UR賃貸とは、UR都市機構という独立行政法人が運営する賃貸住宅です。
URはUrban Renaissance Agencyの頭文字をとった略称で、タワーマンションやデザイン住宅などの人気物件も扱っており、仲介手数料、礼金、更新料、保証人が不要となっています。
入居の際は平均月収額などに一定の基準があり、家賃や共益費など毎月の支払いがある点は一般の賃貸と変わりません。
では、UR賃貸で家賃を滞納した場合に、一般の賃貸との違いはあるのでしょうか。
結論として、家賃を滞納し、支払いの督促などを無視し続けると最終的には強制退去となる点は共通しています。
ここでは、UR賃貸で家賃滞納した場合のリスクや対処法について解説します。
UR賃貸では家賃の滞納が続くと強制退去になりますが、そもそも強制退去とはどのような場合に行われるのでしょうか。
家賃滞納による強制退去は、次のような場合に行われます。
住居は人の生活にとって基盤となる重要なものであり、貸主は正当な事由なくして借主に退去を要求することはできません。
ただし、借主が賃貸借契約で定められた義務を履行しない場合、貸主との契約の合意が成り立つための信頼関係が崩れているとみなされます。
たとえば、以下の行為が信頼関係が崩れたとみなされる原因として該当します。
家賃の滞納は、病気や勤務先の倒産など一時的な事情により払えなくなってしまうケースもあるため、原則として1カ月家賃を滞納しても即退去ということにはなりません。
過去の判例などから、一般的には3カ月以上の滞納が一つの目安となっています。
強制退去とは、借主を法的な強制力をもって入居物件から退去させることです。
貸主が裁判上の手続きで入居物件の明け渡し訴訟を行い、裁判で勝訴判決を受けると、裁判所の執行官により執行されます。
日本では自力救済(私人が法的な手続きによらず、私的な実力を行使して自分の権利を実現すること)は禁止されています。
たとえ契約書に「家賃を滞納した場合は入居物件を明け渡す」という特約を定めたとしても、法的な手続きによらない強制退去は認められません。
貸主の訴訟提起からは退去の強制執行までは、一般的に5カ月ほどの期間がかかります。
たとえ借主の家賃滞納が原因であったとしても、貸主が次のような行為をすると権利の濫用としてみなされ、強制退去が認められなくなる可能性があります。
借主としては、貸主から権利の濫用にあたる行為を受けた場合、証拠として記録すれば、入居物件の明け渡し訴訟の審理で有利に働く可能性があります。
ここからは、UR賃貸のケースについて解説します。
UR賃貸で家賃を滞納した場合、次のようなリスクがあります。
次の場合、UR 都市機構は入居者との賃貸借契約を解除し、直ちに住宅の明渡しを求めると定めています。
貸主が個人オーナーなどの一般賃貸であれば、家賃滞納した場合の対応は貸主の裁量によるため、貸主との信頼関係や話し合いによっては、直ちに強制退去とはならないかもしれません。
しかしUR賃貸の場合、運営が独立行政法人であり、日本全国に多数の物件があるため、3カ月滞納すると事務的に契約解除の手続きが行われる可能性があります。
支払期日を過ぎて滞納した家賃には、支払期日の翌日を起算日として、年(365日あたり)14.56%の割合で遅延利息が加算されます。
利率としては決して低くない金利を、滞納家賃の支払いに上乗せしなければなりません。
賃貸借契約が解除されたにもかかわらず住宅が明け渡しされない場合、住宅の明け渡しが完了するまでの期間は不法居住として家賃などの1.5倍に相当する賠償金が発生します。
一般賃貸と同様に、家賃が支払われず入居物件の明け渡しがされない場合、最終的な手段として裁判上の手続きで退去の強制執行が行われます。
退去の強制執行がされると、裁判所の執行官によって入居物件から家財道具や荷物が運び出され、入居者は強制的に退去しなければなりません。
強制退去までの手続きや流れは、次章で詳しく解説します。
家賃を滞納すると、滞納者の個人信用情報がいわゆる「ブラックリスト」に載る可能性があります。
ブラックリストに載ると、5年~10年はローンの契約やクレジットカードの作成などが原則としてできなくなります。
家賃滞納により退去の強制執行を受けることが決まった場合、どのような流れで執行されるのでしょうか。
一般的には、次のような流れで退去の強制執行が行われます。
それぞれの手続きについて、内容を確認していきましょう。
家賃の支払いが遅れた場合、UR賃貸から滞納した家賃などを直ちに支払うよう、催促のハガキや封書が届きます。
督促状には、家賃の滞納と期日までに支払うよう求める旨が記載されています。
催促状を送っても支払いがされない場合、賃貸借契約解除の予告通知が内容証明郵便で届きます。
内容証明郵便には、通常、滞納家賃の支払期日や期日までに支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨が記載されています。
内容証明郵便が届いても支払いがされなかった場合、入居物件の明け渡し訴訟が提起され、裁判所から訴状が届きます。
訴状には答弁書が同封されており、裁判上の手続きで主張したい意見がある場合や和解をしたい場合は、期日までに裁判所とUR賃貸側へ提出しなくてはなりません。
期日までに答弁書を提出しなかった場合や、提出後に裁判所へ出廷しなかった場合は、自動的に敗訴となります。
借主が敗訴した場合、裁判所から入居物件について退去の強制執行が行われます。
退去の強制執行は、次の3段階の手続きで進められます。
裁判上の手続きで敗訴しても、即退去とはならず、まずは入居物件の明け渡しを求める通達が届きます。
裁判所からの通達には、期日までに立ち退きを要請する旨が記載されています。
強制執行を行う裁判所の執行官が入居物件に立ち入り、強制退去を行うための準備をします。
入居物件の壁には、「〇月〇日に強制執行します」という紙が貼られます。
指定された期日を迎えると、裁判所の執行官とUR賃貸の担当者が来て退去の執行が行われます。
入居物件に家財道具や荷物が残っている場合、搬出業者が運び出して一時保管します。
裁判所の通達から退去の強制執行までは、一般的に2カ月ほどの期間かかります。
ここからは、UR賃貸で家賃を滞納してしまった、もしくは滞納しそうな場合の対処方法について解説します。
住まいセンターはUR賃貸の入退去手続きの他、入居者からの相談業務などを行っています。
家賃を滞納してしまった場合、遅延利息の計算も必要となるため、まずは管轄の住まいセンターに連絡しましょう。
URの入居案内には「3カ月以上遅延した場合」と期間が明記されているため、3カ月滞納する前に1~2カ月滞納してしまった時点で連絡をしておくのが望ましいです。
連絡をするときに特に重要なのは、今後、家賃を支払う意思がある旨を明確に伝えることです。
家賃を滞納してしまった事情や、いつまでに支払うことができるかについてもあわせて伝えるとよいでしょう。
支払いの意思がある旨を伝えず、督促状に対して返信をしないままだと、そのまま退去の強制執行を受けるリスクが高くなります。
家賃の滞納が一時的なものであり、すぐに支払うことができる場合、督促状が届いた段階で滞納分全額を支払いましょう。
督促はされた後でも、滞納家賃を迅速に支払い、次月から毎月滞りがないようにすれば、通常は裁判上の手続きまで移行しないケースが多いようです。
たとえば勤務先の事情により収入が減少して家賃の支払が一時的に困難になった場合など、入居者の状況に応じて家賃の分割払いに応じてもらえる可能性があります。
もし一時的な事情で月々の家賃支払が困難になってしまった場合、分割払いを受け付けてもらえるかURの住まいセンターに相談してみましょう。
滞納した家賃を支払うことができず、裁判上の手続きに進んだ場合でも、裁判所に出廷して支払の意思を示し、和解が成立すれば強制退去の必要はありません。
ただし、裁判上の手続きは原則として、弁護士への依頼が必要です。
和解の手続き中も家賃は発生するため、滞納の理由が一時的なものであり、今後は滞納せずに支払を継続できる見込みがあるときは、和解を求めることをおすすめします。
たとえば病気で長期就業が不可能になった場合や、借金があり、利息分だけで収入の大部分を占めている場合など、家賃の滞納が一時的なものでないときは、住居の住み替えや債務整理を検討した方がよいケースもあります。
弁護士事務所によっては、無料相談などを行っている事務所もあるため、早期に今後の対応について相談するとよいでしょう。
やむを得ない事情があり家賃を滞納してしまった場合でも、UR賃貸から送付される督促状や内容証明郵便に対応しないままでいると、強制退去となってしまう可能性があります。
もし今後も住み続けたいという希望があり、和解や分割払いを望んでいても、早期に対応しなければ支払う意思がないとみなされてしまうかもしれません。
家賃を滞納したときの対応方法で不安がある場合は、できるだけ早く無料相談などを利用して弁護士に相談するとよいでしょう。