- TOP|会社設立
- ›
- 【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは-社長のための資産形成戦略Vol1
- ›
- 「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期-社長のための資産形成戦略Vol3
「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期-社長のための資産形成戦略Vol3
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
個人と会社を分けて考える成熟期
B氏の事例
45歳のB氏は、創業期の荒波を乗り越え、現在は安定して会社経営を続けています。
しかし、10年以上経営を続けてきたB氏の頭を時々よぎるのが、「このままでいいのだろうか」という不安でした。
メディアなどで「FIRE(Financial Independence, Retire Early 経済的自立と早期リタイア)」や「早期退職」といった言葉を目にすると、つい気になってしまいます。
大好きな事業であり、B氏は経営をすること自体は嫌ではありません。
ただ、このまま会社を経営するだけで人生を終えることを考えると、なんとも言えない虚(むな)しさに襲われてしまうのです。
B氏は以前から「いつかは仕事を忘れて、世界旅行を楽しみたい」と考えていました。
ただ、長年の激務のせいか体力の衰えを感じるようになり、だんだんと実現が心もとなくなってきました。
また、家族も年齢を重ねたことで、親の介護や子どもの教育費など、創業期にはなかったプライベートの悩みも増えています。
思い描いたライフプランを実現し、プライベートの問題を解決するためにはお金が必要だということを、B氏も理解しています。
しかし、現時点でのB氏の個人資産は十分ではありません。
これまでは会社の成長を最優先してきたため、社長個人のお金を蓄えることを後回しにしてきたからです。
そのほかにも、以前銀行からすすめられて不動産投資(賃貸アパート経営)を始めましたが、空室が多く、いまだにコストに見合った収益を得ることができていません。
この不動産を購入する際、B氏は貯金をかなり使ってしまいました。
また、一時期は株式投資に興味を持ち、日本の個別株に投資をしていたのですが、株価の急落でパニックになって売り払ったところ、大きな損失を被りました。
B氏が投資していた銘柄の株式はその後値上がりしたことから、「あのまま持っておけばよかった」と後悔の念が尽きません。
これら過去の投資の失敗経験から、B氏は「投資なんてまっぴら」と考え、今は生活費の残りはすべて低利の預金に回しています。
体力の衰えを感じているB氏ですが、まだまだ年金をもらえる年齢ではありません。
事業から引退すれば、生活するための収入が途絶えてしまいます。
会社としてもB氏に退職金を支払う準備はできておらず、これからさらに増えていく生活コストや老後資金のことも考えると、引退の決断ができるはずもありません。
「結局、今の仕事を続けるしかないのか」
B氏はため息をつき、今日もいつものように出社します。
もし、B氏が収益を見込めない不動産投資ではなく、確実性の高い投資信託にお金を預けていれば、このようなことにはならなかったでしょう。
社長が、個人の資産形成を会社から受け取る役員報酬だけに頼るのは不安定です。
このほかに、投資の運用益をコンスタントに得ることができていたら、B氏の人生の選択肢は広がっていたと考えられます。
- ・リスクの高い不動産投資を行った
- ・個別株式の短期売買を行った
- ・個人資産の大半を高いリターンが見込めない預金にしている
- ・銀行からの投資話をそのまま受け入れた
- ・資産運用の専門家によるサポートを受けていない
▼社長のための資産形成戦略 シリーズ
- Vol1 社長のための資産形成戦略-【社長の資産運用】成功・失敗を分けるものとは
- Vol2 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント①ガムシャラ期
- Vol3 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント②成熟期
- Vol4 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。架空のストーリーから見る失敗ポイント③リタイア期
- Vol5 社長のための資産形成戦略-「社長」という人生。理想的なゴールとは
- Vol6 社長のための資産形成戦略-パーソナルファイナンスとは?3つのポイントから資金繰りの戦略を考える
- Vol7 社長のための資産形成戦略-創業期は「生き残り」を最優先に!キャッシュを手元に残すためにできること
- Vol8 社長のための資産形成戦略-儲かる前に対策を!創業期にやってはいけない節税方法
- Vol9 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(1)役員報酬最適化
- Vol10 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(2)旅費日当の活用
- Vol11 社長のための資産形成戦略-創業期の王道的節税(3)社宅の家賃を経費に
- Vol12 社長のための資産形成戦略-利益が出た後ではもう遅い?創業期から税理士と顧問契約するメリット
- Vol13 社長のための資産形成戦略-成長期の節税は攻守のバランスがカギ!攻めの節税対策とは?
- Vol14 社長のための資産形成戦略-成長期はリスクへの備えも万全に!守りの節税対策について
- Vol15 社長のための資産形成戦略-社長個人の節税になる?資金繰りにも役立つ「小規模企業共済」とは
- Vol16 社長のための資産形成戦略-消費型節税はホントに節税になるのか見極めが肝心
- Vol17 社長のための資産形成戦略-融資の活用は慎重に!融資との付き合い方やタイミングについて
- Vol18 社長のための資産形成戦略-成熟期に社長個人の資産形成を本格化すべき理由
- Vol19 社長のための資産形成戦略-銀行の言いなりはNG!成熟期の銀行との付き合い方
- Vol20 社長のための資産形成戦略-投資には絶対公式がある?ポイントとなる3つの要素
- Vol21 社長のための資産形成戦略-投資収益率(リターン)の決定要因とは?
- Vol22 社長のための資産形成戦略-リスクの意味とリターンとの関係性を正しく理解しよう
- Vol23 社長のための資産形成戦略-長期分散投資はリスクコントロールに効果的?
- Vol24 社長のための資産形成戦略-投資信託とは?メリットと注意点をわかりやすく解説
- Vol25 社長のための資産形成戦略-インデックスファンドとアクティブファンドの違い【どっちがおすすめ?】
- Vol26 社長のための資産形成戦略-資産運用にファイナンシャルアドバイザーは必要?何を助言してくれる?
- Vol27 社長のための資産形成戦略-余裕があれば法人での資産運用も!会社の資金で投資した場合の取り扱い
- Vol28 社長のための資産形成戦略-社長がやってはいけない投資【金融商品で損をしないための最適解とは?】
- Vol29 社長のための資産形成戦略-「不動産投資はやめておけ!」安易にすべきではない理由
- Vol30 社長のための資産形成戦略-リタイア期の落とし穴|いつ経営から退く?失敗しないためのプランとは
- Vol31 社長のための資産形成戦略-リタイア期の落とし穴|見えない負債「相続税」
- Vol32 社長のための資産形成戦略-リタイア・退職後の収支はどうなる?資産運用のススメ
- Vol33 社長のための資産形成戦略-リタイア後に年金はいつから受け取る?退職金はどう準備する?
- Vol34 社長のための資産形成戦略-社長引退の選択肢(1)事業承継
- Vol35 社長のための資産形成戦略-社長引退の選択肢(2)M&A
- Vol36 社長のための資産形成戦略-社長引退の選択肢(3)会社清算
- Vol37 社長のための資産形成戦略-相続税って何?基本をわかりやすく解説
- Vol38 社長のための資産形成戦略-生前にできる相続税対策|暦年課税による生前贈与と特例の活用
- Vol39 社長のための資産形成戦略-不動産や生命保険が相続税対策に役立つ仕組み
- Vol40 社長のための資産形成戦略-相続税対策は「二次相続」や「認知症」まで考えよう
- Vol41 社長のための資産形成戦略-3,000万円控除?相続財産の自宅に活用できる「空き家特例」とは
- Vol42 社長のための資産形成戦略-「相続税を資産運用で取り戻す」という考え方