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発行可能株式総数とは?
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
▼目次
発行可能株式総数とは、「会社が将来的に何株まで株式を発行できるか」の上限値のことをいいます。
株式を発行するということは、それだけ新しい株主(会社のオーナー)を会社に受け入れるということを意味します。
(「新しく株主になる人が会社に払い込んだお金÷1株あたりの金額=新しく株主になる人が取得する株式数」ということになります)
会社法の規定では、既存株主が上記のように予想外な形で不利益を被らないように、あらかじめ会社設立時には発行可能株式総数をいくらにするか定めておくように求めているというわけですね。
ここでは発行可能株式総数を実際に決める時の注意点について解説させていただきます。
定款で発行可能株式総数を定めておく意味
新たに株主が増えるということは、場合によっては既存の株主が会社に対して持っている影響力の低下や、会社が利益を出した時に受け取ることのできる配当金の額が小さくなることを招く可能性があります。
例えば、もともと100株の株式が発行されていたというときに、Aさんが30株、Bさんが70株を持っている場合には、会社から1000万円を配当しようというときにはAさんが300万円、Bさんが700万円を受け取ることになりますね。
このときにCさんに対して新たに100株の株式を発行していたとすると、 Aさんが受け取る金額は150万円、Bさんは350万円、Cさんは500万円、という形になります。
そうなるとAさんとBさんは以前の株主構成であれば受け取れたお金が受け取れない、ということになりますから、不利益を被ることになります。
配当を受ける権利以外にも、会社の議決権についても同様です。
極端に多くの新株発行が行われると、既存の株主が会社に対して持っていた影響力が一気に低下してしまうということも考えられます(極端な場合にはオーナー経営者の交代などの事態に発展することもあります)。
もともとの株主の想定外にこういったことが生じないようにするために、発行可能株式総数という上限値を設けて「この会社はこの上限値までであれば株式を発行する可能性がありますよ」ということをあらかじめわかるようにしているというわけです。
取締役会の決議のみで株式発行による資金調達が可能になる
定款で発行可能株式総数を定めておくと、その数までであれば、会社の経営者(株主ではない)で構成される取締役会の決議だけで追加の株式発行を行うことが可能になります(発行可能株式総数を超える数の株式発行を行うときには定款変更が必要になりますから、株主総会の特別決議が必要です)。
経営者のグループが集まって行う決議だけで追加の資金調達をできることになりますから、適切な時期に応じて機動的な資金調達を行えるようにするために、発行可能株式総数を多めに定めておくケースが多いです。
公開会社と非公開会社ではルールが異なる
発行可能株式総数の上限については、公開会社と非公開会社とで法律上のルールが異なることにも注意が必要です。
▲公開会社、非公開会社の意味
公開会社、非公開会社というのは一般的に証券取引所に上場しているかどうかを指すことが多いですが、ここでは意味が全く異なります。
ここでいう非公開会社というのは「株主が株式を他人に譲渡するときになんらかの制限がある会社」のことで、公開会社は「それ以外の会社(つまり自由に株式譲渡が行える会社)」のことをいいます。
中小企業では想定外の人が株主となってしまわないように株式の譲渡制限を設けているケースが多いです。
その場合は非公開会社ということになります。
▲それぞれの会社の発行可能株式総数に関するルール
非公開会社の場合、発行可能株式総数を定めるときに特に上限はありません。
発行可能株式総数までであれば、上でも説明させていただいたように取締役会の決議だけで追加の資金調達ができますから、10倍などの大きめの数字を設定している会社が多いです。
一方で、公開会社の場合には会社設立後に定款変更によって発行可能株式総数を増やすときには上限があります。
具体的には公開会社はすでに発行している株式総数の4倍までしか発行可能株式総数を増やすことができません。
公開会社の場合、会社の経営には直接的に関わっていない株主が関わるケースが多いことから、会社の経営陣が株主の想定外に増資を行って既存株主に損害を与えることがないように配慮されているということができます。
まとめ
今回は、会社設立時に定める発行可能株式総数の注意点について解説させていただきました。
本文でも解説させていただいた通り、会社の設立時に定款で定めておくべき項目については、会社法などの法律についての知識を理解した上で決めておかないと、設立後になって思わぬ不利益が生じてしまう可能性があります。
会社設立については司法書士や弁護士といった法律の専門家に相談しながら進めるのが安全かつスピーディに手続きを行うことにつながります。
特に初めて会社設立を行うという事業者の方は、専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めるのが良いでしょう。
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