賃貸物件から退去するときには、退去費用を払わなければいけません。
どのくらいの金額を払うか、また貸主と借主のどちらが負担するのかは、修復する箇所の内容によってが決まります。
そのため、借主が負担するケースや工事費用相場を理解しておけば、高額な退去費用を請求されたときに対応できるようになるでしょう。
本記事では、賃貸物件の退去時にかかる費用や費用の内訳、工事費用の負担が貸主・借主どちらになるか、退去費用を高額請求された・払えないときの対処法などについて解説します。
記事を最後まで読み進めていただければ、退去費用についての基礎知識が得られ、退去するときに高額な退去費用を請求されてもスムーズに対応できるようになっていることでしょう。
目次
賃貸物件の退去時にかかる費用は、住んでいる部屋の間取り・広さ・住んでいる年数により変動します。
本章では間取り・広さ・住んでいる年数による退去費用の違いについて解説します。
退去費用の目安は広さによって異なります。
広さによる退去費用の目安は、次の表のとおりです。
部屋の広さ | 退去費用目安(㎡単価) |
---|---|
15~20㎡ | 2.950円/㎡ |
21~30㎡ | 2,200円/㎡ |
31~40㎡ | 2,300円/㎡ |
41~50㎡ | 1,750円/㎡ |
51~60㎡ | 1,450円/㎡ |
61~70㎡ | 1,355円/㎡ |
71~80㎡ | 1,200円/㎡ |
81~90㎡ | 1,100円/㎡ |
91㎡~ | 1,000円/㎡ |
たとえば、退去する部屋の広さが50㎡の場合は以下の金額が退去費用の目安となります。
50㎡ × 1,750円 = 87,500円
ただし、部屋の汚さや間取り、居住年数などにより目安は変動します。
退去費用は部屋の間取りによっても費用が変動します。
部屋の間取りによる退去費用の目安は、次の表のとおりです。
間取り | 退去費用目安 |
---|---|
ワンルーム・1K・1DK・1LDK | 約5万円 |
2K・2DK・2LDK | 約8万円 |
3DK・3LDK・4K・4DK・4LDK | 約9万円 |
ただし、ワンルームでも80㎡を超えるワンルーム、独特な間取りをしている場合や室内の状態などにより目安は変動します。
退去費用の目安は、居住年数によっても金額が変わります。
居住年数による退去費用目安は、次の表のとおりです。
居住年数 | 退去費用目安 |
---|---|
~3年 | 約5万円 |
4年~6年 | 約6万円 |
~7年 | 約9万円 |
居住年数が長くなれば長くなるほど、室内の状態が悪くなっていくため、退去費用目安が増加していきます。
居住年数が10年、20年とさらに長くなっていくと、退去費用も増加していくと考えておきましょう。
賃貸物件から退去するときには、原状回復義務を果たすために原状回復工事を行わなければいけません。
原状回復義務とは、「賃貸物件から退去するときには、賃貸物件を借りたときの状態に戻さなければいけない」という義務です。
原状回復を行うためには、ハウスクリーニングや補修工事などを実施しなければいけません。
工事自体を行うのは貸主であり、借主は工事費用を負担します。
それでは借主が負担する工事とは、具体的にどのような工事なのでしょうか。
本章では、賃貸物件の退去費用の内訳について解説します。
退去費用の内訳には、ハウスクリーニング代が含まれます。
近年では、ハウスクリーニング特約と言って、借主が賃貸物件から退去するときには、必ず借主がハウスクリーニング代を払わなければいけないという決めごとが設定されています。
ハウスクリーニング特約は、賃貸契約書に記載されているため、ハウスクリーニング特約があるのか、支払う費用はいくらなのかをあらかじめ確認しておきましょう。
退去費用の内訳には、壁紙・床・畳の張り替えが含まれます。
なお、壁紙・床・畳の張り替え費用の目安は、次の表のとおりです。
張り替え箇所 | 退去費用目安 |
---|---|
壁紙 | 800円/㎡~1,500円/㎡ |
床 | 2,700円/㎡~ |
畳 | 畳1枚あたり3,500円~ |
なお、各種箇所の張り替え時に、下地交換なども必要となる補修工事が発生する場合、費用は大きく増加してしまいます。
キズの度合いによって費用が大きく変わることを認識しておかなければいけません。
退去費用の内訳には、ペットやタバコによるニオイなどの除去工事費用が含まれます。
ペットやタバコのニオイはなかなか取れないため、壁紙を交換するだけでニオイは取れません。
壁紙をはがし専用の消臭剤を利用してニオイを取りますが、それでもニオイが取れない場合は、壁紙の下地やドアなどを交換する必要があります。
ここまでの工事を行うと工事費用が数十万円になってしまう可能性もあります。
ペット飼育や喫煙をするときには、ニオイが付かないよう生活することが大切です。
原状回復工事の費用は、すべて借主が負担するわけではありません。
汚れた理由や傷ついた理由によっては、貸主が費用を負担するケースもあります。
本章では、どのような汚れ・キズは貸主が負担するのか、借主が負担するのかについて解説します。
貸主が原状回復工事の費用を負担するケースは、経年変化によってできた汚れやキズ、借主が常識的な使い方をしてできた汚れやキズです。
貸主が原状回復工事を負担する主なケースは、次のとおりです。
上記のように、生活している上でどうしてもついてしまう汚れや傷は、貸主の負担で原状回復しなければいけません。
借主が原状回復工事の費用を負担するケースは、借主の故意・過失によってできた汚れやキズです。
なお、故意とは知りながらわざと行った行為、過失はうっかりミスで行った行為のことをいいます。
借主が原状回復工事を負担する主なケースは、次のとおりです。
上記のように、借主が一般常識を守らずについた汚れやキズは借主が負担しなければいけません。
賃貸物件の退去時に敷金が返ってくるかどうかは、原状回復費用がどのくらいかかるかにより変わります。
借主がこまめに室内を清掃しておけば、原状回復費用がかからず敷金から差し引かれる費用が減ります。
このような場合は、敷金が返ってくる可能性も高いでしょう。
しかし、逆の場合は敷金が返ってこない可能性もあります。
敷金の金額を超えるような場合は、敷金では足りなかった金額を貸主から請求されます。
賃貸物件から退去するときには、退去費用がかかってしまいます。
しかし、退去費用を抑えることは可能です。
本章では、賃貸物件の退去費用を抑えるためのポイントについて解説します。
室内を清掃し、キズを自分で補修すれば退去費用を抑えることが可能です。
補修するためのキットは、ホームセンターでも販売されており、フローリングの小さなキズの補修や壁紙の剥がれ直しなどは自分で直せます。
ただし、補修することで余計に汚れが目立ってしまうケースもあるため、DIYが得意でないと思う人は別の方法で退去費用を抑えたほうがよいかもしれません。
原状回復工事は借りたときの状態に戻す工事のことをいうため、入居時にすでにあった汚れ・キズについては直す必要がありません。
しかし、入居時にすでについていた汚れやキズかどうかは、借主が証明しなければいけません。
そのために、入居時に室内の汚れやキズを、写真や動画などで残しておき、以前からある汚れ・キズと証明できるようにしておく必要があります。
退去費用の総額だけ貸主から伝えられた場合、工事内容の内訳と内訳の費用を教えてもらいましょう。
工事内訳が分かれば、相場より高い費用請求をされているのかどうかが判断できます。
「退去費用総額が高いな」と感じたときには、内訳を教えてもらい、その内容をリフォーム会社に確認してもらうとよいでしょう。
賃貸物件の退去費用は高額な費用が請求されることや、費用が支払えないなどのトラブルが発生しやすい費用です。
トラブルになってしまったときどうしたらよいのかあらかじめ確認しておき、トラブルに発展しそうなときはすぐに対策しましょう。
本章では、賃貸物件の退去費用を高額請求された・払えないときの対処法について解説します。
貸主から高額な退去費用を請求されたときには、次の対処法が考えられます。
ここからは、上記の詳細内容について解説します。
貸主から、貸主と借主、どちらが負担するのが妥当かわからないような原状回復工事までを含んだ金額を退去費用として請求されることがあるかもしれません。
この場合には、「国土交通省が策定したガイドライン」を基準に貸主と金額交渉をしましょう。
このガイドラインには、貸主が負担すべき工事内容や、借主の負担すべき工事内容が記載されています。
ガイドラインに反するような工事用を請求されたときには、ガイドライン内容を提示して交渉を行いましょう。
退去費用は貸主側が算出した工事費用であるため、適正な工事費用なのか判断できません。
適正な費用を請求されているのか確認するためにも、自分でリフォーム見積もりを取得し、費用金額が正しいか判断します。
もし相場からかけ離れた工事費用を請求されているのであれば、貸主に自分で取得した見積もりを提示し、金額交渉するとよいでしょう。
ガイドラインや見積もりを提示しても交渉に応じてくれない場合には、弁護士や消費者センターなど法律の専門家に相談しましょう。
正しいことを伝えても納得してくれない相手に対応するときには、プロの力を借りるのも大切なことです。
退去費用を払えないときには、次の対処法が考えられます。
ここからは、上記の詳細内容について解説します。
退去費用が払えないときには、まず管理会社に退去費用が払えないことを伝えましょう。
管理会社によっては、退去費用の金額を見直してくれることや、退去費用の分割払いに応じてくれることがあります。
退去費用が払えないことを管理会社に伝えても解決しなかったときには、専門の窓口に相談しましょう。
専門の窓口とは、次のような場所のことをいいます。
専門の窓口に相談すると、解決方法や公共の融資を受ける方法などを教えてくれるといった支援を受けることができます。
賃貸物件から退去するときには、借主に原状回復義務があるため、貸主に退去費用を払わなければいけません。
退去費用は、借りていた物件の間取り・広さ・居住年により金額が変わります。
ある程度の費用目安を確認しておき、退去時に払う金額の目安をつけておきましょう。
また、原状回復は借主ですべて行う必要はなく、汚れた理由やキズがついた理由によっては貸主が負担しなければいけない工事項目もあります。
貸主負担の箇所の費用を払う必要はないため、自分が負担しなければいけない内容とそうではない内容もきちんと理解しておきましょう。
原状回復についての正しい知識があれば、高額請求されたときの対策を行うこともできます。
賃貸物件の退去費用についてはトラブルが多いため、無用なトラブルを避けられるよう、原状回復の知識を得ておくことが重要です。