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融資の活用は慎重に!融資との付き合い方やタイミングについて-社長のための資産形成戦略Vol17
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
融資の活用は慎重に
会社の利益が多く出たときに、消費型節税を行わず、ある程度の税負担を覚悟しつつ申告納税を行うのもひとつの選択肢です。
利益の一部を税金として負担したとしても、残りは会社に残るわけですから、下手に消費型節税を行うよりも合理的と言えます。
また、このように利益を残すことで、融資を受けやすくなるというメリットもあります。
融資を受ける際、銀行などの金融機関は貸出先の業績を審査するため、あえて節税を控えめにして利益を多く残すことが、融資審査にとって有利に働くのです。
ただし、融資をむやみに受けることに問題がないわけではありません。
融資とのつきあい方
融資とのつきあい方は「業種」や「会社の成長段階」「社長の性格」によりばらばらであり、一律な答えは存在しません。
ですが、「その融資が本当に必要なのか」という点は、常に慎重に考える必要があります。
「融資は麻薬」と言われることがあるように、一度受けると依存しがちになります。
こうなると、なかなか融資依存体質の経営から脱却することができなくなります。
「資金繰りが苦しいから追加で借りよう」「まだ借りても毎月の返済額には余裕がある」と考えてしまい、融資残高がどんどん膨らんでしまうのです。
さらには、融資を受けて気が大きくなり、「投資」という名目でどんどん使ってしまうようになります。
消費型節税のように、最終的にお金が残らないことに対する出費が多くなり、さらに融資残高が増えてしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。
そして会社が返済できなくなれば、保証人となっている社長個人が返済義務を負うことになります。
銀行は「社長、融資はこれくらいでやめておいたほうがいいですよ」などと言ってはくれません。
銀行員には融資貸し出し残高のノルマがあるからです。
銀行員から提示される融資額は「自社にとって適正な必要額」ではなく、「銀行にとって貸し出せる額」であることを認識してください。
多くのケースでは「必要額」<「貸出額」なのです。
だからこそ、融資を受ける前に、社長自身がその融資が本当に必要なのか、そうでないのかを慎重に判断することが求められます。
融資を受けるべきタイミング
では、融資を受けるべきタイミングはいつなのでしょうか?
ひとつは「時間的な要因」により融資を借りるケースです。
たとえば、売上の入金が遅いのに、支払いが目の前に迫っている場合、このようなケースではどうしても「つなぎ融資」が必要になります。
ひとまず融資を受けて支払いを済ませ、いずれ入ってくる売上で返済すれば問題はありません。
融資で失敗してしまう人は、希望的な観測だけで、安易に融資を使っています。
とくに多く見られるのが、「慢性的な資金繰りの苦しさ」から逃げるために融資を受けるケースです。
売上が落ちてきたから借りる、毎月の返済が苦しいから借りる、税金の支払いや賞与の支払いのために借りる、このようなケースが該当します。
言うまでもなく、このような理由で融資を受けるべきではありません。
一時的にお金を借りたとして、今苦しい経営状況をそのままにしておけば、状況が改善されることはないでしょう。
むしろ将来の返済額が増えて、また融資を受けざるを得ないという悪循環に陥ってしまいます。
そして、行き着く先は「倒産」や「破産」が待っているだけです。
そのようなことのないように、会社を経営する以上、まずは利益を生むことを徹底してください。
これは、「成長期の節税は攻守のバランスがカギ!攻めの節税対策とは?-社長のための資産形成戦略Vol13」でお伝えした「節税」とも関係します。
王道的投資をはじめとする、きちんとお金が残る方法で節税をしていれば、会社にお金が残ります。
ここから通常の運転資金は賄うことを、まずは考えるべきです。
節税と同じく、融資にも会社の状況によって利用すべきときと、そうではないときがあります。
このような判断を正しく行い、融資とうまくつきあう意味でも、税理士のサポートがあるとスムーズです。
とくに、創業期を過ぎた後に融資を受けるときは、よりシビアな審査が行われます。
銀行から、会社の経営状況や財政状態をまとめた決算書や試算表などの提出を求められますから、会社のお金の動きを適切に記録するのが最低条件です。
ときには、あらかじめ融資を受けることを見越して節税を控えて利益を残す必要も出てきます。
節税と融資は異なるように見えて、実は深く関係していますので、十分に検討をしたうえで判断を行ってください。
▼社長のための資産形成戦略 シリーズ
- Vol1 社長のための資産形成戦略-【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは
- Vol2 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント①ガムシャラ期
- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
- Vol6 社長のための資産形成戦略-パーソナルファイナンスとは?3つのポイントから資金繰りの戦略を考える
- Vol7 社長のための資産形成戦略-創業期は「生き残り」を最優先に!キャッシュを手元に残すためにできること
- Vol8 社長のための資産形成戦略-儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法
- Vol9 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(1)役員報酬最適化
- Vol10 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(2)旅費日当の活用
- Vol11 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(3)社宅の家賃を経費に
- Vol12 社長のための資産形成戦略-利益が出た後ではもう遅い?創業期から税理士と顧問契約するメリット
- Vol13 社長のための資産形成戦略-成長期の節税は攻守のバランスがカギ!攻めの節税対策とは?
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