40歳なら、資産のうち60%は成長資産に投資をしてもいいでしょう。
損をする可能性はゼロにはなりませんが、まだまだ働いて稼ぐ時間があるので、致命的な事態にはなりませんし、投資期間が長い分、資産価格が回復する可能性も高くなります。
一方、引退が見えてきた60歳頃になると、成長資産への投資は40%くらいに抑え、資産の60%は安全資産にしておいたほうが無難です。
「全財産を預金にする」「全財産を株式にする」といった極端な方法ではなく、成長資産と安全資産のバランスを考えながら、資産を育てていきましょう。
分散投資することの重要性
最後に「各資産に分散投資することが、資産全体のリスク-リターン値を改善する」という理論についてお話しておきます。
たとえば、資産配分について再度考えてみましょう。
運用する資金をどのような資産に投資するか、基本的には次の資産クラスから投資割合を設定します。
- ①国内債券
- ②外国債券
- ③国内株式
- ④外国株式
- ⑤オルタナティブ(不動産、金など)
これらの資産クラスは、それぞれ異なった値動きをします。
たとえば、「株式が値下がりしている時期は、債券が値上がりする」といった動きが見られます。
そのため、投資対象を分けて「分散投資」をすることで、ある程度リスクやリターンをコントロールすることが可能です。
ノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者ハリー・マーコウィッツ氏が提唱した「現代ポートフォリオ理論」(図表3-4)は、分散投資をすることでリスクに対するリターンを改善できることを示しました。
この理論についてここでは詳しい説明をしませんが、要は株式と債券を組み合わせて投資をすることで、きちんとリターンを得ながらもリスクを抑えることが可能になることが明らかになったのです。
そして個々の投資家のリスク許容度に合わせ、個々に最適な投資ポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)の目途をつけることも可能になったのです。
ここではリスクの最たるものである価格変動リスクについてお話をしましたが、実際の資産運用では、信用リスク、流動性リスク、為替リスク、カントリーリスクなど、さまざまなリスクチェックが必要になってきます。
専門家になればなるほどリターンよりもリスクに目を配ることを重視します。
なぜなら、長期的にはリスク管理の巧拙が、より確実なリターンを生み出すことを経験上知っているからなのです。
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- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
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