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儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法-社長のための資産形成戦略Vol8
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
「儲かったら節税」ではなく、「儲かる前に節税」する
創業期の会社が成長するには、まずは売上をしっかり増やすことが大前提です。
ただ、その方法は事業内容などによって大きく変わってきます。
この記事でお伝えしたいのは、「節税でお金を守る」という、いわば守りの方法です。
この方法は、どのようなビジネスにも活用することができます。
税金の基本的なしくみは、「儲かれば税金がかかる」です。
したがって、会社の成長のためにお金を使いたくても、売上の一部は納税のために取っておかなくてはいけません。
ただし、日本の税制には、任意で使えるさまざまな節税方法が存在します。
こうした節税方法を使うか使わないかによって、同じ利益を得た会社であっても、税負担は大きく変わります。
もし、節税でお金を浮かすことができれば、それだけ会社が存続できる可能性が高まり、成長のスピードも早まっていくでしょう。
そして、節税方法の大半は事前の準備が必要です。
「儲かったら節税する」のではなく、「儲かる前に節税する」と考えるようにしてください。
やってはいけない節税方法
ここで注意が必要なのが、「自分では節税したつもりでも、最終的には損をしてしまう節税方法がある」という点です。
とくに、創業期の会社は顧問税理士がついていない場合が多く、自己流で節税をしたところ、税務署から否認されるといったことがあります。
税金にあまり詳しくない人が、「税金を払いたくない」と思った末にやりがちなことが次の2つです。
- ① 脱税する
- ② お金を使って節税する
脱税する
まずは①脱税について考えてみましょう。
言葉は似ていますが、「節税」と「脱税」は意味がまったく異なります。
「節税」は法律にのっとって税負担を下げることを意味します。
一方、「脱税」は違法な方法で税逃れをすることで、当然ながら許されるものではありません。
たとえば、税金を下げようとして次のようなことを行うと、脱税とみなされてしまいます。
- (a) 隠し口座をつくって、売上の一部を振り込んでもらう(売上除外)
- (b) 実在しない従業員に給料を払ったことにして、経費を増やす(架空人件費)
このような行為は、税務調査によりいずれ明らかになります。
意図的に税逃れを行ったと認定されると、本来払うべきだった税金はもちろん、重加算税や延滞税が課され、非常に重たい税負担になってしまいます。
しかも、このような脱税行為が一度明らかになると、その記録は税務署に残り続けます。
税務調査が終わった後も、税務署から目をつけられやすくなるので、何もいいことはありません。
お金を使って節税する
それでは、②「お金を使って節税する」方法はどうでしょうか。
たとえば、高級車や海外への社員旅行、交際費を多く支払うといったことです。
こういった方法は、脱税ではないので、税務署から否認されることは基本的にありません。
会社の税負担も少なくなるでしょう。
しかし、節税効果以上にお金を失うことになるため、とくに創業期においてはやめておいたほうが無難です。
たとえば、1000万円の利益のなかから、社員旅行、パソコン等の購入、交際費を合わせて900万円使ったとしましょう。
そうすれば利益が100万円に下がるため、税負担は30万円程度で済みます。
でも、これでは手元に残るお金は、利益1000万円-経費900万円-税負担30万円=70万円だけです。
では、利益の1000万円について、そのまま税金を支払ったらどうなるでしょうか。
税金は約300万円と前述した方法で節税した場合と比べて10倍になりますが、残るお金は利益1000万円-税負担300万円=700万円です。
このように比較をすると、今後ビジネスを続けるうえでは、無駄な出費を控えて700万円を手元に残した企業のほうが、明らかに有利です。
銀行融資を受けるうえでも、利益を多く残したほうが審査に通りやすくなります。
より多くの資金を借りることができたり、金利を優遇されたりといった効果も期待できます。
▼社長のための資産形成戦略 シリーズ
- Vol1 社長のための資産形成戦略-【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは
- Vol2 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント①ガムシャラ期
- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
- Vol6 社長のための資産形成戦略-パーソナルファイナンスとは?3つのポイントから資金繰りの戦略を考える
- Vol7 社長のための資産形成戦略-創業期は「生き残り」を最優先に!キャッシュを手元に残すためにできること
- Vol8 社長のための資産形成戦略-儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法
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- Vol10 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(2)旅費日当の活用
- Vol11 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(3)社宅の家賃を経費に
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